空自の新型空中給油機KC-46A 見た目変わらぬ従来機KC-767とはどこがどう別モノなのか

空自の新型空中給油機KC-46A 見た目変わらぬ従来機KC-767とはどこがどう別モノなのか

2019年6月、「パリ国際航空宇宙ショー」に展示されたKC-46A(竹内 修撮影)。

航空自衛隊が新たに導入する空中給油・輸送機KC-46Aは、すでに運用されているKC-767と、原型機が同じだけあり見た目はほとんど変わりません。ゆえに、大きく変わったその中身からは、設計や導入の意図などが鮮やかに見えてきます。

導入に向け準備着々

 防衛省は2019年7月5日、航空自衛隊が新たに導入する空中給油・輸送機KC-46Aの、修理の技術援助を行なう企業として、ANA(全日本空輸)を選定したと発表しました。

 航空自衛隊における航空機修理の技術援助を、メーカーではなく運航会社のANAが行なうのは不思議だと思われるかもしれませんが、KC-46Aはボーイングのベストセラー旅客機「767」をベースに開発されており、ANAは旅客機や貨物機として767を運航し、修理経験も豊富である点が評価され選定されたというわけです。

 航空自衛隊は、KC-46Aと同じ767をベースに開発された空中給油・輸送機の「KC-767」を4機保有しています。一見すると両機はよく似ていますが、KC-767が「767-200ER」の貨物機型をベースとしているのに対し、KC-46Aは同じく767-200ER貨物機型の胴体に、これより大型である「767-300」の貨物機型「767-300F」に使用されている主翼や降着装置、貨物室の扉と床を組み合わせています。このためKC-46Aは全長で約2m、主翼幅で約60cm、KC-767より大きくなっています。また主翼の大型化により、燃料の搭載量もKC-767の72.877tから96.297tへと増加しています。

 また、KC-767がジェネラル・エレクトリック製の「GE CF6-80C2B6F」ターボファンエンジンを搭載しているのに対し、KC-46Aはより強力なプラット・アンド・ホイットニー製の「PW4062」ターボファンエンジンを搭載します。

 KC-767のベース機となった767は、従来の航空機の操縦席に並んでいた多数のアナログ計器の大部分を、合計6基のディスプレイに表示する「グラスコクピット」の採用によって、計器やシステムの監視を行なう「航空機関士」を不要とした画期的な旅客機でした。KC-767の操縦席は767-200ERの操縦席とほとんど変わりはなく、一部にアナログ計器が使用されています。一方で、KC-46Aの操縦席はボーイングの最新鋭旅客機「787」に採用された、先進的なグラスコクピットシステムをベースに開発されており、アナログ計器はほとんどありません。

そもそも空中給油はどうやるの?

 現在アメリカ空軍が運用しているKC-135、KC-10の両空中給油・輸送機は、機体の後部に配置された「ブーム」と呼ばれる給油パイプをオペレーターが目視で操作し、給油を受ける航空機の給油口にこれを差し込む「フライング・ブーム」と呼ばれる方式で空中給油をしています。KC-767は操縦席後方の遠隔操作ステーションに配置されたオペレーターが、機体底部に設置されたカメラの捉えたブームの様子を見ながら、これを操作して給油を行なう仕組みとなっています。

 KC-46AもKC-767と同様、遠隔操作ステーションからブームを操作しますが、KC-767では離れて配置されていたオペレーターの遠隔操作ステーションと座席が、KC-46Aは横並びに変更されており、給油作業の確実性と訓練効率の向上が期待されています。またKC-46Aに採用された遠隔操作ステーション「AROS」は、オペレーターが専用のゴーグルを装着することで、メインディスプレイの画像を三次元(立体)映像として捉えることができます。

 KC-46Aはこのほか、両主翼下に搭載する給油ポッドを使用して、先端に漏斗のような形のエアシュートの付いたホース(ドローグ)を伸ばし、給油を受ける航空機が自機の給油パイプをエアシュートに差し込んで給油する「プローブ・アンド・ドローグ」方式の空中給油能力を備えています。これは現時点で、航空自衛隊のKC-767には備わっていない能力です。

 2019年8月の時点で、航空自衛隊が保有する「空中給油を受ける能力を持つ航空機」は、捜索・救難ヘリコプターのUH-60Jを除くと、F-35A戦闘機を含めすべてフライング・ブーム方式の受油装置を装備しています。一方、2018年12月に導入が決定したF-35Bの受油装置はプローブ・アンド・ドローグ方式です。航空自衛隊は、左右の外翼下面にプローブ・アンド・ドローグ方式の空中給油ポッドを各1個ずつ装備できるKC-130H空中給油・輸送機を2機保有していますが、KC-46Aの導入により、KC-130Hは本来の任務であるUH-60Jへの空中給油や輸送に専念することができます。

「戦闘」と「災害支援」に向けて

 筆者(軍事ジャーナリスト:竹内修)は2019年3月にアメリカで、ボーイングのKC-46A担当副社長兼副プログラム・マネージャーであるジェイミー・バーガス氏からKC-46Aについての説明を受けましたが、その席でバーガス氏が、KC-46Aは単なる空中給油・輸送機ではなく、「戦闘空中給油・輸送機」であることを強調していた点が印象に残っています。

 KC-46Aの操縦席と胴体下部の燃料タンクは防弾化されており、またその燃料タンクの収容スペースは、万が一被弾した場合でも誘爆しないよう、不活性ガスで満たされています。

 加えてレーダー警戒装置や、赤外線誘導ミサイルの誘導を妨害する装置を備えているほか、生物/化学兵器が使用された環境下や、核爆発によって電磁パルスが発生した環境下でも任務が継続できます。さらにAPU(補助動力装置)を使用すれば、搭乗員が機内に搭乗してから約10分間で発進する能力も備えています。

 筆者がバーガス氏から受けた説明で、もうひとつ印象に残ったのが、KC-46Aが地上で駐機している状態でも、ほかの航空機に給油する能力を備えている点です。2011年3月11日に発生した「東日本大震災」では、捜索救難にあたる航空機の活動拠点となる空港への、円滑な燃料の輸送と給油が大きな課題として残りましたが、駐機状態での給油が可能なKC-46Aは、この課題の解決策のひとつになるのではないかと筆者は思います。

 バーガス氏によればKC-46Aは2019年3月の時点で、F-35Aを含む航空機に3800回、約400万ガロン(約1514万リットル)の空中給油試験を行なっており、将来的にはアメリカの同盟国・友好国が運用する約64種類の航空機への空中給油能力付与が計画されているとのことです。アメリカ空軍への機体の引渡しは2019年1月10日から開始されており、気になる航空自衛隊の初号機の引渡し時期についてバーガス氏は、2021年初頭を目標にしていると述べています。

※誤字を修正しました(8月4日9時45分)。

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