政策のない自民党と、エッジの立った政策をぶつける野党統一候補の一騎打ちとなった参院・宮城選挙区の面白さ

政策のない自民党と、エッジの立った政策をぶつける野党統一候補の一騎打ちとなった参院・宮城選挙区の面白さ

政策のない自民党と、エッジの立った政策をぶつける野党統一候補の一騎打ちとなった参院・宮城選挙区の面白さの画像

◆「野党が具体性が欠ける」は本当なのか?

「野党は反対ばかり」、「対案を出せ」――。

 もはや常套句のように使われるようになったこの言葉だが、果たして野党側には本当に「対案」や「具体的な政策」がないのだろうか?

 当然のことながら否、である。この種の愚かな「印象操作」を覆す好例が、目前に迫った今年の参院選の最前線で、繰り広げられている。

 祖父・愛知揆一、父・和雄と三代続く強固な地盤を引き継いだ自民党の愛知治郎候補予定者と、地元エフエム仙台のパーソナリティを経て、今回初めて立候補となる立憲民主党公認の石垣のりこ候補予定者の一騎打ちとなっている宮城選挙区が、その現場だ。

「世襲」の「男性」という既得権益ド真ん中のような現職候補を相手に、「全くの新人」で「女性」である野党候補が挑むというのが、今回の参院宮城選挙区の構造。ここまで明確な対比もなかなかないだろう。しかも、「新人女性候補」は、エッジの立った政策を矢継ぎ早に訴え続け、「世襲現職男性候補」が有効な反論を成せていないというのだから、驚きだ。なぜここまで鮮やかな対比が生まれたのか?

◆一介の新人女性候補が打ち出す「具体的政策」

 その謎を解く鍵を、とある東北在住ツイッターユーザが、地元有権者ならではの視点で投稿した連続ツイートに見つけた

 ひとまず、そのツイートの内容を見てみよう

“参議院選挙の注目選挙区である宮城県。その与野党各立候補予定者の政策パンフレットを入手しましたので政策各論について画像付きで比較しました。投票日は7月21日。検討の一助になれば幸いです。”

“●消費税・税制

【愛知治郎】

言及なし。※10月に迫った消費増税は自民党の方針だが説明等もなし。

【石垣のりこ】

「あげるべきは賃金であって消費税ではない」財源は法人税と所得税。消費税はゼロでもよい。欠陥のある税制に言及”

“●復興政策

【愛知治郎】

「復興のその先へ。災害から国民を守る」具体的解説なし。神社で復興の祈願をしています。

【石垣のりこ】

「復興をあきらめない」まだ復興が終わっていないという事を見据え、アグリファースト(農業振興)、過疎化・困難に直面している方々や事業への支援に言及。”

“●エネルギー政策

【愛知治郎】

「エネルギーの安全保障」内容について説明なし。原発への言及なし。

【石垣のりこ】

「原発ゼロの社会を目指して」女川原発のある宮城県。その県民の声をくみ取り、原子力ありきのエネルギー政策を見直すとしています”

“●多様性と人権

【愛知治郎】

言及無し

【石垣のりこ】

「多様性は社会を強くする」差別をなくす、人権を守ることは、社会を強くすることと説明。日本が世界的に立ち遅れている点を指摘し、世界標準の人権意識を日本に根付かせることを目指す”

“●少子化対策

【愛知治郎】

「子どもを守り抜く」

具体的言及なし

【石垣のりこ】

「大人が余裕を持とう」子どもの貧困解決のため、賃上げや長時間労働の解消が必要と主張”

(以上、Tad氏のツイートより)

 編集部は実際にこれらのツイートを検証すべく、愛知・石垣両陣営の政策が書かれたパンフレットを入手。より詳細に渡り検証してみることにした。

 前掲のツイート群ですでに「世襲男性候補」と「新人女性候補」のどちらが優秀かは明確ではあるが、実際に自民党・愛知候補のパンフレットに目を通すまでは、軽々しく判断を下すわけにいかない。 そこで編集部は仙台に急行。両陣営のパンフレットを入手し、比較を行ってみた。

◆愛知治郎候補のパンフレットに書かれていたこと

 まず愛知治郎陣営のパンフレット。「政策」と書かれた部分では、次の4つの項目が書かれていた。見やすく、目立つデザインではある。

【政策】

●復興のその先へ災害から国民を守り抜く

 さらなる復興を後押しする力強い掲載の実現と、その先へ進むための支援、災害から生活を守る強い街づくりを進めます。

●子供の未来を守り抜く!

 子育て支援や教育改革に取り組み、子供たちが未来に夢を描ける、子供たちに胸を張れる政治を実行します。

●安全保障は国の柱 国民の安心・安全を守り抜く!

・国土・国民の安全保障

・食の安全保障

・エネルギーの安全保障

●力強い経済

 築き上げてきた資産を未来に生かし、より大きく成長する経済を作り上げます。

「政策」と書かれた部分は、この4つが掲げられているだけなので、非常に引用しやすい。

 他には、政策欄の右側に、次のような文言が書かれていたことも補足しておこう。

“国民の生命・身体・財産を守るため、憲法がどうあるべきか、自衛隊の役割を含め議論しなければなりません。もちろん安全保障もまずは外交であります。力ではなく外交カードであるODA(政府開発援助)を改めて戦略的に見直し活用していくべきです”

“気候変動は食料安全保障にも大きな影響を与えます。この変化に対し、機動的かつ的確に対処し、台風や洪水などの自然災害から国民を守るため国土強靭化を進めてまいります。”

“農業の担い手を育て、水産資源を守り、日本の食を確保します。”

“富を生み出すためには1800兆円の家計金融資産を有効に活用することが必要であり、そうすることでデフレ脱却を確実にし、力強い経済成長を実現します。また、それをけん引する人材を育てていくために教育改革にも取り組んでまいります。”

 確かに、字面は立派ではある。ぜひ進めてもらいたいと思う。

 また、パンフレット裏側には前掲ツイート通り、復興の推進と日本の安心・安全を神社に祈願している様が描かれていた。

◆石垣のりこ候補予定者のパンフレットに書かれていたこと

 一方の石垣候補パンフレットはこれだ。

 表紙こそ政策についての言及はないが、ページをめくると熱量を感じる文字数とグラフを使って仔細に渡り政策を説明している。

 また、さらに中を見ていくと、立憲主義、差別、地方の問題、震災復興、少子高齢化などについて具体的なアイデアを語っている。

 まず目立つのは明確な主張。「あげるべきは賃金であって消費税ではない!」だろう。愛知候補のパンフレットでは、党の方針である消費税増税決行については何も触れられていないのと対象的だ。

 その根拠や、財源の「代替案」についても、細かく説明がされている。

 また、少子高齢化や地方格差解消、震災復興、差別や人権についても以下のような主張を挙げている。

【少子高齢化】

 子供を育てる環境作りのために、まずは大人が「余裕」を持てる社会づくりとして、賃上げを筆頭に、教育や保育従事者の就労環境改善を挙げている。

【地方格差解消】

 地方再生は「アグリファースト」を掲げている。第一次産業に従事する人々が安心して仕事をし、生活ができる社会を目指すことで第一産業の活性化を促すという。また、子育て環境の充実や小さくても新しい産業分野の誘致など、それぞれの地域と人々の実情にあった方法で過疎対策を行うとしている。

【震災復興】

 地元企業を支援し、復興を地元経済の活性化に繋げるとしている。また、原発については再稼働の是非を問う前に、正確な情報の開示と説明のもとに原子力ありきのエネルギー政策を見直していくべきであるとしている。

【差別・人権】

 多様性は社会を強くするという信念のもと、女性差別だけでなくLGBTQ+や外国人への差別などに反対し、世界標準の人権意識を根付かせるとしている。

◆問われる有権者の「意識」

 どうだろうか? 新人候補で「消費税撤廃」ばかりが話題になっている石垣候補だが、明確なビジョンを持ち、かなり具体的なところまで踏み込んだ政策を提案していることがわかる。

 一方の愛知候補は、祖父の代から引き継いだ盤石な地盤と、参議院議員18年、当選3回というキャリアがベースにあるため、「言わずともわかる」ということなのかもしれないが、「その先」や「夢」、「力強い」という具体性のないふんわりとした耳障りの良い言葉はあるものの、「では具体的にどのような政策を掲げているのか」については、何一つ書かれていない。

 この強烈な対比は、「紙に書かれたもの」に限ったわけではない。

 過日、ニコ生で中継された日本青年会議所・宮城ブロック協議会の主催の愛知?石垣公開討論会でも両候補の実力の差は明らかになった。具体的な政策が次々に繰り出す石垣に対し、愛知候補は明らかに防戦一方。愛知候補から具体的な反論がなされることは一切なかった。

 公開討論会での覇気のある喋り方、力強い表情から見るに、石垣のりこ候補予定者は、意見・主張・政策を完全に咀嚼しているのがわかる。

一方の愛知候補予定者は、「しっかりとした議論を進めていく」と漠然としたことを、滑舌の悪い喋り方で繰り返すだけ。おそらく、政策のことなど深く考えたことがないのだろう。

 2019年の参院宮城選挙区で見られるこの「強烈な対比」は、破綻が明確なアベノミクスを統計偽装やその場しのぎの答弁で取り繕い、国内向けには威勢のいい言葉で排外主義を煽ることで外交の失敗を誤魔化そうとしている、空っぽの自民党政権と、国会でさまざまな具体的な対案を提案しつつも数の力で封殺されている野党の姿の縮図でもある。

「野党には具体的な政策がない」

 こうした紋切り型の表現に何の根拠もないことは、参院宮城選挙区を見れば明らかである。2019年の参院宮城選挙区では、「政策のことなどどうでもいい世襲の男性議員」に「ロジックとサブスタンスで強烈な喧嘩を仕掛ける新人女性候補」が挑む構図となっている。あの選挙区をみよ。「野党には具体性がない」などという表現は思い込みに過ぎないことがわかるだろう。今年の宮城の夏は、熱い。

<取材・文/HBO取材班>

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