関電資金還流事件と高浜発電所空撮からわかる、関電の「身の丈」に合わない投資

関電資金還流事件と高浜発電所空撮からわかる、関電の「身の丈」に合わない投資

撮影日2017/04/30 撮影者 めたぼ 高浜発電所(田ノ浦)と神野浦

◆空撮で見る高浜発電所

 このシリーズ(1,2,3,4,)では、関西電力資金還流事件について、安倍自公政権与党政治家へ波及したときと同じくして差別扇動と言っても良い「関西電力被害者論」が跋扈したことを厳しく批判してきました。

 ここで高浜発電所について最新の写真と空撮でご紹介します。空撮は、秋田放射能測定室「べぐれでねが」 の「めたぼ」さんに提供していただきました。

 まずは高浜発電所を西から空撮した写真です。撮影日は2017/04/30です。

 神野浦集落と高浜発電所の位置関係がたいへんによく分かります。上野浦漁港から海岸線の道路は、田ノ浦(高浜発電所)の直前まで通っており、常識的な規模の土木工事で田ノ浦と神野浦の間は道路を通すことが出来ます。但し、神野浦側では、道路が集落の中を通りますので、迂回する必要があり、現状のままでは重機材用の動線とすることには無理があります。

 前回までに指摘しているように、山にトンネルを通して神野浦側にでることが望まれます。おそらく工費は25〜50億円程度でしょう。

◆空撮でわかる特重施設用地の問題点

 次のこの写真の特重施設建設現場を拡大します。

 この写真には特重施設の造成工事が写っていますが、今年7月に筆者が撮影した謎々トンネルの正体が分かりました。このトンネルは、特重施設造成工事現場への取り付け道路でした。

 造成後、恒久的な取り付け道路を新設し、トンネルそのものは残してあるようです。現在は、完成した新しい取り付け道路が使われています。

 Googleの衛星写真からも分かりますが、特重施設用地はかなり狭隘であって、今後大きなバックフィット(最新の審査基準や科学的な新知見に対応するため施設を更新・改造すること)が発生すると施設の追加、拡充、改良が困難となります。相変わらず先のことを考えていない、刹那的なものを強く感じます。現行法では、最長で2045年まで使い、解体しない限り半永久的にバックフィットが求められる可能性が高い原子力発電所における大規模投資としては、敷地というすべてを律するところに投資の中途半端さが強くあり、後に禍根を残すことになるでしょう。

◆空撮で検討する高浜発電所陸上第二動線

 次に、筆者が再三再四指摘している神野側への第二動線について空撮写真を交えて検討します。

 2017年のめたぼ氏による空撮写真、2018年のGoogle Map衛星写真では、神野浦の高浜発電から山を隔てて正反対にかなりの規模の土木工事が見られます。この土木工事の正体については、現時点では不明で再度の実地取材が必要です。

 工事現場の位置は、高浜発電所からトンネルを介して第二動線を通すのには最適の場所ですので、そうであることを強く望みます。

 この工事用地からは県道21号線を介して高浜町と舞鶴市に抜けることが出来ますので、現在の陸上動線とは独立した第二の陸上動線が構築できることになります。道路の規格は現状でも十分といえます。

◆高浜発電所の問題点と必要な整備

 最後に内浦湾東岸の全景を空撮した写真を示します。

 空撮は、内浦湾南西岸の五色山公園上空からと思われます。ここまでで分かるように、空撮は、田ノ浦(高浜発電所)から十分に離れた距離から行われています。

 左から音海集落と内浦港、高浜発電所(田ノ浦)、高浜発電所特重施設(神野浦)、神野浦、神野と見えています。

 手前の海は内浦湾です。

 正面奥の島は、大島(陸繋島)で、陸繋部分の埋め立て地に関西電力の拠点が集まっています。大島の先端裏側に大飯発電所があります。靄が強いために美浜発電所は全く見えません。

 高浜発電所は、敷地が狭隘なために現在の基準では原子炉四基の運用には無理があります。結果として特重施設が山をくり抜いた狭隘な土地に立地しています。

 また音海集落は、県道の付け替えによって原子力災害時の脱出経路が大きく改善されましたが、依然として陸路は高浜発電所正門至近を通る一本道のみに依存しており、脱出経路には強い不安があります。

 一方で海路は、内浦湾内の内浦港だけで無く、反対側の高浜湾には漁港が整備されていますので、海が荒れていなければ海路は二重になっています。おそらく工費は200億円くらいになると思いますが、高浜発電所の過酷事故に備えるには、田ノ浦(高浜発電所)・小黒飯・難波江と小黒飯・神野間の道路を原子力緊急事態への備えとして再整備する必要があります。

◆費用対効果が低い四基再稼働

 現状でも報じられている高浜発電所の再稼働へ向けた事業費は6000億円規模であり、公共事業等を含めれば更に1千億円は増えると思われます。今後の必要投資額を合わせれば総額1兆円程度となり得ますが、それにより得られるのは最大3.4GWeで15〜25年程度、2020年以降の設備利用率50〜70%程度の発電所ですので算盤が合いません。

 高浜発電所は、三号炉四号炉は、手頃で優れた原子炉且つ、残余炉寿命が十分にありますし、敷地の規模に対しても運用二基なら適正規模と思われます。結果として投資額も大きく低減できていたでしょう。

 目安としての炉寿命40年を迎えた原子炉を20年、更に20年延長して運転することは合衆国を筆頭とした世界の大規模原子力国での趨勢ですが、それは追加投資を大きく要しないことが前提となっています。

 高浜発電所の場合、1兆円に迫る投資を要していますので投資効率はたいへんに低いと言うほかありません。このことは、2011年にはすでに自明であって、あり得ないほど楽観的な見込みを公言して事業への株主からの同意を取り付け、結果として事業費は雪だるま式に膨らみ、戦力逐次投入の愚に至るという想定通りの典型的失敗を犯しています。これ自体が、経営陣の特別背任に当たるのではないでしょうか。合衆国なら株主代表訴訟で全員丸裸で、不正が見つかれば塀の中でしょう。

 なぜかよく知られていませんが、加圧水型(PWR)原子力発電所の場合、原子炉建屋以外は基本的に一般の火力発電所と同じ扱いですので、解体着手は容易且つすぐに解体できます。

 過去の原子力安全最後進国日本のやり方が通用しないことが明確となってからすでに9年近く経過していますので、高浜一号炉、二号炉の非管理区域(放射線管理区域外)については完全に更地となっていても不思議ではありません。これがタービン建屋まで放射線管理区域であるBWR(沸騰水型原子炉)に対するPWR最大の長所です。

 敷地余裕の広さと動線の合理性は、安全に直結します。また、特重などへの投資も圧倒的に楽になることは言うまでもありません。

 電力事業としては殆ど意味の無い高浜一号・二号炉への投資によって、千億円単位のお金を無駄に垂れ流し、立地自治体への裏工作に明け暮れてきた。結果として投資として有意な高浜三号炉・四号炉への投資効率を著しく劣悪にしてきたのが関西電力経営陣の実績です。

 今回明らかとなった、関電裏金還流事件は、関電疑獄事件(政治問題化した大規模な贈収賄事件)と称せるほどに深刻化しかねない情勢ですが、まさに身の丈に合わない、経済的、経営上の合理性を欠いた投資を長年続けてきた総決算ともいえます。

 自治体と一体化した長年の不正行為や不透明な行為、長年噂されてきた邪魔になる行政職員や議員、有力者への襲撃や暗殺疑惑など、あらゆる過去の汚辱が吹きだしまさに地獄の釜の蓋を開けた様相です。しかもこれで検察がまともに動いていません。これはまさに国家の腐敗と機能停止であって、末期症状というほかありません。

 今回明らかとなった関電裏金還流事件と、見て見ぬふりと責任逃れに終始する国を見て、そのような国に、商用原子力利用を行う実力があるとは到底考えられないというのが、正直な感想です。

◆おわりに

 今回、秋田放射能測定室「べぐれでねが」の「めたぼ」さんから、空撮写真を提供していただきました。空撮によって多くの情報を得ることが出来、これまでの不明点が数多く明らかとなりました。

 今後も空撮写真などを用いてより詳しく様々な事柄を記事化してゆきます。今回は、めたぼさんに大変お世話になりました。ここでお礼申し上げます。

 秋田放射能測定室は、多くの方の寄付で支えられています。個人規模でGe検出器式の装置を運用するのはたいへんに困難ですので、ご関心があればこちらをご覧ください。

<取材・文/牧田寛 写真提供/秋田放射能測定室「べぐれでねが」>

【牧田寛】

Twitter ID:@BB45_Colorado

まきた ひろし●著述家・工学博士。徳島大学助手を経て高知工科大学助教、元コロラド大学コロラドスプリングス校客員教授。勤務先大学との関係が著しく悪化し心身を痛めた後解雇。1年半の沈黙の後著述家として再起。本来の専門は、分子反応論、錯体化学、鉱物化学、ワイドギャップ半導体だが、原子力及び核、軍事については、独自に調査・取材を進めてきた。原発問題についてのメルマガ「コロラド博士メルマガ(定期便)」好評配信中

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