フリーランスを排除、権力の広報と化し「大本営発表」を続ける記者クラブ

フリーランスを排除、権力の広報と化し「大本営発表」を続ける記者クラブ

寺澤有氏

◆記者クラブは権力の広報として大本営発表を続けている

 報道の現場で活躍するのは、新聞社やテレビ局などに所属する「組織ジャーナリスト」だけではない。個人として活動するフリーランスのジャーナリストたちが、自身の得意分野を掘り下げた取材や発信を行っているのだ。

 しかし、彼らは国や自治体、そして組織ジャーナリズムによる記者クラブから、その取材の自由を侵害されている。警察の不正や記者クラブ問題を30年近く追及し続けているフリージャーナリスト、寺澤有氏は「大手マスコミの人々が語る『報道・取材の自由』なんて茶番ですよ」と切って捨てる。

「内閣官房長官会見での、『東京新聞』望月衣塑子記者への質問制限が取り沙汰されていますが、そもそも我々フリーランスは、あの場に参加することさえ制限されている。フリーの記者が参加するには、記者クラブメディアからの推薦状を提出するなどの条件を満たさないといけない。しかも週5日、午前と午後に記者会見はあるのに、フリーの記者は週1回しか参加できないのです。これはフリーに対する質問制限にほかなりません」(寺澤氏)

◆防衛省会見開放を求めるも回答引き延ばし

 寺澤氏は現在、仲間のフリー記者とともに防衛省会見の取材開放を求めている。

「昨年12月23日、防衛大臣の記者会見にフリーランスを参加させるよう、防衛省と記者クラブに要請書を提出しました。しかし、両者とも『協議中』などとして回答を引き延ばし、いまだにフリーランスの会見参加は実現していません。フリーランスの中には、10年以上も防衛省を取材している者も少なくありません。実に理不尽なことです。

 現在、自衛隊がイランに対する有志連合に参加することが取りざたされています。記者会見からフリーランスを排除したままでは、戦前のような大本営発表となることが危惧されます」(同)

◆判決要旨の配布も「便宜供与」という権力側の主張

 なぜ、国側とマスコミが結託してフリーを排除するのか。寺澤氏は「日本では憲法が保障する『報道の自由』は絵に描いた餅で、判例上は『役所から記者クラブへの便宜供与』と解されているからでしょう」と語る。

 寺澤氏はこれまでも防衛省だけではなく、警察庁や内閣府、総務省などに対してフリーランスの会見参加を求めてきている。東京地裁は2006年1月25日の判決で記者クラブ記者への傍聴席の確保や判決要旨の配布が「便宜供与」であるとの見解を示している。寺澤氏が警察庁長官の会見への参加を求めた際も「便宜供与」と主張された。

「つまり判決要旨の交付も記者席の用意も、記者会見の開催も、憲法や法律で定められた義務ではない。してもしなくてもいい『便宜供与』ということで、媒体を選別するのも自由ということなんですよ」(寺澤氏)

◆記者クラブの存在自体が「便宜供与」だ

 そもそも記者クラブの存在自体が「便宜供与」だとも言える。

「国や自治体の施設を無料であてがってもらい、資料やデータも全部もらえる。今や記者クラブがなければ、新聞社やテレビ局は自社の施設だけではオフィスを確保しきれないのです。日本の記者クラブのようなものは先進国にはどこにもありません」(同)

 省庁や警察が記者クラブメディア関係者に特別な計らいをするのは、メディア関係者が権力側にとって都合の良い存在だからだろう。

「以前、私が民放の番組で警察の不正について語ったところ、警察からではなく、同局の警察担当者から番組担当者へ抗議が来ました。警察と暴力団の癒着を週刊誌で書こうとしていたら、警察が編集部に『もっといいネタがあるから寺澤の記事を載せるのをやめろ』と言ってきました。その雑誌は警察側の要求を受けつけなかったのですが、メディアに都合の悪い報道をさせないようにする警察側の常套手段なのでしょう。

 記者クラブがある限り、日本のメディアが権力に都合の悪い真実を伝えることはありません。記者クラブのルーツが、戦中の政府によるメディア統制であったように、記者クラブは権力の『広報』として、大本営報道を続けるのです」(同)

 メディアに対する読者の信頼が大きく揺らいでいる昨今、メディア側の自浄能力が問われている。

【寺澤 有氏】

フリージャーナリスト。警察や検察、裁判所、弁護士会、防衛省、記者クラブ、大企業など組織の腐敗を追及し続ける。『裁判所が考える「報道の自由」』『記者クラブとは』(ともにインシデンツ)など、著書多数

◆国連でも日本の「報道の自由」への懸念が報告されていた

 日本の報道の自由について、国連の専門家も懸念している。言論と表現の自由に関する国連特別報告者デービッド・ケイ氏は、彼が’17年に日本政府に勧告した11項目について「改善がない」と報告書で批判。6月24日からの国連人権理事会で正式に報告するとのことだ。

 勧告では、日本政府が放送局に電波停止を命じる根拠となる「放送法第4条」が、事実上放送局への規制になっていると指摘。また、「政府に批判的なジャーナリストらへの当局者の圧力を、控えるべきだ」と報告した。このケイ氏の報告について菅義偉官房長官は、6月5日の会見で「根拠不明で不正確。受け入れられない」と反発。ケイ氏は’16年の来日会見で、シリアへの渡航を計画していた杉本祐一氏がパスポートを強制返納させられた件にも懸念を表明し、「ジャーナリストの活動を政府が制限すべきではない」と訴えていた。

 だがその後、常岡浩介氏が旅券を強制返納させられ、安田純平氏も発給されないなど、ジャーナリストの出国制限は悪化している。

取材・文/志葉 玲 写真/寺澤 有

― ニッポンの報道が危ない! ―

関連記事(外部サイト)