辻元vs進次郎。内閣の消臭剤・小泉進次郎大臣の「ふんわり答弁」を信号無視話法分析

辻元vs進次郎。内閣の消臭剤・小泉進次郎大臣の「ふんわり答弁」を信号無視話法分析

辻元議員の質問に答える小泉進次郎環境相 衆議院インターネット審議中継より

◆そもそも進次郎氏の発言は本当に歯切れが良いのか

 歯切れの良い発言で高い人気を誇り30代の若さで環境大臣に抜擢されたものの、入閣後は記者の質問に意味不明な回答を繰り返して悪い意味で注目を集めてしまっている自民党・小泉進次郎氏。

 一方、歴代政権を厳しい質問で追求してきたものの、党の要職(国対委員長)を務めていたために国会質問から遠ざかっていた立憲民主党・辻元清美氏。

 2019年10月11日、衆議院の予算委員会ではこの両者が相まみえ、過去に進次郎氏が「原因究明すべき」と積極的に発言していた森友学園問題や担当分野である環境問題について質疑が行われた。この質疑は、辻元氏が進次郎氏のことを安倍内閣の「消臭剤」と表現したことでも大きな注目を集めた。本記事では、このうち環境問題に関する質疑を信号無視話法分析していく。具体的には、信号機のように3色(青はOK、黄は注意、赤はダメ)で直感的に視覚化する。

 辻元氏の進次郎氏に対する環境問題の質問はパリ協定(温暖化抑制の国際的な取り決め。2015年12月に国連気候変動会議で採択)に関する1問であった。

 その質問に対する進次郎氏の回答を集計した結果、下記の円グラフのようになった。

<色別集計・結果>

●小泉環境相:赤信号86%、青信号4%、地の色10%

 テレビでは歯切れの良い物言いをする進次郎氏のイメージとは大きく異なり、質問にほとんど答えてない。いったいどのような質疑だったのか詳しく見ていきたい。

◆トランプ大統領のパリ協定脱退に対する進次郎氏の評価

 まず、辻元議員の質問内容は以下の通り。

辻元清美議員:私ねー、臭い物に蓋じゃないけども、私は小泉さんの役割、なんだかですねー、そういう政府のいろんな問題をごまかす清涼剤にあなたが使われるんじゃないかと心配してるんです。爽やかな小泉進次郎を大臣に入れることで臭い物に蓋って言葉がありますけどね、蓋にはまだなってないですよ。軽いから。消臭剤。デオドラントの役割を担わされるんじゃないかと思って、心配して質問してるんですよ。だから、ハッキリいろんなこと言ったらどうかと申し上げてるわけです。まあ、国会改革、国会改革って言ってますけど、その調子だと政治不信の片棒を担がせられるんじゃないかと心配だということをご忠告しておきます。

それでですねー、パリ協定。トランプ大統領が脱退しましたよね。これですねー、私は間違った判断だと思いますが、小泉さん、どうですか? 

 冒頭、馴れ馴れしくも絶妙に失礼な「辻元節」が炸裂。注目を集めた「消臭剤」発言の後、辻元氏はトランプ大統領のパリ協定脱退に対する進次郎氏の評価をシンプルに尋ねている。この質問に対する進次郎氏の答弁がこれだ。

小泉進次郎環境大臣:えー、今お尋ねがあったトランプ大統領のパリ協定。これ、事実関係をまず先に申し上げておきますが、えー、脱退はまだしておりません。えー、脱退は可能となるのは来年の、おー、11月以降であります。トランプ大統領が、あ、したのは、脱退の表明であります。

 えー、そのことだけを捉えて、アメリカが気候変動の取り組みに、えー、全面的に否定的だということは私は違うと思います。現実に、現実に、私はニューヨークでも、えー、環境庁の長官のウィーラー長官ともバイ会談*をしましたが、えー、大変、海洋プラスチックごみの、おー、取り組み、そして、えー、食品ロス、フードロス。この取り組みについては、えー、とても前向きな思いを持っておられ、そして、えー、これは今日本でも開催されているフォローアップ会合の中でも、えー、アメリカが参加をして、今回、イノベーションについて、アメリカが、えー、ホストみたいな形で、ま、議長みたいな形でやって頂きました。

 ですので、トランプ大統領の脱退の表明は大変残念であります。

残念でありますが、そのことだけを捉えて、アメリカ全体がそうかと言えば、カリフォルニア、また、そういった様々な、えー、民間の方も含めて、いろんなが取り組みがやっていますので、そのことをしっかりとまた評価をしながら、一緒に協力できるところは何かを前向きに考えていきたいと思います。

 ちなみに、先ほど辻元先生から色々言われたのでお答えをさせて頂ければ、政治家としてのは、政治家というのは、私は、あの、使われるものだと思っていますから。使いがいがあると思って頂けるのは、それはやりがいを感じるところでもあります。しっかりと頑張っていきたいと思います。

<* 二国間会談を意味する和製英語>

◆堂々と爽やかに論点ずらしを駆使する進次郎氏

 いかがだろうか? 見ての通り、進次郎氏の回答は真っ赤で質問にほとんど答えていない。

 回答(青信号)と判断できたのは、3段落目の「トランプ大統領の脱退の表明は大変残念」という一文のみ。

 他の4段落は全て論点のすり替えが行われており、赤信号とした。

 以下、各段落のすり替えの構造を示す。

◆1段落目

【質問】トランプ大統領のパリ協定脱退への評価

【回答】トランプ大統領のパリ協定脱退の時期

◆2段落目、4段落目

【質問】トランプ大統領のパリ協定脱退への評価

【回答】アメリカ全体の気候変動対策への姿勢

◆5段落目

【質問】トランプ大統領のパリ協定脱退への評価

【回答】政治家としての決意表明

 トランプ大統領のパリ協定脱退への評価を問われているのに、進次郎氏は1段落目で脱退「時期」の見通しに話を逸らし、2段落目と4段落目では「アメリカ全体」に話を広げることで論点をぼやかし、5段落目は進次郎氏お得意のふんわりした抽象的な話を新人の決意表明風に爽やかに述べて、話を締めくくっている。

 余談ではあるが、英語が堪能な進次郎氏は同じ内容の言葉を日本語と英語の両方で説明する癖もあり、2段落目でその癖が2回現れる。

・えー、食品ロス、フードロス。

・えー、ホストみたいな形で、ま、議長みたいな形で

 この進次郎氏の翻訳サービスは、英語力が低い日本人政への親切心なのか、同じ言葉を2回繰り返すことによる時間稼ぎなのかは現時点では判断がついていない。

 この進次郎氏の答弁に対して、辻元氏はこのように返している。

辻元清美議員:アメリカに対する認識が、トランプ政権に対する認識が甘いと思いますよ。これね、トランプ大統領の脱退表明で、例えば、ブラジルの大統領とか、世界各地でですね、トランプ流というかですね、広がってますよ。

 あのー、この脱退表明の時の山本公一環境大臣が記者会見でこうおっしゃってます。「環境大臣として、また山本公一 一個人として、大変失望いたしております。人類の叡智に背を向けた、今回のトランプ大統領の決定は大変な失望」と言っております。歴代の環境大臣は、自分の言葉でですね、「人類の叡智に背を向けたんだ」と言ってるんですよ。これくらいのメッセージをちゃんと日本として発出しないと。「ゴニョゴニョ、ゴニョゴニョ。アメリカは、いや頑張ってるんだ。」そんな話、通用しませんよ。もういいです。

 パリ協定からの脱退を公約に掲げて当選した「ブラジルのトランプ」と揶揄されるボルナソロ大統領を引き合いに出して米国脱退の影響力の大きさを指摘した上で、山本公一・元環境大臣と小泉進次郎・現環境大臣の発言の落差を浮き彫りにした辻元氏。

 最後の「もういいです」の言葉の通り、進次郎氏に見切りをつけ、辻元氏はさっさと安倍総理に対する憲法の質問に移っていった。

◆そもそも、進次郎氏はなぜ人気があるのか

 なぜ進次郎氏の答弁は意味不明なのか。

 その原因は以下2つのいずれかであると考えられる。

1:国語力不足説:そもそも質問内容を理解するだけの国語力を持ちあわせていない

2:確信犯説:質問内容は理解しているが、意図的に質問と無関係な内容を延々と答弁している

 先ほどの質疑の文字起こしを見れば分かる通り、進次郎氏の国語力は決して低くはない。原稿なしで答弁すると日本語の文法が完全崩壊するほど国語力に難がある安倍総理とは違う。従って、進次郎氏の答弁が意味不明な理由は、1の国語力不足ではなく、2の確信犯だと推測される。

 特筆すべきは、進次郎氏は確信犯でありながら、この真っ赤な答弁をまっすぐと前を見据えて、堂々と答えていることだ。時には爽やかな笑顔を見せる余裕さえある。過去の記事で紹介してきた閣僚たちの不誠実答弁から感じられた「後ろめたさ」が微塵も感じられない。この進次郎氏の答弁だけが切り取られてテレビで流れた場合、進次郎氏がまるで正しいことをズバズバ言っているように見えるだろう。そういった意味で、限られた時間内でインパクトのある映像が重宝されるテレビと進次郎氏は非常に相性が良い。彼の人気の秘訣はここにある。

 だが、質問と答弁の整合性をしっかりとチェックすると、進次郎氏の答弁はれっきとした不誠実答弁であることは明白だ。進次郎氏はあたかも次世代の新しいタイプの政治家というイメージが根付いているが、若く、容姿に恵まれ、爽やかに力強く話すことができる点を除いて、旧来の世襲政治家と何ら変わりはない。

 唯一感心する点を挙げるとすれば、質問と全く関係ない意味不明な答弁を、堂々と前を向いて、悪びれる様子を全く見せず、テレビ映りまで意識しながら、延々と喋ることができる面の皮の厚さだけだ。

<文・図版作成/犬飼淳>

【犬飼淳】

TwitterID/@jun21101016

いぬかいじゅん●サラリーマンとして勤務する傍ら、自身のnoteで政治に関するさまざまな論考を発表。党首討論での安倍首相の答弁を色付きでわかりやすく分析した「信号無視話法」などがSNSで話題に。最近は「赤黄青で国会ウォッチ」と題して、Youtube動画で国会答弁の視覚化に取り組む。

 犬飼淳氏の(note)では数多くの答弁を「信号無視話法」などを駆使して視覚化している。また、同様にYouTubeチャンネル(日本語版/英語版)でも国会答弁の視覚化を行い、全世界に向けて発信している

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