「切り売りされる北海道」鈴木直道・北海道知事に届かなかった夕張市職員の警告

「切り売りされる北海道」鈴木直道・北海道知事に届かなかった夕張市職員の警告

”菅チルドレン”と呼ばれる鈴木直道・北海道知事(右)が夕張市長時代、中国系企業に市所有のホテルやスキー場を売却。10億円以上の転売益を供与したという疑惑が浮上

◆届かなかった夕張職員の声

「夕張市所有のホテルやスキー場の中国系企業への売却は『一帯が囲い込まれてチャイナタウン化する』というリスクがありました。市役所内で問題提起をしたのですが、当時の鈴木直道・夕張市長(現・北海道知事)が決めた売却方針が変わることはありませんでした」

 こう振り返るのは、中国系企業「元大グループ」への市所有財産(ホテルやスキー場など)に関わった元・夕張市職員。

 もちろん、「チャイナタウン化」自体が「悪」だという見方には異論が残る。財政状態が苦しい夕張市に取って、人口増は大きな課題であるし、中国資本だからといって日本人が雇用されないとは限らない。

 しかし、5月2日の記事「鈴木知事に中国系企業への利益供与疑惑」で紹介した、市の観光4施設を約2億4000万円で元大グループに売却、その企業が2年後の今年3月末に香港系投資ファンドに転売して10億円以上儲けた際に何らかの利益供与があったのではないか?という“北海道版モリカケ事件”ともいわれる疑惑があるとなれば話は別だ。

◆北海道が、外資などを取り込んで経済振興をはかる“実験場”に!?

 外資や外国人富裕層の誘致に熱心な北海道財界人は他にもいる。例えば、2010年に中国人富裕層向けの別荘を千歳市泉沢向陽台の文京区に17棟建設・完売して話題になったニトリの子会社「ニトリパブリック」だ。

 このニトリホールディングスを率いる似鳥昭雄会長こそ、北海道知事選で鈴木氏の応援団長を務めた北海道出身のカリスマ経営者。安倍首相への大口献金者としても有名な人物なのだ。横浜政経懇話会が2012年10月10日に東京・港区で開いた「すが義偉君を励ます会」では、同社は100万円分のパーティ券を購入していたという(参照:「しんぶん赤旗」)。そのため、道庁関係者は警戒心を募らせていた。

「鈴木氏は知事選で、道外からカネと人を引っ張ってくる『ほっかいどう応援団会議』を提案していました。今後、中国人向け別荘販売の実績があるニトリの似鳥会長が応援団会議メンバーに就任し、北海道を切り売りしていく拠点となる可能性があります。北海道が、外資などの道外マネーを取り込んで地域経済振興をはかる“実験場”と化していくのではないでしょうか」

 もちろん、JR北海道の窮状など、先行きが不安視される北海道の財政・経済再生のためにはインバウンド需要などが注目を集めるのは至極当然ですべて否定できるものではないが、鈴木知事の基本的立場は、「公共財売却など、とにかく民間企業に委ねるのが効率的で好ましい」という新自由主義的路線であり、似鳥会長とともに、外資への北海道切り売りに邁進することは十分に考えられる、と自民党支持層も知っておく必要はあるだろう。

◆市議会や道議会、国会で疑惑追及の可能性も

 この“北海道版モリカケ事件”については、今年の夕張市長選(4月21日投開票)で次点だった多喜雄基・元市議が「平成22年に(資本金)100万円で設立された会社の実態は調べたのか。夕張市政のブラックボックス化が心配だ。情報公開をして、議会や市民の理解を得るべきだ」(4月8日の公開討論会)と疑問呈示をしていた。

 地元の夕張市議は「市議会で(夕張市施設売却の件について)追及したい。億単位の損害を市に与えたとして住民訴訟も視野に入れて調査中」と意気込み、「6月の道議会で質問する準備をしている」と野党系道議も話す。市議会や道議会だけでなく、国会でも取り上げられる可能性は十分にある。

 8億円値引きの森友事件と同等以上のスキャンダルとして、「中国系企業が10億円以上の転売益を得る一方で、数億円単位の損害を夕張市に与えたのではないか」と追及されても不思議ではないからだ。

 官邸主導で与党系候補となった、“菅官房長官チルドレン”とも呼ばれる鈴木知事を直撃するこの利益供与疑惑。それと同時に、北海道が外資に切り売りされていく事態を放置してもいいのかという問題もあわせ持つ。夕張市議会や道議会や国会での追及が期待される。

<取材・文・撮影/横田一>

ジャーナリスト。小泉純一郎元首相の「原発ゼロ」に関する発言をまとめた『黙って寝てはいられない』(小泉純一郎/談、吉原毅/編)に編集協力。その他『検証・小池都政』(緑風出版)など著書多数

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