「秘書給与ピンハネ」疑惑の菅原経産相会見、ジャーナリスト2名が「永劫に」出入禁止に

「秘書給与ピンハネ」疑惑の菅原経産相会見、ジャーナリスト2名が「永劫に」出入禁止に

就任直後の菅原経産相の到着を玄関で出迎える経産省職員たち(9月11日、藤倉善郎撮影)

◆経産省、ジャーナリスト2名を「永劫に」出禁に

 経済産業省は10月10日、2名のジャーナリストについて、大臣会見の取材を「永劫に」禁じる旨を通告した。直接には、同日発売の『週刊文春』で「秘書給与ピンハネ」疑惑(文春オンライン)を報じられている菅原一秀経産相の会見に関する処分だが、同省・野澤泰志広報室長は、政権が変わろうとも「永劫に」と通告した。大臣が誰であろうと今後永久に経産省での会見の取材ができない、事実上の「永久出入禁止」である。

◆経産省は取材内容を事前検閲、取材交渉を放棄

 取材禁止を通告されたのは、藤倉善郎(私)と鈴木エイト氏の2名。それぞれ「やや日刊カルト新聞」の総裁と主筆の立場であるとともに、フリージャーナリストとしても活動している。

 今回、経産省側が問題視したのは、9月11日に経産省内で行われた菅原経産相の就任記者会見での2名による取材活動だ。

 2名はもともと菅原氏と統一教会(現・世界平和統一家庭連合)の関連や公職選挙法違反疑惑を取材していた。

 しかし、菅原氏側は、取材申し入れを無視したり、地元事務所に取材を申し入れに来た2名に対して菅原氏側が警察に110番通報したり「建造物侵入罪」として虚偽告訴を行うなどしてきた。

 9月11日に安倍内閣の改造で菅原氏が経産相に就任したことを受け、2名は同日の経産省内での就任会見について取材を申し入れた。窓口となった経産省広報室では、当初から野澤広報室長が対応した。野澤室長は取材を申し入れた私に対して会見での質問内容を確認した。

「統一教会との関係。それから、取材中のジャーナリストに対して虚偽告訴をしている件について大臣の認識を尋ねたい」

 私がそう告げると、野澤室長は「経済政策に関する質問に限る」「会見は夜遅くなるためセキュリティの都合上、事前パスを持つ方(記者クラブ加盟社)に限る」とした。ならば後日の夜間ではない定例会見なら取材できるのかと尋ねると、「検討する」として明言を避けた。

 これに対して私は「大臣の姿勢を尋ねるのは就任会見こそふさわしく、後日の定例会見で質問する方が会見の趣旨から外れる」「取材内容の事前検閲は不当」「セキュリティの都合はそちらの都合であり、取材を拒む理由にならない」と答え、再検討を求めた。野澤室長は再検討を了承し電話を切った。

 その後、野澤室長からは「関係方面に調整中だが、会見時間も迫ってきているので今日は難しいということで」と連絡をしてきた。私は「すでに(会見場である経産省に)向かっているので大丈夫。ギリギリまで検討してください」と答え、野澤室長は了承して電話を切った。

 これ以降、野澤室長からの連絡は途絶え、二度と電話はかかってこなかった。

 しかし会見時間が迫っている。私は鈴木氏とともに経産省に到着し、守衛の許可を得て入館した。身分証を見せ、取材交渉のやり取りの相手であった野澤室長の名を入館申込書に記入すると、入館パスを渡された。

 会見室では特に入室チェックもなく入れたので、菅原経産相の会見を取材した。私がスチルと動画の撮影を行い、鈴木氏がペン取材。鈴木氏は質疑の際に挙手したが当ててもらえず、質問することはできなかった。

◆事実誤認と主観で強権を振るう広報室長

 10月10日に発売された『週刊文春』が、菅原経産相について「秘書給与ピンハネ」「有権者買収」のほか運転手への暴力など複数の疑惑を報じた。翌11日に菅原経産相の定例会見が予定されていたため、私は改めて経産省に電話で会見取材を申し入れたが、折返しかかってきた野澤室長からの電話が、冒頭で書いた通りの「永劫に」取材禁止との通告だった。

 電話で野澤室長は、通告の理由として9月11日の取材について「取材は難しいと伝えたにもかかわらず、約束を守らず会見場に強引に入ってきて取材した」という趣旨を告げてきた。しかし前述の通り、「取材は難しい」という野澤室長に対してこちらは再検討を要求し、野澤室長は了承して再検討のため電話を切っている。こちらは何も約束していないし、取材不可との結論も言い渡されていない。経産省への入館も会見室への入室も、一切「強引に」など行っておらず、通常通り受付で氏名を書いて入室している。

 野澤室長に「事実誤認である」と告げると、野澤室長の主張は「約束を守らず会見場に強引に入ってきて取材した」から「取材についての合意形成がないまま取材した」に変わった。主張を変えるならまず、事実に反することを根拠にした処分通告について撤回し謝罪してからだと告げると、それには応じず、こちらが食い下がっていることについて「遺憾です」「失礼だ」などと言い出した。

 「合意形成がなかったのはそちらが『検討中』のまま連絡を絶ったからで、そちらの不手際である」と告げたが、野澤室長は連絡を断った理由も、自らの不手際と指摘されたことへの見解も答えなかった。そのうち野澤氏は、9月11日に「検討する」と答えたのはその日の会見の取材についてではなく、後日の会見の取材に対応するかについての「つもり」だったと言い出した。

 9月11日の野澤室長からの最後の電話の該当部分を原文通りに書き起こす。

野澤「先ほどの話なんですけども、ちょっと関係者で調整がついてなくてですね、ずっとお待たせしてしまうのも申し訳ないと思ってですね、今日はちょっと難しいということをまずお伝えしようと思いまして」

藤倉「いえいえ。ギリギリまでご確認お願いできればと思います。もう向かってますので」

野澤「はあ。わかりました。ええ」

藤倉「よろしくお願いいたします」

野澤「はい。すいません。どうも。失礼します」

 これで電話は終わっている。野澤室長自身が「今日はちょっと難しい」と、その日の会見についてのやりとりであることをはっきり口にしている。

 野澤室長に「電話は録音してある」と告げ、「つもり」などという主観ではなく客観的事実に基づいて判断するように求めた。本当に後日の会見に関して交渉しているつもりであのようなやり取りをしていたのだとすれば、それは野澤室長のコミュニケーション能力の問題だと告げると、「そう捉えてもらって構わない」と言い返してきた。ならば、それを棚に上げての取材禁止という処分は横暴だと告げたが、処分は撤回されなかった。

 野澤室長は、私と鈴木氏2名が入館に際して野澤室長の名を勝手に使ったと主張した。入館の際に行き先部署の担当者名を記入する欄があったので、私たちは取材についてやり取りしていた野澤氏の名を記入している。それを元に、「この人を入館させてよいか」と担当者に確認してから入館パスを出すのか、担当者名を書きさえすれば入館させるのか。それは経産省側の入館の仕組みの問題であり、私たち2名が不当な手段で入館したことにならない。

 その旨を告げると、野澤氏は「入館の経緯は詳らかに知らないが」「こちらに不手際があったにせよ」といった趣旨のことを言い出した。経緯を確認せず、自らの不手際は棚に上げると、恥ずかしげもなく言い切っている。

 取材禁止について、こちらが「いつまでなのか」「あなたが退職しようが死のうが政権が変わろうがずっとか」と取材禁止の期間を尋ねると、野澤室長は「永劫です」と答えた。

 「永劫」とは仏教用語だ。大谷大学のウェブサイトにある木村宣彰教授(仏教学)のコラムでは、こう説名されている。

〈仏教が説く時間のうちで最も長いのが「劫」であり〉

〈仏典では、四十里四方の大石を、いわゆる天人の羽衣で百年に一度払い、その大きな石が摩滅して無くなってもなお「一劫」の時間は終わらないと譬えている〉

〈終わりのないくらいの長い歳月を「永劫」という〉(いずれも大谷大学ウェブサイトより)

 野澤室長による出入禁止通告の電話の音声は、こちらにノーカットで公開中である。

菅原一秀経産相の会見取材について「永劫にお断り」と出禁通告されました

◆取材を無視し刑事告訴で威嚇中の菅原大臣

 そもそも私と鈴木氏は、なぜ菅原経産相への取材にこだわるのか。もちろん国民の知る権利や取材・報道の自由がその根底にあるが、そういった抽象的な話は主要な問題ではない。現状、菅原経産相と統一教会との関係やジャーナリスト2名(これも私と鈴木氏だが)に対する虚偽告訴問題について、菅原経産相本人に直接認識を尋ねる唯一の機会が経産省での大臣会見だからだ。

 菅原一秀経産相については、大臣就任以前から鈴木エイト氏が本サイト連載〈政界宗教汚染〜安倍政権と問題教団の歪な共存関係〉の中で統一教会との関係をリポートしてきた。

 一連の取材との関連で、菅原経産相側は鈴木氏や私の取材を無視し、警察を使って取材妨害や威嚇を繰り返し、菅原氏への取材ではないものについてまで取材妨害を行ってきた。

参院選中の武見敬三候補(東京選挙区・自民)の演説会で藤倉・鈴木氏の入場を阻む菅原氏と秘書(7月17日、鈴木エイト撮影)

◆公職選挙法違反疑惑を指摘のジャーナリストを国会議員事務所が警察に虚偽通報か(鈴木エイト氏)

◆菅官房長官登壇の選挙演説会で会場を仕切る菅原一秀衆議院議員がジャーナリストを不当排除(鈴木エイト氏)

◆「建造物侵入罪」濫用で狭められる報道の自由(藤倉善郎)

◆統一教会と関係の深い議員が多数入閣。その一人、菅原一秀の経産相抜擢に見る、「菅政権」への布石(鈴木エイト氏)

 菅原経産相側は、私や鈴木氏からの取材申し入れの電話に出ずに居留守を使い、仕方がないので地元事務所に取材の申し入れをしに行くと、「こちらでお待ち下さい」と奥のソファに通しておきながら警察に110番通報したり「建造物侵入罪」だとして刑事告訴したりしている。私と鈴木氏は練馬警察署の取り調べを受け、警察は「検察に送致(書類送検)する」としている。菅原氏には公開質問状を2度送ったが無視されている。

 その菅原氏が経産相に就任した。本人の自宅前には警備のポリボックスが設置され警官が常駐するようになった。自宅や事務所で待ち伏せ「突撃取材」を試みようとすれば、その都度、警察沙汰になる。

 となれば定例記者会見が、正常な状態で菅原氏に質問できる唯一の機会だ。それが、前述の通り「永劫に」取材禁止とされた。

 私と鈴木氏はこれまでカルト集団の取材を中心に行っており、取材を拒否される場面は少なくない。しかし将来について事前に「出入禁止」と通告してきたことがあるのは、幸福の科学だけだ。今回の経済産業省は、7年ぶり2例目にあたる。

 幸福の科学からの通告は2012年。藤倉総裁が週刊新潮で幸福の科学学園の実態をリポートしたことが理由だ。私とともに「やや日刊カルト新聞」で活動している鈴木氏も、何もしていないのに巻き添えを食って同様の扱いとなった。

 幸福の科学の広報職員に、私は「未来永劫ですか?」と尋ねた。職員は「とりあえず、今後ずっとということです」と答えた。普通だ。

 これに対して今回、経産省の野澤広報室長は「永劫だ」と言い切った。前述の通り、「永劫」は仏教用語。経産省官僚のほうが幸福の科学よりも宗教的である。

◆都合が悪い質問をさせないための権力の横暴

 もともと官公庁での記者会見を取材できるのが原則として記者クラブ加盟社のみという問題があった。「記者会見オープン化」が叫ばれ、民主党政権時代には、官公庁ごとで違いはあったとは言え、多少は非加盟社やフリーランサーが取材できる範囲は広まった。

 安倍政権になってからこれが後退したかどうかについては、現場取材を旨としており通常は記者会見の取材をしていない私は把握できていない。しかし官邸での菅義偉官房長官の記者会見をめぐって東京新聞・望月衣塑子記者への嫌がらせや質問妨害が取り沙汰されているように、記者クラブ加盟社の記者に対してすら公正とは言えない記者会見の例がある。

 私も鈴木氏も、経産省による今回の私と鈴木氏への「永久出禁」通告を不当だと考えているし、当然、菅原経産相の会見を取材したい。しかしもっと重要なことがある。前述の経産省の一連の対応を思い返してほしい。

 記者会見での質問内容を経産省側が事前検閲し、明確に取材拒否の理由のひとつとしている。そして経産省側は取材交渉を一方的に放棄して連絡を断った。大臣就任会見の取材拒否には「夜間のセキュリティ上の都合」という理由もあったが、後日の夜間ではない定例会見の取材についても許可しなかった。質問内容がネックであることは明らかだ。

 私や鈴木氏に限らずほかのメディアやフリーランサーも、大臣に都合が悪い質問を予定しているなら取材できないということだ。私たち2名に対してだけ問題なのではなく、国民の知る権利や取材・報道の自由全般がまるごと踏みにじられている。

 ましてや菅原経産相は今週発売の週刊文春によって「令和版疑惑のデパート」として複数の疑惑が取り沙汰され、それ以前から「12の不祥事を持つ男」(9月27日文春オンライン)とまで言われてきた人物。私や鈴木氏が菅原経産相に質問したいのは、統一教会との関係や、その関連で取材申し入れに来ただけの私たちを虚偽告訴した問題についての菅原経産相の認識だ。それは私たちがカルト問題をメインに取材している者だからで、政策の問題や大臣としての適性など、菅原経産相の問題について取材者が質問すべきことは山ほどある。

 オープンで公正な会見が行われていなければ、こうした具体的な局面で、疑惑まみれの大臣への取材すら強権的に阻まれる。今回の一件は、これが理屈上の話ではなく実際に起こっているという実例だ。

 国民の知る権利との兼ね合いを言えば、私や鈴木氏という特定の個人だけが「国民の代表」なのではない。記者クラブ加盟社、非加盟社、フリーランサーの全てのメディアやジャーナリストが全体として国民の知る権利に寄与する。単独で独自ネタを追う現場取材とは違い、複数メディアが一同に介しての記者会見は特に、その会見が全体として「国民の知る権利」に寄与できていれば最低限の役割は果たせる。それが会見を取材する報道機関やジャーナリストの仕事だろう。

 ジャーナリストたちには、それぞれの問題意識から最も重要だと思うことを菅原経産相に質問してみてほしい。もし試みても阻まれるなら、その異常さを広く国民に伝えてほしい。

 疑惑・不祥事まみれの大臣が、自らの疑惑をどう認識しているのか。あるいは、そんな大臣が国家権力ぐるみでいかにして護られているのか。それこそが、いま国民に知らせるべき最も重要な事柄だと思う。

 菅原経産相の定例会見は毎週火曜日と金曜日。国会内で行われるため雑誌記者やフリーランサーがそもそも入れない会見も多いが、経産省内での会見も行われている。

 一般紙などが加盟する記者クラブ「経済産業記者会」は事実上、会見を取り仕切る権限を持っていないようで、非加盟社やフリーランサーが会見取材を申し入れても経産省広報室に回される。

<取材・文・撮影/藤倉善郎>

【藤倉善郎】

ふじくらよしろう●やや日刊カルト新聞総裁兼刑事被告人 Twitter ID:@daily_cult3。1974年、東京生まれ。北海道大学文学部中退。在学中から「北海道大学新聞会」で自己啓発セミナーを取材し、中退後、東京でフリーライターとしてカルト問題のほか、チベット問題やチェルノブイリ・福島第一両原発事故の現場を取材。ライター活動と並行して2009年からニュースサイト「やや日刊カルト新聞」(記者9名)を開設し、主筆として活動。著書に『「カルト宗教」取材したらこうだった』(宝島社新書)

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