「オリンピックのための治安維持」の影響で収容される外国人たち

「オリンピックのための治安維持」の影響で収容される外国人たち

入管による長期収容に抗議する市民。今年8月、新宿駅前にて

◆帰国できない事情を持つ外国人が、無期限に拘束されてしまう

 かつての戦中の治安維持法による政治犯拘束より、現在の法務省・出入国在留管理庁(入管)での外国人での拘束の方が、制度として酷い―−。11月8日、衆院法務委員会で行われた質疑で浮き彫りとなった。その背景には「東京オリンピックのための治安維持」があり、入管行政のみならず、日本政府としての姿勢も問われそうだ。

 迫害から逃れてきた難民や、日本で結婚しているなど、帰国できない事情を抱えた外国人を法務省・入管がその収容施設に長期間にわたり拘束(=「収容」)していることは、これまでも、国連や内外の人権団体から批判されてきた。

「収容」は強制送還までの措置ではあるものの、帰国できない事情を持つ外国人は、無期限に拘束されてしまうという問題がある。今年6月には、入管による長期拘束に抗議してハンガーストライキを行っていたナイジェリア人男性が餓死。日本弁護士連合会は会長声明で入管を批判した。

◆「東京オリンピックのため」に平然と行われる人権弾圧

 問題は、こうした在日外国人への長期収容が、東京オリンピックのために行われているということだ。昨年4月、警察庁・法務省・厚生労働省の三省庁による合意では「政府は、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けて『世界一安全な国 日本』を作り上げることを目指している」として在日外国人の取り締まり強化に積極的に取り組むとしているのだ。

 10月1日の、河井克行前法務大臣の会見でも、送還を忌避して収容されている人は858人であり、そのうち「入管法違反以外の罰則によって有罪判決を受けた者」「退去強制処分を複数回受けた者」など、全体の57%が「我が国社会の安全・安心を脅かすおそれのある者」であると決めつけている。

 だが、例えば帰国したら殺される危険性がある難民は、何度退去強制処分を受けようが帰国できないのが実情だ。入管の収容施設に拘束されている被収容者の7割弱は、難民認定申請者である。これは日本の難民認定審査自体に問題があるからだろう。審査が国際基準に沿わないものであり、0.2%という低い庇護率に国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は名指しで日本に苦言を呈しているのだ。

◆「予防拘禁」という、治安維持法のような制度が適用されている

 そもそも、「入管法違反以外の罰則によって有罪判決を受けた者」であっても、刑法による刑罰を受け、その刑期を終えた後も、無期限に拘束してよいのか、という問題がある。日本の刑法の大前提として、まだ犯罪を犯していないのに、「過去に犯罪歴があるから」「治安維持のため」といった理由で人を拘束することはできないのだ。こうした問題について、今月8日、衆院法務委員会で初鹿明博衆院議員は法務省を問いただした。

  

「(法務省の)『我が国の安心安全を確保する観点から(入管収容施設の被収容者の)仮放免を認めるべきではない』という理屈はおかしいと思うのですよ。日本人が犯罪を犯して、刑期を終えて社会に出る、こういう人がいると安心安全に支障があるから出さないようにしよう、ということにはならないですよね。これは事実上の予防拘禁ですよ」(初鹿議員、今月8日の衆院法務委員会での質疑)

 予防拘禁とは、刑期を終えても「再犯の恐れがある」として引き続き、拘束し続けるもので、戦前・戦中に政府の方針に異を唱える者への弾圧で猛威を奮った治安維持法の下、思想犯に対して適用された。そして戦後、治安維持法は悪法として廃止されている。

◆「治安維持法」時代より酷い入管の「予防拘禁」

「治安維持法も予防拘禁という制度がありましたが、2年の期限があり、2年経つと裁判所が入って(さらなる予防拘禁をするか否かの)更新の手続きをしていました。一応、期限があって、第三者による更新の手続きがあったのですよ。外国人の長期収容の場合、期限もないし、長期収容をする判断も全て第三者が入らずに、入管当局が行っているわけですよね。私は、これはいかがなものかと思うんですよ」(同)

 初鹿議員は、さらに治安維持法での予防拘禁が適用された人数が62人、そのうち2年延長の更新の適用が行われた人数は4人であったことを指摘。「悪名高い治安維持法でも2年以上拘禁されたという人は、4人しかいないんですよね。ところが、現状、入管の収容者で、令和元年6月1日の時点で2年以上って251人もいるんですよ(中略)私は非常に問題だと思うんですよ」(同)

 つまり、入管による2年以上の長期収容の対象者は、治安維持法の予防拘禁(2年以上)と比較して、約63倍もいるということだ。

 初鹿議員は「収容の上限を6か月として、それ以上は、裁判所など第三者を入れて収容を更新するか否か判断するという制度に変えるべき」と提案。だが、森まさこ法務大臣は機械的に現状肯定しただけであった。

 入管による外国人の長期収容については、国際社会からも厳しい視線が向けられている。

 国際的な人権団体アムネスティ・インターショナルは、10月8日、「恣意的拘禁であり、日本に対しても法的拘束力のある市民的政治的権利に関する国際規約第9条などの国際法に違反する」と指摘。「東京オリンピックのための安心安全の確保」という日本の主張がやり玉にあげられるのも、時間の問題であろう。それは、平和と人権、平等を尊ぶオリンピック憲章にも反するからだ。

 初鹿議員は8日の法務委員会で、「現状、就労できない仮放免者が就労できるようにすべきでは」とも提案していた。帰るに帰れない事情のある外国人達に就労を許可しない現行の制度こそ、彼らの一部に生活に困窮して犯罪を手を染める者が出てきてしまう状況をつくっている。

 安倍政権は、5年間で最大34万5000人の外国人労働者を受け入れる方針だ。ならば、すでに日本社会に溶け込み、日本語も堪能である在日外国人を人材として活用すべきだろう。帰国できない事情のある在日外国人にとっても、人手不足に悩む日本経済にとっても双方に利益があることだからだ。

<取材・文/志葉玲>

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