「空のF1」どう魅せた? 「レッドブル・エアレース」17年の歴史が千葉でフィニッシュ

「空のF1」どう魅せた? 「レッドブル・エアレース」17年の歴史が千葉でフィニッシュ

「レッドブル・エアレース」の特徴のひとつ「エア・パイロン」のあいだを通過する室屋選手操縦機。2018年千葉大会にて(画像:Joerg Mitter/Red Bull Content Pool)。

2019年シーズン途中で突然の終了が発表された「レッドブル・エアレース」ですが、ほかにない工夫で、日本における「エアレース」というスポーツの周知と定着に大きく貢献したといえるでしょう。その17年の歴史が千葉で幕引きとなります。

空のレース「わかりやすく、楽しく」進化

「究極の三次元モータースポーツ」とも言われる「レッドブル・エアレース」。2003(平成14)年から始まったこのスポーツイベントが、2019年9月7日と8日の千葉大会で幕を下ろします。歴史的なグランドファイナルとなる「レッドブル・エアレース千葉大会」は、どのようなイベントなのでしょうか。

「レッドブル・エアレース」は、レース専用に開発、改良されたプロペラ飛行機でコース周回タイムを競う、空のスポーツイベントです。日本でも2015年から千葉市の幕張海浜公園で開催され、2017年には日本人の室屋義秀選手が年間世界チャンピオンになっています。

 日本では、民間アクロバット機による航空イベントは少ないですが、欧米では大小さまざまな民間航空ショーが開催されており、アメリカの「リノ・エアレース」のような競技会もあります。そのようななかで、「レッドブル・エアレース」の特別なところは「エア・パイロン」と呼ばれる巨大な三角コーンです。

 飛行機のレースコースは通常、電柱のようなパイロンを立てて作られますが、飛行機が衝突すると墜落してしまうので、あまり接近すると危険です。そこでハンガリーの伝説的アクロバットパイロットのピーター・ベゼネイは「飛行機が衝突すると簡単に破れてしまう風船」でパイロンを作ることを考案しました。

 こうして始まった「レッドブル・エアレース」では、飛行機がパイロンすれすれを飛行し、ときには衝突してパイロンを引き裂くようなスリリングな競技を、安全に楽しむことができます。またほかの選手とのタイム差がわかりやすいようAR技術を駆使するなど、徹底して「観客がわかりやすく、楽しく観戦できること」を目指してきました。

恒例の千葉市消防局に加え東京湾初登場の海上自衛隊機も!

「レッドブル・エアレース」は毎年、世界各地の8都市で開催されてきました。アブダビ(アラブ首長国連邦)やブダペスト(ハンガリー)では、首都の政府機関の、目の前の水上にて。インディアナポリスやフォートワース(いずれもアメリカ)では自動車レース場と、様々な会場で開催されることも魅力のひとつです。千葉大会は、千葉市の幕張海浜公園を丸ごと借り切って行われ、砂浜の至近距離を飛ぶ迫力あるレースを楽しむことができます。

 エアレースのパイロットも個性豊かです。日本の室屋義秀選手は、大学航空部でグライダー競技選手をしたあと渡米、飛行学校で飛行機パイロットを目指すうちにアクロバットの魅力に気付き、2009(平成21)年より「レッドブル・エアレース」に参戦しました。2017年には年間成績でチャンピオンに輝いています。

 一方、イギリスのベン・マーフィー選手は、日本の「ブルーインパルス」に相当するイギリス空軍のアクロバットチーム「レッドアローズ」の元隊長。スペインのファン・ベラルデ選手はイベリア航空の機長をしながら「レッドブル・エアレース」に参戦しています。純粋な競技パイロットから空軍の戦闘機乗りまで、世界の魅力的なパイロットを応援するのも、「レッドブル・エアレース」の醍醐味です。

 また、エアレースの合間に行われるサイドアクトも会場の楽しみのひとつです。レッドブルの様々なパフォーマーのショーのほか、地元の航空機の飛行デモンストレーションが恒例になっています。千葉大会では毎年、千葉市消防局の消防ヘリコプターが救助のデモを行なっています。今年はさらに海上自衛隊から、救難飛行艇「US-2」と、飛行教官によるアクロバットチーム「ホワイトアローズ」の飛行展示が行われます。「US-2」と「ホワイトアローズ」が東京湾で飛行展示を行うのは初めてです。

終了理由は…?

 そのような「レッドブル・エアレース」が、2019年で終了することになってしまいました。メインスポンサーのレッドブルは「ほかのイベントほど関心を引き付けられなかった」と説明していますが、エアレースの人気はレッドブルの様々なイベントのなかでもトップクラスです。おそらくは、費用もトップクラスに莫大で、レットブルの負担が大きかったことが理由ではないかと筆者(大貫 剛:宇宙・科学ライター)は考えます。

 2019年シーズンは4大会で終了することになったため、奇しくも千葉大会が最後のレースになりました。千葉大会は2019年の年間チャンピオンが決まり、しかも世界最後の「レッドブル・エアレース」という歴史的なイベントの「グランドフィナーレ」になります。年間ランキングでは、室屋選手は最終戦直前段階で3位。首位のマルティン・ソンカ選手(チェコ)や2位のマット・ホール選手(オーストラリア)との点差は小さくありませんが、逆転不可能な点差でもありません。室屋選手が最後の表彰台に上がれるか否かも千葉大会の見どころです。

 将来、「レッドブル・エアレース」がスポンサーを変えるなどして復活するかは、現在のところ全くわかりません。17年間で完成された素晴らしい競技と、世界最高のアクロバットパイロットたち14人の雄姿を見る最後の機会は、もうまもなくです。

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