維新・松井代表がビザなし交流訪問団に非公開で謝罪。その内容は「国民に知らせる必要はない」

維新・松井代表がビザなし交流訪問団に非公開で謝罪。その内容は「国民に知らせる必要はない」

”お忍び謝罪”の後、囲み取材に応じた松井代表と馬場幹事長

 維新代表の松井一郎・大阪市長は6月2日、札幌市内で丸山穂高衆院議員の「戦争発言」をぶつけられた大塚小弥太・ビザなし交流訪問団団長に“お忍び謝罪”を行った。メディア関係者には面談場所への入室を許さず、謝罪映像が流れるのを阻止。筆者が前記事と前々記事で指摘した「堺市長選(6月9日投開票)への悪影響を回避する選挙対策に専念した」としか見えなかった。

◆マスコミ関係者をいっさい入れず、密室で謝罪

 6月2日13時半すぎ、「北方四島交流北海道推進委員会」(札幌市中央区)が入ったビル前に黒のワゴン車が止まり、待ち構えていた報道関係者が押し寄せる中、馬場伸幸・維新幹事長と松井代表が現れてビルの中に入って行こうとした。

 そこで馬場幹事長に「なぜ非公開なのですか」「(堺市長選の)選挙対策ではないですか」と声をかけたが、無言のまま。松井代表にも「堺市長選の選挙対策ではないですか、非公開なのは」と同じ質問をすると、一瞬こちらを振り向いて「まったく違います」と反論した。

 普段は入室可能なビルだが、この日に限っては入室禁止。面談場所となった3階の事務所にはどの報道機関も入ることはできず、出てくるのを待つしかない。そして約1時間後の14時半すぎ、謝罪を終えた松井代表と馬場幹事長がビルの前での囲み取材に応じた。

 まず松井代表は「党に所属していた議員が島民のみなさんを傷つけ、北方四島返還に向けた活動を踏みにじる発言で、ビザなし交流を台なしにした行動をしたことに、党の代表としてたいへん申し訳なく思い、謝罪をさせていただいた」と語った。

 そして、謝罪を受けた大塚団長が「国会議員があのような発言をすることに大変ショックを受けた。何度も『戦争』という言葉遣いをすべきでないと伝えたがやめなかった。元島民の思いを受け止めず、重大性も認識しておらず非常に腹が立った。(返還の)道筋を国に作ってもらうことが島民みんなの思い。与野党を問わず、そこに寄り添って行動してほしい」と語ったとも報告した。

 続いて馬場幹事長は今後の維新の対応について「G20(主要20か国地域首脳会議)など、あらゆる機会を通じて北方四島の返還を目指し頑張る」との意気込みを語った。

◆松井代表「(謝罪の内容は)国民に知らせる必要はない」

 しかし松井代表も馬場幹事長も“お忍び謝罪”になった経緯については語らなかった。そこで、筆者はその理由を聞いてみた。

――なぜ非公開になったのですか。大塚団長は「公開でもいい」と言っていたのですが。(堺市長選の)選挙対策ですか。

松井一郎代表:横田さん、勝手に思い込ませているだけで。

――大塚団長は「非公開にしてくれ」と言っていないのに非公開になったのは、維新の希望で非公開になったのではないですか。

松井代表:我々はそういうことは申し上げていません。

――大塚団長は「非公開にしてくれ」とは言っていないというのです。維新の側が「非公開にしてくれ」と言ったのではないですか。

松井代表:まったく違います。

――では、なぜ非公開になったのでしょうか。

松井代表:それは公開する必要がないからです。我々はこれを宣伝に使おうという気持ちはまったくありませんから。誠意を持って、今回、島民の方を傷つけたことに対して、その議員が我が党の所属議員だったから党代表として謝罪の気持ちを相手に伝えたかっただけですから。無理に公開する必要はないじゃないですか。

――国民に知らせる必要はないのですか。

松井代表:中身について知らせる必要はあるのですか。謝罪に来たのです。ちゃんと気持ちを持って、誠意を持って謝罪に来たので、相手はそれを受け止めてくださいました。

◆「4島返還なら戦争しかない」は、維新内部で行われていた議論だった!?

 松井代表の説明を聞いても、非公開の経緯も理由も筆者には理解困難だった。さらに、丸山議員の「戦争発言」と重なり合うような類似発言をしていた橋下徹・前大阪市長についても聞いてみた。

 5月27日配信の「Abema TIMES」で橋下氏は「みんな『北方領土は4島返還だ!』とワーワー言うけど、僕は『本当に4島返還するとなったら、戦争をするしかないでしょう』と言ってきた。ここまでは丸山議員と一緒。でも、続けて『そんなことはできないからお互いに譲歩して、2島返還しかないんじゃないですか』と言ってきた」と主張していたのだ。

――橋下徹さんは「戦争しないと4島返還は(実現)しない」という、丸山議員と同じようなことを主張していますが。

松井代表:そこだけ切り取った発言は横田さん、ダメですよ。彼(橋下氏)は「4島一括で答えを出すのなら戦争」という、あくまで戦争で4島を取られたことを持って「戦争」という手段を民間人として言っているだけで。彼も続けて「4島で戦争をするのはダメだ」ということも言っているし、「それでは、まず2島から返還なのか」という方法論について彼が言及しているだけです。戦争で4島を取り返すことは(元)島民の方も望んではおりません。

――そういう(橋下徹氏と同じ)前提で、丸山議員も話したのではないのですか。(丸山議員も橋下氏も)「言葉足らずだった」ということでは同じではないですか。

松井代表:丸山議員は政治家として、人として一線を越える発言をしたと。これはお酒が入っていようが入っていまいが、彼としては(元)島民に寄り添うところがなかったと。

――維新で議論している内容が、そのまま出たのではないですか。

松井代表:まったく違います。

◆丸山議員は橋本氏と同じ内容を主張しようとしていた!?

 橋下氏の主張は二段階で「本当に4島返還するとなったら、戦争をするしかないでしょう」の前段は丸山議員の発言と同じだが、後段の「そんなことはできないから、お互いに譲歩して、2島返還しかないんじゃないですか」という「2島返還論」を丸山議員が酔って主張し忘れた“言葉足らず”が、諸悪の根源ということになる。

 維新で北方領土問題を議論している際に出ていたに違いない、その前段を口にした丸山議員だけが「政治家として人として一線を越える発言をした」と断罪されて除名処分になる一方、同じような発言をしている橋下氏には全くお咎めがないのは二重基準(ダブルスタンダード)ではないのか。

 松井代表は橋下氏の主張に沿って「維新関係者の間では『本当に4島返還するとなったら、戦争をするしかないでしょう』という非現実的な見方を示したうえで現実的な『2島返還論』に行き着く議論をしていましたが、丸山議員は前段部分だけを主張してしまった。後段部分が抜けた言葉足らずをお詫びします」と謝罪するべきだったのではないか。

 橋下氏と同様に、膠着状態にある北方領土問題の本質を口にしたものの、後半部分の「2島返還論」を言い忘れた可能性のある丸山議員。その言い分を聞くことなく「政治家失格」「人間失格」の烙印を押して、“トカゲの尻尾切り”のように丸山議員の除名と議員辞職勧告で問題の決着を図ろうとする維新の姿勢こそ、問題なのではないか。

<取材・文・撮影/横田一>

ジャーナリスト。小泉純一郎元首相の「原発ゼロ」に関する発言をまとめた『黙って寝てはいられない』(小泉純一郎/談、吉原毅/編)に編集協力。その他『検証・小池都政』(緑風出版)など著書多数

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