TBS『news23』党首討論信号無視話法分析で露呈。安倍政権の「選択的夫婦別姓」へのスタンス

TBS『news23』党首討論信号無視話法分析で露呈。安倍政権の「選択的夫婦別姓」へのスタンス

YouTube「TBS NEWS」チャンネルより

◆選択的夫婦別姓についての安倍首相発言の「赤信号」っぷり

 参議院選挙公示を翌日に控えた2019年7月3日、TBS系列の報道番組「news23」では7党首による党首討論を放映した。

 本記事では、日本人女性が長年にわたって大きな不便を強いられてきた選択的夫婦別姓問題について、3党首(自民党・安倍晋三総理、公明党・山口那津男代表、立憲民主党・枝野幸男代表)が見解を示した約3分間のやり取りをノーカットで信号無視話法分析していく。具体的には、信号機のように3色(青はOK、黄は注意、赤はダメ)で直感的に視覚化する。

 3党首の回答を集計した結果、このようになった。

<色別集計・結果>

●枝野幸男代表:赤0% 黄0% 青92% 地の色8%

●安倍晋三総理:赤46% 黄10% 青22% 地の色22%

●山口那津男代表:赤0% 黄0%青98% 地の色2%

(*発言順)

 枝野代表と山口代表は青信号が9割以上を占める中、安倍総理の赤信号(論点のすり替え)の多さが際立つ。

 どのような討論だったのか、約3分間にわたってノーカットで文字起こししながら視覚化していきたい。

◆立憲民主・枝野代表の回答

 まず、アンカーの星浩氏は「選択的夫婦別姓は賛成42.5%、反対29.3%」と、内閣府の調査でも賛成派が多数を占めている現状を示した上で、選択的夫婦別姓を提起してきた枝野代表に対して、この問題の意義を尋ねる。

 以下、枝野代表の回答。

枝野代表:”はい。あのー、やはりですね、通称使用などでは、あー、特に社会的に活躍をされている女性が色んな不都合を受けるんですよね。特に海外から、パスポートで併記したって、こんな制度は外国に無いですから、えー、いろんな説明しなきゃいけませんし。それから、法律上の氏を変えるだけでもですね、様々な手続きとコストがかかるわけですから。それをですね、あの、みんな別姓にすると言うんだったら、それは、あの、色んな意見を聞かなきゃいけませんが、別姓にしたい人だけ認めてくれ、っていうんですから、これを否定する理由は全く無い。

えー、法制史もですね、私が国会議員になる前から、これやるべきだってことを出しているのに、これだけ進んでいない。えー、もう、そろそろ、これ限界ではないかと。そろそろ結論を出すべきだと私は強く感じてます。 ”

 星氏の質問の仕方が「問題の意義」という広い聞き方だったことも影響しているが、枝野代表の回答は一貫して、選択的夫婦別姓問題の意義に関して述べており、全て青信号(質問に対する回答)とした。

◆自民・安倍総理の回答(1回目)

 続いて、アンカーの星浩氏は「選択的夫婦別姓についての考え方」を安倍総理に尋ねる。

 先ほどの枝野代表の時と同様、「問題についての考え方」という広い聞き方をしているため、選択的夫婦別姓についての自身の考えをただ述べれば青信号となる、非常に易しい質問だ。

 以下、安倍総理の回答。

安倍総理:”あのー、まず冒頭ですね、星さんが、働きやすい、女性が働きやすい、ということを言われましたね。で、あの、この、おー、5年間でですね、280万人の女性が働き始めました。25歳以上の、ですね、全ての世代で、え、就業率、は、ですね、アメリカを超えています。そして、えー、いわば、役員、だ、あ、あのー、大企業の役員の、ボードメンバーのですね、これは政権とる前の倍になっている、ということは申し上げておきたい、と、えー、思います。それから賃金格差もですね、今までで一番少なくなっている。えー、そして、賃金の上昇率も一番高くなっている、ということは申し上げておきたいと思います。(赤信号)

 ま、その上で、えー、今のグラフ、うー、においてもですね、意見が、えー、もちろん賛成の方が多いのですが、分かれているという状況で、(黄信号)

 え、まさに、えー、基本に係ること、でありますから、あのー、慎重に議論していきたいと思っております。(青信号)”

 1段落目は以下のように論点をすり替えており、赤信号とした。

質問内容:選択的夫婦別姓に対する総理の考え

↓ すり替え

回答内容:女性の労働人口、就業率、役員数、賃金格差、賃金上昇率

 要は、「女性の働きやすさ」という観点で関係しそうな女性の労働に関する数値改善をひたすら挙げ続けただけである。

 2段落目は、星浩氏がわずか1分半ほど前に紹介した内容(=その場にいる参加者が全員知っており、説明する必要が全く無い内容)をあえて説明しており、黄信号とした。

 ちなみに、星浩氏が紹介したフリップには「賛成42.5%、反対29.3%」という文字が書かれており、「グラフ」ではなかった。

 3段落目でようやく「慎重に議論していきたい」というゼロ回答を示し、この部分のみが青信号にあたる。

◆公明・山口代表の回答

 3人目に、自民党とは異なるスタンスを表明している公明党の山口代表に星浩氏は話を振る。

 以下、山口代表の回答。

山口代表:”はい。認めるべきと、私はですね。今は一人っ子のご家庭も多いんですね。一人っ子同士で結婚をする。そうすると男性であれ、女性であれ、自らの名字をそのまま続けたい、残したい。こういう、思う人はとっても多くなっている。そういう社会的実体があって、えー、法制審議会で、法律上も問題ない。そして、諸外国でも、これ実施して問題なくやってる国が多いと。どれをとっても、もう認めて良い環境ができてるわけですね。社会的必要性があると思います。(青信号)”

 解説するまでもなく、選択的夫婦別姓に関する公明党のスタンスを述べているため、すべて青信号とした。

 また、山口代表は3党首の中で「あのー」「えー」などの不要な言葉や同じ言葉の繰り返しがほとんどなく、最も聞き取りやすい。その点は、冒頭に紹介した色別集計で灰色(=本文中では「地の色」)がわずか2%という数字にも如実にあらわれている。(枝野代表は8%、安倍総理は22%)

◆安倍総理の回答(2回目)

 枝野代表、山口代表が選択的夫婦別姓に明確な賛成意見を述べた中、「慎重に議論する」としか回答しなかった安倍総理。ここで小川彩佳キャスターは安倍総理にだけ再質問する。しかも、「選択的夫婦別姓に賛成ですか?反対ですか?」と明確に2択を示した上で聞き直したのだ。

 以下、これに対する安倍総理の回答。

安倍総理:”あの、まず、マイナンバー制度とですね、パスポートについては通姓使用が可能と、安倍政権で、可能と、なりました。(赤信号)

 あの、これー、私自身の意見というより、私、自民党総裁として、自民党を代表してますから。自民党において、え、議論が整わないことをですね、言うべきではないと思ってます。(青信号) ”

1段落目は以下のように論点をすり替えており、赤信号とした。

質問内容:選択的夫婦別姓に賛成か反対か

↓ すり替え

回答内容:通姓使用の可否

 賛成か反対かを2択で問われてもなお、マイナンバーやパスポートでの通姓使用の可否という論点ずらしを行い、選択的夫婦別姓の質問には頑なに答えない安倍総理の姿勢が再び鮮明になる。

 2段落目は青信号としたが、「自民党で議論が整わないので、自民党の代表である私が言うべきではない」と言う事実上のゼロ回答である。

 ここで小川キャスターも回答を引き出すことを諦め、次の話題に移っていく。

 ここまで紹介してきた約3分間の討論はTBS NEWSのYoutubeチャンネル(下記の動画の16:35〜19:46)で視聴可能だ。

◆小川キャスターの総括

 ちなみに、翌4日の同番組内で小川キャスターは党首討論についてこのように述べている。

「政策だけではなく、党首の人となりというか、素顔の部分も垣間見えた」

「選択的夫婦別姓は家族のあり方というより、女性の尊厳をどう捉えるのかという問題。野党とともに与党の公明党も賛成。自民党は賛否を決めていないという中で、安倍総理ご自身の賛否についてお伺いできなかったのは、ちょっと残念」

 四半世紀以上も前から法改正が議論に挙がりながら、いっこうに進まなかった選択的夫婦別姓。その大半の期間で与党であり、2019年現在においても「党内での議論が整わない」ことを理由に賛成か反対かすら総裁が答えない政党が、自民党である。

 その自民党が圧倒的多数の議席を有している現状のままでは、選択的夫婦別姓は間違いなく進まない。あなたが選択的夫婦別姓を認めて欲しいと考えているならば、こうした現状を踏まえた上で、7月21日投開票の参議院選挙であなた自身の明確な意思表示をすることが、選択的夫婦別姓を前に進める力になるだろう。

<文・図版・動画作成/犬飼淳>

【犬飼淳】

TwitterID/@jun21101016

いぬかいじゅん●サラリーマンとして勤務する傍ら、自身のnoteで政治に関するさまざまな論考を発表。党首討論での安倍首相の答弁を色付きでわかりやすく分析した「信号無視話法」などがSNSで話題に。最近は「赤黄青で国会ウォッチ」と題して、Youtube動画で国会答弁の視覚化に取り組む。

 犬飼淳氏の(note)では数多くの答弁を「信号無視話法」などを駆使して視覚化している。また、同様にYouTubeチャンネル(日本語版/英語版)でも国会答弁の視覚化を行い、全世界に向けて発信している

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