なぜ直6、排気量は? どんなエンジンになる? マツダの直列6気筒を予想する

なぜ直6、排気量は? どんなエンジンになる? マツダの直列6気筒を予想する

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マツダが「Largeアーキテクチャー」という名前で後輪駆動のプラットフォームの開発、そしてFRベースの上級モデルを開発していることが、マツダの中期経営方針で明らかになった。搭載するエンジンは、「直列6気筒」だという。ガソリン、ディーゼルそれぞれに直6エンジンを開発する方針だ。さて、どんな直6エンジンになるか予想してみよう。

 現在、直列6気筒エンジンを乗用車用に造ってクルマに載せているのは

メルセデス・ベンツ
ガソリン:M256型3.0?直列6気筒DOHCターボ
ディーゼル:OM656型3.0?直列6気筒DOHCディーゼルターボ

BMW
ガソリン:B58型3.0?直列6気筒DOHCターボ
ディーゼル:B57型3.0?直列6気筒DOHCターボ

 しか事実上ない。新型トヨタ・スープラが搭載する直6はBMWのB58型だ。

 かつて、世界的に人気のあった直列6気筒が廃れた大きな原因は2つ。

1:厳しくなる衝突安全性能をクリアするのが難しかったから。
 →いうまでもなく直6エンジンはエンジン長が嵩む。前面衝突で十分なクラッシャブルゾーンを確保するのに長い直6エンジンは適さなかったのだ。

2:そもそも横置き(FF)のモデルが増えたこと。
 →居住空間を広くとれ、しかも生産効率に優れたエンジン横置きアーキテクチャーをとるクルマが増えてエンジンを縦置きするモデルが減ったこと。かつてのボルボのように直6エンジンを横置きする例もあったが、長い直6エンジンを横置きするには、車幅が必要で、なおかつ前輪の切れ角を確保するのが難しい。

 直6が減って増えたのがV型6気筒だ。V6エンジンは振動特性は直6に劣るが、次の理由で増えたのだ。

1:エンジン長さが短くエンジンコンパートメントに載せやすい。
2:エンジン長が短くコンパクトなので縦置き(FR)にも横置きにもできる

 いわゆるプレミアムな自動車メーカーは、マルチシリンダー(ここでは6気筒、あるいは5気筒以上のエンジンとしておく)エンジンが必要だ。

 V型12気筒エンジンは、すでに象徴としての存在意義しか持たない。V10やW型は特殊過ぎる。
となると実際は
V型8気筒
V型6気筒
水平対向6気筒
直列6気筒
直列5気筒
というのが、常識的なプレミアムカーのエンジンとなる(直列5気筒は常識的ではないが)。

トヨタ(レクサス)/日産(インフィニティ):V6/V8
ホンダ:V6
メルセデス・ベンツ:V6/V8/直6
BMW:直6/V8
VWアウディ:直5/V6/V8
ポルシェ:水平対向6気筒
GM:V6/V8
フォード:V6/V8
ジャガー・ランドローバー:V6/V8
ヒュンダイ(ジェネシス):V6/V8

 というエンジン地図になるわけだ。

 マツダがV6ではなく直6を選んだ理由を推測してみよう。

 まず、衝突安全ボディの技術進化で、かつてほど大きなクラッシャブルゾーンが必要でなくなったこと。また、メルセデス・ベンツは、ボアピッチを詰めた設計とベルトレスにすることでエンジン長を短くすることに成功している。マツダも同じ手法を採るだろう。

 スペースの問題が解決できれば、直6にはメリットが多い。
・生産性が高い・・・V6でDOHCの場合、シリンダーヘッドは2つ、カムは4本必要になるが直6ならシリンダーヘッドはひとつ、カムは2本でいい。マツダの場合、ディーゼル、ガソリン、直4、V6を混流生産していたが、V6は専用の工程があり、ラインから一部バイパスラインで組み立てていた。直6の生産をどうするか不明だが、直4/直6の混流生産の方が直4/V6より楽なのではないか。

・補機の取り回しが楽・・・左右バンクにそれぞれ吸排気しなければいけないV6は、厳しい排気規制に対応するための排気後処理装置も2セット必要になる場合があるが、直6ならその必要はない。また過給する場合のターボチャージャーの置く位置も難しくない(V6の場合はバンクの内側にターボを挟む構造や、左右外側に2つのターボをぶら下げるなどしている)。

・振動特性に優れる・・・もともと振動特性に優れた気筒配列だったらかつて隆盛を誇った直6だから、搭載性の問題さえクリアできれば、その特性を生かせる。

・直列6気筒という記号性・・・プレミアム・ブランドになるのがマツダの目標だとすると、V6では他のライバルのOne of Themにしかならない。直6なら、メルセデス・ベンツ、BMWというプレミアムブランドと同じ土俵にのれるというわけだ。直6を開発したら、BMW、メルセデス・ベンツとマツダだけが直6エンジンを搭載するクルマを造ることができる。

 マツダが開発する直6エンジンの排気量はどうなるだろうか? メルセデス・ベンツもBMWもガソリンとディーゼルで多くの部品を共用している。そして、現在のエンジン開発の主流は「モジュラーエンジン」だ。

 BMWを例にとれば
B38型:単筒容積500ccの直列3気筒で1.5?のガソリンターボ
B37型:単筒容積500ccの直列3気筒で1.5?のティーゼルターボ

B48型:単筒容積500ccの直列4気筒で2.0?のガソリンターボ
B47型:単筒容積500ccの直列4気筒で2.0?のティーゼルターボ

B58型:単筒容積500ccの直列3気筒で3.0?のガソリンターボ
B57型:単筒容積500ccの直列3気筒で3.0?のティーゼルターボ

 となっている。
 マツダの場合は、
単筒容積374ccのSKYACTIV-G1.5(ボア×ストローク74.5×85.8mm)
単筒容積499.25ccのSKYACTIV-D1.8(ボア×ストローク79.0×89.6mm)
単筒容積500ccのSKYACTIV-G2.0(ボア×ストローク83.5×91.2mm)
単筒容積547ccのSKYACTIV-D2.2(ボア×ストローク86.0×94.2mm)
単筒容積622ccのSKYACTIV-G2.5(ボア×ストローク89.0×100.0mm)

 が、存在する。
これに6をかければ
2244cc
2634cc
2995.5cc
3282cc
3732cc

 となる。これだけ書いておいてなんだが、マツダが開発する直6は3.0?になるだろう。直6に求められるのは、プレミアム性だ。上質なフィールとモアパワー。となると2.2?や2.6?という選択はできない。また3.3?や3.7?だとBMWや「メルセデス・ベンツが3.0?なのに、マツダはそれより大きな排気量でないと充分なパワーが出せないのか」と思われてしまう。各国の自動車税制を考えても3.0?(2995cc)というのが、もっともバランスがとれた排気量である。

 直接ライバルとなるBMWもメルセデス・ベンツもS/B比(ストロークをボアで割った数値。1より大きければロングストローク)がそれぞれ1.154 1.113であるのにマツダのSKYACTIV-G2.0は1.092だから、直6エンジン開発する際は、もっとロングストローク型にする可能性も高い。S/B比を大きく採れば、相対的にボアが小さくなるわけだから、エンジン長さも短くできる。

 直列6気筒のSKYACTIV-D3.0(と勝手に命名する)は、まったく問題ないだろう。パワーも出力もメルセデス・ベンツ、BMWに負けない、それでいてさらに優秀な燃費性能やエミッション性能を発揮する直6ディーゼルができるはずだ(もちろん開発はきっととても大変なのだろうけれど)。

 このディーゼルのメイン市場は欧州、そして日本ということになろう。
 しかし、プレミアムカー市場でもっとも大きなアメリカ市場、そして今後期待できる中国市場は、ディーゼルの人気がない。

 そこで直6ガソリンが必要になるわけだ。
 マツダの中期経営方針の資料には

直列6気筒SKYACTIV-X
直列6気筒SKYACTIV-D GEN2
と記されている。

 これによれば、直6ガソリンエンジンは、革新的燃焼を実現したSPCCIエンジンと言うことになる。超リーンバーン、超高圧縮比エンジンであるSKYACTV-Xエンジンの直6版と考えると、直4SKYACTIV-Xの「目標トルク110Nm/?で330Nmという最大トルクになってしまう。

メルセデス・ベンツの直6:520Nm
BMWの直6:500Nm

 と比べて見劣りがしてしまう。ライバルがターボ過給をしているのに対して、マツダSKYACTIV-Xは電動コンプレッサーによる過給。これもリーンバーンのための空気供給のためで、いわゆるターボパワーのための過給ではない。その恩恵で、SKYACTIV-Gより10%燃費がよくなるというが、北米市場での直6の存在は、燃費よりもパワーだ。ここをマツダがどうブレークスルーするのか、本当に楽しみだ。
 
 鍵を握るのは、48V MILD HYBRIDとPHEV化という電動化にあるのだろう。
 メルセデス・ベンツの直6エンジンは、すでに48VのISGを組み合わせたマイルドハイブリッド化している。となると、考えられるのは

48Vマイルドハイブリッドを組み合わせた超高効率な革新的3.0?SKYACTIV-X直6

メルセデス・ベンツ、BMWを上回るパワーとトルクで燃費性能でも負けないSKYACTIV-G3.0

 の両面作戦だ。
 革新的3.0?SKYACTIV-X直6は、マツダのプレミアム性を引っ張るシンボル的な存在。ビジネス的にはSKYACTIV-G3.0を北米・中国で売る……という作戦なのではないか?

 とはいえ、そう遠くない将来にマツダの直列6気筒エンジンを見ることできる。それまで、さまざまな推理をして楽しむのがいいだろう。

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