問題だらけの横浜カジノ補正予算案。明るみになった12の事実

問題だらけの横浜カジノ補正予算案。明るみになった12の事実

Fumiaki Hayashi via Pixabay

◆横浜市会、4時間に渡る質疑で明らかになった12の事実

 2019年9月11日から横浜市会(政策・総務・財政委員会)で始まったカジノ補正予算案をめぐる委員会審査。林市長が「白紙」から突如として誘致を表明した8月22日の記者会見資料にはデータ捏造と言って差し支えない内容が記載されていたことは既に既報*の通りだが、委員会審査でも耳を疑うような事実が次々と明らかになっている。<*横浜カジノ誘致の根拠データに「作為」発覚。「横浜市の観光消費額は少ない」という欺き|HBOL>

 そこで本記事では、カジノ誘致について4時間以上にわたる質疑が行われ、実質的な質疑最終日でもあった9月13日の委員会審査で判明した主な事実12点を紹介していきたい。

 下表はカジノ反対の立場の3名の市議会議員(共産・荒木由美子、無所属・井上さくら、立憲・花上喜代志)の質問に対する、横浜市の小林一美副市長や職員の答弁で明らかになった事実をまとめている。

 この12の事実は、大きく4つの項目に集約できる。

・カジノありきで検討が進んでいる

・市長の意思決定のプロセスが不透明

・例外だらけのプロセス

・カジノ誘致を進める前に決めるべきことが何も決まってない

 以降、12の事実を当日(2019/9/13)の質疑内容を交えながら、順に説明していく。

*質疑内容は筆者が要約した内容の抜粋

◆カジノありきで検討が進んでいる

 No1〜2はカジノありきで検討が進んでいるとしか考えられない事実が並んでいる。

 まず、No1「横浜市は課題に対応する解決策としてカジノを提案したのではなく、カジノ付きIRありきで検討している」について。

 これまで「カジノ抜きではIRは成り立たない」という趣旨の答弁を市長や横浜市は繰り返してきたため、その根拠とする資料の提示を井上委員は要求していた。しかし、当日に出てきた資料は民間事業者が単独でIR施設の建設から事業に至るまでの運営は困難であると示した資料に過ぎなかった。その点を井上市議が追及したところ、「政策局として求められるミッションは、横浜でIRをやることが効果があるのかどうかの検討」という横浜市の本音を答弁から引き出している。つまり、カジノ抜きのIR施設を含めた複数の選択肢をしっかりと検討した結果、カジノ付きIRという結論に至ったわけではない。

 以下、この事実が明らかになった後、井上委員が質疑の中で述べたコメントを紹介する。

井上委員:今、局長がいみじくも「我々のミッションはIRをやることが効果があるかどうか」だとおっしゃったけど、それってはじめからIRありきじゃないですか。

 続いて、No2「カジノ抜きの山下埠頭再開発を提案した横浜港運協会の要望書に横浜市は返事すら出していない」について。ハマのドンと呼ばれる藤木幸夫氏が会長を務める横浜港運協会は、カジノ抜きの山下埠頭再開発を求める要望書を今年6月に林市長に提出している。F1レースやクルーズ船など具体的な提案が盛り込まれているが、現時点で横浜市はこれに回答すらしていない。

 以下、この件を花上市議が指摘した際の横浜市とのやりとりの抜粋を紹介する。

花上喜代志副委員長:カジノなしのハーバーリゾートをつくろうとした山下埠頭開発基本計画は横浜市が作ってる。それに関わっていた横浜港運協会が「話が違う」と要望書を出したのだから、せめて返事はすべきでは?

局長:山下埠頭の開発基本計画に則って、我々のIRも方向性は一致してると考えている。どういう手法で実現するか決まってなかったので、IRという手法で実現できるのではと提案している。

花上 副委員長:それはおかしい。手法が違うからと門前払いするような不誠実なやり方はダメだと思う。今からでも遅くない。横浜港運協会の要望書にきちっと正面から見解を答えるべきと思うが、どうですか?

局長:検討過程として判断していると申し上げている。横浜港運協会が提案してきたことに不誠実に、入り口で拒否してる気持ちは全くない。市長が答弁している通り、丁寧に対応していきたいと思っている。

花上 副委員長:最後は「丁寧に説明していきたい」という言葉にいつも行き着くが、今までの説明を聞いてると決して丁寧に説明していない。だから、横浜港運協会も市民も怒っている。やり方として間違っている。今からでも遅くないから要望書に回答すべき。もう一度答えて欲しい。

小林一美副市長:横浜港運協会にも丁寧に誠実に対応する。

花上 副委員長:ということは、要望書に回答は出す?

小林副市長:それも含めて検討する。

花上 副委員長:いや、「検討」じゃなくて、中身のある提案だから「回答」するように強く申しておく。

 要望書に回答すべきと実に3回以上も指摘しているにも関わらず、小林副市長は「検討」という言葉で逃げて、最後まで「回答する」とは約束しなかった。カジノ抜きの再開発が盛り込まれた要望書に返事を出すことすら横浜市がここまで拒絶するのは、最初からカジノありきで検討が進んでいることを示唆している。

◆市長の意思決定のプロセスが不透明

 No3〜5は市長の意思決定プロセスが極めて不透明であることを明らかにしている。

 No3「市長がIR誘致を決断する2019/7/31より前の2019/7/25に副市長たちは既に補正予算案を検討」について。林市長がカジノ誘致を決断したのは、7月31日の会議であると横浜市はこれまで説明していたため、井上委員は当日の説明資料の提示を求めていた。しかし、当日に出てきた資料は8月22日の記者会見資料そのものであった。この会見資料はタイトルが「IRの実現に向けて」であり、IRを実現することが既に決定した前提でつくられた資料である。さらに、約1週間前の7月25日に開かれた会議「IR検討プロジェクト」で横浜市はカジノ補正予算案についても検討を始めている。つまり、林市長がまだIR誘致は「白紙」と公言していた時期、小林副市長を始めとする横浜市の職員たちはIR誘致を前提に動き始めていた。

 以下、この件を井上さくら市議が指摘した際の横浜市とのやりとりの抜粋を紹介する。

井上さくら委員:市長はIRをやるかという重要な政策判断をまだやってない。しかも、「白紙」と表明していた。でありながら、副市長たちは先に「IR実現に向けて」という資料を作り出していた。事実としては、そうですね?

局長:前提として、あくまで補正「案」を作っているということ。(筆者注:「案」を強調して発言)

井上委員:いや。だから、案を作ってるのは分かってる。だけど、「IR実現に向けて」という資料を市長は「白紙」と言ってる段階で副市長たちが作り、補正予算案の可能性があると周知したことは事実ですね?と確認してます

小林副市長:9月補正に出す場合の「案」を作っているということ。

井上委員:そこを認めたくないのかもしれないけど、事実として、そういうことでしょう。

 先走って資料をつくったことが事実かを井上委員は質問しているのに、副市長は繰り返し「あくまでも案だ」と論点をずらしている。最後に井上委員が指摘した通り、よほど「認めたくない」のだと思われる。こうした市長の意思決定プロセスの不透明さが明らかになり、井上委員はこうも付け加えている。

井上委員:副市長たちは、まるで本来の上司である市長以外の誰かが上司であるかのように行動してるのが全くもって不可解。つまり、公式の上司ではない誰かの言うことを聞いて副市長たちは動いてる。

◆「白紙」方針変更の決断に至るまでの会議録はないの一点張り

 続いて、No4「市長がIR誘致を決断した2019/7/31の議事録を横浜市は作成していない。当日の市長の発言は一切不明」、No5「同会議のたった15分間で市長は『白紙』から『誘致』に方針を急に変更」について。林市長がIR誘致を決断したとされる7月31日の会議で、市長がどのような発言をしたのかわかる資料を井上委員は要求していたが、当日に提示された資料には「上記について了承された」としか記載がなかった。これまでの「白紙」方針を変えるだけの決断をしたのだから、これまで市長が気にされてきた依存症対策や国の動きに関する質問が出て当然なのに、そうした発言が書かれていない。

 以下、この件を井上市議が指摘した際の横浜市とのやりとりの抜粋を紹介する。

井上委員:7月31日、市長がIR誘致を決断した会議で、市長発言は「上記について了承された」しかないが、本当にこれだけ?そもそも時間は「15:20〜15:35」とたった15分間だが、本当?この分厚い会見資料だけでも15分じゃ説明できないでしょ。で、たった15分で市長は白紙から急に方針を変えたとでも?

小林副市長:ここに書かれている通り。(※筆者注:副市長の言う ここ(=当日の資料)には、「上記について了承された」としか書かれていない)

井上委員:じゃあ、7月31日は市長からの発言は全く無かったということ?

小林副市長:依存症対策や説明会について、どうだったかというやりとりはあった。最終的に了承となった。

井上委員:会議録は取っていない?

小林副市長:録音は取ってない。

井上委員:会議録は取ってないんですか?(※筆者注:同じ内容を再質問)

小林副市長:会議録という録音は取ってない。

井上委員:録音はしなくても、メモは取るでしょう。依存症や説明会について市長とやり取りしたと言うから、その内容を聞いている。市長がどういう疑問を持ったのか市の職員にとっては大事なことで、その市長がどんな意見を言ったか、メモすら取らない?どうなってるの、一体?

 林市長の発言内容を頑なに答えないため、井上委員が会議録の有無を確認したところ、副市長は録音の有無に論点をすり替え、それすらも答えようとしない。市長が誘致を決断したとされる7月31日の会議の詳細は何が何でも隠したいという横浜市の思惑が読み取れる。

 以上、12の事実のうち、1〜5まで足早に紹介した。明日朝配信の後編では、6〜12の事実に関するやり取りについてさらに紹介したい。

 なお、このカジノ補正予算案については、明日9月20日14時からの本会議において可決される見込みである。

<文・図版作成/犬飼淳>

【犬飼淳】

TwitterID/@jun21101016

いぬかいじゅん●サラリーマンとして勤務する傍ら、自身のnoteで政治に関するさまざまな論考を発表。党首討論での安倍首相の答弁を色付きでわかりやすく分析した「信号無視話法」などがSNSで話題に。最近は「赤黄青で国会ウォッチ」と題して、Youtube動画で国会答弁の視覚化に取り組む。

 犬飼淳氏の(note)では数多くの答弁を「信号無視話法」などを駆使して視覚化している。また、同様にYouTubeチャンネル(日本語版/英語版)でも国会答弁の視覚化を行い、全世界に向けて発信している

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