適正価格と安かろう悪かろうの話 フリーランスの体験談が話題

適正価格と安かろう悪かろうの話 フリーランスの体験談が話題

「タイム・イズ・マネー」フリーランスインストラクターの案件応対エピソードがTwitterで反響。

 「Excelの魔法使い」こと、佐藤嘉浩さん(以下、佐藤さん)。フリーランスでインストラクター、テクニカルライター、業務改善などの仕事を請け負っています。

 佐藤さんは仕事の幅広さもあり、様々な相手と取り引きを行っています。その中で体験した、「ある依頼をうけたときの体験談」が、Twitter上で大きな反響をよんでいます。

お客様:こういうのやってほしいんだけど。
ぼく:3万円でやります。
だれか:いやいや3000円でやります。
お客様:3000円でお願いします。
だれか:やってみたけど納期に間に合いません
お客様:では3万円の人お願いします。
ぼく:短納期なので6万円になります。
※「ぼく」が佐藤さん

 こう体験談を綴った佐藤さん。自身が手掛けている、「Excelを用いた便利ツール」についての依頼をうけたときのことでした。

 やり取りの中で、佐藤さんはオファーに対し「まず見積もりが欲しい」と回答。しかし当の依頼主は、「相場が分からない」と返答し、結果佐藤さんは、自身の時給換算も含めた上で「3万円」と応対。

 そんな中で、「3000円で大丈夫ですよ」という同業者の「だれか」が登場します。それを受けて依頼主は「佐藤さんの10分の1のコストで済むので採用」という流れに。なお、ここでちょっとした“エピソード”があったと佐藤さんは語っています。

 「実はこの間、依頼元から連絡がなかったんです。なので私が進捗確認をしたら、『3000円で受ける人がいたのでそちらを採用しました』と返されました。『アンタ、高いよ』という捨て台詞が添えられて、です」

 しかしながら、「安かろう悪かろう」とはまさにこのことばかりに、3000円で請け負った同業者が、「納期に間に合いません」と依頼主へ泣きを入れたそうです。

 そこで、依頼主が佐藤さんへ再度オファーという形になったのが「では3万円の人お願いします」。なお、この時点で2日後には実装しなければいけないというタイミング。ヒエッ……。

 「仮にそれ(3万円)を受けたら徹夜は必至です。当然ながら、その他のスケジュール変更も強いられます。実際に受けたわけではないですし、そもそも受けるメリットも皆無だったのですが、『もし仮に受けるとするなら』を想定して、結果的に最初の見積もりの倍の金額を提示しました」

 Twitter上ではここで終了していますが、佐藤さんは編集部の取材でその後について教えてくれました。

 「『最初の値段の倍はおかしいだろ!』と言われてしまいました。以上になります」

 佐藤さんの投稿には、5万を超えるいいねとともに、様々な業界に属する同業者、もしくはフリーランスらしきTwitterユーザーからの声が続々と寄せられています。その上で佐藤さんは、自身が手掛ける商材の観点からこのように推察されています。

 「『手にできるものではない商品(プログラム・ホームページ・デザイン)』というのは、依頼者側としては『ブラックボックス』的な一面があり、正直なところ価値観が分かっていないのでしょう。しかし受注側としては、自分の生活を維持するのがマストですので、最低限のコストは当然必要になってきます。加えてフリーランスの場合ですと、『保証』もないので、自分で払うものが多くなってきます。なので『最低賃金』というわけにはいきません」

 ちなみに、同業者が今回出してきた「3000円」というのは、佐藤さん曰く「最低賃金を割り込むレベルですよ」とのこと。

 「ただ、そういった『最低金額』で受注して、さらにそれを誰かに発注するという、『自転車操業』で仕事をする方もいます。それが一定数存在するので、将来的に業界が衰退してしまわないか心配しているんです」

 実は筆者は佐藤さんと同様にフリーランスとして活動している身。私の場合、ライターやSNS運用などで主に生計を立てているため、境遇は少々異なります。しかしながら、今回佐藤さんが遭遇した「分かってない」エピソードに直面することや、近い話を聞くことはしばしば。

 ライターを例にして話すと、筆者の場合は1記事いくらという「記事単価制」で原稿料を得ていますが、業界には「1文字○円」という「文字単価制」で仕事を受ける人が多く存在します。しかも中には、「え?その金額!?マジで!?」と、残念ながら悪い意味で驚愕することは少なくありません。

 例えば「1記事1000文字の依頼」で計算すると、「1文字3円で請け負った」場合は3000円の報酬になります。それが「1円」だと1000円になり、さらにはそれすら割り込む条件「0.5円」や「0.1円」、さらに低いものになると「0.01円」で請け負っている方の場合、1000文字の依頼だと“野口英世”が支給されないわけです。

 ライターというのは、“文字打ちオンリー”の仕事ではありません。本稿のように取材対象者(佐藤さん)とのやり取りもありますし、記事によっては事前の勉強も必要です。さらにブロガーではないので、編集部への申請承認もしなければなりません。

 また文字を打つにしても、構成を考えなければなりませんし、目を引くような見出しや画像を選ぶセンスや経験も大切です。昨今人気の職種らしいですが、ある意味「できる人・できない人」「続く人・続かない人」がはっきり分かれる仕事だったりします。

 一方で私は、かつて大手企業に所属し、発注側として依頼をしていた時期もありました。その観点から話すと、正直に言えば「この予算内でやろう」くらいの意識しかありませんでした。なので、「最初に概要と納期を伝え、“なるはや”で細かくやって迷惑だけかけないようにしよう」ということだけ心がけていました。

 「段取り八分」の考えに近いですが、そんな私も担当当初は、経験不足もあって発注元にかなり迷惑をかけたし、当時の上司はと言うと、「納期と予算だけクリアできればいい」程度の認識しかなかったので、まずくなるまでノータッチ。やり取りをする人間が多いという事情があるとはいえ、上層部ですら最低限の知識も持っていないのが大半というのが現状です。

 なお、佐藤さんは今回の取材の最後このように語っています。

 「依頼者に考えていただきたいのは、『そういうツールが存在することで、どれくらい改善できるか』ということを、度合いに合わせて金額換算をし、そこから金額設定をしていただきたいのです。SDGsではありませんが、『持続可能な業界』にするためには、業界における様々な立場の人間が、色んなことを勉強していかなければなりませんね」

<記事化協力>
佐藤嘉浩さん(@yosatonet)

(向山純平)

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