イージス・アショア配備に対する秋田県民の民意を踏みにじる「安倍社交」の愚

イージス・アショア配備に対する秋田県民の民意を踏みにじる「安倍社交」の愚

「安倍社交」(Photo by Brendan SMIALOWSKI / AFP=時事)

◆秋田へのイージス・アショア配備は陸自も圧迫する愚策

 昨年8月から9回に渡って、イージス・アショア日本配備についてその欺瞞と無意味さ、そして日本そのものの存亡を脅かす重大な危険について解説してきました*。

<*過去9回までのリンクについては過去記事か欄外参照。また、その他参照先についても配信先によってはリンクが機能しない場合もございますので、その場合は本サイトにて御覧ください>

 また北朝鮮(DPRK)による新型短距離弾道ミサイル、イスカンデル(発展型の可能性あり)の実験*によって、陸上固定弾道ミサイル迎撃基地は、少なくとも萩においてはすでに無効化されたと考えて良いです。このことは、本連載で後に言及します。

<*1 北朝鮮ミサイル、日本に届く690キロ飛行…迎撃困難な新型か2019/07/25産経新聞/飛距離は後に600km以下へ下方修正された>

 本連載で厳しく追及してきた、「日本配備イージスアショアは、迎撃対象が対ハワイICBMと対グァムIRBMであって、日本の弾道弾防空には事実上無意味であること」は、本連載を契機としてすでに軍事専門家や軍事ジャーナリストの間でも当然のことのように論じられるようになりました。これは当たり前のことで、自民党ときわめて密接な関係にある合衆国のCSIS(戦略国際問題研究所)による” Shield of the Pacific: Japan as a Giant Aegis Destroyer, Thomas Karako, CSIS, May 23, 2018” という発表文でそのものズバリ、「日本を太平洋に浮かぶ巨大イージス駆逐艦とし、ハワイ、グァム、西海岸といった弾道弾防御の手薄な地域の防御を鉄壁となす。日本にイージス・アショアを買わせることで、合衆国は10億ドル(1000億円)を節約出来る。」と明記してあります。日本は、合衆国にとっての不沈空母(中曽根康弘氏)から、使い捨てのブリキ缶(駆逐艦乗りの自嘲)へ格下げとなったわけです。

 また仮に日本の弾道弾防空に有効であると仮定しても当初、「日本の弾道弾防衛に現時点で最適とされた終末高高度防衛(THAAD)は、1250億円であるが、イージス・アショアは、800億円と『安いから』」(稲田朋美防衛相)*とした導入理由も、すでに現時点で6000億円まで膨れ上がり、今後の価格高騰、SSR(Solid States Radar固体素子電探)など開発費用の日本負担、装弾数や自己防衛システムほか様々な付加経費を考えると1兆円どころか更にその遙か上を伺う状況です。

<*【北ミサイル】ミサイル防衛強化で中期防前倒し論 地上型イージス、THAAD… 予算が最大の壁、慎重論も2019/05/16 産経新聞>

 このままですと防衛予算の構成を著しく歪なものとし、陸上自衛隊から戦車など高価な装備は消え失せるでしょうし、下手をすれば陸上自衛隊は半減と言うことも与太ごとではなくなるかもしれません。この場合日本の防衛戦力だけでなく、防災、災害復旧能力も半減すると言うことになります。

 何よりも、なぜ日本の納税者のお金でハワイ・グァム専用の弾道弾防衛兵器を日本国内に配備せねばならないのか、そして陸上固定基地配備の弾道弾防衛兵器は、戦術の常識として先制第一撃目標となり、それは核攻撃になる可能性が極めて高く、なぜ日本人が合衆国のために人類史上三回目となる核攻撃の対象とならねばならないのかという二つの大きな問題がこの一年間で共有され、強く問われるようになりました。

◆ついに国政選挙で争点化

 結果として今回参院選では、とくに秋田では最重要争点化しましたが、安倍首相、菅官房長官共に、敗色濃厚の秋田選挙区入りをしましたが、イージス・アショア秋田市配備については、その争点を隠し、逃げ回ったことが、HBOLにおける横田一氏の連載によって指摘*されています。

<*:地元・秋田で演説した菅官房長官、イージス・アショア配備にはまったく触れず2019/07/01 横田一 ハーバービジネスオンライン>

 これは当然のことで、外交能力など微塵もない原稿読みの安倍晋三氏が首相の座にしがみつくための安倍氏の個人的な対外社交(安倍社交:あべしゃこう)における最大の貢ぎ物ですから国民の犠牲など無視するに限るのです。従って、「自民党のペラ助」こと、小泉進次郎氏もこの争点からは逃げ回りました*。

<*:秋田で応援演説の小泉進次郎氏を直撃。「イージス・アショアになぜ触れないのですか?」 2019/07/17 横田一 ハーバービジネスオンライン>

 自民党は、徹底して「秋田市へのイージス・アショア配備」という「安倍社交」最重要課題の争点化から逃げ回り、批判的ジャーナリストへの取材妨害まで行いました*。これは自民党の常套手段といえます。

<*:自民党が批判的ジャーナリストを名指しし、警察を動かして排除!? 2019/07/30横田一 ハーバービジネスオンライン>

◆秋田で敗北した自民党

 結果として、第25回参議院通常選挙では、自民党は、秋田選挙区で議席を失いました。当時現職議員であった中泉松司氏 は、地盤・看板・鞄の三拍子そろった典型的な自民党の世襲現職議員でしたが、秋田県庁が勤務時間中に県庁敷地内で佐竹敬久(さたけ のりひさ)秋田県知事主導のもと支持集会を開く*など憲法上もコンプライアンス上もきわめて問題の大きな運動が展開**されたにもかかわらず、無所属新人の寺田静氏に二万票差で敗北しました***。

<*県庁で勤務中職員が必勝コール 知事「悪いという法律ない」2019/07/11 秋田魁新報>

<**:ほかにも佐竹敬久秋田県知事は、7月6日に大仙市で中山陣営の選挙カーに乗り込むなど、中立が求められる特別職の地方公務員として問題とおもわれる行動が指摘されている。

”(幹事社): 関連で、土曜日、大仙市で中泉さんの選挙カーに乗られたということだと思うんですけれども、知事ご自身が過去の国政選挙で、そこまで1人の候補を応援したということはあったのしょうか。

(知 事): 前回の衆議院議員選挙は、金田さんと富樫さんに2日か3日ずつ乗ったんです。今回、たまたま土曜日空いてましたので。これからは、時間的に公務が入っていますので、ほとんど無理かなと思います。”|令和元年7月8日知事記者会見 | 美の国あきたネット>

<***:秋田 選挙区 | 参院選 2019 | NHK選挙WEB>

 7/24投開票の結果、秋田市だけでなく郡部も含め大多数の開票所で寺田氏は獲得票数一位となり、二万票の差で堂々当選、秋田県民の民意は、「イージス・アショア秋田市配備を拒否」と明確に示されました。なにしろ寺田静氏の政見公約には、イージス・アショアについて、「大前提として住宅地、学校などの目の前にミサイル基地の新設を許すことはできません。」と明記されています*。

<*:第25回参議院通常選挙秋田選挙区選挙公報>

 当選後寺田静氏は、秋田市への陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」配備計画について「阻止に向けて全力を注いでいく」と述べました*。

<*:イージス配備「阻止に向け全力を注ぐ」 秋田の寺田静氏 - 2019参議院選挙(参院選) 2019/07/22 朝日新聞>

 本来民意を直接反映する役割は、衆議院が担いますが、イージス・アショア秋田市配備が表面化した直近の選挙が第25回参議院通常選挙ですので、有権者の民意がこの選挙に直接反映されたと言えます。

◆秋田では、イージス・アショア拒否で結論、一方で配備強行を目論む安倍自公政権

 第25回参議院通常選挙でイージス・アショア秋田配備拒否とい言う秋田県民の民意は明確に示され、すでに自民党秋田県選出衆院議員の冨樫博之氏は、白旗を揚げています*。

<*:秋田市に陸上イージス「もうダメ」 地元自民議員が反対2019/08/24 朝日新聞>

 その一方で、安倍官邸、安倍自公政権、防衛省は、何が何でもイージス・アショアの秋田市への配備を強行しようと既成事実化を図っています。

 これは当たり前のことで、安倍社交の中でも最重要の対米社交において、少なくとも一兆円を合衆国軍需産業に貢ぎ、合衆国に一千億円の節約をさせ、ハワイを防衛し、合衆国西海岸から中西部防衛専用の監視哨として秋田市そのものをピケット艦として貢ぐことは、安倍晋三氏の私的保身のための最重要事項です。

 防衛省、安倍自公政権は、沖縄で見せた常套手段によって秋田県民を慰撫し恭順させようとし始めています*。まさに植民地支配の基本的手法そのものです。

<*:防衛相「信頼回復に全力」 地上イージス世論調査受け会見2019/07/30 秋田魁新報"、地上イージス再調査 28日に県へ内容説明、防衛省2019/08/27秋田魁新報電子版、イージス・アショア、米政府と2基分の本体契約 1399億円2019/04/26 産経新聞>

 この手口は、沖縄で行っていることと全く同じで、彼らの言う「丁寧な説明」とは、同じ事を相手が飽きるほど何度も繰り返すだけのことです。これをParrotful Speaking(オウム語り)と言い、中身は全くありません。

 防衛省は、前回指摘した「家畜人ヤプー」として安倍氏と合衆国の利益のためだけに行動しているのが実態です。そのためにはあらゆる詭弁と嘘を駆使します。それが前回指摘し検証した「合衆国の「ジャケットマン」(人間防弾チョッキ)としての日本配備イージス・アショア」の実態であり、防衛省の行動原理です。高級官僚がこれでは、やる気も出ますまい。

 この防衛省、安倍自公政権の尻馬に乗った「家畜人ヤプーしたっぱ」によって、秋田県ホームページに「非国民」という抗議が押し寄せたことはすでに報じられています*。

<*「イージス引き受けないのは非国民との批判、県内外から」秋田の佐竹知事が明らかに 2019/06/24 毎日新聞

“佐竹知事や県によると、県のホームページなどを介し「非国民だ」という内容などの批判が寄せられているといい、知事は「(陸上イージスを引き受けず)『秋田には原発もなく、日本の何の役に立っているのか』『知事辞めろ』といっぱい来ている」などと嘆いた。”記事抜粋>

 そもそも第一に自治体と国の間に上下関係はなく対等であることが地方自治の大原則です。

 第二に役立たずの大金喰らいと化した原子力発電所が秋田県にないことは慧眼ですし、そもそも秋田県には過去から今に至るまで具体化した*原子力発電所立地計画はありません。

<*実は、秋田市、能代市、本荘市が誘致運動をしていたが、東北電力が採用しなかった。>

 第三に、徹底した先制核攻撃を誘致するだけで日本の弾道弾防衛には役に立たない合衆国防衛専用の秋田配備イージス・アショアを当事者が拒絶することの何処が「非国民」なのか理解に苦しみます。そもそも、「非国民」とは、頭空っぽのプロパガンダ屋が常用するオウム語りであることは先の敗戦で実証済です。

 それにしても原子力発電所を外国防衛専用のミサイル基地(先制核攻撃の的)と同列に見做すとは、原子力工学、原子力産業共に酷く馬鹿にされたものです。私はそのことに強い憤りを持ちます。

 本連載では今回と次回でイージス・アショアの秋田配備において見せた政府の醜態について論考し、その次にイージス・アショアそのものが日本においてはほぼ無効化されていることについて論考します。

『コロラド博士の「私はこの分野は専門外なのですが」』ミサイル防衛とイージス・アショア10

【牧田寛】

Twitter ID:@BB45_Colorado

まきた ひろし●著述家・工学博士。徳島大学助手を経て高知工科大学助教、元コロラド大学コロラドスプリングス校客員教授。勤務先大学との関係が著しく悪化し心身を痛めた後解雇。1年半の沈黙の後著述家として再起。本来の専門は、分子反応論、錯体化学、鉱物化学、ワイドギャップ半導体だが、原子力及び核、軍事については、独自に調査・取材を進めてきた。原発問題についてのメルマガ「コロラド博士メルマガ(定期便)」好評配信中

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