東証、進む4市場から3市場への再編議論。再編した場合、浮上する銘柄は?

東証、進む4市場から3市場への再編議論。再編した場合、浮上する銘柄は?

東証、進む4市場から3市場への再編議論。再編した場合、浮上する銘柄は?の画像

 東証が現在の4市場から3市場へと再編を予定している。ボーダーラインの企業は脱落しないよう、あの手この手で生き残りを画策。「東証再編」で浮上する銘柄はどこか。

◆東証市場再編で浮上する株12選

「一部上場企業に勤めてる」といえば、“エリート”の証しだった。現在、東証には「市場第一部」「市場第二部」、新興市場の「ジャスダック」「マザーズ」の4市場があり、東証上場企業3665社のうち、2141社と約6割の企業が東証一部に上場している(4月9日時点)。いまや「一部上場企業」は“一流企業”とは限らないのだ。

 そうしたなか、東証を傘下に持つ日本取引所グループが昨夏から市場区分を見直す議論を開始した。いったいなぜか。株式ジャーナリストの大神田貴文氏は「一部上場企業を選別するため」と説明する。

「本来、東証一部は最もランクが高い市場とされ、ジャスダックやマザーズに上場後に二部を経て一部に昇格するピラミッド構造のはずでした。ところが格下の二部とジャスダック、マザーズの3市場を合わせても1500社にも満たず、ピラミッドどころか逆三角形の構造となっています。そこで、粗製乱造された『一部企業』を選別しようと、最大で約7割にあたる1347社を一部から降格させ、残った精鋭企業だけの市場をつくるのが構想の柱となっています」

 東証一部上場企業が増加した背景には、「東証が政府系の特殊法人から株式会社へ組織変更され、利益の追求を経営目標にするようになったことが影響している」と大神田氏は指摘する。

「上場企業が東証に支払う費用はマザーズなどの新興市場より一部市場のほうが高いため、一部上場企業が増えるほど東証の収益がアップするからです」

 つまり、量産された一部上場企業の“大リストラ”をしようというのだ。3月27日に発表された東証市場再編の方針によると、現状の4市場を、@C市場(企業数を削減した東証一部)、AA市場(中堅企業)、BB市場(新興市場)の3つに再編成するという。

◆一部銘柄の約7割降格で経営統合が加速!?

 一部銘柄の粗製乱造に対し、「もともと市場からはブーイングが広がっていた」と大神田氏は指摘する。しかも、公的年金基金や海外の投資ファンドといった超大口客からである。これでは東証も無視するわけにはいかない、というわけだ。

「公的年金などは現在、東証一部の全銘柄を買うパッシブ運用が主流。東証一部のすべての企業に投資すれば、日本経済全体に投資したのと同じになるという考え方が根底にあります。理屈は確かにそうなのですが、これだと一部上場の2141銘柄に分散投資する必要が出てくる。米国で大企業を集めた『S&P500種』が代表的なように、年金基金や投資ファンドが無理なく分散投資できるのは500銘柄が限度。しかも一部上場企業といっても、時価総額1位のトヨタが22兆円もある一方で、時価総額20億円に満たない企業や、日々の出来高がほぼゼロの企業もあります。資金運用の現場からは『一部上場企業が日本代表なのか?』という疑問はありました」

◆ボーダーラインは時価総額500億円?!

 再編時期は未定だが、市場再編によってどれほどの企業が脱落するのか。大神田氏が続ける。

「選別のボーダーラインは時価総額250億〜500億円。海外投資家のなかには1000億円以上の大型株限定を推す声もあり、これだと1400社近くが降格になり、約700社が一部市場に残る。ボーダーラインを500億円に引き下げると強制退出企業は973社、250億円だと486社になります(4月9日時点)」

<時価総額500億円前後の企業>

※4月9日時点

順位/銘柄名(コード)/時価総額

1164位/丸大食品(2288)/503億8700万円

1165位/チムニー(3178)/502億6700万円

1166位/ヤマシンフィルタ(6240)/502億3200万円

1167位/日本トリム(6788)/501億2300万円

1168位/太平電業(1968)/500億4100万円

★★★★500億円★★★★

1169位/石原産業(4028)/498億7400万円

1170位/スパークス・グループ(8739)/496億6800万円

1171位/三井ハイテック(6966)/496億1000万円

1172位/ジャパンミート(3539)/495億9700万円

1173位/K&Oエナジーグループ(1663)/492億6600万円

 一部市場からの降格は、これまで得てきた社会的な信用や人材募集面での優位性を失うことを意味する。当然、株価も下落する。そのため、あの手この手で一部残留を画策する企業が出てくるだろう。

◆明暗が分かれる 浮かぶ株と沈む株

「企業側が打てる手はいくつかあります。時価総額450億円程度なら、増配や自社株買いで株価を押し上げればボーダーラインの500億円突破はそう難しくはありません。経営統合も有力な手法になり得ます。注目は地方銀行。時価総額が300億円未満の地銀は20銘柄ありますが、小粒でも2行が統合すれば500億円のハードルを越えられるようになります」

 地方経済の停滞、マイナス金利政策の長期化で経営難が続いている地銀にとって、再編を後押しするきっかけとなるかもしれない。

 さらに奥の手もある。企業自らの手による上場廃止だ。

「経営が順調なオーナー系企業では、経営者が株式を買い集めて力業で上場廃止に持っていくMBOの可能性があります。外部株主からの要求に従って増配しても、オーナー経営者からすればキャッシュが流出するだけ。しかも、経営が順調で新株を発行して資金調達する必要のない企業であれば、東証から一部降格を言い渡される前に上場廃止を選んでも不思議ではありません。すでに外資系投資銀行の一角が対象企業にMBOの提案に動いているとの噂もあります」

 MBOとなれば、時価より3割ほど高い価格で株を買い取るケースが多く、個人株主には高く売り抜けるチャンスになる。増配や経営統合、MBOと、「東証再編」で株価が動きだしそうだ。

◆<東証再編で浮上する可能性が高い12銘柄>

※4月9日時点

●東邦亜鉛[5707]

現在株価(売買単位)/3415円(100株)

時価総額/463億9500万円

PER ──倍/PBR 0.81倍/配当利回り 2.05%

 日経平均225採用の名門企業。鉛や亜鉛の製錬大手で国内製造業の基盤を支える。自己資本比率43%と設備産業としては最高水準で財務安定性は高く、増配余地が大きい

●カメイ[8037]

現在株価(売買単位)/1220円(100株)

時価総額/458億6200万円

PER 6.95倍/PBR 0.41倍/配当利回り 2.05%

 東北で灯油やガスを供給する専門商社。自動車販売の育成も成功し、年商5000億円台が見えてきた。時価総額500億円前後で推移し、一部残留にはあと少し株高が必要

●六甲バター[2266]

現在株価(売買単位)/12064円(100株)

時価総額/442億7700万円

PER 25.93倍/PBR 1.51倍/配当利回り 0.97%

 時価総額400億円台半ば。オーストラリアから輸入するQBBブランドのチーズで全国の食品スーパーに浸透。配当性向が10%台と低く、一部残留には増配が不可欠か

●デクセリアルズ[4980]

現在株価(売買単位)/1724円(100株)

時価総額/461億9800万円

PER 16.88倍/PBR 0.88倍/配当利回り 4.70%

 一旦上場廃止した旧ソニーケミカル。再上場したからには東証一部の金看板を簡単には捨てられない。株価純資産倍率1倍割れで解散価値を下回る割安状態は是正が必要

●千葉興業銀行[8337]

現在株価(売買単位)/1308円(100株)

時価総額/191億6400万円

PER 3.09倍/PBR 0.18倍/配当利回り 0.97%

 地銀にとって最激戦区の千葉県が地盤で、経営統合候補とされて久しい。時価総額は200億円を下回り、東証一部残留に予想される最低ラインの250億円にも届かない

●筑波銀行[8338]

現在株価(売買単位)/1199円(100株)

時価総額/164億2800万円

PER 12.59倍/PBR 0.22倍/配当利回り 2.51%

 時価総額200億円割れで茨城県2位の中堅地方銀行。他行との統合観測は数多い。関東つくば銀行と茨城銀行の合併銀行で、経営統合に対する抵抗感は少なそうだ

●みちのく銀行[8350]

現在株価(売買単位)/11622円(100株)

時価総額/294億1600万円

PER 23.75倍/PBR 0.38倍/配当利回り 2.22%

 青森県2位の地方銀行。金融庁は1県1地銀を目標にしているといわれ、経営統合の思惑を生んでいる。時価総額は約300億円と、東証の基準次第では一部転落のリスク

●佐賀銀行[8395]

現在株価(売買単位)/11876円(100株)

時価総額/321億4700万円

PER 11.63倍/PBR 0.25倍/配当利回り 3.73%

 佐賀県の優良地銀だが、時価総額は約321億円と東証一部残留は微妙な水準にとどまっている。九州は地銀再編の先進エリアで他県地銀との経営統合観測がくすぶっている

●かどや製油[2612]

現在株価(売買単位)/15170円(100株)

時価総額/485億9800万円

PER 16.4倍/PBR 1.85倍/配当利回り 2.22%

隠れた高効率経営企業として知られる。ゴマ油で国内首位の安定した事業基盤と無借金経営が特徴。20年近く前に新株発行しただけで、今は株式市場に頼る必要は薄そう

●アミューズ[4301]

現在株価(売買単位)/12418円(100株)

時価総額/450億3200万円

PER 11.01倍/PBR 1.54倍/配当利回り 1.65%

 大手芸能プロダクション。タレント育成は中長期事業のため、短期な利益還元を求める外部株主を上場廃止で排除できるメリットは大きい。無借金経営で財務体質は強固

●セントラルスポーツ[4801]

現在株価(売買単位)/13025円(100株)

時価総額/346億8600万円

PER 13.11倍/PBR 1.5倍/配当利回り 2.58%

 フィットネスクラブ2位。健康志向の高まりで成人会員の増加が続く。創業家と資産管理会社が40%の株を占める。自己資本比率は5割を超え、増配や自社株買い期待も

●稲葉製作所[3421]

現在株価(売買単位)/11419円(100株)

時価総額/254億3200万円/PER 21.66倍/PBR 0.66倍

配当利回り 1.83%

「100人乗っても大丈夫」のテレビCMで知られる。家庭用物置で国内シェアは首位を独走。スチール製のオフィス用家具でも高シェア。無借金の頑強経営で財務に余裕

取材・文・撮影/SA編集室

― 東証市場再編で浮上する株12選 ―

関連記事(外部サイト)