連載第5回「大阪インバウンド最前線」急増するインバウンドで大阪はどうなる? 大阪観光局局長 溝畑宏さんに聞く

連載第5回「大阪インバウンド最前線」急増するインバウンドで大阪はどうなる? 大阪観光局局長 溝畑宏さんに聞く

大阪観光局局長 溝畑宏さん

この連載は、大阪で激増するインバウンド(訪日外国人観光客)の最前線を人気施設や旅行・観光に詳しい業界関係者などキーパーソンに話を伺うインタビュー企画。第5回は大阪観光局局長 溝畑宏さんに、?阪のインバウンドの現状や、インバウンドが増えて変わったこと、今後の展望などを聞いた。

■ 大阪のインバウンドの現状は?

――大阪のインバウンドの現状を教えてください?

まず、なんでこんなに観光インバウンドに力を入れているかというと、ひとつは産業・経済政策なんです。観光がもたらす経済効果は裾野が広い。2016年の観光GDPが26兆円で、経済効果は52兆と言われています。経済効果は約2倍ですね。地域全体が活性化し、雇用が増え、税収が増え、このプラスのメカニズムが増えるからこそ力を入れている訳です。我々が目指しているのは、東京一極集中の歪みをなくして、大阪が世界に突き抜けた都市になっていく。そのためには、観光に力を入れることによって、アジアや世界から、人・モノ・金が集まる仕組みを作る。G20を誘致したのも、万博やIR(カジノを一部に入れた統合型リゾート)を誘致しているのも、そのためなんです。

――実際に大阪のインバウンドは伸びていますか?

2011年から2013年にかけて、東京への訪日客の増加率がだいたい2.7倍。全国平均が2.8倍、それに対して大阪は4.2倍に伸びています。極めて驚異的。消費額は、全国平均が2.2倍に対して、大阪は4.42倍。要するに数も増えた分、消費額も増える、好循環が生まれているということですね。韓国、中国、台湾、香港などの東アジア4か国からの訪日客が極めて高い水準で、特に韓国と中国が非常に高い数字で増えています。

――どうして大阪に外国人観光客が増えているのでしょうか?

いろいろありますが、ひとつはグルメです。粉もんだけでなく、カレー、寿司、焼肉、ラーメン、スイーツは和菓子も含めて非常にバリエーションが大きい。次に、大阪から半径1時間以内で行けるエリアに、国宝・重要文化財の約8割が集積していること。また、瀬戸内や金沢などの北陸まで含めて、アクセスが非常にいい。大阪を拠点にいろいろ行ける、関西のハブとしての機能があります。そして、大阪は外国人の受け入れ環境ができあがっている。大阪フリーWi-Fiの拠点数は日本一ですし、案内所も大阪駅となんば駅にあり、大阪駅は23:00までやっています。多言語表示もそう。官・民あげての取り組みの本気度が、大阪は日本の中でもずば抜けているんやないかなと思いますね。一時期、大阪の1人当たりの所得が落ち込んだのですが、そこから大阪の人たちの「観光で飯を食っていかないかん!」「ここからみんなで経済を底上げするんや」というハングリー精神が蘇ってきたなという感じはしますね。

――大阪人にハングリー精神が付いたということですか?

というか、今までは眠っていたハングリー精神が蘇ったんです。関西人って、みんな世界に直接行く、常に目線が海外なんですよ。任天堂もワコールも京セラも全部海外に行くでしょ。このスピリットをもともと大阪の人は持っていたはずなんです。2020年の東京オリンピックが決まりますます東京が活気づくにもかかわらず、大阪の経済が低迷したままでは単なる地方都市になってしまう。この危機感をどう煽るかというのが、大切な課題やと思っていましたが、2010年ぐらいを境に橋下知事が、関西3空港を一体化しよう、IRをやろうと言いはじめた。その時に「大阪はいよいよ本気になったなぁ」と思ったんです。大阪は観光というサービス産業を軸に、モノづくりも合わせて復権していこうというのが、当時の橋下知事の熱い想い。その思いを受けて、私が大阪府の特別顧問をやっている時に、大阪観光局というロンドンなどにも負けない独立組織を作ろうと決めて、やっと今みんなが本気になった。その成果が出てきているんですよ。

■ 大阪を世界の中でも評価されるような国際観光文化都市に

――溝畑局長が思い描く通りになったということですか?

いえいえ。現状では全然満足していません。今、大阪のGDPが約40兆円近くになっていますが、大阪の体力でいけば50兆円を目指さないといけない。あと10兆円を増やそうと思ったら、インバウンドの消費を少なくとも4兆ぐらいに持っていかないといけないんです。そこで、さらに軌道を上げていくためにやっているスローガンが3つあります。1つ目は「24時間観光都市」、2つ目が「関西・西日本のハブ」、3つ目が「多様性ある街」。食、ショッピング、スポーツ、水都というもので世界に通用するブランディングをやっていこうと。世界の中でも評価されるような国際観光文化都市を目指さないといけません。

■ データから見えてくるものとは?

――具体的にはどのようにブランディングをされますか?

「道頓堀」や「黒門市場」はすでに多くの人が訪れていますが、我々の調査では、意外と「箕面の滝」や「住吉大社」などの満足度が高いんです。我々がチェックせんとあかんのは、まだあまり来ていないけど満足度が高いところ。こういうところをもっとデビューさせないといけない。あとは「梅田スカイビル」や「あべのハルカス」。どうも外国人は高いところが好きなんですよ。僕たちもエッフェル塔とかピサの斜塔とか行くじゃないですか。高いところに行って、モノを見るというのは一つのトレンドなんですよね。こういう調査を一生懸命やっているのは、大阪観光局だけなんですよね。

――データから見えてくるものがあるということですね。

一目瞭然です。例えば1回の訪日で食事に使う金額が平均で15,000円。ところが、美容、エステ、サロンには22,000円使っている。こういうところが満足度が高い。京都なんかは、座禅とかも大人気ですし、最近は早朝の拝観とかやってますよ。外国人はもっと体験したいと思っている。でも実際にそういう機会が少ないということは、施設とタイアップしきれていない。そういうところをもっと掘り起こしをしていく必要があると思っているんですね。物づくりもそう。例えば和泉ガラスは北一硝子に負けない技術があるんですけど、地元の人が控えめでね。この和泉ガラスを世界のガラスとして売り出そうと。そういうことがブランディングにつながるんです。

――今後も大阪のインバウンドは伸びますか?

もちろんです。今のこの状況は自然にできたのではなく、行政や民間、みんなが一生懸命協力して「大阪が元気になったらいいな」という空気が醸成されています。ここ4〜5年その熱気が伝わって、商店街の人も「大阪は元気になるで!」「お客さんいらっしゃい!」と連鎖している。その結果、こないだなんて、ウクライナから来た人にいくら買い物したか聞いたら驚くほどの高額でした!こういう人が多くなったら大阪の経済がものすごく活性する。そしてIRができたら富裕層が来るからそれも非現実的ではないんです。今後は、そういう人たちをどう受け入れてくのかも含めて、まだまだ議論する余地があって、まだまだ大阪が活性化する可能性がある。そして、みんなで世界で突き抜ける都市を目指しましょう!

※本企画は、情報誌「関西ウォーカー」2018年8/28発売号の大阪インバウンド特集「YOUは何しに大阪へ?」との連動企画です。(関西ウォーカー・横井哲也)

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