「カニメロン」菅原一秀元経産省への追及はこれからが本番。大臣辞任だけでは済まない

「カニメロン」菅原一秀元経産省への追及はこれからが本番。大臣辞任だけでは済まない

菅原一秀氏

◆「説明なき大臣辞任」で逃げを決め込んだ菅原一秀

 週刊文春で地元有権者への買収疑惑が報じられていた菅原一秀氏が、経産相を辞任した。10月24日に記者団に対して「明日の国会で説明する」と語ったまま、25日に辞任。結局、いまだにまともな説明はなされていない。

 辞任後も週刊文春はもちろん、それを後追いする形で新聞などの大手メディアも菅原氏の問題を引き続き報道している。菅原氏自身が事実関係を明らかにしない一方で、各メディアが独自の取材により次々と菅原氏の問題行為を報じている状況だ。

 菅原氏の地元練馬区では27日、市民が「練馬の恥」といったプラカードを掲げて菅原氏の議員辞職を求める街宣も行った。大臣辞任で済ませていいはずがないのは、明らかだ。

◆菅原氏は「疑惑の100均一ショップ」

 菅原氏の問題は、有権者買収疑惑だけではない。大臣辞任の直接的な原因が、事実であれば公選法違反にあたる香典問題だっただけで、そもそも大臣就任以前から大臣どころか国会議員として不適格と思えるようなエピソードに事欠かない人物だった。

 事実、菅原氏が大臣に就任した直後には、ライターの大山くまお氏が『文春オンライン』で「12の不祥事を持つ男」として菅原氏を紹介。「女は25歳以下がいい。25歳以上は女じゃない」「子供を産んだら女じゃない」といった菅原氏の女性蔑視発言、国会会期中に女性同伴でハワイで「ゴルフ三昧」と報じられた問題、蓮舫氏について「『日本人に帰化をしたことが悔しくて悲しくて泣いた』と自らのブログに書いている」とのデマを流した問題、選挙公報に「甲子園出場4回」と記していながら実際にはアルプススタンドで3回応援していただけだったという経歴詐称問題などを列挙している。

 ここには今回の菅原大臣辞任の立役者である週刊文春の報道も含まれているが、今回の一連の報道とは別の過去の報道だ。

 また菅原氏が有権者にメロンを贈った件も『朝日新聞』が2009年8月3日夕刊で報じたことがある。

〈複数の関係者によると、菅原氏側は、菅原氏が現職当時の同年7月、北海道稚内市の物産店に贈答用メロンを注文し、配送を依頼した。2個入り123件、3個入り9件、5個入り1件の計133件で、1件千円の送料と合わせ費用は計75万8千円。菅原氏が代表を務める自由民主党東京都第9選挙区支部あてに領収証も発行された。注文はその後、数件増えたという。〉(同記事より)

 菅原氏を大臣辞任に追いこんだ週刊文春による一連の報道は、10月17日号(10月10日発売号)から始まった。これまで報じられていなかった独自内容や、様々な証拠資料、証言を網羅した、まさに雑誌ジャーナリズムと言えるものだった。

 とは言え、上記のように、菅原氏は一連の週刊文春報道以前から、明らかに問題が多すぎる人物だった。週刊文春は10月17日号で菅原氏を「疑惑のデパート」と評したが、菅原氏が抱える疑惑や不祥事は巨大疑獄のようなものではなく、どれもセコい内容ばかり。

 私が知人である編集者に「菅原は疑惑のデパートなんて立派なもんじゃない。疑惑のディスカウント・ショップだ」と言うと、編集者からはこんな返しが来た。

「疑惑の100均だ。陳列が雑だし安っぽい」

 もともと国会議員として不適格と言わざるを得ないレベルにあった菅原氏の「疑惑・不祥事の圧縮陳列」が、経産相などという不相応な店を構えたことで崩れ落ちてきて、奥の方に隠れていた在庫まで通路に散乱した。たとえるなら、そんな構図だ。

◆統一教会問題は未だ追及されず

 とは言え、女性蔑視発言やパワハラ、秘書給与ピンハネといった疑惑や不祥事は国会議員のものとしては決して軽くない。週刊文春に取り沙汰された「カニ、メロン、みかん、筋子、たらこ」といった贈答品目も下世話で笑えるし、公職選挙法に触れる違法行為だ。問題を取り沙汰され衆議院予算委員会で立憲民主党の本多平直・杉尾秀哉両氏から追及を受けていたにもかかわらず、なおも選挙区内で秘書を通じて香典を送る無反省ぶりには開いた口が塞がらない。

 これほどまでにトピックスが多ければ無理もないことだが、菅原氏をめぐる問題の一つである「統一教会」との関係は、一連の騒ぎの中では俎上に上がっていない。

 菅原氏と統一教会の関係については、当サイトで連載を持っているジャーナリストの鈴木エイト氏が2年前から追及してきた。2017年11月に開催された統一教会系団体「勝共UNITE」による「改憲2020実現集会」に菅原氏が出席したとされたことが発端だ。

 直後、鈴木氏は菅原氏の事務所に取材のFAXを送付したが菅原氏側は無視。回答がないため鈴木氏は、街頭で選挙活動中の菅原氏に直撃取材を試みたが、菅原氏は「覚えてない」「何か証拠ある?」などととぼけて見せた。

 さらに鈴木氏は2017年衆院選の際に統一教会信者が菅原氏陣営の運動員として入り込んでいたとする情報を得て、菅原氏への取材を続けた。菅原氏は運動員の件を否定したが、元秘書の証言と細部で食い違いがあり、その点を確認しようとする鈴木氏を無視するようになった。

◆統一教会イベントで2世信者を激励した議員に「信者運動員使用」疑惑浮上。本人を直撃<政界宗教汚染〜安倍政権と問題教団の歪な共存関係・第9回>(鈴木エイト)

 鈴木氏は取材を続ける中で、昨年から今年にかけて菅原氏や運動員が自分の顔写真や名前が入ったカードサイズのカレンダーを地元の街頭で配布している現場を目撃。公選法違反に当たる可能性をTwitter上で指摘したところ、「プライバシー侵害」としてTwitterアカウントをロックされた。

 この件も含めて確認を求める鈴木氏の電話を、菅原事務所は居留守を使って無視。菅原事務所は、事務所に直接取材に訪れた鈴木氏に対して、同行した私もろとも警察に110番通報。秘書から「お待ち下さい」と言われソファに通された私たちを、菅原事務所は「建造物侵入罪」にあたるとして虚偽の刑事告訴を行い、私たち2人は後日、練馬署で約6時間の事情聴取を受けた。

◆「建造物侵入罪」濫用で狭められる報道の自由(藤倉善郎)

◆公職選挙法違反疑惑を指摘のジャーナリストを国会議員事務所が警察に虚偽通報か(鈴木エイト)

 統一教会との関わりに加えて、ジャーナリスト取材を妨害する目的での虚偽告訴という問題が、菅原氏に加わった。

 この間も鈴木氏と私は菅原氏に公開質問状を2度送付したが、菅原氏は質問に一切答えず無視を貫いている。

◆経産省での大臣会見も出入り禁止に

 こんな菅原氏が9月11日に経産相に就任した。鈴木氏と私は大臣に統一教会の関係と虚偽告訴問題についての認識を尋ねるため会見を取材しようとしたが、経産省広報室から質問内容を事前検閲され、取材を拒否される。

 私は、検閲は不当として広報室に再検討を求め広報室の野澤泰志室長は了承したが、野澤室長はそのまま連絡を絶った。そのため私は鈴木氏と連れ立って経産省に赴き受付で名前等を書いたところ入館証をもらえたので、そのまま菅原経産相の就任会見を取材した。挙手していたが当ててもらえず質問はできなかった。

 後日、野澤泰志室長は電話でこの件について、「(取材は難しいと)約束したにもかかわらず強引に(庁舎に)入ってきた」などと事実に反する内容を理由として、鈴木氏と私について「永劫に」大臣取材を禁じると通告してきた。

◆「秘書給与ピンハネ」疑惑の菅原経産相会見、ジャーナリスト2名が「永劫に」出入禁止に(藤倉善郎)

 それまで菅原氏が取材を無視してきたことから、大臣会見が統一教会や虚偽告訴についての認識を尋ねる唯一の機会だった。しかしこれを経済産業省広報室が阻んだのだ。

 国民の知る権利、取材・報道の自由に関わる重大問題において、菅原氏と経産官僚が完全な共犯関係を演じて見せた。政治学者の田中信一郎氏はこれについて、経済産業相は経済政策のみを担当するのではなく政府一員である国務大臣なのだという点を指摘し、取材を拒む菅原氏や経産省を批判している。

◆内閣制度と矛盾する菅原経産相の取材拒否。マラソン会見でもして説明責任を果たせ(田中信一郎)

◆菅原氏への追及はむしろこれから

 鈴木氏は、菅原氏が経産相に就任する前から菅原氏と統一教会との関係を追及してきた。

 私と鈴木氏がともに運営している「やや日刊カルト新聞」では、統一教会問題については主に鈴木氏が担当してきた。鈴木氏は一般の雑誌やネットメディアでも記事を書くようになり、いまや統一教会の問題についてリアルタイムに現場取材している日本で唯一のジャーナリストと言ってもいい存在になっている。だからこそ、先だっての安倍内閣改造に際しては迅速に、下記のような記事を執筆し、日刊ゲンダイ、週刊プレイボーイによる類似報道でもコメントが掲載され、フォーラム21誌でも記事を書いている。

◆統一教会と関係の深い議員が多数入閣。その一人、菅原一秀の経産相抜擢に見る、「菅政権」への布石(鈴木エイト)

 私自身、統一教会以外も含めてカルト的な集団と現閣僚の関わりについて、本誌やアサヒ芸能など複数のメディアで記事を書いた。それらも統一教会に関する部分は、鈴木氏が何年も積み重ねてきた取材データをもとにしたものだ。

 統一教会は、長らく「霊感商法」や「偽装勧誘」(団体名や宗教団体であることなどを明示せず正体を偽ったり隠したりして部外者を勧誘すること)が問題視されてきたカルト集団であり、特に近年は自民党の国会議員・地方議員などとの連携を強めている。これに、鈴木氏や私のみならず、カルト問題に取り組む多くの人々が危機感を抱いている。

 10月30日には全国霊感商法対策弁護士連絡会が全国会議員に対して、統一教会や関連団体のイベントに参加しないよう求める要望書を送付している。統一教会の保守運動との連携などを批判したのではない。霊感商法や献金で多額の被害を出している統一教会に対して、政治家が賛同することはその活動にお墨付きを与える。つまり、カルト集団が不特定多数の国民に直接的被害を及ぼすことに国会議員が加担することになるからだ。

◆国会議員の“統一教会”イベントへの出席に、弁護士団体が再び要望書。取りやめた議員はいたか?<政界宗教汚染〜安倍政権と問題教団の歪な共存関係・第19回>(鈴木エイト)

 菅原氏は大臣を辞任したが、国会議員として統一教会にお墨付きを与えるという問題がなくなるわけではない。しかも前述のように、この点について菅原氏側は取材を無視し妨害し続けている。

 やや日刊カルト新聞では、取材現場でのトラブルや物理的な取材妨害が予想される現場は、複数の記者で赴きチーム取材をすることにしている。菅原氏が鈴木氏の取材を無視するようになってからは、私が鈴木氏の取材に同行しサポートしている。取材者を虚偽告訴するような国会議員である以上、今後も同様だ。

 菅原氏がすでに大臣を辞任したいま、少なくとも経産官僚に取材を妨害されることはなくなった。しかし菅原氏に接触できる手段が増えれば、菅原氏が警察権力を利用して対抗した際には鈴木氏や私が今以上の不利益を被るリスクも増す。このような形で大臣の椅子を失った人間は、次には議員の椅子を守るために必死になるだろう。

 別に、私たちがリスクを負って取材していることを称賛してもらいたいわけではない。菅原一秀という国会議員が、取材を試みる人間に対してどういうことをする人間なのか。それを有権者の皆さんに今後もしっかり見てもらいたい。

 詳細は確認中のためまだ公表できる段階にないが、鈴木氏は既報のもの以外にも菅原氏と統一教会との関わりを示す情報を得ているようだ。言うまでもなく、週刊文春が報じた多くの問題も解決していなばかりか菅原氏はまともな説明すらしていない。香典問題は公職選挙法違反の可能性もあり時効も成立していない。今後刑事事件に発展しなければおかしいほどの問題だ。統一教会問題を含めたすべての問題が、「大臣辞任」で終わるべきものではないことは明らかだ。

「疑惑の100均」は、まだ閉店していない。

<文・撮影/藤倉善郎>

【藤倉善郎】

ふじくらよしろう●やや日刊カルト新聞総裁兼刑事被告人 Twitter ID:@daily_cult3。1974年、東京生まれ。北海道大学文学部中退。在学中から「北海道大学新聞会」で自己啓発セミナーを取材し、中退後、東京でフリーライターとしてカルト問題のほか、チベット問題やチェルノブイリ・福島第一両原発事故の現場を取材。ライター活動と並行して2009年からニュースサイト「やや日刊カルト新聞」(記者9名)を開設し、主筆として活動。著書に『「カルト宗教」取材したらこうだった』(宝島社新書)

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