【検証2019-2020年の注目車B】デザイン賞があれば…次点の「マツダ3」は何がスゴい?:岡崎五朗の眼

【検証2019-2020年の注目車B】デザイン賞があれば…次点の「マツダ3」は何がスゴい?:岡崎五朗の眼

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2019-2020日本カー・オブ・ザ・イヤー(以下、COTY)において、イヤーカーに選ばれたトヨタ「RAV4」と並び注目を集めた日本車が「マツダ3」。

残念ながらCOTYでは次点に甘んじたマツダ3ですが、2019年5月の発表以来、その走りや質感の高さで人々の注目を集めてきました。

そんなマツダ3を高く評価するのが、モータージャーナリストの岡崎五朗さん。果たして、高評価の理由はどこにあるのでしょうか?

■美しさの中に違和感を盛り込む高度な手法

マツダが“第7世代”と呼ぶ新世代商品群。その先陣を切って誕生したマツダ3は、“HCCI(予混合圧縮着火)”という世界初の燃焼方式を実現した“スカイアクティブX”エンジンや、“スカイアクティブアーキテクチャー”と呼ばれる新開発プラットフォームなど、メカニズム面にスポットライトが当てられるケースが多い。しかし個人的には、マツダ3最大の美点は、なんといってもデザインだと思う。

初代「CX-5」に始まる第6世代商品群から、マツダは“魂動デザイン−SOUL of MOTION”をテーマに、デザインに対して並々ならぬこだわりを見せてきた。実際、これまでに登場した各モデルは、いずれもカッコいいデザインに仕立てられていた。しかし悪いいい方をすれば、それらは単に“カッコいいだけ”でもあったのだ。

それに対し、新世代商品群の第1弾であるマツダ3のデザイナー陣は、そうしたカッコ良さを継承しながら、あえて引っかかる要素、“違和感”を覚える部分をデザインに盛り込んできた。その最たる例が“ファストバック”と呼ばれる5ドアハッチバックに採用された太いリアピラーだ。

美しさやカッコ良さの中に、意図的に違和感を盛り込むカーデザインは、1980年代から2000年代にかけ、イタリアの名門・アルファロメオが盛んに用いていた手法。マツダ3の開発責任者を務めた別府耕太さんによると「マツダ3は美しいだけでなく、美しさの中にアクを感じさせる、個性派女優のようなデザインを目指しました」とのことだが、アクの強さや違和感を美しさやカッコ良さへと昇華させる手法は、デザインの世界においてはとても高度なテクニック。そういう意味でマツダ3、特にファストバックのエクステリアは、日本車のデザインに新たな境地を切り開いたといえる。

実際、ファストバックの外観デザインは、ハッチバックのそれというよりも、もはやクーペやスペシャルティカーの域にあるといっても過言ではない。とはいえ、このように攻めたルックスは、当然のように万人ウケはしにくい。従来のマツダ3=「アクセラ」は、グローバルマーケットにおける最量販車種だったこともあって、こうしたマツダのトライを危惧する向きもある。

しかしマツダは、世界的に売れ筋がSUVへシフトしているという自動車業界のトレンドを見極め、マツダ3をベースとするSUV「CX-30」を新たに設定。マツダ3のファストバックとセダン、そしてCX-30という3台の“商品群”で、このクラスをカバーする戦略に打って出た。つまり、台数を積み上げる役目はCX-30に任せる一方、マツダ3には新たに、自社のデザインやブランドをアピールするアイコンのような役目を担わせたのだ。
■乗る人のライフスタイルまで変える強いメッセージ性

マツダ3は、インテリアも出色の出来栄え。「日本車としては初めて」といっても過言ではないくらい、ドレスアップしたオトナが乗ってもサマになる、上質な世界観をカタチにしている。それは、短パンにヨレヨレのTシャツで乗るのを、思わずためらってしまうほどの上質な空間だ。

またディテールを見ても、前方視界を遮らないよう高さを抑えつつ、サイドを斜めにカットされたディスプレイオーディオなど、各要素がインテリア全体の雰囲気に調和するようデザインされている。こうしたスキのないインテリアの仕立ても、マツダ3のスゴさといえるだろう。

現状のCOTYにはデザインにフォーカスした部門賞が存在せず、個人的にはデザインに対する評価も、本賞への評価に含めている。そんな中で登場したマツダ3のデザインは、「カッコいい」、「美しい」、「個性的」、「上質」といった単純な感想のレベルを超え、周囲の空気さえも変えてしまうほどのオーラを漂わせていた。

そして、オーナーになることで、着る服や身だしなみ、出掛けるスポットなどが変わり、乗る人までをも成長させてくれるーー。そうした“プロダクトが人のライフスタイルまで変える”ほどの強いメッセージ性が、マツダ3のデザインには息づいている。デザインを武器とし、人々の感情にこれほど強く訴えかけるクルマが日本から登場したことを歓迎するとともに、高く評価したいと思う。

<SPECIFICATIONS>
☆ファストバック X Lパッケージ(4WD/6AT)
ボディサイズ:L4460×W1795×H1440mm
車重:1510kg
駆動方式:4WD
エンジン:1997cc 直列4気筒 DOHC
トランスミッション:6速AT
最高出力:180馬力/6000回転
最大トルク:22.8kgf-m/3000回転
価格:361万6963円

(文責/&GP編集部 写真/村田尚之)

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