「レインボーギャング」と呼ばれる空母甲板作業員 なぜ? 中国もまねた合理的スタイル

「レインボーギャング」と呼ばれる空母甲板作業員 なぜ? 中国もまねた合理的スタイル

アメリカ海軍の空母甲板で、前方を指して射出の合図を出すカタパルトオフィサー(右)と、カタパルトステーションに座って操作盤を操るデッキエッジオペレーター(左)(画像:アメリカ海軍)。

多数の艦載機が行き交う空母の上で、効率よく航空機をさばく無数の甲板作業員。彼らは色とりどりの出で立ちですが、なぜそんなに複数の色がひしめきあっているのでしょう。あえて目立つ格好をするのには意味がありました。

空母は狭くて危険がいっぱい

 航空母艦、いわゆる空母の飛行甲板は、数百人もの派手な色合いの衣服に身をつつんだ「レインボーギャング」が仕切っています。といっても、彼らは甲板の上を占拠している不届き者ではありません。むしろ彼らがいないと効率的な艦載機の運用は難しくなります。

 そもそも空母は、固定翼機の運用が可能とはいえ、陸上の航空基地と比べると非常に小さく、航空機の取り回しには制限が付きまといます。そこで甲板作業員は手際よく動くことが求められます。

 ただし、彼らが作業を行う飛行甲板は、航空機が行き交い、小さなミスが負傷や死亡事故につながる危険な場所です。そこで航空機や離れた場所からでも視認することができるよう、事故防止の観点から彼らはそのような目立つ格好をしているのです。

 しかし、事故防止のためだけにそのような格好をしているわけではありません。もうひとつの理由は、ひと目で乗員の役割を判別するためです。

 空母の飛行甲板では常時200人から500人もの甲板作業員が同時進行で作業を行っています。そのため甲板で何のチームがどのような作業を実施しているのかを、周囲のみならず遠く離れた艦橋や航空管制所からでも判別できた方が、作業を効率よく進められます。このように様々な意味合いから、甲板作業員はあえてそのような格好をしています。

 また海事用語では、「ギャング」というのは荷役作業員のグループや港湾労働者たちを指す言葉です。そこから転じて、各種艦載機をさばく作業員の一団として、色とりどりの格好と合わさり「レインボーギャング」と呼ばれるようになったようです。

中国も真似し始めたカラーごとの役割分担

「レインボーギャング」と呼ばれる甲板作業員は、原則として紫、青、緑、黄、赤、茶、白の7色で区分けされます。紫は燃料関係、青は車両やエレベーターの操作員および伝令関係、緑はカタパルトや着艦ワイヤー、航空機整備の関係者、黄は航空機の移動や離着艦関係、赤は武器関係、茶は航空機の機付長(機体ごとの整備責任者)、白は安全管理や医療関係とされています。

 そしてこの大きな7種類の中で、さらにシャツ(ジャージ)やライフベスト、専用ヘルメットの3つで色の組み合わせを変え、加えてベストの背面やヘルメットに数字や文字を追記することで、100以上の職域(役割)に細分化しています。

 このカラーリングによるオペレーションの明確化、効率化は第2次世界大戦後のアメリカ海軍で始まりました。その後、この色分けはイギリス海軍やフランス海軍の空母運用でも導入されましたが、両国の空母は甲板作業員がそれほど多くないため、アメリカ海軍ほどの細分化は行われていません。

 ただし、近年急速に空母の運用を拡充している中華人民共和国(中国)海軍については、将来を見据えてなのか、アメリカ海軍と同じようにベストとシャツで異なる色を組み合わせる形を採用し、役割の明確化、細分化を図っています。

 なお、アメリカ海軍を始めとして、各国海軍の甲板作業員は腕まくりは厳禁です。なぜなら、エンジン排熱や油などでやけどを負ってしまわないようにするためで、同様に眼球を保護するためにゴーグルは必須とされています。

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