週末クルマライター栗原が行く!50年ぶりの「富士24時間レース」は新しい日本のモータースポーツの夜明け

週末クルマライター栗原が行く!50年ぶりの「富士24時間レース」は新しい日本のモータースポーツの夜明け

朝を迎えた富士スピードウェイ

平日はデスクワーク、休日はサーキットでカメラを振り回す栗原です。先週末は富士スピードウェイで開催された24時間耐久レース「ピレリスーパー耐久シリーズ2018 第3戦 富士SUPER TEC 24時間レース」にお邪魔してきました。

ル・マン24時間レース、ニュルブルクリンク24時間レースに代表される長時間レース。海外では数多く開催されていますが、日本では2008年の「第15回 十勝24時間レース」以来10年ぶりとなるレースになります。

しかも富士スピードウェイでは過去2回、24時間レースが行われていたのですが、それはなんと50年前!半世紀ぶりの24時間レースになります。

実現までには、設備だけでなく自治体や近隣住民の方々、チームとの調整があったことは想像に難しくなく、それらを乗り越えての開催となりました。

■ レーシングカーから街乗りコンパクトまでバラエティ豊か

スーパー耐久シリーズは、市販レーシングカーである「FIA-GT3」から、街中でも見かけるコンパクトカーを若干改造した「ST-5」クラスまで参加車両はバラエティ豊か。

国内で最も人気の高いSUPER GTも2クラスが混走しますが、それ以上にスピード差が異なるマシンが走るのですから、追い抜きに失敗してクラッシュするなど、様々なドラマが起こりやすいのが、このシリーズのひとつの魅力です。また「普段街で見かける車両」が走りますから、見ているとどこか親近感が湧いてきます。

■ 復活開催を天が祝福? 好天に恵まれる

レースウィークは開催を祝してか、時折青空が見える好天で、雨の心配はまったくなし。さらに昼間はちょっと汗ばむ気温ながらも、時折気持ちのよい風が吹き、絶好のレース観戦日和となりました。

金曜日の予選の結果により、スタート前に50台のマシンが並ぶメインストレートは圧巻の一言! マシンの隣にはレースクイーンが立ち並び、グリッドに華を添えます。

SUPER GTやSUPER FORMULAといった国内の最上位カテゴリと異なるのは、どこか和やかな雰囲気。もちろん戦いの場ではあるのですが、ドライバーも監督も笑顔で、これから始まる24時間を楽しもう、という空気が漂っていました。この雰囲気もスーパー耐久シリーズの魅力です。気軽に選手や監督に声をかけることができます。

ポールポジションは「ENDLESS GT-R」。その隣を「Y’s distraction GTNET GT-R」と、NISSAN GT-R勢が上位を独占。

後列には、耐久の王者であるPORSCHE、AUDIといったドイツ勢が虎視眈々と上位を伺います。注目の国際ツーリングカー規格「TCR」クラスは、参戦2戦目の「L&JR Mars Audi RS3」がトップ。2番手に開幕2連勝でウェイトハンディキャップ50kgの「Modulo CIVIC TCR」が並ぶ展開。

86/BRZが参戦し最もエントリーの多いST-4クラスは、昨年来7連勝中の「TOM’S SPIRIT 86」が開幕戦以来からの首位を譲らず。

■ 淡々とした幕開け。SUBARUにアウディミサイル直撃!

15時に戦いの火蓋が切られ、最初に1コーナーに飛び込んだのは「ENDLESS GT-R」。長丁場のレースだからでしょうか、淡々としたスタートでした。

2〜3周すると、トップはST-5クラスを捕まえて混走開始。スーパー耐久らしい光景が始まりました。

その中、15周目の1コーナーでST-Xクラスに参戦する「Phoenix Racing Asia R8」82号車がST-2クラス開幕2連勝の「DAMD MOTUL ED WRX STI」の右側に追突するというアクシデントが発生。

82号車は2コーナーの先に車を止め、このレースのリタイア第一号に。

当てられた「DAMD MOTUL ED WRX STI」はピットに戻ると、メカニックは移動用に用意していた市販のWRX STIのドアを外して移植するという荒療治を施し、僅か数十分でレースに復帰します。市販車ベースの車だからこそできる業ですね。

このようなことは他のチームでも行われ、ピット裏には、パーツが取り外された市販車を何台も見かけました。ちなみに取り外されたドアですが、レース後に元の車に戻されていました。傷だらけになっていましたけれど……

レースが動き始めたのは夕方から。このレースでは開始から20時間までの間に8分間以上の「メンテナンスタイム」を2回行うことが義務付けられているのですが、何度か入るセーフティカー中に、このメンテナンスタイムを有効利用したY’s distraction GTNET GT-Rがトップに躍り出ます。

■ 24時間レースの魅力「夜の闇」がコースにやってくる

完全に日が暮れると、暗闇の中に、ヘッドライトとテールランプが光る幻想的な景色に。

特に1コーナーやダンロップコーナーなど、ハードブレーキングする場所では、ブレーキローターが赤熱した様子が見え、多くのカメラマン達がその姿を写真におさめていました。

そのダンロップコーナーのコースサイドにはバーベキュー場なども用意され、食事を楽しみながらレース観戦ができました。

さらに夜8時30分ごろには花火が打ち上がるなど、レースだけではない楽しみが数多く用意されていました。まるでキャンプ場に来た気分です。

コースサイドのあちこちにテントが並び、まさにキャンプ気分でレースを観戦する姿を多く目にしました。この24時間レースに限らず、富士スピードウェイで開催イベントのいくつかで、このような姿をみかけるようになりました。

お楽しみは、コースサイドだけでなく、メインスタンド裏にも多くあり、パーツメーカーによる出展のほか、富士スピードウェイ近くの陸上自衛隊富士学校が「16式機動戦闘車」を始めとする装備を展示。中には乗車できるものもあり、注目を集めていました。

ピットでもチームによっては食事を作る姿を散見しました。中にはたこ焼き機を持ち込み、タコパをするところも。レースで戦っているというより、仲間と過ごす時間を楽しんでいるように見え、とても微笑ましかったです。

ですが、コースに目を向けると、夜の闇がマシンに襲いかかります。長時間走行によるトラブルが出てしまい、コースサイドに停めてしまうマシン。

中でも大きなアクシデントは深夜2時にTCRクラスで上位を走行していたAdenauのフォルクスワーゲン・ゴルフGTI TCRが、ST4クラスで17連続表彰台の「ENDLESS 86」に接触。ゴルフ、86ともに大きな損傷がありリタイアを余儀なくされたほか、赤旗が出てレースが中断。走行マシンは撤去されるまでメインストレート上で停車する事態になりました。その後は、大きなインシデントもなく、レースが進行していきました。

■ 赤富士がマシンを祝福。「Y’s distraction GTNET GT-R」が独走状態に

朝5時ごろになると、朝日が1コーナー方向から上ってきます。反対側にある富士山は、その朝日を浴びて赤色に染まる「赤富士」が拝めました。

コース上では、朝を迎えたあたり、首位争いをしていたENDLESS GT-Rがメンテナンスタイム中にトラブルが発生。この修復に時間がかかり、大きく順位を下げてしまいます。

レースは一時、メンテナンスタイムをなかなか行わなかった83号車の「Phoenix Racing Asia R8」がトップに立ちますが、ピットに入ると「Y’s distraction GTNET GT-R」に首位を明け渡すことに。

「Y’s distraction GTNET GT-R」は快走を続けるいっぽう、ライバルに目され後につけていた「D'station Porsche」が残り1時間半でエンジンストップ。

これで完全に敵がいなくなった「Y’s distraction GTNET GT-R」は、2位に5周という大差をつけ、759周3463.317kmを走りきりトップでチェッカー。10年ぶりとなる日本における24時間レースの総合優勝を獲得しました。

2位は「Phoenix Racing Asia R8」83号車、3位に「J-Fly Racing R8」とアウディ勢が表彰台に上がりました。

ST-TCRクラスは、出場した6台のうち4台がペナルティを受ける展開に。その中、ただ1台ノーペナルティで、かつノートラブルだった75号車「m-1 CARFACTORY RS3 MS」が、デビュー3戦目で初優勝。

スーパー耐久シリーズでのアウディRS3 LMSの優勝は、これが初めて。2位は2連勝中の「Modulo CIVIC TCR」、3位に19号車「BRP☆Audi Mie RS3 LMS」がそれぞれ入賞。

ST4クラスは、「TOM’S SPIRIT 86」がトップを快走するものの、明け方にデフトラブルが発生し順位を大きく落とします。

それ以降、一騎討ちを繰り広げたのが、884号車「林テレンプSHADE RACING 86」と、55号車「Sunoasis田中建設86」。「Sunoasis田中建設86」は逆転に成功するものの、レース残り15分あたりから「ガス欠」になる疑惑が持ち上がります。しかし、その状況下でもスピードを落とさず走りきり「Sunoasis田中建設86」がスーパー耐久シリーズでの初優勝を飾りました。

2位は「林テレンプSHADE RACING 86」、3位に29号車「T'S CONCEPT小倉クラッチ86」。

レースを終えたマシンがピットへ戻ると、それまでライバルだったチームでも、互いに健闘をたたえ握手。そして、完走したマシン達を拍手で出迎えます。

総合優勝の「Y’s distraction GTNET GT-R」のピットには、多くの人が訪れ、健闘と優勝をたたえていました。レースが終わればライバルが同士になる姿を見て感動せずにはいられません。

6月3日(日)の15時に幕を閉じた富士24時間耐久レース。大会は成功裏に終わりました。来年開催されるかどうかは発表されておりませんが、個人的には夜がとても寒かったので、夜中でも過ごしやすい9月の連休に開催してくれたらいいなと思いました。

キャンプやバーベキューをしながら仲間や家族とレースを楽しむ、というレース観戦光景が日本に定着する期待と、日本における新しいモータースポーツ文化の幕開けを感じた24時間レースでした。(東京ウォーカー(全国版)・栗原祥光)

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