小泉進次郎。爽やかな笑顔の下にある「アメリカの代弁者」という素顔<菊池英博氏>

小泉進次郎。爽やかな笑顔の下にある「アメリカの代弁者」という素顔<菊池英博氏>

Kiyoshi Ota/Bloomberg via Getty Images

 第4次安倍再改造内閣でついに入閣を果たした「自民党のプリンス」、小泉進次郎氏。

 内閣人事発表前からの官邸での異例な「結婚会見」など、当人のキャリアや実績以上のプッシュもあり、出世街道を驀進中だが、環境大臣就任後は意味不明な答弁やコメントなどを揶揄され、馬脚を露わしたという見方もある。

 しかし、そんな小泉進次郎だが、日本にとっては極めて「危険」な存在である可能性もある。『月刊日本 11月号』では、第三特集として「アメリカの代弁者・小泉進次郎」と題した特集を打ち出している。

 今回は、その中から日本金融財政研究所の所長である経済学者の菊池英博氏の論考を転載、紹介しよう。

◆農協マネー380兆円の略奪

── 環境大臣として初入閣した小泉進次郎氏をどう見ていますか。

菊池英博氏(以下、菊池):小泉進次郎氏はアメリカの代弁者だと思います。彼の発言は、在日米国商工会議所(ACCJ)やアメリカのシンクタンクの方針に沿ったものばかりです。

 最も象徴的だったのは、自民党農林部会長時代の発言です。ACCJは2014年に、日本政府に対して「JAバンクとJA共済を現在の農水省の管轄下から金融庁の監督下に移し、他の金融機関と平等な競争環境(民間と同じ法人税を課すなど)を確立すべきである」とする意見書を突き付けてきました。彼らの狙いは、JAバンクとJA共済を民営化させ、「農協マネー」で米国債を購入させることです。

 このACCJの要求に呼応するように、進次郎氏は2016年1月に「農林中金(農中)の融資のうち農業に回っている金額は0・1%しかない。農家のためにならない」と述べ、「農中不要論」をぶちあげたのです。

 農中は、地域のJAバンクや各都道府県にあるJA信連から資金を預かり、その運用益を組合員に還元しています。また、農中は農協の事業の赤字を補って日本の農業を支えています。フランスのクレディ・アグリコルやアメリカのクレジット・ユニオンなど、どの主要国にも農中のような農業金融の中核機関が存在しています。農家に直接融資するのはJAバンクの役割であり、農中の融資が少ないのは当然のことです。

 ACCJが狙っていた農協マネー380兆円の略奪は、進次郎氏の父・純一郎氏が年次改革要望書の指令に沿って郵政民営化を断行し、郵政マネーを略奪しようとした構図と同じです。

 また、「日本の農業は過保護だ」という進次郎氏の主張も事実に反するものです。日本の農業は過小保護なのです。欧米主要国は、食糧安全保障の観点から、農業に多額の国家予算を投じています。農業所得に占める直接支払い(財政負担)の割合を見ると、日本はわずか15.6%です。フランス、イギリス、スイスはいずれも90%を超えています。農業算出額に対する農業予算の割合を見ても、日本が27%なのに対し、アメリカは65%、スイスが62%、フランスは44%となっています。

◆グローバル企業の代弁者

── 進次郎氏は、日本をコントロールするジャパン・ハンドラーから直接手ほどきを受けてきました。

菊池:彼は2004年3月に関東学院大学を卒業した後、コロンビア大学に留学しています。そこで指導を受けたのが、ジャパン・ハンドラーの代表的人物であるジェラルド・カーティス氏です。カーティス氏はコロンビア大学東アジア研究所所長などを歴任した日本政治研究者ですが、CIAの情報提供者(インフォーマント)として名前が上っています。現在も、竹中平蔵氏が所長を務めるパソナ総合研究所のアドバイザリーボードに名を連ねています。ジャパン・ハンドラーたちは、日本の留学生たちを手懐け、アメリカの代弁者として育成しているのです。その尖兵が進次郎氏です。

 進次郎氏はCSIS(戦略国際問題研究所)の研究員も務めていました。まさに、CSISは、日本に対する司令塔の一つであり、ジョセフ・ナイ、リチャード・アーミテージ、マイケル・グリーンといったジャパン・ハンドラーの巣窟です。

── 進次郎氏は菅義偉官房長官と歩調を合わせています。

菊池:二人はともに神奈川県選出であり、規制改革論者として知られています。もともと菅氏は、小泉純一郎政権時代に竹中総務大臣の下で副大臣を務め、小泉流の規制改革路線を信奉してきました。

 2009年の民主党政権誕生後、一旦郵政民営化路線は修正されました。2012年4月には郵政民営化法改正案が衆院を通過しました。民営化法は、「ゆうちょ銀行」と「かんぽ生命保険」の金融2子会社の株式について、完全売却を義務付けていましたが、それが努力目標に改められたのです。この法案に中川秀直氏とともに反対したのが、進次郎氏と菅氏でした。

 8月7日、進次郎氏は滝川クリステルさんとともに菅氏を訪ねて結婚を報告し、そのまま首相官邸で記者たちを前に結婚を公表しました。今回の進次郎氏入閣を推進したのも菅氏だったと見られています。8月10日に発売された『文藝春秋』9月号に掲載された菅氏と進次郎氏との対談でも、司会者から「進次郎さんはもう閣僚になってもいいか」と振られて、菅氏は「私はいいと思います」と発言していました。菅氏は、安倍総理が9月6日にウラジオストクから帰国すると、「今回、進次郎は入閣を受けるのでは。言ってみたらどうですか」と進言したとも報じられています。今後、進次郎氏は菅氏と連携しながら、アメリカの要求に呼応した規制改革路線を推進していくことになるでしょう。

◆健康ゴールド免許は金持ち優遇策だ

── 進次郎氏は2018年10月に党の厚生労働部会長に就きましたが、それ以前にも農協改革の旗を振ると同時に、社会保障改革で独自の主張を展開してきました。

菊池:進次郎氏が主導した「2020年以降の経済財政構想小委員会」(通称:小泉小委員会)は、2016年10月に「人生100年時代の社会保障へ」と題した提言をまとめました。提言の目玉は「健康ゴールド免許」の導入です。運転免許証で優良運転者に「ゴールド免許」が与えられるように、健康診断を受け、健康管理に努めた人には、医療保険の自己負担を3割から2割に引き下げる「ゴールド免許」を与えるという構想です。

 高齢化の進展に伴って拡大し続ける社会保障費を抑制するために、国民が自己責任で健康管理に努め、できるだけ長く仕事を続けることを奨励するという発想です。

 大企業の株主たちは配当の拡大のために、企業の従業員の健康保険料負担の縮小を求めています。そのために、予防医療の考え方に基づいて、健康管理は自己責任であるという考え方を浸透させようとしています。

 しかし、健康管理に努め、健康でいられる人を優遇するという発想は、弱肉強食の論理です。健康の維持管理にカネをかけられない貧乏人は切り捨てるということです。

 人間ドックや高級ジムに通えるのも、優良食材でデトックスに励められるのも、豊富な財力がある人だけです。逆に雇用の不安定な人は、年に一度の健康診断さえ受けられないのが現実です。所得の格差が疾病リスクに大きな影響を与えているのにもかかわらず、健康管理に努められる恵まれた人々の自己負担を低くするのは、露骨な金持ち優遇策です。

◆「守旧派に挑む改革者」のイメージに騙されるな

── 小泉小委員会は、2017年3月には「こども保険」創設を提言しました。

菊池:進次郎氏は、「子どもが必要な保育や教育を受けられないリスクを社会全体で支える」などと耳障りのいいことを言っていますが、「保険」の名のもとに、国民に新たな負担を押し付けるのが狙いです。実際、提言は現在の社会保険料に0・1%を上乗せし、新たに3400億円の財源を捻出すると述べています。その実体は、「こども増税」だとも指摘されています。

── マスコミは進次郎氏の発言を持て囃してきました。

菊池:彼の発言の仕方は、典型的なショック・ドクトリンの手法です。ショック・ドクトリンとは、災害、政変、戦争などによる混乱に乗じて一気に変革を進める新自由主義者の手法です。

 進次郎氏は通説とは異なる主張を、突然ぶち上げて、まずショックを与えるのです。その混乱に乗じて、世論を味方につけるのです。その手法は父純一郎氏の手法でもあります。純一郎氏は「官から民へ」「改革なくして成長なし」をスローガンとして、郵政民営化賛成派を改革派、反対派を守旧派・抵抗勢力と位置づけて世論を味方につけました。

 純一郎氏が郵政を悪玉に仕立てたのと同様に、進次郎氏も農協を悪玉に仕立てようとしました。マスコミは、彼らを悪玉に挑む改革派だと錯覚して、彼らをヒーロー扱いしてきたのです。

 しかし、進次郎氏はアメリカの代弁者として利用されているに過ぎず、自ら築き上げた確固たる思想などないのです。彼には、入れ知恵された政策を巧みに宣伝することしかできません。入れ知恵されなければ、何も語れないのです。実際彼は9月22日にニューヨークの国連本部で行われた気候行動サミットで外交デビューしましたが、記者からの質問にまともに答えられませんでした。「石炭は温暖化の大きな原因だが、脱石炭火力に向けて今後どうする?」と質問された進次郎氏は、「減らす」と答えましたが、記者から「どのように?」と尋ねられると、答えに詰まって6秒も沈黙してしまいました。自分の考えは全くないのです。

 進次郎氏は、私的とはいえ靖国神社を参拝しています。靖国参拝は、中国、韓国はもちろん、アメリカも反対しています。アジア諸国との和解の精神を持たない政治家に、日本の指導者になる資格はありません。

 進次郎氏の化けの皮は剥がれつつあります。しかし、日本の規制改革をさらに進めたいアメリカやグローバル企業は、今後も進次郎氏を利用しようとするでしょう。かつて、純一郎氏の郵政民営化に多くの国民が騙されました。進次郎氏の巧みなワンフレーズとショック・ドクトリンに、再び騙されてはなりません。

(聞き手・構成 坪内隆彦)

【月刊日本】

げっかんにっぽん●Twitter ID=@GekkanNippon。「日本の自立と再生を目指す、闘う言論誌」を標榜する保守系オピニオン誌。「左右」という偏狭な枠組みに囚われない硬派な論調とスタンスで知られる。

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