内閣制度と矛盾する菅原経産相の取材拒否。マラソン会見でもして説明責任を果たせ

内閣制度と矛盾する菅原経産相の取材拒否。マラソン会見でもして説明責任を果たせ

菅原一秀経済産業相(撮影/藤倉善郎)

◆菅原一秀経産相による取材拒否事件

 10月12日付のハーバービジネスオンライン『「秘書給与ピンハネ」疑惑の菅原経産相会見、ジャーナリスト2名が「永劫に」出入禁止に』を読んで、大変に驚きました。野澤泰志・経済産業省大臣官房広報室長が、フリージャーナリスト2名に対し、大臣会見取材の「永劫」禁止を申し渡したという記事です。政権交代しても禁止という、ジャーナリストとしての職業生命にかかわる措置です。

 驚いたのは、それが内閣制度の根幹にかかわるからです。記者クラブ以外の記者について、取材を禁じるというならば、それは言論や報道の自由にかかわる問題です。憲法でいえば、第21条「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する」に関する問題です。それは、社会にとって重要なことですが、筆者の専門外になります。

 憲法でいえば、第66条「内閣は、法律の定めるところにより、その首長たる内閣総理大臣及びその他の国務大臣でこれを組織する」に関する問題です。第21条にかかわる問題であることも否定しませんが、政府とすればこちらの方が重大なはずです。

 内閣制度の根幹にかかわる最大のポイントは、野澤室長が「経済政策に関する質問に限る」と、菅原経産相の統一教会問題を取材する2名のジャーナリストに述べ、会見取材を禁止する措置を取ったことです。菅原一秀経済産業大臣に対する質問内容を限定し、そこから外れる対象を取材するジャーナリストに対して、会見の取材を禁じたわけです。

◆国務大臣は国政全般に関与する

 内閣制度の根幹は、複数の国務大臣で構成する「内閣」が、行政権を有することにあります。アメリカ合衆国で行政権を有するのは、大統領という個人です。けれども、日本では、内閣総理大臣が行政権を有するのでなく、すべての国務大臣で構成する「内閣」という合議体の組織が、行政権を有します。憲法65条「行政権は、内閣に属する」と同66条「内閣は」「首長たる内閣総理大臣及びその他の国務大臣でこれを組織する」に根拠を有します。

 これは、首相を含むすべての国務大臣で、政府を運営することを意味します。国務大臣である以上、あらゆる国政の課題について、見解を求められたとき、それを説明する責任が国務大臣にあるわけです。そこに、首相と他の国務大臣に、説明責任の差はありません。合議体の構成員であることに違いはないからです。

 菅原経産相も、国務大臣です。安倍晋三首相から、内閣の一員たる国務大臣に指名され、その主担当として経済産業省を管理することになっています。これは、内閣法第3条「各大臣は」「主任の大臣として、行政事務を分担管理する」との定めに基づきます。正式には、国務大臣兼経済産業大臣なのです。

 菅原経産相の会見取材を「経済政策」に限ることは、経済産業大臣としての取材は受けるけれども、国務大臣としての取材は受けないことを意味します。それでも、菅原経産相が他の場所で定期会見をするならばいいのですが、それはありません。よって、菅原経産相のみ、国務大臣としての説明責任を果たさないことになります。

◆菅原国務大臣の統一教会関係は秘書給与ピンハネよりも重大な問題

 行政権が内閣に属することは、その構成員である国務大臣の資質が、国政全般に直結する重大な問題であることを意味します。内閣は全会一致を大原則としますので、問題を担当する大臣でなくても、憲法・法令上はそれに決定的な影響を与える権限を有するからです。

 週刊文春で報じられた秘書給与ピンハネ疑惑は、国会議員の資質を問う重大な問題です。公設秘書は特別職の国家公務員ですから、その給与をピンハネすることは、税金をピンハネすることと同じで、税金の徴収と支出の決定権をもつ国会議員としての資質が疑われます。

 一方、統一教会との関係疑惑は、国務大臣の資質を問う重大な問題です。なぜならば、統一教会は、法令上の問題を様々に引き起こしている宗教団体だからです。全国霊感商法対策弁護士連絡会ホームページよると、統一教会とは次のような団体です。

”世界平和統一家庭連合は、統一教会と称していた頃から、信者の人権を抑圧し、霊感商法的手口による反社会的行為による違法な資金獲得とその資金の韓国文鮮明ファミリーへの献金を継続してきました。私達は、全ての政治家に対し、反社会的団体である家庭連合やそのダミー団体から支援を受けたり、連携していると見られかねない活動をひかえるよう要請致します。支援を受けるべきでない理由は、@家庭連合が反社会的団体であること、Aその反社会的活動の是正が困難になること、B反社会的団体の違法活動にお墨付きを与えかねないことです。

 家庭連合(統一教会)が、一般市民に対し、正体を隠して近づき、先祖因縁や霊界の恐怖を煽って脅迫的行為を行う、いわゆる霊感商法による被害は、当連絡会が集計した相談だけでも、1987(昭和62)年から2018(平成30)年12月までの31年間に合計約3万4197件、被害合計は約1213億円余りにのぼっており、現在もなお同様の被害相談が継続して寄せられています。家庭連合の法的責任を認めた民事裁判例も多数にのぼります。このような手口が許されないことは昨年6月8日参議院本会議で全議員が賛成して採択された消費者契約法第4条3項6号の法律改正により、法律上も明確にされております。同条3項6号は「霊感その他の合理的に実証することが困難な特別な能力」を振りかざして、重大な不幸が生じるなどと「不安をあおり」契約させることを取消事由とする旨定めました。”

 そして、統一教会の関係者が国務大臣となることの問題についても、弁護士連絡会は次のように厳しく指摘しています。

”政治家、特に与党の国会議員は政府の大臣や政務官という行政の一翼を担う立場に立つこともありますから、これらの政治家が家庭連合からの支援を受けることは、規制する側が規制される側と通じることになりますので、甚だ不適切な関係です。”

 つまり、菅原国務大臣による2ジャーナリストの会見取材の拒否は、国務大臣としての資質を問うジャーナリストを締め出し、菅原大臣が説明責任から逃げることを意味します。

◆菅原大臣はマラソン会見で首相候補を目指せ

 国務大臣としての資質を問われたくないという、菅原大臣の気持ちは、理解できます。反社会的と批判される団体と親密な関係にあるならば、それを隠したいと思うのは、人情です。

 だったら、菅原大臣の取る道は一つ、国務大臣も国会議員も、辞職すればいいのです。一私人であれば、法令に触れない限り、反社会的な団体と親密にしたり、加入したり、活動家になったりすることも、褒められた行為ではありませんが、自己責任で可能です。

 どうしても、国務大臣の座にとどまりたいならば、会見取材拒否をすぐに撤回することです。経済産業大臣としてだけでなく、国務大臣としても、会見で説明責任を果たすべきです。

 そして、統一教会との縁をスッパリと切ることです。色々と恩義や経緯もあるとは思います。そのことも、洗いざらい会見で説明し、再出発することです。そうすれば、統一教会のために活動しているのではなく、国民のために活動していると、誰からも認めてもらえるでしょう。

 菅原大臣は、いっそのこと、韓国の゙国(チョ・グク)法務大臣に倣い、長時間のマラソン会見で統一教会との関係を説明してはいかがでしょうか。2ジャーナリストを含む、すべてのジャーナリストに開かれたマラソン会見で疑惑を晴らせば、新たに国民的な人気を集め、小泉進次郎環境大臣をしのいで、菅原大臣が次の首相候補に躍り出るかも知れませんよ。

<文/田中信一郎>

【田中信一郎】

たなかしんいちろう●千葉商科大学准教授、博士(政治学)。著書に『国会質問制度の研究〜質問主意書1890-2007』(日本出版ネットワーク)。また、『緊急出版! 枝野幸男、魂の3時間大演説 「安倍政権が不信任に足る7つの理由」』(扶桑社)では法政大の上西充子教授とともに解説を寄せている。国会・行政に関する解説をわかりやすい言葉でツイートしている。Twitter ID/@TanakaShinsyu

関連記事(外部サイト)