2020年 五輪輸送が「鉄道の未来」占う試金石になる? 時差通勤 深夜輸送 どうなるのか

2020年 五輪輸送が「鉄道の未来」占う試金石になる? 時差通勤 深夜輸送 どうなるのか

東京都心部を走るJR山手線と京浜東北線(画像:写真AC)

今年は東京で2回目のオリンピックが開催されます。多くの人が鉄道を利用するであろう大会期間中、終夜運転など通常とは異なる輸送が行われます。しばらく人口増加が見込まれる東京圏。大会輸送のあり方が今後のカギを握ります。

オリンピック・パラリンピックでは終わらない鉄道輸送の課題

 ついに2020年、東京オリンピック・パラリンピックの年がやってきました。今年の鉄道を展望するうえで一番の関心事は、やはり大会輸送が成功裏に終わるかどうかではないでしょうか。

 とはいえ、オリンピックは7月24日(金)から8月9日(日)まで、パラリンピックは8月25日(火)から9月6日(日)まで、合計1か月の一過性のイベントに過ぎません。オリンピック・パラリンピックが2020年のすべてであるかのような表現は、こと鉄道においては大げさすぎるのではないかという指摘はごもっともです。

 それでもあえて、大会輸送を無事に終えられるかどうかが、日本の鉄道の未来を占う試金石になると言いたいのは、大会輸送で直面する課題こそが、日本の鉄道がこれから解決しなければならない問題にほかならないからです。

 オリンピック・パラリンピック期間中、合計1000万人と想定される観客のなかでカギを握るのが、訪日外国人旅行客です。2019年の外国人旅行客は2018年に引き続き3000万人を超える見込みですが、政府は2020年に4000万人、2030年に6000万人まで目標を引き上げ、観光立国を目指したいとしています。過密化する都市鉄道にとっては外国人旅行客をスムーズに受け入れられるかが、地方ローカル線にとっては外国人旅行客を起爆剤にできるかが、これまで以上に大きな課題となるでしょう。

 すでに一部では案内サインの多言語対応に加え、駅係員、乗務員の語学教育や、肉声による電車内の英語放送などが開始されています。しかし、これらの取り組みがオリンピックという一過性のイベントの対応で終わってしまうのか、大会の遺産(レガシー)として継続できるのかが問われます。

既存の交通インフラで対応、カギは「時差通勤」や「終夜運転」

 ピーク時間帯の混雑緩和への取り組みも大きな課題です。前回の1964年大会ではオリンピック開催に向けて、東海道新幹線や東京モノレール、地下鉄の整備が急がれました。今回の大会は、交通インフラを新規に整備せずに、通常の輸送と大会輸送を行います。

 ちなみに交通対策を行わなかった場合、普段と比べて道路渋滞は倍、鉄道混雑は1割増加すると試算されています。大会組織委員会は安全で円滑な大会輸送と都市活動を両立させるため、一般の交通需要を一定程度抑制する必要があるとの見解を示しています。

 たとえば首都高速道路は、大会期間中の通行料を1000円値上げし、必要に応じて出入口を封鎖するなど、積極的な交通需要抑制策を実施する計画です。鉄道についても東京都は、大会期間中の混雑を緩和するために「時差通勤」や「テレワーク」など働き方改革の推進を呼びかけ、都庁や協力企業とともに実施計画を定めています。こうした取り組みが定着すれば、オリンピック後も、朝ラッシュ時間帯のピーク緩和に活かせると考えられています。

 大会期間中、通常とは異なる対応が求められるのが深夜輸送です。オリンピックでは開会式や閉会式、サッカー、バスケットボール、ハンドボール、ホッケーなど人気競技の一部試合が、テレビ放映の都合上23時過ぎに終了するため、通常のダイヤでは観客を輸送することができません。そこで7月24日から8月9日までのオリンピック期間中は、JR山手線、東京メトロ、都営地下鉄の各線はおおむね午前2時過ぎまで、その他のJRや私鉄は午前1時から2時ごろまで終電を延長して運行することが決まっています。

2020年が2030年代の鉄道を占う

 近年、ナイトタイムエコノミー(夜間の観光需要)の活性化策として、地下鉄の終夜運転や終電延長が注目を集めており、従来から24時間運行を行っているニューヨークに加え、2016年からロンドンで週末限定の終夜運転が始まりました。日本でもオリンピックを機に終夜運転の実施を求める声がありましたが、要員確保や保守作業のスケジュールの観点から日常的に実施するには課題が多いため、期間限定の取り組みとして終わることになりそうです。

 いずれにせよ人口減少と高齢化が加速する日本において、2020年代に鉄道が大きな転機を迎えることは間違いありません。地方ローカル線の維持はより困難になる一方、大都市圏、特に東京への一極集中は一層強まると考えられています。東京圏の各鉄道事業者は、2030年代半ばごろに訪れると見られる人口のピークまでに、どの程度の設備投資が必要になるか、難しいかじ取りを迫られることでしょう。

 2013(平成25)年の招致決定以降、「当面の目標」とされてきたオリンピックが終われば、2030年に向けた本格的な準備や検討が進みます。2020年は、2030年代の鉄道のあり方を占う重要な一年にもなりそうです。

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