イージス・アショアの秋田・山口配備は「米国の基地を守るため」!?

イージス・アショアの秋田・山口配備は「米国の基地を守るため」!?

イージス・アショアの早期配備を進める安倍首相

 6月23日のNHK『日曜討論』で、夏の政治決戦にどう臨むのかを与野党幹部が討論した。そこで取り上げられた課題は「年金問題」と「消費税増税」と「イージス・アショア」の3つ。イージス・アショアについては、自公維が必要性を認めたのに対して、野党四党(立憲民主・国民民主・共産・社民)が白紙撤回を求めた。与野党各党の立場の違いが鮮明となったのだ。

◆与野党対決の構図が鮮明化したイージス・アショア配備問題

 維新の馬場伸幸幹事長が「イージス・アショアが山口と秋田に配備されれば、国内での防衛力は高まる」と評価すると、続いて自民党の萩生田光一幹事長代行も「幸い馬場さんがおっしゃっていただいたように」と切り出して、こう続けていった。

「四方を海に囲まれた日本の安全保障を考えると、現行イージス艦だけでは守り切れない物理的な問題もある。国内2か所配備をすることによって日本列島すべてをそういった危機から守る。危険から守っていく体制が強化される」

 連立を組む公明党の斉藤鉄夫幹事長も「イージス・アショアが日本の専守防衛にとって抑止力で平和を守るために重要」と強調、足並みをそろえた。

 これに対して野党は、立憲民主党の福山哲郎幹事長が「ゼロから一から出直すべき」と口火を切ると、社民党の吉川元幹事長も「撤回すべき」、国民民主党の平野博文幹事長も「ゼロに戻すべき」、そして共産党の小池晃書記局長も「(配備)計画の撤回しかあり得ない」と同調した。

 イージス・アショア配備をめぐる与野党対決の構図が鮮明化し、参院選で一大争点になる可能性がさらに高まってきている。

◆「現場を見たい」と求める野党議員と防衛官僚が押し問答

 イージス・アショア関連の「野党合同ヒアリング」(6月13日初会合)が開かれた翌14日、国会議員有志5名が配備予定地の「陸上自衛隊新屋演習場」(秋田市)を視察。ゲート前で防衛官僚から説明を受けたが、演習場内への立ち入りは「演習の準備中」を理由に拒否された。

 前日のヒアリングで「津波対策の必要性」を認めさせたばかりの野党議員は納得せず、「配備予定地の津波水没想定地区、土地かさ上げが必要な現場を見たい」と何度も求めたが、防衛官僚がかたくなに拒むという押し問答が繰り返された。

 続いて野党議員は近隣住民との意見交換会に臨み、「地価が下落し始めている」「転居しようと子供に言われた」「演習場に学校が隣接。教育上も良くない」「街が壊れていく」といった切実な声に耳に傾けた。

 視察議員団を代表して辻元清美・国対委員長(立憲民主党)は「国会で追及していく」と約束。その後の囲み取材でも「こんなに近くに保育園や学校がある。背筋がぞっとした。これは絶対にダメだと思った」と言いながら、視察を取りまとめた。

「『新屋ありきだった』と確信を深めましたし、選定過程も非常に不透明、そして(新屋演習場内の)現地も見せない。情報開示も不十分で、『白紙撤回をするべきだ』というように野党は追及、政府に決断を迫っていきたい。イージス・アショアは必要なのか。『不必要ではないか』という根本的議論もする必要がある」(辻元国対委員長)

◆日本はアメリカにとって、“巨大なイージス駆逐艦”!?

 そして先述の『日曜討論』では、共産党の小池書記局長が「なぜ新屋ありきなのか」という謎解きに役立つ論文を、次のように紹介していた。

「(防衛省が調査報告書で)なぜ、こんなズサンなことをやったかと言うと、結局、最初から『秋田の新屋と山口のむつみ(陸上自衛隊演習場)ありき』ということじゃないですか。

 なぜ山口か。なぜ秋田か。結局、『北朝鮮の北部からハワイに向かって飛ぶミサイルは概ね秋田の上空を飛ぶ。グアムに向かって飛ぶミサイルは概ね山口の上を飛ぶ』ということで、防衛省は『違う。日本を守るためだ』と言うが、陸上イージスの射程距離は2500kmだから、どこに置いても日本を守れるわけで、秋田と山口に置く理由はない。

 これは安倍政権とも関係が深い『CSIS(戦略国際問題研究所)』という(米国民間)シンクタンクの論文ですが、これに何と書いてあるかというと、『太平洋の盾』『“巨大なイージス駆逐艦”としての日本』。中を見ると、『アメリカのハワイやグアムや東海岸の基地を防護できる』(とある)。

 アメリカの基地を守るために、住民の声も耳を傾けずに、ミサイルを撃ち落せるのかもわからないのに6000億円以上も使う」(小池書記局長)

 実はこの点は昨年8月、9月の段階で当サイトで牧田寛氏(@BB45_Colorado)によって指摘されていた点だ。

●"米軍迎撃シミュレーションから垣間見える、イージス・アショア日本配備計画の「不自然さ」"|HBOL

●"「誰がためのイージス・アショアか?」配備地から導き出される、ある推論"|HBOL"

 あらゆる点から見ても、日本の本土防衛のためには秋田と山口は不的確なのである。

◆日本にイージス・アショアを買わせれば、米国は「10億ドルを節約できる」

「Shield of the Pacific: Japan as a Giant Aegis Destroyer(太平洋の盾:“巨大なイージス駆逐艦”としての日本)」と銘打った、米国民間シンクタンクの論文を去年8月にフェイスブックで紹介したのが、福留高明・元秋田大准教授だ。そこには、Thomas Curako上級研究員が発表した論文の、4つの要点が次のように列挙されていた。

@日本に2箇所のイージス・ショア拠点が実現すれば、太平洋地域のミサイル防衛能力を増強する重要な第一歩となるだろう。そして、その潜在的可能性は計り知れない。

A今日、アジア太平洋地域におけるミサイルの脅威は多種多様であり、日米の共同防衛体制もその状況に対処しなければならない。両国間においていくつかの変化が進行中で、いまや日本は“巨大なイージス駆逐艦”としての役割を構築しようとしている。

B今回、秋田・萩に配備されるイージス・アショアのレーダーは、米国本土を脅かすミサイルをはるか前方で追跡できる能力をもっており、それによって、米国の国土防衛に必要な高額の太平洋レーダーを建設するためのコストを軽減してくれる。このことは日米同盟を強化するだけでなく、そのレーダーを共有することでおそらく10億ドルの大幅な節約が実現できる。

C現在、米国本土についてはGMD(米本土防衛システム)によって長距離弾道ミサイルの攻撃から守られている。一方、ハワイ基地・グアム基地・東海岸などの戦略拠点は攻撃から手薄な状況に置かれている。しかし、日本やNATOのイージス・アショア配備計画によって、これらを利用することにより、かかる問題を解消できる見通しがついた。

 これは、イージス・アショア配備の“本当の狙い”を浮き彫りにする、日本人必読の論文ではないか。米国に「NO!」と言えない安倍首相が、トランプ大統領に“米国製兵器の爆買い”を迫られてイージス・アショア購入を決定、そのツケが秋田県民と山口県民をはじめとする日本国民につきつけられている。

<取材・文・撮影/横田一>

【横田一】

ジャーナリスト。小泉純一郎元首相の「原発ゼロ」に関する発言をまとめた『黙って寝てはいられない』(小泉純一郎/談、吉原毅/編)に編集協力。その他『検証・小池都政』(緑風出版)など著書多数

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