投票に行くだけでは充分ではない。20代が語る、「ボクたち世代の責任」

投票に行くだけでは充分ではない。20代が語る、「ボクたち世代の責任」

bee / PIXTA(ピクスタ)

◆「政治について語らない」僕ら20代世代

 参議院選挙(7月21日投開票)が全く盛り上がっていません。特に、私と同じ20代の投票率がとても低いそうです。

 それについて考えていたことを投稿します。

 私はもともと政治業界に縁があり、今回もいくつかの候補のお手伝いをしています。

 とりわけ学生時代からの先輩である 原田 謙介さんの選挙は、本当にいろいろな形でかかわらせていただきました。

 今回の選挙にあたり、自分のTwitterのフォローしているタイムラインを見ていて思ったことがあります。

 我々の同世代、つまり今20代後半から30代前半くらいの「優秀な」人たちは、「投票率をあげよう」みたいなツイートはRTするけど、誰を応援するか、選挙で何を注目しているか、この国がどうなっていくべきなのか、についてはほとんど書いていません。

 政治について、全く語らない世代なのです。

 僕は「投票率をあげれば若者の声が届く」というような嘘が、嫌いです。

 投票率を上げたところで、実際に人口のボリュームゾーンが40代以上である限り、大した影響はない。

 でも、日本の次を担う我々の世代が政治やこの国のあり方について沈黙しているのは、実はとても怖いことじゃないでしょうか。

 僕は幸運にも早稲田大学というそれなりに有名な大学を卒業し、就職活動などを通じて、多くの日本を背負って立つ人たちと友達になっています。ありがたいことに。

 それでも、彼らと政治や選挙について語ることは、殆ど無い。英語圏の人たちと比べれば、異常なほど少ないと言ってもいいでしょう。政治を語ったり、自らの主張を公にする文化がないのです。

 しかし、日本のトップ層の若者やミドル層、例えば大企業の若手エース、外資系起業のエリート、あるいはベンチャー企業の経営層が、参議院選挙という大きな国家のイベントを前にして、この国をどうしていくのか、国家ビジョンをどうすべきかについて、何も語らない。立場を明らかにしない。沈黙している。

 グローバル戦略、イノベーション。スタートアップ。大事ですよ。でも、政治でしかできないことはたくさんあります。なのに、政治について何を考えているのか、何も見えない。

 この現実は、実は日本社会の見通しが暗く、長期的ビジョンが見えないことと地続きではないのか、と思えてならないのです。

 その責任の一端は、もちろん同世代を生きてきたものとして、僕にもあります。

◆世界は、黙っていても良くなることはない

 ドナルド・トランプ大統領に罵倒された、AOCことオカシオ・コルテス上院議員は、1989年生まれ、ほぼ同世代です。

 この国のトップから「国に帰れ」と言われて、それでも戦い続けている彼女と、我々は同世代です。彼女たちは我々の100万倍理不尽な思いをしながら、それでも社会を変えようと、責任を引き受けている。

 彼らは、世界が黙っていても良くなるわけじゃないと知っているんです。だから戦っている。そうして戦った人たちのおかげで今の我々がある。

 それに引き換え、僕は一体どのような責任を、この社会に果たしているのか。自分を恥じ入る思いです。

「信頼できる政治家がいない」という声があります。

 でも、僕はたったこれだけの文章を書くのにも勇気を必要としている。

 それに比べ、人前で堂々と政策とこの国がどうあるべきかを語り、リスクをとって立候補した彼らはどれほどすごいのだろう、と思うのです。

 いい加減、我々ももういい大人ですよ。我々の世代が黙っていたら、日本はお先真っ暗じゃないですか? いい加減我々の世代が考えて、発信していかなくちゃいけない。

 かわいい猫画像をリツイートするだけではなく、この国がどうあるべきか、語るべきなんです。

◆参議院選挙の争点

 今回の参院選挙、テレビでは盛り上がりにはかけるかもしれませんが、実はとても重要な選挙だと思っています。

「政治分野における男女共同参画法」が可決されてからはじめての選挙であること、そして、選択的夫婦別姓や同性婚など、これまでほとんど政治的争点に上がらなかったことが一つの争点になっていること。

 そしてまた、障害者や多くのマイノリティの当事者が、立候補していることです。

 現在、衆院は男性が9割、参院は男性が8割。議会はとてもいびつな形になっています。そして、与党自民党は今回、立候補者の中の14.6%が女性です。今の参院の比率よりも下がっています(野党第一党の立憲民主党は45.2%)(参照:参院選、各党の女性候補者の割合は? 自民は10%台|HUFFPOST)

 諸外国と比べようがないほど低い数値です。男女共同参画を実現する気が与党にないことは明白でしょう。

 また、問題は男性女性の話だけではありません。男性の議員多様性も、実はあまりないのです。皆同じように政治家の家系に生まれた人たちが、閣僚になり、この国の重責を担っています。

 日本の議会はおそらく世界に類を見ないほど画一的な人たちで構成されているのではないでしょうか。

 今回の参議院選挙で当選した議員は6年間、一人あたり何億円もかけ、国政を預かることになります。

 その議員の中に、本当にたった15%以下しか女性がいなくて、いいのでしょうか。

◆「沈黙」は次世代への責任を放棄する行為

 世の中びっくりするほど「女は政治家に向かない」とか「女は家庭にいろ」と思ってる人、います。

 おそらく、この記事を見ている人の中にも、いるはずです。

 差別と自覚していなくても、「男女共同参画って言ったって、優秀じゃない人が政治家になっちゃ困る」とか思っている人はたくさんいます(本来、優秀な女性を連れてきて立候補させるのが、政権与党の責任なのですが……)。

 性差別だけじゃありません。人種差別にしろ、他のあらゆる差別にしろ、一見とても良識あるように見えても、びっくりするほど差別的な人、たくさんいます。

 でも、我々が沈黙していれば、何も変わらず、昔ながらの感覚で、日本の意思決定機構はそのままの形を維持していく。そして、誰かの権利が抑圧されていく。

 例えば選択的夫婦別姓について考えてみてください。選択的夫婦別姓が認められたところで、誰も困りません。選択的夫婦別姓を実現したところで台風がやってきたり日本経済が破綻することはないでしょう。

 誰かの権利を認めることが寛容になれない人たちが意思決定をしている限り、そんな小さなことすら実現しないのが現状です。

「我々には関係ない」と思っている多くの人が黙っている限り、変わらないんです。

 同性婚も、そうです。あの有名なスピーチで言っている通り、愛し合う一組のカップルが結婚したところで、あなたの借金が増えるわけじゃない。山火事が起きるわけでも、戦争が起きるわけでもない。誰も困らないんです。

 選択的夫婦別姓や同性婚は、多くの世論調査において若年層では賛成の方が多い。でも、実現しない。我々が沈黙していたら、きっと、実現までに更に何十年もかかります。

 本当にそれで、次の世代への責任を果たしていると言えるのでしょうか。

 選択的夫婦別姓は小さな事かもしれない。でも、こんな問題が世の中にはたくさんある。小さな課題でも、その課題を抱える人が議会にいなければ法律を変えられない。そんなことはたくさんあるんです。

 いつかは自分も、その当事者になるかもしれない。

「自分には関係ない」で黙っていて、物事が流れるのを傍観しているなら、次世代への責任を果たしているとは言えません。

◆で、何をしてほしいのか

 男女共同参画に近い議会を実現させることが、この参院選における大きな社会的意義だと思います。

 それだけではなく、硬直化し、多様性を失い、またいま存在している課題に対応できていない議会を、より様々な声を包摂する議会構成に変えることが、絶対に日本の未来を変えるために必要だと思っています。

 残念ながら、今回の公約、あるいはこれまでの政権運営を見る限り、与党にそれを期待することは難しいでしょう。それが僕の結論です。

 投票に行くだけでは、充分ではありません。我々の世代は戦わなくてはいけない。差別や不公正さ、あるいは社会が抱える課題と戦わなくてはいけない。

 それが出来る力と、そしておそらくその感覚を持っているのは、今の20代・30代です。我々は多分そんなに差別的な世代ではない。でも、ちょっと勇気が足りないと思う。

 私はこの国で生きていきます。男性であろうと女性であろうと、どのようなセクシャリティであろうと、障害があろうと、生まれが違おうと、幸せになれる社会を自分たちの次の世代に残したい。

 そろそろ、その責任を引き受けるときがきたんじゃないでしょうか。

 何か語りましょう。投稿しましょう。せっかくだから。我々が日本を背負っていかなくてはいけないのだから。

 この国が変わっていく大事な選挙ですから。

「投票に行こう」だけではなく、参議院選挙が、多くの人にとって日本の未来について考え、発信する転機となることを望んでいます。

<文/遠藤 結万>

【遠藤結万】

えんどう・ゆうま(Twitter ID:@yumaendo)●早稲田大学卒業後、グーグル株式会社(現グーグル合同会社)に入社。中小企業向けセールスとアジア太平洋地域の分析を担当。退社後、スパーク株式会社を設立し、インハウス化やマーケティング戦略支援、マーケティング教育などを手がける。デジタルマーケティングについてのブログ「エッセンシャル・デジタル・マーケティング」を運営中。著書に『世界基準で学べる エッセンシャル・デジタルマーケティング』(技術評論社)

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