“女性装”の東大教授が「れいわ新選組」の公認候補に。「新たな政治の原則は『子供を守ること』」

“女性装”の東大教授が「れいわ新選組」の公認候補に。「新たな政治の原則は『子供を守ること』」

6月27日、会見を行う山本太郎氏(右端)と安冨歩氏(右から2人目)

◆今の日本でいちばんの問題は「生きづらさ」

 参議院議員・山本太郎氏が代表を務める政治団体「れいわ新選組」が6月27日午後4時から東京・四谷の事務所で記者会見を開いた。

 いったんは前日に会見がセットされたものの、野党が会期末を控え衆議院で内閣不信任案を提出したことで中止。仕切り直しとなっていた。

 会見のテーマは、蓮池透氏に続く2人目の公認候補予定者の発表。山本氏は冒頭、新たな候補者の横顔をこんなふうに紹介してみせた。

「今の日本でいちばんの問題は何かと言ったら『生きづらさ』。生きづらさの原因には経済的な困窮もある。でも何よりも、男らしさ、女らしさ、子供らしさ、母親らしさといった『こうあるべきだ』という枠にはめられて生かされ続ける現代は、まさに“地獄”であると。

 そんな中で、価値観をブレイクスルーされた方。自分らしさを最大限に解放されている方、ぜひこの方に候補者になっていただきたいと思って、お話をさせていただきました」

 一斉にカメラのストロボがたかれるなか、会見場に登場したのは安冨歩・東京大学東洋文化研究所教授。記者団からの質問を受ける前に、まず自らマイクを握った。

「今回、太郎さんから『出てほしい』という(話があった)。実はその話をいただく前には、一度握手したことがあるだけの間柄でした。そんな関係で、しかもメールで頼まれたんです。

 そんなものを引き受けるのは『どうかしてるな』と自分でも思うんですけど。でも、『今の時代に私が何かできることがあるとしたら、これは非常にいい機会ではないか』と思って、選挙に出させていただくことにしました」(安冨氏)

◆エリートが人々を“地獄”に連れて行く

 安冨氏はこう続けた。

「最も大きな目的は、先ほどご紹介いただいた通り、現代は“豪華な地獄”。見た目はとても素晴らしいが、中身は息が詰まって苦しくてたまらない。そういう社会です。

 真綿で首を絞められるんだけど、その綿はオーガニックみたいな(笑)。そこを何とかしないことには、私たちは決して幸せにはなれない。日本社会はやがて崩壊に向かっていくんじゃないかと、非常に危惧しています」

 安冨氏の専門は満州国経済史。研究を通して「エリートが真剣かつ真面目に取り組むことによって、人々を“地獄”に連れていく」という構図が見えてきたという。

 東日本大震災・福島原発事故後の2012年に『原発危機と「東大話法」』(明石書店)を上梓。“選良”の言葉遣いと立ち回りの欺瞞性を丹念に検証した。さらに、個人ブログ「マイケル・ジャクソンの思想(と私が解釈するもの)」などを通じて、「魂の脱植民地化」を訴えてきた。

 2013年からは“女性装”をするようになった。2018年には「アウト×デラックス」(フジテレビ系)に出演し、マツコ・デラックス氏に「かわいい」と絶賛されている。

◆「政治の原則」を変えなければどうにもならない

 安冨氏は2018年、埼玉県東松山市長選挙に出馬。馬に乗ったり、選挙権のない子供たちに話しかけたりする独自の選挙運動を展開して注目を集めたが、落選している。

「普通の選挙は、政策を訴える建前になっています。だから、太郎さんもれいわ新選組もいくつかの政策を掲げて、それを推進するという“建前”になっています。でも、私は政策をどうこうして何とかなる段階ではもうない、と考えている。

 そうではなく、政治の原則を変えないといけない。私たちの住むこの“豪華な地獄”は『国民国家』という名前のシステム。これがもはや機能しなくなった。

 機能しなくなり始めたのは、第一次世界大戦のとき。もうそこから100年も経っているので、完全に機能しなくなっている。だけど、それがまだ私たちの社会の根幹になっていることに問題の本質がある」(安冨氏)

 機能不全に陥った「国民国家」が、インターネットや高齢化、アジアの台頭といった大きな波に洗われて、崩壊の危機に瀕している。「これが私たちの時代の相」だと安冨氏は指摘する。

「この時代にあっては、社会の目的・政治の原則である『国民国家制度』の維持。つまり別の言葉で言えば、『富国強兵』です。『富国強兵』と言ってしまうと古臭いんで『経済発展』とか『GDP何%』とか言っていますが、それは実は言い換えに過ぎないと私は思います」(同)

◆「国民国家の維持」に代わる新たな原則は「子供を守ること」

 この国の社会は「新たな原則」に移行する段階に来ている、と安冨氏は言う。ではその「原則」とは何か。

「私たちに生きる目的は何かあるのかと考えたら、それは『子供を守ること』です。アリやハチの社会であっても目的は同じです」(安冨氏)

 政治の判断すべての基礎に、「子供を守ること」を置く。これが生きづらさから私たちを解放し、現代の危機から私たちを救い出す「唯一の道だ」と安冨氏は語った。

 安冨氏の言葉は、既存の政治ジャーナリズムがすくい取るには難しい位相にある。だが、誰もが漠然と感じ取っていたことを明快に切り出した発言でもある。

◆消費税減税を野党共通の政策として掲げたかった

 れいわ新選組に寄せられた寄付金は2億円を超えたという。「10人は確実に擁立できる」と山本氏は言明する。そして、公示が近づいて注目度がいよいよ高まってきたのが、「山本氏はどの選挙区から出るか」ということだ。東京選挙区から出るのか、比例に回るのか。

「ここまで引っ張ったら、最後まで引っ張らないと面白くないでしょう。それに対して、一部の政党から『あいつ、どうするのか。さっさと言えばいいのに』みたいな空気があります。『どうぞ引き続き、痺れてください』という気持ちです」(山本氏)

 山本氏は旧自由党時代から「消費税減税」を共通の旗印に、野党が大同団結する道を模索してきた。野党は全国に32ある一人区で候補者一本化を実現させたものの、小沢一郎議員(国民民主党総合選挙対策本部長相談役)が提唱する「本気の共闘」には、ほど遠い状況にある。山本氏は野党共闘の現状をどう見ているのだろうか。

「『野党が一つにならなきゃいけないときに山本が離れて、これは“野党共闘壊し”じゃないか』という表面的なことを言われる方もいらっしゃいました。私としては、消費税を減税する。多くの方が苦しんでいる状況の中で、これを野党共通の政策として(掲げたいと思っていた)。人々の暮らしを考えるうえでも、政局という点でも、消費税減税する以外は野党に勝ち目はない」

◆「2000万円!」と攻め続けるのは、消費税を減税したくない側にとって「プラスの話」

 今年5月に『なぜリベラルは敗け続けるのか』(集英社インターナショナル)を上梓した岡田憲治・専修大学法学部教授は、参院選の争点について「銭金(ゼニカネ)以外にない」と明言。「正しいメッセージではなく、迷っている10%に届く言葉を考えないとダメなんだよ。それが大人の喧嘩をするってこと」(『BLOGOS』掲載のインタビュー記事より)と説いている。

「残念ながら、(野党の合意では)消費税減税にまでは行けなかった。『凍結』ですか……。ってことは、『いつかは溶ける』って話ですよね。だから、将来的には増税も見込んだ話だと思う。やはり、(与野党間の)対立軸が見えづらいまま選挙に突入していく恐れがある。

 年金の問題(もそうです)。危機的な状況にあるのは、安倍政権だけの責任ではないわけです。もちろん年金資金を投資したり、その幅を広げたりというところには問題ありと言える。

 だけども年金のあり方は、歴代の政治が『安定的に運営するためにはどうしたらいいか』ということを(考えることを)怠ってきた『連帯責任』なんです。そのうえで、年金だけ『2000万円!』と(与党を)攻め続けるのは、非常に難しいだろうと思っています。

 これは『消費税を減税したくない』と思っている勢力には、かなりプラスの話なんです。どうしても年金の話になると、『財源は消費税』と語られることが多いからです。

 いろいろなことはありますが、『老後の不安』という意味での年金問題と、『目の前の不安』という部分での消費税問題。少なくとも二本立てというか、両方大事だよねっていう部分を押し出していく必要があるだろうと。(私は)まだ諦めず、引っ張っている(笑)。しつこいでしょう、性格」(山本氏)

◆山本氏「公認の条件は、本気で戦える大人」

 山本氏はまだ「野党共闘」を諦めてはいないという。「共闘」とは、べったり仲良くすることではない。各党派が大きな基本政策でまとまり、できれば一つの届出政党のもとで選挙を戦う。個別政策について違いがあれば、思ったことを主張するのは構わない。そもそも自民党は意見の異なる派閥の連合体だし、自公両党の政策や理念が実は「水と油」であることも周知の事実だ。

「とは言いながらも、野党で力を合わせて政権交代を目指すために、ねじれができるようなイメージで戦っていかなきゃいけないと思っています。一人区およびそれ以外の複数区などでも、私が応援に入って票を減らさないということであれば、積極的に応援に入っていきながら、自分たちの選挙運動もやっていきたい」

 れいわ新選組が「公認予定候補者の条件」とするのは「本気で戦える大人」だという。6月28日の記者会見では、3人目が発表される予定だ。

<文・写真/片田直久>

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