米英艦艇を次々粉砕! フランス製「エグゾセ」が空対艦ミサイルの代名詞となったワケ

米英艦艇を次々粉砕! フランス製「エグゾセ」が空対艦ミサイルの代名詞となったワケ

「エグゾセ」空対艦ミサイルを発射するフランスの「アトランティック2」哨戒機。同ミサイルはヘリから戦闘機、哨戒機まで14機種で運用される(画像:フランス海軍)。

フランスの「エグゾセ」ミサイルは、日本でも比較的、広く知られる存在といえるでしょう。ほかの同国製兵器の知名度がさほど高くないという要素もありますが、この変わった名前のミサイルに限って有名なのには、もちろん理由があります。

フランス製兵器のなかで抜群の知名度を誇る「ありふれたミサイル」

 フランス製航空兵器の知名度は、日本においてはまったくと言っていいほどありません。「ミラージュ」や「ラファール」といった戦闘機を知っている人でも、それに搭載されるミサイルまで知っている人は、それほど多くないものと思われます。

 そうしたなかにあって、フランス製空対艦ミサイルAM 39「エグゾセ(Exocet、トビウオの意)」だけは例外です。映画などフィクションにおいても「エグゾセ」は引っ張りだこで、作品によってはほとんど空対艦ミサイルの代名詞として使っていることさえ珍しくありません。なぜ「エグゾセ」はそこまで有名なのでしょうか。

 AM 39「エグゾセ」は空対艦ミサイル、すなわち艦船を主要な標的とする航空機搭載兵器です。165kgの高性能爆薬をもち、ロケットモーターによりマッハ0.93まで加速、射程は約50kmから70km、高度3mの海面すれすれを慣性航法・レーダー誘導で飛翔します。

 実のところ「エグゾセ」のこうしたカタログスペック上の性能は、際立って優秀であるとはいえません。むしろ空対艦ミサイルとしてはありふれた存在であるとさえいえます。ところが、このありふれた性能が「コンバットプルーブン(実戦での証明済み)」であるという点において、「エグゾセ」は抜群なのです。

「エグゾセ」は1979(昭和54)年に、フランス海軍において実用化されました。そしてほぼ同時期にアルゼンチンへ輸出された少数の「エグゾセ」が、その後の運命を大きく変えることになります。

実戦の舞台は南大西洋フォークランド(マルビナス)諸島

 1982(昭和57)年、アルゼンチンはイギリスが実効支配するフォークランド諸島の領有権を主張し突如侵攻、これを占領します。そしてイギリス側が奪還に動き「フォークランド戦争」が勃発します。

 5月4日、アルゼンチン海軍はフォークランド諸島に接近するイギリス艦隊を攻撃するため、「エグゾセ」を1発ずつ搭載したフランス製ジェット戦闘攻撃機「シュペルエタンダール」2機を出撃させます。これらから2発、発射された「エグゾセ」のうち1発が、イギリス海軍の新鋭ミサイル駆逐艦「シェフィールド」に命中、弾頭は不発だったものの大規模な火災が発生し、これを撃沈することに成功しました。

 さらに5月25日には、同じく2機の「シュペルエタンダール」から発射された2発の「エグゾセ」が、艦隊防空戦闘機「シーハリアー」やヘリコプターを輸送していたコンテナ船「アトランティックコンベイアー」を直撃し、やはり撃沈します。

 突如、戦争報道に現れるようになった「エグゾセ」という言葉は、全てのイギリス人を恐怖させました。イギリス人にとって不幸中の幸いだったのが、偶然にも空母が「エグゾセ」にレーダーロックオンされなかったことと、アルゼンチンが取得できた「シュペルエタンダール」は5機、そして「エグゾセ」もたった5発であったということです。

 アルゼンチンはイギリスの本気度を甘く見ていたため反撃を予期しておらず、準備を怠っていました。もしアルゼンチンが十分な「シュペルエタンダール」と「エグゾセ」を持っていたならば、イギリス軍の損害がこの程度では済まなかったであろうことはほぼ間違いなく、同海軍の空母も危うかったかもしれません。

「エグゾセ」ミサイルは中東でも

 世界で最も強力な海軍のひとつであるイギリスを相手に実績をあげ、一躍有名になった「エグゾセ」は、各国から続々とオーダーが入り、1982年から1996(平成8)年の間だけでも1400発が生産され世界中に輸出されました。

 そして「エグゾセ」を購入した国のひとつにイラクがありました。イラクは1980(昭和55)年から隣国イランと大規模な戦争状態(「イラン・イラク戦争」)にあり、特にペルシャ湾を航行する民間船に対して互いに攻撃しあう、別名「タンカー戦争」とも呼ばれた戦いが発生しています。

 イラクは戦争中、フランスから戦闘機「ミラージュF1」、攻撃機「シュペルエタンダール」を導入し、同時に「エグゾセ」を大量に購入します。これらフランス製兵器は「タンカー戦争」に投入され、イラク空軍の両機から発射された「エグゾセ」は100発以上に達しました。

 そして1987年5月17日、イラクにとって寝耳に水の事件が発生します。「ミラージュF1」から発射された2発の「エグゾセ」が、当時、イラクを支援していたアメリカの、オリバー・ハザード・ペリー級ミサイルフリゲート「スターク」に命中しこれを大破させたのです。

 これは目標の識別を十分に行わなかったがゆえに発生した誤射でしたが、誤射の原因は「エグゾセ」に関係なく、「エグゾセ」は正常に動作し「スターク」を大破させたのですから、その評判はさらに高まりました。

「エグゾセ」は性能向上を重ねながらその後も生産が続き、2001(平成13)年までにフランスを含む32か国に対して3200発を販売します。潜水艦発射型SM39、地上/艦艇発射型MM38/40などの派生型を含め、2019年現在その総数は4000を超えているともされます。

【写真】迎え撃つは英海軍「シーハリアー」戦闘攻撃機

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