投票日前日に安倍首相と菅官房長官が秋田入り。イージス・アショア配備ゴリ押し”に全力投球”

投票日前日に安倍首相と菅官房長官が秋田入り。イージス・アショア配備ゴリ押し”に全力投球”

7月13日に秋田入りし、応援縁説を行った安倍首相

◆選挙戦最終日に、政権トップとナンバー2が秋田入り

 秋田へのイージス・アショア“配備ありき”の安倍政権が、配備反対の地元民意を押しつぶそうとしている。

 自民党が全面支援する現職の中泉松司氏と、配備反対の野党統一候補の寺田静氏が横一線で激戦中の秋田選挙区に7月13日、安倍首相自身が乗り込んで県内3か所で応援演説を行った。さらに、投開票前日の7月20日にも再び現地入り。大票田の秋田市で、中泉氏への支持を訴える。

 安倍首相だけではない。安倍政権ナンバー2で秋田生まれの菅官房長官も、告示前を含めて3回応援演説に駆けつけ、7月20日には安倍首相と別の街宣場所でマイクを握る。選挙戦最終日に、政権トップと政権ナンバー2が揃い踏みする異例の“全力投球“をするのだ。

 その選挙手法も巧妙で狡猾。選挙戦の途中までは、イージス・アショアの是非を語らない“争点隠し選挙”を展開。その後、安倍首相が防衛省の不祥事への謝罪と丁寧な再調査を約束すると同時に、イージス・アショア秋田配備の必要性を強調。県民に理解を求めるという、二段階作戦を取っているのだ。

◆“争点隠し”から“寄り添いポーズ”への二段階作戦

 選挙戦前半の“争点隠し選挙”は辺野古新基地建設の「へ」の字も語らない沖縄県知事選でも実践した手法。そして、選挙戦後半の“寄り添いポーズ作戦”も安倍政権が沖縄で使う常套手段だ。

「沖縄県民に寄り添う」「基地負担軽減」と言いながら、民意を無視して辺野古埋立工事を続けるという手法だが、秋田での13日の応援演説でも安倍首相はこれを駆使した。陸上自衛隊新屋演習場を抱える候補地の秋田市で、次のように謝罪したうえで、深々と頭を下げたのだ。

「まずイージス・アショアについてお話をします。イージス・アショアについては緊張感を欠いた不適切な対応がありました。極めて遺憾であり、言語道断であります。まず秋田県の皆さまに、心からお詫びを申し上げたいと思います」

 テレビや新聞などのメディアは当然、深々と頭を下げる瞬間の映像や写真を紹介、平身低頭で謙虚な印象が広がることになった。ここで安倍首相は、間髪を入れずに配備強行の姿勢を打ち出した。

「私は日本の安全保障政策の責任者であります。国民の安全を守り、命を守り抜いていくためにはイージス・アショアがどうしても必要です。しかし、安全保障政策を前に進めていくうえにおいては、国民の皆様、地域の皆さまの理解がなければ、進めていくことはできません。まずは調査をやり直す。そして第三者と専門家を入れて徹底的に調査をしていくことをお約束申し上げる次第です」

 防衛省を徹底批判したうえで自ら謝罪、秋田県民に寄り添うかのような印象を与える一方で、イージス・アショア秋田配備方針は変わらないと強調する手法だ。

◆大切なのは、国民の安全と命よりも、トランプ大統領のご機嫌

 さらに安倍首相の演説には、虚偽的発言も盛り込まれていた。その一つが、安全保障政策を進めるには「地域の皆さまの理解」が不可欠と言った部分だ。秋田でも山口でも地元住民の合意が得られていないのに、安倍政権は今年4月、イージス・アショア2基の購入契約を締結していた。

 見切り発車で既成事実を積み重ねて地域住民の諦めを誘い、「地元の理解が得られた」と後付をする詐欺的手法といえる。

 もう一つの虚偽的発言が「国民の安全を守り、命を守り抜いていくためにはイージス・アショアがどうしても必要」という部分だ。これは米国シンクタンク「戦略国際問題研究所(CSIS)」の論文「太平洋の盾 巨大な“イージス駆逐艦”としての日本列島」と並べ合わせると、安倍首相の“虚偽的発言”を見抜くことが可能だ。

 論文の要点は、秋田のイージス・アショア配備はハワイの米軍基地を守る米国防衛前線基地として機能し、米国防衛予算10億ドル(約1100億円)節約になるという部分。「日本国民の安全と命を守る」のではなく、米国本土防衛のための前線基地に秋田がなるということだ。

 購入の経過を見てもそれは明白。かつて4隻で現在は6隻のイージス艦を8隻にする倍増計画が進行中だった2017年11月、日米首脳会談でトランプ大統領の米国製兵器爆買要請を安倍首相は快諾、翌月にイージス・アショア購入が閣議決定された。

 イージス艦8隻で十分だったのに、米国に「NO!」と言えない安倍首相は莫大な国民の税金を投入すると同時に、日本の領土の一部を有事の際に攻撃対象となる危険エリアとして差し出す羽目にもなったのだ。

「秋田県民の安全と命を守ることとには逆行しますが、トランプ大統領のご機嫌を損ねないためには、イージス・アショア購入がどうしても必要」というのが実態ではないのか。

◆安倍首相を直撃するも、警察官がブロック

 そこで、一か所目の応援演説の後に安倍首相を直撃した。

「秋田が攻撃対象になっていいのですか、イージス・アショアで」と声をかけたが、安倍首相はこちらを一瞬振り向いて手を振った後、すぐに顔を背けて無言のまま車に乗り込でいった。

 2か所目と3か所目の応援演説でも、再直撃を試みようとした。札幌の首相演説にヤジを飛ばした市民が排除されたのと同様、秋田県警の警察官にブロックされて至近距離まで近づくことはできず、再び声をかけることはできなかった。

◆秋田選挙区で自民党が勝てば「配備への理解が得られた」と言い出す!?

 一方、配備反対の寺田静候補は、子育て中の母親らしい第一声を上げていた。

「自分の息子だけでなく、秋田の子どもたちにイージス・アショアのある未来を手渡したくない」

 候補者の本命だった県議の固辞で白羽の矢が立った寺田候補は、悩んだ末に秋田選挙区での出馬を決断した。「専業主婦に国会議員が務まるのか」と批判を逆手に「主婦目線」「生活者目線」と打ち出し、「私は国の視点に立った国会議員を目指していない」「(配備反対を含めた)地方の声を伝えていく」と訴えている。

 選挙手法も対象的で、地元県議と一緒に県内を回る草の根選挙に徹し、枝野幸男代表ら野党幹部議員と街宣することは一度もなかった。寺田候補の義父は寺田典城・元秋田県知事で、夫は寺田学衆院議員(立憲民主党会派)。

 秋田選挙区で自民党公認候補の中泉氏が勝利すれば、「安倍首相が現地で必要性を訴えていた、イージス・アショア秋田配備への理解が得られた」と安倍政権がアピールするのは確実だ。

 名護市市長選でも、自民党は辺野古に触れない“争点隠し選挙”をしたのに、辺野古阻止を訴えた稲嶺進・前市長が落選したとたん「辺野古新基地建設の民意が得られた」と言い出していたからだ。

 安倍政権の秋田選挙区への全力投球は「イージス・アショアの秋田配備は何としても進める」という政権側の意思表示なのではないか。まさに巨大与党が「参院選勝利=配備賛成」という拡大解釈をして、秋田県民の反対民意を踏み潰そうとしている。

<取材・文・撮影/横田一>

【横田一】

ジャーナリスト。小泉純一郎元首相の「原発ゼロ」に関する発言をまとめた『黙って寝てはいられない』(小泉純一郎/談、吉原毅/編)に編集協力。その他『検証・小池都政』(緑風出版)など著書多数

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