丸山議員への辞職勧告決議は筋違い。衆院は懲罰委員会に付託せよ

丸山議員への辞職勧告決議は筋違い。衆院は懲罰委員会に付託せよ

丸山穂高議員のサイトにはまだ維新の文字が

◆国会と丸山穂高「戦争」発言の関係

 日本維新の会(当時)の丸山穂高衆議院議員(大阪19区)は、19年5月11日に「北方領土」の国後島にて、内閣府北方対策本部のビザなし訪問事業の訪問団長に対して「戦争で島を取り戻すのは賛成ですか、反対ですか」「戦争しないとどうしようもなくないですか」などと発言(参照:”「戦争で取り返すの賛成か反対か」丸山議員の音声データ” 朝日新聞)し、その後に撤回しました。所属政党の日本維新の会は、発言が大きな批判を受けた後に、丸山議員を除名処分としました。

 さて、丸山議員は、日本維新の会の党員や個人としての資格でなく、衆院沖縄及び北方問題に関する特別委員会(沖北特)委員として、衆院の代表者としての資格で、訪問団に参加していました。内閣府の資料によると、北方四島への訪問は92年度から行われ、「交流の一層の拡大」を目的として95年度から国会議員も参加できるようになりました。国会議員の参加者は、原則として衆参それぞれの沖北特、衆院外務委員会、参院外交防衛委員会の委員から募り、これらの委員会から参加者がいない場合に限り、他委員会所属の議員が参加できます。そして、1回の訪問につき、衆院から1名、参院から1名との制限もあります。

 そのため、丸山議員の言動に対して、所属政党の日本維新の会としての処分と無関係に、衆院としての対応が必要になります。訪問団に参加している間は、衆院の代表たる沖北特委員の丸山穂高としての言動となっていたからです。衆院として、何らかの責任(責任を取らないという決定も含め)を取らなければならないのです。

◆辞職勧告決議は筋違い

 朝日新聞等の報道によると、丸山議員に対し、日本維新の会から「辞職勧告決議」を提出する動きがあるようです。日本維新の会の松井一郎代表は、除名処分を下した後に記者団に対し、丸山議員は「辞職すべき」と述べました。それを受けての動きと考えられます。

 しかし、いささか筋違いの動きです。なぜならば、丸山議員は、日本維新の会党員として問題を起こしたのではなく、衆院の代表として問題を起こしたからです。日本維新の会と松井一郎代表には、丸山穂高氏を衆院選挙の候補者として公認した責任(公認者が人格・識見ともに優れているとの認定)はありますが、それは衆院の対応の後で考えるべき問題です。繰り返しますが、日本維新の会という一政党でなく、衆院という組織としての責任が問われています。

 辞職勧告決議は、衆院としてのルールに則った対応でなく、衆院の意思を示す決議に過ぎません。辞職勧告決議の対象となった議員には、それに従う義務はありません。衆院の多数派が「辞職すべきと考えている」と表明するだけだからです。実際、丸山議員は、決議が可決されても辞職しないと表明しています。

 結局のところ、辞職勧告決議案は、日本維新の会の「公認」責任をウヤムヤにしつつ、丸山議員に辞職させない道を用意し、彼の政治生命を首の皮一枚でも残そうとする意味を有します。丸山議員とすれば、次の解散まで議員を続けることにより、ほとぼり冷めて再び日本維新の会から公認や支援を受けたり、国会に議席を持たない極右政党に移籍してカリスマとなったりなど、政治生命の打開策を講じることが可能になります。

◆懲罰:衆院としての責任の取り方

 国会での言動で問題を起こした議員に対しては、懲罰というルールが国会法で用意されています。今回の丸山議員のケースは、衆院の代表としての活動(委員派遣)ですので、国会議事堂という建物の外ではありますが、国会の中での問題となります。

 懲罰は、国会議員の身分に関することなので、憲法や国会法、衆参規則で規定されています。憲法58条は「(両議院は)院内の秩序をみだした議員を懲罰することができる。但し、議員を除名するには、出席議員の三分の二以上の多数による議決を必要とする」と定めています。

 懲罰の対象となるのは、院内の秩序を乱す行為です。具体的には「議院において、無礼の言を用い、又は他人の私生活に関する言論をする等」(浅野一郎編著『国会事典』有斐閣)とされています。

 丸山議員のケースは、懲罰事犯に該当する可能性が高いでしょう。なぜならば、訪問団長に対し「無礼の言を用い」たことに加え、憲法9条の「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」に真っ向から反する言動を行い、憲法99条の憲法尊重義務に反するからです。しかも、丸山議員は一議員としてではなく、衆院の代表たる資格において行いました。衆院としてこれを否定もしくは是正しなければ、衆院がそれを是認したことを意味します。典型的な懲罰事犯といっても、過言ではありません。

 懲罰の審査は、懲罰委員会で行います。注意しなければならないのは、議員が懲罰動議を提出する場合、期限が設けられていることです。40人以上(参院は20人以上)の議員の賛成で懲罰動議を提出できるのですが、それは事犯のあった3日以内でなければならないのです(国会法121条3項)。丸山議員のケースでは、5月14日に期限を過ぎてしまいました。

 懲罰委員会は、4種類の懲罰を決定できます。@議場における戒告、A議場における陳謝、B最大30日間の登院(国会出席)停止、C除名です。なお、除名に際しては「議院の秩序をみだし又は議院の品位を傷つけ、その情状が特に重い者」(衆院規則245条)と、一定のハードルを設けています。丸山議員のケースでは、衆院の代表としての憲法尊重義務違反などであるため、これに該当する可能性が高いでしょう。

 除名については、懲罰委員会での決定の後、本会議にかけられて出席議員の3分の2以上の賛成を必要とします。もし、賛成が得られなければ、他の懲罰を下すことができます。

◆丸山議員のケースをどうすべきか

 このケースは、衆院の代表としての言動による事犯ですので、衆院議長によって懲罰委員会に付されるのが筋です。議員による動議の提出には、期限がありますが、議長の場合はありません。各党で合意した上で、議長の権限で懲罰に付すのが適当です。

 懲罰委員会は、公開で開催し、丸山議員の弁明を聴取し、質疑すべきです。また、同行した関係者を参考人として招き、客観的に状況を解明することも必要でしょう。なぜならば、丸山議員の言動が衆院の意思と無関係であることを、国内外に説明する必要があるからです。

 そして、懲罰委員会の委員同士で議論し、4つの懲罰からいずれかを決定します(形式的には議長が委員会の審査を受けて宣告します)。その審議も完全公開し、有権者の投票行動に活かされることが大切です。個人的には、丸山議員の言動は、除名に相当すると考えます。ただ、どの懲罰になるにしても、審査プロセスを透明化することが、衆院の信頼回復において必要です。

 さて、丸山議員はアルコール依存症とも疑われているようです。そうであるならば、丸山議員には治療が必要となります。また、所属政党だった日本維新の会や、かつての職場であった経済産業省の方たちが、丸山議員の病気をある程度知りつつも、見過ごしてきたことになります。

 その場合、丸山議員が治療に専念することと、日本維新の会や経済産業省でのアルコール依存症の理解促進研修等が必要と考えられます。これは、衆院としての責任(懲罰)と別の課題として、真剣に考えなければならないことでしょう。

<文/田中信一郎>

たなかしんいちろう●千葉商科大学准教授、博士(政治学)。著書に『国会質問制度の研究〜質問主意書1890-2007』(日本出版ネットワーク)。また、『緊急出版! 枝野幸男、魂の3時間大演説 「安倍政権が不信任に足る7つの理由」』(扶桑社)では法政大の上西充子教授とともに解説を寄せている。国会・行政に関する解説をわかりやすい言葉でツイートしている。Twitter ID/@TanakaShinsyu

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