家庭教育支援法制定をめぐる勝共連合の策動<政界宗教汚染〜安倍政権と問題教団の歪な共存関係・第10回>

家庭教育支援法制定をめぐる勝共連合の策動<政界宗教汚染〜安倍政権と問題教団の歪な共存関係・第10回>

熊本ピュアフォーラムの設立記念講演会で登壇する国際勝共連合の青津本部長(濱田大造議員のFBより)

 2017年後半から18年前半を中心に、全国の複数の地方議会に同じ文面の陳情が出された。さらに、その陳情とほぼ同じ文面の意見書が各地の県議会や市議会で可決、衆参両議長や総理大臣、関係省庁の大臣宛てに提出された。一連の動きの背後に見えたのは「家庭教育支援法」「青少年健全育成基本法」をめぐる国際勝共連合の不穏な策動だった。

◆神奈川県で「家庭教育支援法」をめぐる策動

 2018年1月下旬から3月にかけて、神奈川県下の複数の市議会・町議会・村議会に「家庭教育支援法の制定を求める意見書提出に関する陳情」が出された。地方議会から当該意見書を総理大臣などに提出することを求めるものだ。

 陳情者は「家庭教育を推進する神奈川県民の会」の近藤正栄代表。神奈川大学名誉教授の近藤は統一教会のフロント団体・世界平和教授アカデミーのメンバーだ。そして同会事務局の武者宗悦は、国際勝共連合神奈川県本部の代表者であることが神奈川県に出された政治団体収支報告に記載されている。

 神奈川県内で同会による陳情が出された自治体は、確認できたものだけで川崎市、小田原市、秦野市、綾瀬市、藤沢市、伊勢原市、茅ヶ崎市、逗子市、厚木市、山北町、葉山町、愛川町、二宮町、大磯町、清川村と多岐にわたる。

 このうち可決されたのは川崎市、藤沢市、厚木市、座間市などで、否決・不採択は伊勢原市や葉山町など。逗子市では陳情は了承されたものの自民党議員団が提出した意見書案は否決された。

◆全国各地の議会で同様の陳情が提出

 ことは神奈川県だけではなかった。長野県松本市でも2018年2月に『アジアと日本の平和と安全を守る長野県中南信フォーラム』が「家庭教育支援法の制定を求める意見書提出に関する陳情」を提出。同フォーラムは統一教会のフロント組織『アジアと日本の平和と安全を守る全国フォーラム』の地方組織だ。以降も塩尻市と安曇野市で同様の陳情が出された。これらの陳情は各市議会で不採択となったものの、神奈川と同様に統一教会系の政治組織が暗躍していたことを示している。

 また東京都江戸川区議会には18年6月と9月にそれぞれ「家庭教育支援法の制定を求める意見書提出に関する陳情」と「青少年育性基本法制定を求める意見書の提出を求める陳情」が出されている。

◆自民党議員団がほぼ同じ文面の意見書を提案

 18年3月、川崎市議会本会議で自民党と公明党の議員団が共同提案した「家庭教育支援法の制定を求める意見書案」が可決された。この意見書と「家庭教育を推進する神奈川県民の会」が同県下の多くの市町村議会で出している「家庭教育支援法の制定を求める意見書提出に関する陳情」を読み比べると、ほぼ同じ文面であることが判る。差異は「である調」の常体と「です・ます調」の敬体の違いだけだ。この「である調」版の意見書は全国の地方議会や国会の委員会で散見できる。

 前年17年6月30日にも和歌山県橋本市議会で安倍晋三との2ショット写真をフェイスブックに投稿している保守派の議員によって全く同じ文面の「家庭教育支援法の制定を求める意見書」が議員提出議案として原案可決されている。

 18年2月には兵庫県議会で自民党議員の紹介による請願「家庭教育支援法の制定を求める意見書の件」が採択、6月には東京都調布市、石川県県議会、金沢市・小松市・加賀市の各市議会で「家庭教育支援法の制定を求める意見書」が可決され内閣総理大臣らに提出された。(小松市議会では自民党会派から提出された議案であることが確認できた)

 同年10月に滋賀県議会、12月には香川県議会から同様の意見書が提出されたほか、愛媛県新居浜市議会でも自民党系議員らにより提出された同意見書案が原案可決された。

 国会では第193回国会・参議院文部科学委員会において家庭教育支援法の制定に関する請願7件が付された。受理は17年5月22日から6月12日にかけて、付託は6月2日から15日。紹介議員には上野通子や中川雅治といった統一教会と関係の深い議員の名が連なっている。

◆全国各地で家庭教育支援条例が施行

 家庭教育支援法の前段とも言える家庭教育支援条例は全国各地の複数の県や市で公布・施行されている。その中でも全国に先駆けて2013年4月に「くまもと家庭教育支援条例」を施行したのが熊本県だ。

 熊本県でもやはり国際勝共連合による策動の痕跡が散見できる。熊本では17年から18年に「家庭教育支援法の制定を求める意見書の提出」を県下の各市議会で熊本ピュアフォーラムなる団体が陳情。同フォーラムの代表者は元熊本県教育長の田中力男、事務局長の稲富安信の表向きの肩書きは「元有限会社浜建設工務所代表取締役・KPP代表」となっているが、その正体は国際勝共連合の熊本県本部代表者だ。

 2016年10月23日に熊本県教育委員会の後援で開かれた熊本ピュアフォーラムの設立記念講演会では青津和代なる人物が「国際青少年問題研究所所長」の肩書きで講演している。

「全国教育問題国民会議事務局次長」「自主憲法制定国民会議評議員」「日本の建国を祝う会理事」や「国際女性問題研究所講師」などの肩書きがある青津は、10年の参院選で統一教会を批判していた有田芳生議員を落選させる策動が記された内部文書・通称「有田潰し文書」にもその名が記載された国際勝共連合本部の本部長だ(勝共連合は同文書への関わりを否定)。

 青津は18年にも自民党川崎市連政調勉強会で講演している。

 近年、熊本県議会や各市町議会で採決されてきた「青少年健全育成基本法の制定を求める意見書」を自民党地方議員の紹介で提出してきたのも稲富安信だ。

 熊本ピュアフォーラムのサイトには「これからの取組予定」として以下の記載がある。

・熊本県内に於ける「青少年健全育成法の請願」の取組

・有害自動販売機の撤去の為の署名運動

・青少年の具体的な健全育成の為の条例の制定

・地域オルグや講演会活動「自治基本法を悪用するパートナーシップ条例の隠れた恐怖・子供達の価値観を変質させ、倫理観や道徳の破壊と家庭破壊を狙う組織の目的を暴露する」

・熊本県は全国に先駆けて熊本「家庭教育支援条例」を作りました。とても大切な意義ある条例です。私達は、この熊本「家庭教育支援条例」を応援し、地域活動において啓発運動に取り組んで参ります。

◆スパイ防止法を思い起こさせる一連の動き

 全国で展開される勝共連合による一連の動きから連想するのは、1970年代後半から80年代に同連合が牽引したスパイ防止法制定をめぐる策動だ。勝共連合は79年に「スパイ防止法制定促進国民会議」を結成後、各県に「スパイ防止法制定促進県民会議」そして県下の市町村に運動体を作り、各地方自治体への働きかけを行った。同法案事態は廃案となったものの、同種の法案が特定秘密保護法として法令化された。

 国際勝共連合のHPには以下の記載がある。

「共産主義国による間接侵略の危機から日本を守るため、1978年にスパイ防止法制定3千万人署名国民運動を展開し、翌79年にはスパイ防止法制定促進国民会議の創設に加わった。都道府県会議を全国で設置、署名運動のほか地方議会における同法案制定請願運動の先頭を切って奮闘し、スパイ防止法案制定に向け一大国民運動を展開した」

 国際勝共連合はスパイ防止法の制定を諦めていない。スパイ防止法制定促進国民会議のサイトは現在も更新されている。

◆宗教右派による草の根運動、日本会議系人脈との交流も

 一連の勝共連合による運動は、著述家の菅野完がハーバービジネスオンラインでの連載『草の根保守の蠢動』及び著書『日本会議の研究』で記した日本会議の中枢・日本青年協議会=椛島有三事務局長による策動との近似性が感じられる。市民団体を装い地方議会へ陳情を上げ採択させ中央へ圧力をかけていく運動論を勝共連合も取り入れたのだ。

 宗教右派による草の根運動には、生長の家原理主義=日本青年協議会=日本会議という本流の他に原理研究会=統一教会=国際勝共連合という流れもあった。この二者は人的交流で協調しながら連携し、また別働隊として正体を隠し、それぞれの野心のために一方は政権への影響力を保持しようと画策、また一方は政権と取引し下支えしている。

 人的交流として近年、最もその動きが目立つのが「親学」の提唱者である高橋史朗だ。日本会議のキーマンとしても名が挙がる高橋は18年3月、山梨県で統一教会系政治組織「アジアと日本の平和と安全を守る山梨県フォーラム」などが主催した講演会のメインスピーカーとして登壇、今年3月には世界日報Viewpointに「家庭教育支援法の制定急げ」と題した記事を寄稿している。

◆教団との関係が深い自民党内プロジェクトチームの面々

 自民党で家庭教育支援法案プロジェクトチーム事務局長と青少年健全育成推進調査会事務局長を兼任する上野通子参議院議員は、世界平和女性連合栃木が主催した反子宮頸がんワクチンのシンポジウムで講演したほか、統一教会系政治団体に議員会館使用の便宜を図るなど同教団との関係が指摘されている。

 全都道府県が制定するに至った「青少年保護育成条例・青少年保護条例」や複数の自治体で施行されている「家庭教育支援条例」と合わせこれらの一連の策動は、安倍政権が法制化を進める「家庭教育支援法」「青少年保護育成基本法」へのステップである。その先にあるのは憲法24条の家庭条項改正の目論みだ。

 2018年2月、「青少年健全育成基本法案」と「家庭教育支援法案」の進捗状況を議題とする会議には下村博文・上野通子・山谷えりこといった統一教会と関係の深い議員が出席した。

 次稿では、2018年6月に全国霊感商法対策弁護士連絡会(全国弁連)が行った参議院議員会館での緊急集会と全国会議員事務所への請願、そして大規模信者集会に参加する閣僚を含む国会議員の動きを一挙掲載、そして第4次安倍政権で閣僚に抜擢されるずぶずぶ議員への直撃など、本連載の嚆矢となった記事『自民党議員、国際勝共連合50周年大会に複数名が出席。旧統一教会系政治組織と与党議員の関係』へ繋がるまでの流れを記載する。(文中敬称略)

*(本稿は「出目金」氏ツイッター @TR_727 を参照した)

<鈴木エイト(やや日刊カルト新聞主筆)・Twitter ID:@cult_and_fraud>

すずきえいと●滋賀県生まれ。日本大学卒業 2009年創刊のニュースサイト「やや日刊カルト新聞」で副代表〜主筆を歴任。2011年よりジャーナリスト活動を始め「週刊朝日」「AERA」「東洋経済」「ダイヤモンド」に寄稿。宗教と政治というテーマのほかに宗教2世問題や反ワクチン問題を取材しトークイベントの主催も行う。共著に『徹底検証 日本の右傾化』(筑摩選書)

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