大型バスの車体変えずに席1列増、どう実現? 限界打破した「13列64人乗り」登場

大型バスの車体変えずに席1列増、どう実現? 限界打破した「13列64人乗り」登場

しずてつジャストラインが導入した64人乗り大型バスの内装(画像:しずてつジャストライン)。

一般的な大型バスの車体で64人乗りという高速バスが、日本で初めて登場しました。これまで最大とされていた座席12列配置の60人乗りから、車体を変えることなく1列ぶん増設、それでいて1席あたりの居住空間は、むしろ広くなっています。

従来は60人乗りが限界、どうやって増やした?

 しずてつジャストライン(静岡市)が2019年9月下旬から、静岡県内の高速バス路線「特急静岡相良線」「静岡空港線」にて、客席が64ある大型バスを導入しています。一般的な大型バスの車体で64人乗りというのは、貸切バスを含めても全国で初めてのものだそうです。

「この2路線はご利用が多く、お客様が乗り切れないこともありましたが、運転手の不足から増便が難しい状況です。そこで、1便あたりの輸送力を大きくするため、従来の大型バスで最大乗車定員を増やすことができないかと三菱ふそうさんに相談し、共同で開発しました」(しずてつジャストライン)

 しずてつジャストラインによると、従来の大型バスでは正座席12列49席(4席×11列+最後部5席)、補助席11席の60人乗りが最大でしたが、今回のバスは正座席を1列増やして13列配置とし、正座席53席、補助席11席の64人乗りにしたそうです。それでいて、充電用USBポートを各座席に設置し、車内Wi-Fiも備えるなど、「ホスピタリティの質は落としていない」といいます。

 三菱ふそうの担当者も、これまでのシートでは「60人乗りがどうしても限界」だといいます。今回は、シートを薄型かつ軽量にしたことで、1列ぶんの増設を実現したそうです。

 一般的な大型バスのシートよりも背面や座面の厚みを小さくすることで、1席あたり10kgほど軽くなっているとのこと。一方で、座席のひざ下スペースは269mmから287mmに、1席あたりの居住空間全体では約0.52平方メートルから0.54平方メートルになり、座席間の余裕はむしろ従来より広がっているといいます。

乗り心地は「割り切り」? 2階建てバスの代替になるか

 では、気になるのは座り心地ですが、今回のシート開発はある意味、割り切った考えで行っているといいます。

「今回のシートおよび車両は、オールラウンドに使うものではなく『送迎用』として作ったため、シートも薄く、リクライニングもしない仕様となっています。一般的な成人男性に1、2時間は座ってもらえる、といったところです」(三菱ふそう)

 三菱ふそうによると、今回のシートは20年ほど前のバスで実際に採用されていたものを改良したといい、既存のシートからのマイナス思考で開発したものではないといいます。しずてつジャストラインの様々な体型の社員に座ってもらい、「これならば」とOKをもらったものだそうです。

 課題となったのはむしろ、定員増による車両全体の重さだといいます。フル乗車した際の重さが法令で認可されるギリギリのラインで、かつ今回は座席ごとにUSBポートをすることで重量が増えるため、12列目の座席には補助席を設置しなかったそうです。ただ、実際に出来上がってみると、もう1席ぶんの余裕があることも判明。このため65人乗りの実用化も視野に入れているといいます。

 単純に定員を増やすのであれば、2階建てバスを導入することも考えられますが、しずてつジャストライン、三菱ふそうとも、それは現実的ではないと口を揃えます。2階建てバスは車両コストが高くなるほか、運行できるルートが限定されるためです。

「今回の車両は、長距離の高速バスや観光バスとして使用するのは正直言って難しく、2階建てバスの代替にはならないでしょう。しかし、大学の送迎バスなどに使いたいというお声をすでにいただいているほか、高速バスでも1、2時間の比較的短距離な路線では需要が大きいと見込んでいます」(三菱ふそう)

 しずてつジャストラインは、2019年10月下旬にもこの車両を6台まで増備し、おもに片道1時間強の路線で運用していくといいます。6台を現行車両と置き換えることにより、合計の乗車定員で74人増、プラス24%の輸送力向上になるそうです。

※誤字を修正しました(10月3日17時00分)。

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