「鉄道旅行の撮影術」発想と工夫、思い出がよみがえる撮り方 鉄道写真の形はいろいろ

「鉄道旅行の撮影術」発想と工夫、思い出がよみがえる撮り方 鉄道写真の形はいろいろ

写真1。鉄道車両を大きく写した(村上悠太撮影)。

鉄道旅行中、気軽に楽しめるスナップ写真の撮影。発想と工夫次第で、より臨場感があって、見た瞬間に思い出がよみがえるような写真を撮ることも可能です。鉄道写真家の村上悠太カメラマンが、そのポイントを語ります。

魅力的な被写体はあらゆる場面に

 最近はスマートフォンのカメラの性能が飛躍的に向上し、誰でも気軽に写真や動画を楽しめるようになってきました。以前は動いているものや暗い条件では使うのが難しかったスマホのカメラも、いまでは高精細な画像が得られ、鉄道を撮影できるシーンが増えてきました。一方で、ミラーレスなど一眼タイプのカメラで写真を楽しむ人も多く、むしろスマホから写真の楽しみを体感し、カメラを購入する人も少なくありません。

「鉄道写真」というと写真1のように鉄道車両を大きく写し、車両のデザインや特徴をはっきりと写す写真が一般的なイメージかもしれません。このような撮影を楽しみたい人もいると思いますが、一方で「鉄道旅行のあいだに少し撮る程度」という楽しみ方をしている人も多いと思います。

 実は僕(村上悠太:鉄道写真家)自身、鉄道旅が大好きで、業務上、クルマでロケに出たとしても仕事が終わればクルマをとめて列車の旅をよく楽しんでいますし、ただ単純にカメラ片手に淡々と列車に乗り続けることも度々あります。そして、その旅のなかで撮影した旅スナップがとても気に入っています。

 写真2は先日、宮崎に行ってきた際に撮影した一枚。博多から別府を経由して特急「にちりん」で宮崎まで南下しました。JR九州の駅名板は都市圏では更新されたものが使用されていますが、それ以外の地域では昔ながらのスタイルの駅名板を見かけます。それを車内から撮影してみました。シャープに写し止めるのではなく、「シャッタースピード」を若干遅く設定し文字が分かる程度にブラして、「動いている列車から撮影した」感じを表現しています。

「気になったら、とにかく撮る」

 写真3は富山地方鉄道の路面電車の最後尾から見た光景です。行き交う路面電車を奥に配置し、手前にマスコンハンドルを大きくボカして入れ込みました。

 続いて、写真4はもうすぐ見ごろを迎える京都、叡山電鉄の秋の風景です。貴船口駅(京都市左京区)から徒歩2〜3分の場所から撮影しています。列車には光が当たっていないものの、手前の紅葉がスポットライトのように太陽を浴びて、その陰影がとても美しかったのでそこを強調して撮影しました。

 この3枚はどれも三脚も使わず、首から下げたカメラでパシャパシャと撮った写真たちです。ついでにいうと写真2〜3は「移動の途中で撮影した」カットです。

 このように、魅力的な被写体は目的地に到着もしくは目的地から帰るシーンにも多く存在していますし、こうした臨場感のある写真はあとで見返すとその時の思い出がすぐに蘇る気がしています。

 写真4は本来ならもう少し早い時間帯に撮影できれば良かったのですが、この日はあいにくの曇り空で、日が差したのが列車には日の当たらないこの時間からでした。しかし、それが功を奏した結果になりました。いずれにしても「気になったら、とにかく撮る」というのが、シャッターを切るきっかけです。

その「路線らしさ」に着目して撮影する

 もう少し写真を紹介していきましょう。関東を走る鉄道のなかでも特に人気の高い江ノ島電鉄。「江ノ電」の愛称で多くの観光客に親しまれています。

 写真5は腰越付近(神奈川県鎌倉市)を走る江ノ電の光景です。鉄道写真というと、なるべく車両以外のものをうまく処理してクリアに見せるのがセオリーですが、この江ノ電のように街中を走るような鉄道路線では、その「路線らしさ」に着目して撮影してみるのもおすすめです。この写真を撮影したのは夕方。地元の皆さんが買い物に出かけたり、帰路についたりと街並みに人が出てくる時間帯です。その街のなかに江ノ電がいる、そんなテーマを僕は描いていたので、画面の中にクルマが大きく写り込むのは大歓迎。ただ、車両がなるべく見えやすく、見る人に「江ノ電を撮影している」と伝わる構図とピント位置には気を配っています。

 また、江ノ電というと海に続く踏切で大人気の鎌倉高校前がとても有名です。最近では国内外からの観光客が多く集い、にぎわっています。撮影する際は場所全体が分かるような構図も良いのですが、思い切ってこの場所の魅力である「海と踏切」に割り切ったのが写真6です。ただアップにするのではなく、海にヨットが浮かぶ様子を入れ込んだことで画面のアクセントになりました。

車窓を撮る

 車窓も大好きな被写体のひとつです。写真7はJR函館本線の内浦湾の車窓です。乗っていたのは冷房のないキハ40系ディーゼルカーで、暑い夏季だったので窓を開けて涼を取っていました。北海道のキハ40系も老朽化から置き換えが検討されており、「いつこんな旅ができなくなるか分からない」と思い、撮影した一枚です。線路から海までは少しスペースがあったのでカメラの位置を下げて、海と空、窓枠だけが写るようにしています。

 ここまで紹介してきた写真はすべて一眼タイプのカメラで撮影したものです。最近のスマートフォンのカメラやそれに付随する画像処理機能は非常に高性能で、鉄道をきれいに撮影することも可能になってきました。そのため「なんでカメラにこだわるの」と質問を受けることもあります。その答えは「きれいに撮影できて様々な表現を使って撮影意図を写真に反映できるから」です。

 ここで紹介した写真のように、望遠レンズによる撮影やボケ味、光の陰影の表現、ブレ量の調整などを考えると、スマホより大きなセンサーやレンズを搭載しているカメラで撮影する方が圧倒的に簡単で美しく残すことができます。だから僕はカメラでの撮影にこだわっています。また、レンズ交換を行えば多彩な撮影に対応することもできます。現行の機種はどれもWi-Fiなどで撮影した画像をすぐにスマホに転送することもでき、本格的に撮影した画像をすぐにSNSで発表することも可能です。

 発想と撮影時の工夫で、より美しい旅スナップにみなさんもチャレンジしてみませんか。

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