百家争鳴、未来の交通のあり方「MaaS」 高速バスのウィラーはどう考える?

百家争鳴、未来の交通のあり方「MaaS」 高速バスのウィラーはどう考える?

ウィラーの高速バスのイメージ(2018年8月、中島洋平撮影)。

これからの交通の姿とされる「MaaS」とは何か、それによって未来はどう変わるのかを探るべく、ウィラーがシンポジウムを開催しました。同社は「MaaS」の具体的な取り組みとして、今後4つの事業を進めます。

シンポジウムに国内外の交通事業者ら500人が参加

 いま「MaaS(マース)」という言葉が、世界中の交通関係者や自動車メーカーのあいだで注目されています。高速バスなどを展開するウィラー(大阪市)が、そこへ一石を投じるべく2019年7月19日(金)にシンポジウムを開催しました。

「MaaS(マース)」とは「Mobility as a Service」の略で、「飛行機から電車、バス、タクシー、自転車など、あらゆるモビリティ(移動)をひとつのサービスと捉える「概念」であり、2019年現在、さまざまな議論がなされているさなかです。たとえば自動運転車や電動の小型モビリティといった新しい乗りもの、個人間のライドシェア(相乗り)サービス、あるいは様々な交通や観光サービスを連携させたスマートフォンアプリなども「MaaS」のひとつとみなされています。

 そうしたなか、「MaaS」が未来の交通をどう変えるのかを探るべく開催された今回のシンポジウム「MaaS Meeting 2019」には、政府関係者や自治体、国内外の交通事業者などを中心に、およそ500人が参加しました。

 日本で「MaaS」が取りざたされる背景のひとつに、「観光地の多様化」が挙げられます。シンポジウムの登壇者からは、たとえば近年、SNSでにわかに注目を浴びたスポットが、一方で最寄り駅からの交通案内もなく、そもそも地元の観光協会すら場所を知らない、といった事例が語られました。ただでさえ土地勘のない訪日外国人にとっては大きな問題になりかねず、調査では16%の訪日外国人が日本の公共交通に不満を持っており、なかでも目的地への「検索サービスがない」という声が多いといいます。

 また、高齢化社会を語るうえでも「MaaS」はしばしば取りざたされています。三重県の鈴木英敬知事は、クルマを運転できない高齢者が増えるなか、地方の人口減少や高齢化といった社会課題を解決するためにも、自動運転の実現や新しい乗りもののカタチを探るうえで「MaaS」が役立つと話しました。

ウィラーが取り組む「MaaS」の具体像

 こうした課題に対して今回、ウィラーの村瀬茂高社長は、同社が日本で取り組む「MaaS」の具体的なメニューを示しました。

 村瀬社長によると、現在の公共交通には利用者のストレスとなり得る3つの「空白」があるといいます。ひとつは、既存の交通体系でカバーできていない場所すなわち「空間的空白」、ふたつ目は、本数の少なさから移動したいときに移動できない「時間的空白」、そして3つ目は、交通が不便な場所にタクシーなどで行こうとすると運賃が高くなってしまうという「経済的空白」です。

 これらを解決する「MaaS」のメニューとして、村瀬社長は「(1)都市間高速バス」「(2)オンデマンドシェア(需要に応じたシェア交通)」「(3)サブスクリプション(定額制)」「(4)自動運転」の4点を挙げます。このうち(1)はウィラーの主たる事業であり、広範囲での空間的空白を埋める手段のひとつです。(2)は予約に応じて乗合バスを運行したり、個人間のカーシェアを提供したりすることですが、空間的空白はもちろん、移動手段をシェアすることで運賃が安くなり経済的空白もカバーし、予約に応じた運行とすることで時間的ストレスも解決し得るといいます。

 そして(3)の「サブスクリプション」は、複数の交通機関を月額制など定額乗り放題で利用可能にすることで、(4)の「自動運転」は、運転手不足で廃止で廃止されるようなバス路線を維持する手段で、ウィラーはすでにシンガポールで実証実験を行っています。これらによって、より気軽に移動ができるようになり、生活の変化が期待されるそうです。

 これらウィラーが構想する「MaaS」の一環として、同社は8月にスマートフォンで「WILLERSアプリ」の提供を開始します。出発地と目的地のあいだの経路検索機能で列車やバスを使ったルートを提示するとともに、さらにルート周辺で体験可能な観光アクティビティなども紹介し、これらをすべてアプリ上で予約・決済できるというものです。

 まずは、道東のJR釧網本線沿線などを中心とする「ひがし北海道エリア」と、京都丹後鉄道の沿線エリアが対象となりますが、今後は全国へと拡大し、シェア型の移動手段の提供や、サブスクリプションサービスなどを組み込むことも視野にあるといいます。

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