【連載/ウワサの映画 Vol.5】「出ていけーっ!」。世界の”今”を表す、激烈なひと言に身震い…

【連載/ウワサの映画 Vol.5】「出ていけーっ!」。世界の”今”を表す、激烈なひと言に身震い…

クリスの彼女・ローズの実家に向かう道中、野生のシカをはねるアクシデントが発生。これも悲劇の前触れなのでしょうか…?

低予算ながら爆発的ヒットを飛ばし、映画レビューサイト・Rotten Tomatoesでは99%FRESH(FRESH=新鮮、良い評価を示します)の高評価を得るなど、全米のみならず世界中の話題をさらったホラー作品「ゲット・アウト」。絶大な人気を誇るお笑いコンビ、キー&ピールのジョーダン・ピールが、排他的ムードが蔓延する世相に辛辣に切り込み、華々しい映画監督デビューを飾りました。黒人と白人のハーフという視点から、日頃のネタでもガンガンに人種差別を扱うピール監督。彼がぶっ放した”恐怖×ユーモア×風刺”の大胆な融合に圧倒されます!

居心地の悪さとジワジワくる怖さが持続し、クライマックスではお祭り騒ぎのサバイバル劇に軽くパニック状態!さらには、恐怖から解放されるはずの上映後…、得体の知れない”冷たいもの”がこみ上げて来るんです、自分の心の奥底から…。

主人公は、NY在住のアフリカ系アメリカ人の写真家・クリス(ダニエル・カルーヤ)。恋人のローズ(アリソン・ウィリアムズ)の実家を初訪問し、週末を過ごすことに。ローズは「両親はレイシストじゃない」と言い張り、彼氏が黒人であることを伝えていない…。不安すぎます。立派なお屋敷で大歓迎を受けたクリスですが、そこでは黒人が雇われており、やたらと黒人を持ち上げる父親と差別的態度丸出しの弟にも、かなりの違和感…。その夜、精神科医でもあるローズの母親に禁煙のための催眠術治療を受けたクリスは、幼い頃に交通事故で母親を失ったトラウマを掘り返されてしまいます。そして翌日、裕福な白人客が集まるパーティが開かれ、唯一の黒人客の写真を撮ろうとクリスが携帯のフラッシュを焚いた瞬間、黒人客は豹変。鼻から血を流し「出ていけーっ」とクリスに襲い掛かってきたー!わけのわからないクリスは、ローズを連れて実家を出ようとしますが…。

何が怖いって…、家政婦のジョージナさんですよ。クセ者ぞろいの登場人物の中でもインパクト大!同じ黒人として連帯感を持ちたいクリスにも冷たく、窓に映る自分を見て恍惚としてるかと思えば、笑いながら泣いて情緒不安定ぶり全開。迫力満点の異様さで、苦笑いを誘ってきます。「恐怖と笑いの源泉は同じ」とピール監督が語っていますが、その真意が分かる気がするんですよね。理解できないものに遭遇すると、怖いし、おもしろい。

現代の人種差別問題を、奴隷制度にまで掘り下げた点も印象的でした。パーティで白人がビンゴゲームに興じるシーンで、客席の前にクリスの写真が飾ってあるんですけどね。こ、これ…、ビンゴの賞品は…、ク・リ・ス!ってことですよ。まさに、奴隷のオークションを彷彿とさせるようなことを、和気あいあいとやっちゃってます。白人が黒人を雇うというストレートな設定から、催眠術のようなメタファーまで描き方が実に巧妙!

「このテーマはピンとこない、自分には関係ない」なんて日本に住む我々は考えがち。でも、それは大きな勘違いですよ!”隠れ差別”という痛いところも突いてきますから。観終わったあとのゾクゾク感の原因はここにあったのです。ローズの両親が象徴する白人エリート層のように、”差別なんて絶対にしないリベラルな私”を装っていても、腹の中では憎悪が渦巻いているかもしれない。隙を見てはクリスを興味津々に凝視する白人たちを映すカメラワークも、そんな心理を的確に捉えます。白人の本性がふいに顔を出す瞬間と、それを察知したクリスの孤独と恐怖に、ひたすら背筋が寒い…。対象は何であれ、意識的に隠している、もしくは自覚すらない潜在的な差別意識への警告がグサリと刺さります。

小難しい風刺はさておき、純粋なホラーとしての完成度も高いです。ビビらせ上手のクリスの親友・ロッドが、抜群の危機察知能力を発揮しながら衝撃の結末まで誘導してくれます。登場人物の一挙手一投足が細かい伏線なので、くれぐれも集中してくださいよ。最初のシーンからですよっ。…それでも伏線が回収しきれず、もう1回観たくなること間違いなし。出費のご覚悟を!【東海ウォーカー】

【映画ライターおおまえ】年間200本以上の映画を鑑賞。ジャンル問わず鑑賞するが、駄作にはクソっ!っとポップコーンを投げつける、という辛口な部分も。そんなライターが、良いも悪いも、最新映画をレビューします! 最近のお気に入りは、「ノクターナル・アニマルズ」(11月3日公開)の、やっぱり狂気が似合うジェイク・グレンホール。

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