ベンツ「ウニモグ」なぜそう多機能なの?WW2敗戦国ドイツゆえのクルマ 装甲車に草刈り

メルセデス・ベンツ特殊車両を販売 高機動型・多目的作業型「ウニモグ」開発の背景

記事まとめ

  • 防衛総合イベント「DSEI JAPAN 2019」が2019年11月、幕張メッセで開催された
  • メルセデス・ベンツを持つドイツのダイムラー製の「ウニモグ」という特殊車両も出展
  • 「ウニモグ」を開発した背景には第2次世界大戦で敗戦国となったドイツの国情がある

ベンツ「ウニモグ」なぜそう多機能なの?WW2敗戦国ドイツゆえのクルマ 装甲車に草刈り

ベンツ「ウニモグ」なぜそう多機能なの?WW2敗戦国ドイツゆえのクルマ 装甲車に草刈り

「DSEI JAPAN 2019」で展示された高機動型「ウニモグ」(竹内 修撮影)。

高級乗用車の代名詞ともいえるメルセデス・ベンツが、そのイメージとかけ離れたゴツくパワフルな特殊車両を販売しています。その用途は軍用からトンネルの壁掃除まで実に様々で、どこかで1度くらいは目にしているかもしれません。

多目的すぎてもはやビックリドッキリメカ

 横浜市に本社を置くワイ・エンジニアリングは、2019年11月18日から20日まで幕張メッセ(千葉県)で開催された防衛総合イベント「DSEI JAPAN 2019」に、同社が輸入と販売を手がけている「ウニモグ」を出展しました。ドイツダイムラー製で、一見トラックのような、トレーラーヘッドのような特殊車両です。

 今回「DSEI JAPAN 2019」で展示された「ウニモグ」は、オフロード(舗装されていない道路)の走行能力を追求した「高機動型」と呼ばれるモデルで、左右どちらかのタイヤが接地していれば走行できる能力や、運転席からのスイッチ操作により、タイヤの空気圧を調節する機能も備えています。高機動型の「ウニモグ」はこれらの機能を駆使することで、最大傾斜角45度の坂を登ったり、左右どちらかに最大38度まで傾いた状態でも走行できたりするほか、最大1.2mの深さの河川などを走行して渡る能力も備えています。

「ウニモグ」には高機動型のほか「多目的作業型」と呼ばれるモデルも存在しています。多目的作業型は最大で同時に4つのアタッチメントが装着可能となっており、草刈りや除雪、道路への凍結防止剤の散布など、様々な仕事をこなすことができます。

 こうなると高機動型、多目的作業型とも、「ウニモグ」はもはやトラックと言うよりビックリドッキリメカ的な車両と言えます。メーカーのダイムラーも「ウニモグ」を、トラックではなく「多目的作業車」と位置づけており、「ウニモグ」という名称も、ドイツ語で多目的動力装置を意味する「Universal-Motor-Ger●t(●はaに¨)」から付けられています。

メルセデス・ベンツのブランドを掲げる由来は?

「ウニモグ」のメーカーであるダイムラーは、メルセデス・ベンツのブランドで高級乗用車の開発と製造も手がけています。メルセデス・ベンツという押しも押されもせぬ世界的なブランドを持つダイムラーが「ウニモグ」のような特殊車両を開発した背景には、日本と同様、第2次世界大戦で敗戦国となったドイツの国情があります。

「ウニモグ」の開発が開始されたのは、第2次世界大戦が終結して間もない1945(昭和20)年秋のことですが、当時ドイツを占領していたアメリカをはじめとする連合国は、ドイツが再び軍事大国となることを恐れて、ドイツの重工業を徹底的に破壊し農業国として再生させようとしており、自動車の新規開発と生産に対しても厳しい制限を設けていました。

 そうしたなか、ダイムラーの前身であるダイムラー・ベンツは、農業用のトラクターという大義名分で、連合軍から「ウニモグ」の開発と製造の許可を得ることに成功します。しかし、高いオフロードの走行能力と、様々な仕事に対応できる能力が無ければ、農業用トラクターという大義名分が崩れてしまうため、「ウニモグ」は一般的なトラックとはかけ離れた車両になったというわけです。

 高いオフロード走行性能と多用途性能を兼ね備えた「ウニモグ」は軍用車両としても適しており、西ドイツ軍(当時)を皮切りに多くの国の軍や治安維持組織などに採用され、日本でも航空自衛隊が「山林多目的車」という名称で導入しています。

 またドイツのクラウス・マッファイ・ヴェクマンが開発した「ディンゴ」など、「ウニモグ」のシャシーに装甲化された車体を組み合わせた装甲車も、多数開発されています。

実は日本国内でもあちこちで活用されている「ウニモグ」

「ウニモグ」は日本でも多数の車体が導入されており、高速道路会社がトンネルの壁面清掃や照明器具の保守に、また日本中央競馬会(JRA)が競馬場の馬場の保守作業にと、様々な用途でこれを使用しています。

 鉄道の線路(軌道)の上を走行するための装置を「ウニモグ」に装着すれば、線路上と道路を自由に行き来し走行できる「軌陸車」として使用することができます。軌陸車としての「ウニモグ」は東北、北陸、九州、北海道の各新幹線が建設された際に輸送用車両として大活躍したほか、レールの検査や電線の保守、線路脇の草刈り、除雪作業などにも使用されています。

 神奈川県警や関西電力などは、災害発生時の人命救助やインフラの復旧用に「ウニモグ」を導入しています。高いオフロード走行性能を持つ「ウニモグ」は、災害により舗装道路が使用できず、一般のトラックなどが走行できない環境でも運用できます。

 2011(平成23)年3月に発生した東日本大震災でも、大阪府の緊急消防援助隊などの「ウニモグ」が救助、復旧活動に投入されたほか、ダイムラーが公益、福祉事業などを手掛ける公益財団法人 日本財団に寄贈した4台の「ウニモグ」も、道路が寸断された被災地の復興活動で活躍しています。

 また2015年9月に発生した関東・東北豪雨では、現場で走行可能な車両が「ウニモグ」のみだったことから、人命救助活動の主力として活躍し、約50名の被災者を救助しました。

 前にも述べたように、「ウニモグ」は特殊車両でありながら、高速道路や競馬場などで目にすることができます。第2次世界大戦の敗戦によって工業生産基盤を破壊されたドイツが、苦肉の策として生んだ「ウニモグ」が、同じ第2次世界大戦の敗戦国である日本のインフラの維持や大規模災害の救助、復旧で大活躍しているという歴史を踏まえて見ると、いままで単なるトラックに見えていた「ウニモグ」が、ちょっと違った形で見えてくる……かもしれません。

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