新潟選挙区で、安倍首相と枝野代表の対照的な“応援演説バトル”。どちらに軍配が上がる!?

新潟選挙区で、安倍首相と枝野代表の対照的な“応援演説バトル”。どちらに軍配が上がる!?

7月5日、塚田一郎候補への応援演説のため新潟入りした安倍首相

◆被災地支援、観光対策を訴えた安倍首相

 参議院選挙新潟選挙区では、「忖度道路」発言で国交副大臣を辞任した現職の塚田一郎候補と、「脱・忖度政治」を訴える野党統一候補の打越さくら氏が激突し、全国有数の激戦区となっている。与野党幹部が続々と応援に駆けつけ、安倍首相と枝野代表の“応援演説バトル”も繰り広げられた。

 先陣を切って現地入りをしたのは安倍首相。告示翌日(7月5日)に山形沖地震の被災地・村上市に入り、ライフラインの復旧などに取り組むことを約束し、温泉地での宿泊キャンセルが相次いでいることを受けて観光消費への割引対策実施も表明。その直後に安倍首相は塚田氏への支持を訴えた。

「(山形沖地震の)発災後、塚田さん、大活躍です。やはり新潟で生まれ、育ち、そして、やがては新潟の土になっていく。誰よりも新潟を愛する男、塚田一郎。本当に頑張ってくれたと思います。

 でもこの選挙、大変厳しい戦いであります。相手候補、いきなり県外からやって来て。塚田さんは新潟で生まれ育って、新潟のために頑張りたいという思いでこの選挙に出ている。一方、相手の候補は議員になるために新潟に来た人物なのです。

 どっちが皆さん、新潟のためになるのでしょうか(聴衆から「塚田さん!」と言う声)。そうなのです。でも厳しい戦いなのです。皆さんのお力を塚田一郎に結集をしていただくようによろしくお願いいたします」

◆「アベノミクスの成果」を強調

 まさに、安倍首相は震災復興対策を“人質”に塚田氏への投票要請をした形だ。6月29日には、土地改良事業(農業土木)予算を増額させた二階幹事長が、事業関係者を前に「選挙で頑張ったところには予算をつける」と発言している。国家予算を選挙対策費として使う、利益誘導選挙を実践していたのだ。

 続いて安倍首相は、6年半のアベノミクスの数字を以下のように列挙した。

・380万人の雇用を創出

・6年連続の過去最高の賃上げ

・外国人観光客4倍増で3000万人

・農林水産物輸出が9000億円

・有効求人倍率が全国で1倍を突破

(*ただし、この主張については、

・雇用創出の内訳のうち55%が非正規労働で、ワーキングプア層が多いとみられること

・6年連続の賃上げというがこれは春闘実績で物価上昇を加味した実質賃金では低下していること

・外国人観光客増は円安誘導による「爆買い」的なアジア圏からの観光客が中心で、主力層の中韓への外交の行方次第では伸び悩むことが予想されること

・有効求人倍率は団塊世代の退職など生産年齢人口の減少が主因であり、雇用増も引退した高齢者の短時間労働者が多いこと

などは各紙でもファクトチェックされている。参照:東京新聞、朝日新聞)

 安倍首相は、年金問題について次のように訴えた。

「年金においても、この参議院選挙、大きな議論になっています。野党は財源についてまったくお話をされていない。具体的でないことしか言っていません。不安ばかり、煽っている(*)。

 年金は皆さんの大切な老後の生活の柱です。しかし、その財源は現役世代の保険料の負担と、そして税金であります。この負担を上げることなく、年金額を上げることはできません。残念ながら打ち出の小槌はないのです。

 そうなると、私たちは財源をつけて厳しい方々に政治の光をあてています。例えば、低年金の人たちに対して、この消費税を活用して、年最大で6万円の給付金を10月から行います。

 また介護保険料を払っていらっしゃる方がたくさんいると思いますが、これは10月から負担を3分の2に縮小してまいります。私たちはできること、財源を見据えてしっかりと行ってまいりたいと思います」

(*これも、庶民が不安になっているのは老後2000万円が必要という数値を出したかと思ったら、なかったかのようにした政府の対応と欺瞞が要因である。また消費税凍結ないしは減税・廃止を訴える党は代替策も掲げている)

◆またいつもの民主党政権時代批判

 さらに、雇用創出について触れながら年金問題につなげてもいた。

「この6年間、私たちの経済政策で新たに380万人の方々が仕事についた。働き始めたのです。その結果、支え手が、保険料を払っている方が約400万人増えたのです。ということはそれだけ、保険料収入が皆さん、減らずに増えてきた。(*)

 そして6年連続、今世紀に入って過去最高の賃上げが続いた結果、やっぱり保険料収入も増えますよね、給料が上がったわけですから。そして、この4月、皆さんの年金、増やすことができた。

 そして年金を株式市場で運用をしています。民主党政権時代は株価の平均が1万円を大きく割っていた。でも今、2万円を越えていますね。その結果、運用益が44兆円になったのです。民主党政権時代の10倍です。

 皆さんの年金の財政の基盤を厚くしています。年金の財政をしっかりと確保していく。それは強い経済を作っていくことによって、十分に可能であることも申し上げたいと思います」

(*:年金加入者数は、新規加入者数と納付期間終了者の増減を加味すると、ほぼ横ばいであり400万人増えたかどうかは不明。保険料収入は増加傾向にあるが、国民年金に比べ保険料が高い厚生年金への移行が影響しているのも理由の一つだという。参照:朝日新聞)

 農業政策についても同じ調子だった。

「農業においては例えば、農林水産物の輸出額がある。連続6年間で過去最高を記録して絶好調です。9000億円になりました。(第二次安倍政権が)スタートして倍になった。新潟県のおコメ、輸出が10倍に増えています」

 最後に「あの時代に逆戻りするわけにはいかない」と強調、再び塚田氏への支持を呼びかけた。

「12年前の参院議員選挙、私が自民党の総理総裁の時、自民党は惨敗しました。国会は捩れて政治は安定を失い、あの民主党政権が誕生した。決められない政治、バラバラ、経済は低迷した。(中略)あの時代、悔やんでも悔やみきれないではありませんか。あの時代に逆戻りするわけにはいかない。どうか、そのためにも塚田一郎を勝たせていただきたいと思います」

◆「株価は倍に、貿易は黒字なのに国民の暮らしは良くなっていない」と枝野代表

 安倍首相が新潟入りした7日後の7月12日、立憲民主党の枝野幸男代表が新潟県長岡市で打越さくら候補の応援縁説をした。安倍首相が「政治の安定」を強調したのを受けて枝野氏は「安倍忖度政治からの変化」を呼びかけていた。

「安倍さんは『この選挙で問われるのは政治の安定だ』と。いや、文書が改竄される、隠蔽される、ごまかされる。こんな政治を安定させていいのですか。強い者に、総理官邸に、忖度ばかりをする政治を安定させていいのですか。

 この6年どうですか。そして長岡に暮らす、新潟に暮らす皆さんの暮らしはこの6年、良くなってきましたか。(「良くなっていない!」の声)良くなっていない政治を安定させたらダメじゃないですか。(*)

 おかしいのですよ。株価は倍になっているのですよ。日本の企業収益、大きな企業の儲けは過去最高になっているのです。だから一部はたしかに安倍さんのおかげで潤っているのです。でも、それはごくごく一部ではないですか。例えば、新潟県に、長岡市にその恩恵はどれくらい来ているのですか。

 平成の30年間を見てみても実は、日本の国は豊かになっています。実は国内の景気は悪いけれども、外国との取引ではずっと黒字を積み重ねてきた。外国との取引で黒字を積み重ねてきたことは、国としての日本は豊かになっているはずなのです。

 それなのに、皆さんがその実感を得られていないとすれば、どこが悪いのですか。政治がおかしいのではないですか。自分の身近な強い者、豊かな者、そうした人の声しか入らない。だから強い者、豊かな者をより強く豊かにする政策しか進められていない。その結果のしわ寄せを皆さんが受けているのではないでしょうか、皆さん。

 豊かな国のはずなのに、この国で子育てをもっと安心してできないとおかしいのですよ。政治の流れ、政策の流れを変えましょうよ。一人一人の暮らしを支えるところに政治の支点を置き換えていけば、必ずこの国は良くなる。長岡も新潟も良くなります」

(*:景気回復の実感ない人が多数いることは安倍首相も認めている。参照:ロイター)

◆農業、介護、保育への予算拡充を訴えた

 農業政策では、民主党政権時代の戸別所得補償制度の復活を訴えた。

「農業は単なる金儲け、単なる国際競争ですか。土地を守り、水を守り、緑を守り、そして国民の安心安全な食を支えているじゃないですか。その農業を安定して営めない国に未来があるはずがありません。しっかりと戸別所得補償制度で、農業と農家をしっかりとしていきましょう」

 続いて枝野氏は、都市と地方の格差拡大を招いたアベノミクスから、草の根経済への転換を訴えた。

「介護職員の皆さん、保育士さん。『少子高齢化が問題』と言われながらも、低賃金で重労働、人手不足。そして都市と地方の格差がどんどん広がっている。先日、青森の保育所に行ったら、保育士の方が資格を取っても首都圏の保育所にどんどん取られてしまう。

 新潟もそうじゃないですか。今は保育士さん、次が介護職員さん、看護士さんです。財政力のある中央が、都市が、その財政力を背景に、人手不足の分野に『お金をもっと出すから来てください』と言って。

 高齢者は地方にいる。地方でも子育てができないといけないのです。医療や介護や保育や、日本中どこに住んでいてもしっかりとしたサービスを受けられないとならない。それなのに財政力のある都市に、どんどん人が引っ張られる。

 若い人は取られるわ、高齢者の介護は任せられるわ、こんな国でいいのですか。しっかりと、こうした仕事を支えていく。そのための予算はもっと国が拡充をして、地方にそのお金をしっかりと流していこうじゃありませんか。

 農業や介護や保育は、必ずその土地と結びつかないとできない仕事です。そうした皆さんの所得を底上げして、そうした皆さまが地域でお買い物をすることで、地域の経済が回り始めるのではないですか。

 そういう草の根からの、一人一人の家計からの経済へと切り替えていけば、もっともっとこの国は良くなる。皆さんがもっと豊かさを実感できる国に、この選挙を通じて変えて行こうじゃありませんか」

◆上のほう、強い者ばかり見ている“忖度政治”を終わらせる

 そして最後にこう結んだ。

「まさに(与党は)上のほう、強い者ばかり見ている、その原形の忖度政治の象徴として新潟が注目をされています。一方の打越さくらさんは、一番厳しい立場にある人たちを支える弁護士を一生懸命やってきた。どちらが、あなたの側に寄り添える政治家なのか。答えははっきりしているのではありませんか」

 枝野氏は最後に立憲民主党誕生当時の決め台詞「あなたの力が必要です」を連呼、演説を締めた。

「この選挙を勝ち抜くためにはあなたの力が必要です。あなたの力が必要です。あなたの力が必要です。ぜひ、皆さんの力を結集して長岡から新潟から、一人一人が真の豊かさを実感できる新しい時代を切り開いていきましょう」

 参院選新潟選挙区で、対照的な応援演説を行った安倍首相と枝野代表。どちらに軍配が上がるのだろうか。

<取材・文・撮影/横田一>

【横田一】

ジャーナリスト。小泉純一郎元首相の「原発ゼロ」に関する発言をまとめた『黙って寝てはいられない』(小泉純一郎/談、吉原毅/編)に編集協力。その他『検証・小池都政』(緑風出版)など著書多数

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