審議会に諮問された「幸福の科学大学」の「教育」と、その問題点

審議会に諮問された「幸福の科学大学」の「教育」と、その問題点

2016年HSU祭で展示されていた宇宙人の解剖模型(読者提供)

 前回は、2014年の申請時に不正行為があったため5年間認可しないペナルティが課されていたが、ペナルティ機関を経て5年ぶりに申請され、ついに「諮問」にかけられるようになった「大学ではないユニバーシティ」、「ハッピー・サイエンス・ユニバーシティ」(HSU)の成り立ちについて説明した。

 今回は、そこでどのような教育が行われているかについて考察したい。

◆UFOや宇宙人を連呼する「大学」

 同大学についての以前筆者が書いた記事で、申請前の2013年から不認可となった後の2015年までに発刊された「幸福の科学大学シリーズ」の書籍89冊について書いた。「霊言」「守護霊」「霊界」「宇宙人」「UFO」など、信じがたいワードが多数登場する書籍群だ。HSUの図書館には、宇宙人の霊言を収録したものも含めて大量の霊言書籍が並ぶ。大学祭にあたる「HSU祭」では、宇宙人関連の展示や、霊言に基づいて大東亜戦争を称賛し韓国人を見下す「愛国展示」もあった。

 学校として捉えると異常に見えるが、学校の体裁をとった幸福の科学の宗教施設と捉えれば、これは「平常運転」だ。教祖であり幸福の科学における地球至高神エル・カンターレである大川隆法総裁は、日頃から上記のような趣旨の法話や霊言を大量に発表している。「幸福の科学大学シリーズ」も大半が大川総裁の著書だ。

 宗教書ならばともかく、「大学」のものとしては考えられない内容で、学問と宗教の区別が付いているとは到底思えない。

 2015年3月にHSUで行われた、前出のピラミッド型礼拝堂落慶式では、オープニングで大川総裁の法話が上映されている。

「これからちょっと日本が変わろうとしているので、宇宙時代、UFO時代に入っていこうとしているところなので、そういうものを探求していくのが、これから残りのHSUとかハッピー・サイエンスの“宇宙の法“の仕事だろうと」(大川総裁の法話『THE FACT 異次元ファイル・UFOスペシャル編』からの抜粋)

「“あの世がある”とか“宇宙人が来ている”とか“UFOはある”とかいうようなレベルの常識を突破できなかったら先に行かない。行けば行くほど狂っているようにこの世的には見えるんでしょうから、そういう意味での思想戦、思想的な戦いが起きている」(同)

 「狂っているように」見えるから大学を不認可にされたのではないのか。大学が不認可となった後でもなお、信者たちにこのような法話映像を見せているのだから、教団も「神」も全く反省していない。

 反省どころか「神」はUFOや宇宙人は存在するという教義を引っさげて、「この世」に戦いを挑んでいる。いや、戦いを挑めと信者たちを煽っている。

 続いて「エル・カンターレ像開眼の儀」が行われ、前出の木村智重・理事長が挨拶する。

「ほとんどの方は今日初めてHSUをご覧になった方々だと思いますが、“これが果たして大学の校舎であろうか。ここは、神殿の中か宇宙船の中じゃないか”。そのような錯覚を持った方々が多かろうと思います。私自身もこの構内を歩いていて、大学のキャンパスとは思えない、まさしく宇宙都市であり未来都市を歩いているような感じがし、ここにいるだけで未来が見えてくるような気がいたします」

 不認可にされたのに、内部では「大学、大学」と繰り返している。

 渡邉和哉・HSUチェアマンの講話は、HSUの「宗教的装飾をスライドショーでご覧頂きたいと思います」との言葉で始まったが、そこで示された最初のスライドが、これ。

「ハッピー・サイエンス・ユニバーシティの配置と、こないだ『THE FACT 異次元ファイル UFOスペシャル編』(大川総裁による宇宙人リーディング映像=筆者注)でUFOが見えたというのを上から見たところですね。先ほどご覧頂いた(大川隆法総裁夫妻の)ご視察の日のUFOが出現した場所の写真の映像を、これから見ていただこうと思います」(渡邉チェアマン)

◆「地の果てまでも伝導」する若者信者の育成機関

 次に映し出されたのは、HSUの敷地内に建てられた「地球ユートピア実現記念碑」の写真だ。

「直径7.7メートルの巨大な法輪が地球を支えているイメージです。また全人類救済を祈念し、その地球の土台には四正道と“地の果てまでも伝道せよ”の英訳が刻まれています」(同)

 「地の果てまでも伝道」する若き勧誘戦士を養成しようというのが、この「大学」の目的のひとつ。これは幸福の科学学園(中学・高校)も同様で、大学はその延長線上にある。2011年、教団内イベント「教育事業成功大会」で上映された、学園那須校の「探求創造科発表会」の映像の中で、男子生徒がこんな演説をしている。

「私達の使命は、やはり伝道なんです。伝道なんです! 私は、この人生一生を主に捧げていきたいと思います。そしてアメリカ伝道や世界伝道を成功させ、宇宙にも広がっていきたいと思います」(男子生徒)

 すでに書いたように「主」とは大川総裁のことだ。大川総裁に一生を捧げ、地の果てどころか宇宙にまで勧誘活動をしに行くような若者を養成するのが、この教団の教育事業である。

 HSUに隣接する教団施設・千葉正心館の敷地内にも、こんな絵馬がかけられていた。

 幸福の科学学園那須校が併設されている教団施設・那須精舎内にも、学園合格を願う絵馬とともに「地の果てまでも伝道せよ」と書かれた絵馬が並ぶ。

◆外部の学会でもオカルト研究発表

 前出の以前筆者が書いた記事で、HSU祭において宇宙人の解剖模型展示や、コンピューターに仏法真理(幸福の科学の教義)を教え込むAI(人工知能)開発プロジェクトの展示があったことを紹介した。「悟りの次元」を判定したり「宇宙人の善悪を見極める」ことができるというスゴイAIだが、このプロジェクトの発表者の欄にはHSUの学生だけではなく「プロフェッサー」(つまりHSUにおける教授)の名も記載されていた。

 学祭における学生のおふざけではない。教員まで一緒になってこんな研究をしている。彼らは本気なのだ。

 HSU生が外部の学会で学生が研究発表を行うことがある。2016年に札幌で開かれた「第17会計測自動制御学会システムインテグレーション部門講演会」では、1人の学生が佐鳥新・HSUプロフェッサーと共同で行った「脳波測定におけるθ波の独立成分分析」という研究を発表した。

 脳波や脈拍などの測定方法に関する内容だ。それ自体は専門的なもののようで、私には何が何だかわからない。気になったのは、発表資料の冒頭に掲載されていた研究目的。

〈たとえば、心理学者ユングは集合的無意識という概念を唱えた。これは、人間の無意識の深層に存在する、個人の経験を越えた先天的な構造領域として定義される。ここにおいて特徴的な現象として、「シンクロニシティ・共時性」がある。かけようと思っていたら相手から電話がなる、離れた場所でほぼ似た出来事が示し合わせたように同時刻に起きる、など単なる偶然と考えるにはあまりにも確率が低い現象がしばしば起こることを指す。もし集合的無意識が実在し、この共時性というものを昨今の生体測定方法により定量的に扱えるようになれば、新しい通信方法として使える可能性がある。〉(研究発表資料より)

〈本研究の目的は、統合的生体センサシステムの構築および生体と精神の相関の定量化の新たな指標の探求である。そして、「睡眠麻痺」状態を足がかりとして、人間と集合的無意識の存在の検証およびその通信のメカニズムを解明していきたいと考えている。〉(同)

 平たい言葉で要約すれば、テレパシーを新たな通信技術として使えるようにするための研究ですよ、というのだ。

 共同研究者である佐鳥氏は、北海道衛星株式会社の代表取締役としてHSU開設前から人工衛星関連事業を手掛けてきた幸福の科学信者でもある。教団公式サイトに掲載されたインタビューでは、大川総裁が呼び出した宇宙人の霊言を研究の参考にしていると語っている。

〈宇宙人リーディングは、さまざまな星から来た宇宙人によって、母星の様子や彼らの持つ科学技術など、他では知り得ない情報が数多く語られているので、非常に知的好奇心が刺激されます。

 特に、宇宙人たちが「ワームホールを使った長距離移動」や「タイムスリップ」などについて語っているところは、地球においても「未来科学」を実現していくヒントが多数含まれており、研究する上で非常に参考になっています。〉(同インタビューより)

 大学院時代に幸福の科学の書籍を知人から渡され教義を学ぶようになって以降について、こうも語っている。

〈学びを深めるうち、時折、幽体離脱して宇宙を見たり、霊界に行って霊人と対話したりと、神秘的な体験をするようになったんです。そうしたなかで、次第に霊的世界への確信が深まっていきました。〉(同)

 もちろん、信仰は自由だ。宗教的なものに限らない。UFOだろうが宇宙人の存在だろうが、その他どんなに荒唐無稽な世界観であろうとも、信じるのは自由だ。もちろん、信仰が科学的探求のモチベーションになっていたって構わないだろう。

 問題は、こうした人物がオカルト的な世界観と学問を混同した教育を現に行っているという点。そしてこの佐鳥氏に限らずHSUや学校法人関係者らが一貫してそういった研究や教育を目指している点だ。

 前回の大学設置申請が不認可とされた理由そのものだ。審議会は、同大学の全学部共通科目の教材となっていた大川隆法総裁の著書に、霊言を科学的に証明されたものとする趣旨の記述があることを理由に「不可」と答申した。審議会が例示した書籍には、前出の「大学シリーズ」も含まれている。

◆マトモな教育を受ける権利

 10月に幸福の科学大学の設置認可が再申請されたニュースに関連して、Twitterなどでは「信者以外は行かないだろう」といった類いの感想が見られた。実際、そうだろう。前出の通り大川総裁自身が「狂っているようにこの世的には見える」と認めている大学だ。

 しかし、だからといって私たちに無関係な問題かと言えばそうではない。

 私が最も重視するのは、若い信者の人権問題としての側面だ。前述のように、幸福の科学では2世を中心とする若い信者に対してマトモな教育を受ける権利が阻害されている。それが特に徹底して行われているのが、生徒たちが寮生活をしながら教義と学問を混同した教育漬けにされる幸福の科学学園とHSUである。

 大学として認可するということは、文科省までもが、未成年信者の人権に関わる教団の教育事業にお墨付きを与えるということだ。なおかつ助成金等として我々の税金が人権侵害集団に投入されることになる。

 若い信者が「進学も就職も放棄する」という前述のような状況も、カルトにおける人権問題のひとつとして極めて深刻なものだ。これは大学が認可されれば解消されるが、同時に別の新たな問題が発生する。現在、無認可のHSUに在籍している約1000人の「学生」たちの処遇だ。

 HSUでは学部によって多少の差はあるが入学初年度に入学金や寮費を含め計180万円前後から190万円前後の費用がかかる。彼らは、大学が認可されただけでは「大学生」になれない。何年生であろうと、大学認可後にまた1学年から入学する必要がある。

 そうしなければ、同じカネと時間を割いて千葉県長生村のキャンパスに通う若い信者たちの間に、「教団施設で仕事もせず学校にも通わない4年間を過ごした高卒者」と「神の大学を卒業した大卒者」という格差が発生する。

 厳密に言えば、これは文科相が大学を認可することによる問題ではなく、教団が認可のないまま「HSU」を開設し学生をかき集めてしまったと結果だ。学歴にならないHSUに入ったことですでに教団に人生を翻弄されている若い信者が、大学が認可されればもう一度振り回される。

◆幅広い分野での学問の危機

 信者の人権や税金の問題にとどまらない。「エル・カンターレ文明の発信基地」を標榜する幸福の科学大学によって、外部の学問分野も侵食されるという問題も予想される。

 前述のような理系オカルト研究だけではない。たとえば「幸福の科学は宗教として優れている」かのような宗教研究ですら「大学の教授」が発表できるようになる。

 かねてより産経新聞や夕刊フジ、その他スポーツ紙が、幸福の科学の広告を大々的に載せ、ヨイショ記事や関係者の連載記事を載せ、夕刊フジに至っては霊言本の内容をさも通常のニュース記事であるかのように偽って掲載したことまである。

 大学ができれば、教団はメディアを通じて幸福の科学関係者を「大学教授」などとして露出させ、自らの主義主張をアピールできる。宗教分野に限らない。政治、外交、社会問題や時事的なニュースなど、これまでも教団は様々な分野において教祖の持論をアピールする活動を行ってきた。そこに「大学」や「大学教授」という権威をまとった手法が加わることになる。

 こうした活動に加担する外部の知識人にとっても、「宗教ではない。大学から報酬を得ているだけだ」という形式論的な自己正当化をしやすくなるだろう。

 そうなる前から、渡部昇一氏など保守系言論人が幸福の科学の宣伝に加担してきた。ジャーナリストの佐々木俊尚氏にいたっては、『公開霊言 スティーブ・ジョブズ 衝撃の復活』出版記念イベントで関係者と対談し、Twitter上で幸福の科学を「カルトではない」と断言している。幸福の科学が「大学」という権威をまとうことで、こうした行為のハードルはいままで以上に低くなる。

 学術団体も無関係ではいられない。「大学」ではないHSUならともかく、認可された「幸福の科学大学」の関係者を門前払いできるだろうか。何かと言えば「信教の自由の侵害!」と騒ぎ立てる教団の勢力を、毅然と拒絶するのは容易ではない。根拠をもって拒絶できるほど幸福の科学についての知識を備えた学術団体など、宗教研究の分野以外にどれほどあるだろう。

 前述のようなHSUの「学生」や「プロフェッサー」による外部の学会で発表も、すでに教団がウェブサイトで宣伝し実績としてアピールしている。大学としての認可を得れば、「◯◯学会で発表しました」という教団の宣伝に、学術団体が望まずとも利用されるケースはさらに増えることは目に見えている。

 幸福の科学大学が認可された先に予想されるのは、同大学内にとどまらない広範囲での「宗教による学問の侵食」だ。「変な大学が1つできる」だけでは済まない。

◆認可などもってのほかだ

 だからこそ、以前の記事で書いた「幸福の科学大学」の前回申請時の萩生田光一・現文科相の立ち回りは悪質と言える。審議会側が難色を示していた大学の設置について萩生田文科相は、学校法人側に学長についての名義貸しまで指南して、認可さえ得てしまえば後で好きにできるかのような偽装申請まがいの助言を教団側にしていたとされている。

 そして前出の大川総裁の言葉からもわかる通り、仮に幸福の科学がマトモな申請内容を取り繕ったとしても、大川総裁にも教団にも申請内容通りの大学にする気などない。

 〈終わりなきカルト2世問題の連鎖<短期集中連載・幸福の科学という「家庭ディストピア」1>〉で紹介した元2世信者は、こう語っている。

「教団の中での常識がおかしいということは、教団の外で生活すればすぐわかるようになる。私自身は、いまだにその価値観に縛られているという実感はありません」

 この2世は信仰を捨てたが、仮に信仰を捨てなくても、一般の学校に通い外界に触れ信仰が異なる人々と親交を持つことで常識や社会性を身につけることは決して不可能ではない。信仰を保ちつつ他人を傷つけず自分の人生も破壊しないための選択肢は、本来いくらでもある。

 2世信者たちは、その信仰を自分の意思で選ぶわけだはない。親が信者だから自分も信者にならざるを得ない、あるいはそれをおかしいと思うことがないような環境で育ってきたというだけだ。そうではない環境で客観的な知識や社会常識を身につけることができる機会が学校や職場だろうに、「学校」教育の中で教団の方針にからめとられオカルト教育と偏った政治教育に染められて、将来の選択を狭めてしまっている。

 HSUは今年の春に一期生が卒業したが、就職希望者の4割近くが「幸福の科学グループへの奉職」した。つまり清水富美加と同じ「出家」だ。高卒で、4年間、就職でも進学でもない時間を過ごし、社会的に批判を浴びている宗教団体で出家した若者。仮に将来、彼らが信仰を失ったりクビにされたりして(幸福の科学では「還俗」と称して職員を解雇することが多々ある)社会に放り出されても、学歴も一般社会人としての経験もないまま歳を重ねたという経歴上のこのハンデは二度と取り戻せない。

 大学が認可されれば、信者たちは形式上の「大卒」という経歴が手に入るようになる。しかしそれだけだ。前述のように社会から批判されるような教団の活動には拍車がかかる。高卒より大卒の方が就職は有利かもしれないが、「幸福の科学大学」の社会的評価が学生にとって有利に働くとは考えにくい。それでいて、大学になれば今以上に、教団による若い信者の囲い込みは加速するだろう。

 こんな「大学」に、行政が加担していいはずがない。

<取材・文/藤倉善郎>

【藤倉善郎】

ふじくらよしろう●やや日刊カルト新聞総裁兼刑事被告人 Twitter ID:@daily_cult4。1974年、東京生まれ。北海道大学文学部中退。在学中から「北海道大学新聞会」で自己啓発セミナーを取材し、中退後、東京でフリーライターとしてカルト問題のほか、チベット問題やチェルノブイリ・福島第一両原発事故の現場を取材。ライター活動と並行して2009年からニュースサイト「やや日刊カルト新聞」(記者9名)を開設し、主筆として活動。著書に『「カルト宗教」取材したらこうだった』(宝島社新書)

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