「まるちゃんが大好きだ」さくらももこさんと故郷・静岡の“相思相愛のカタチ”

「まるちゃんが大好きだ」さくらももこさんと故郷・静岡の“相思相愛のカタチ”

静岡市清水区役所内に展示された赤い帽子のまるちゃんマンホール

『ちびまる子ちゃん』は、1970年代の静岡県清水市(現在の静岡市清水区)を舞台にした作品だ。そして、作者のさくらももこさんの出身地でもある。

8月15日(水)、さくらさんは乳がんのため亡くなった。清水区にある「ちびまる子ちゃんランド」では、訃報が公表された翌日の8月28日(火)から献花台と記帳台が設けられ、訪れた多くのファンがさくらさんの死を悼んでいる。施設内にはまる子が通う小学校の3年4組の再現した教室があり、黒板にも「さくら先生、ありがとうございました」「『ちびまる子ちゃん』は最高の思い出です」といったメッセージが寄せられている。

ちびまる子ちゃんランドは、1999年にオープンした『ちびまる子ちゃん』の常設展示館。作品の世界観を再現した空間や、貴重な資料やさくらさんの思い出の品などが展示されている。来場者の年代は幅広く、親子三世代で訪れている姿も目立つ。アジア圏を中心に外国人観光客も多い。「さくら先生は作品とその舞台である清水に強い思い入れを持っていた方。本当に清水に貢献いただいたと思います」と話すのは、ちびまる子ちゃんランドがあるエスパルスドリームプラザの坪井充さんだ。

同施設の一角には、絵馬やおみくじのある小さな神社が設けられている。これは神社が好きだったというさくらさんの意向で設置されたものだという。神額には、ちびまる子ちゃんやコジコジのほか、縁起のいいものを集めた描きおろしのイラストが飾られている。神社にあるおみくじも、イラストと内容ともにさくらさんの描き起こし。「“しぶ吉”や“ちょろ吉”など、ユニークなおみくじを作ってくださいました」と坪井さんは振り返る。

「さくら先生はとても気さくな方で、清水みなと祭りや清水七夕まつりも大好きだったとうかがっています。当施設にもたびたびお越しいただき、一般の来場者に混じって観賞されていました。まるちゃんのお絵かきコンテストを開いた際には、子どもたちが描いた絵をじっくりと熱心に見ていた様子をスタッフもお見かけしています」。坪井さんの話すエピソードは、さくらさんが自身の作品と、その舞台であり出身地でもある清水への思い入れが強かったことを物語っている。

さくらさんの地元への愛は、清水だけにとどまらない。2003年に清水市は静岡市と市町村合併し、現在の静岡市の一部となった。静岡市は2007年からさくらさんのオリジナルイラストを用いたシティプロモーションをスタート。静岡市のシティプロモーションを担当する萩原さほりさんが差し出した名刺には、さくらさんによる静岡市の代表的な文化を描いたイラストが添えられ、裏面には同市の魅力をアピールするメッセージが記されている。

「当時、各地でシティプロモーションが注目されるようになっていました。静岡市の魅力を広く発信していくために、さくら先生のお力を借りたいと提案したところ、ご快諾をいただきました。この取り組みを『静岡市はいいねぇ。』キャンペーンと呼んでいますが、『静岡市はいいねぇ。』というコピーそのものもさくら先生の発案です。最初は『静岡市はいいねぇ。』のロゴと自画像のイラストを、シティプロモーション用の名刺や、県外でのプロモーションイベントなどで使用するノベルティグッズに使わせていただきました。その後も、静岡市の名所や名産品とともに、さくら先生の自画像が静岡市を旅しているような市内各所の風景を入れたイラストをご提供いただき、現在では22種類に増えています」と萩原さんは話す。

さくらさんが携わったシティプロモーションの企画は多岐にわたり、アイデアも積極的に提案されたという。2013年に発表されたPRソング「まるちゃんの静岡音頭」は、清水市との合併後、蒲原町・由比町を新たに編入した静岡市に一体感を生み出すため、みんなで楽しく踊れるものがあればというさくらさんの言葉がきっかけで生まれたもの。今回制作されたまるちゃんデザインのマンホールもさくらさんの発案によるものだ。

「静岡市では、これまでに市の花や『徳川家康公顕彰四百年』記念のカラーマンホールを制作しましたが、さくら先生の絵を道路に置いて踏んでしまうようなことはとてもできないと思っていました。ですが、さくら先生の方からそれを承知で、静岡市にまるちゃんのマンホールがあったらきっとかわいいからぜひ作りたいというお話を受け、設置の運びになりました。さらに、さくら先生は自分が提案したからということで、デザインだけでなくマンホール自体を市に寄贈してくださいました」と、萩原さんは制作の経緯を語る。

さくらさんと『ちびまる子ちゃん』に対する市民としての思いを萩原さんはこう話す。「『ちびまる子ちゃん』は世界的な人気を博す作品ですが、静岡市に暮らす人たちは、まるちゃんを身近な存在に感じていると思うんです。作品の中には清水のまちが描かれていますし、そこで暮らすまるちゃんも、まるで自分の思い出の中にいる友達の一人のように思えます。さくらさんに素晴らしい作品やプロモーションを通じて静岡市の魅力を発信していただいたことは地域の誇りです。そして、まるちゃんが大好きだという気持ちもみなさん持っていると思います。これからもそれは変わらないでしょう」

まるちゃんデザインの2枚のマンホールは、9月6日(木)と7日(金)にそれぞれ葵区と清水区に設置される。故郷を愛したさくらさんが残したものは、これからも静岡の街に欠かせない一部として受け継がれていく。(東京ウォーカー(全国版)・国分洋平)

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