安倍政権へのさらなる一撃!? 注目の高知県知事選、与党候補の応援には「教育利権疑惑」で渦中のあの人が!?

安倍政権へのさらなる一撃!? 注目の高知県知事選、与党候補の応援には「教育利権疑惑」で渦中のあの人が!?

山本太郎代表と主張を同じくする野党統一候補の松本顕治氏。 「誰一人取り残さない県政を」を旗印に掲げ、消費税増税やTPPにも反対する

◆自民党へのさらなる一撃となるか!? 高知県知事選

 ダブル大臣辞任と萩生田光一文科大臣「身の丈」発言による英語民間試験延期で野党が勢いづく中、首相主催「桜を見る会」招待問題(公職選挙法違反疑惑)が急浮上、安倍政権が揺らぎ始めた。

 11月12日には、野党三党(立憲民主党・国民民主党・共産党)の追及チームが初会合。「選挙民への寄附を禁じた公職選挙法に安倍首相が違反している疑いがある」「内閣総辞職はもちろん議員辞職案件だ」と攻勢を強めるのに対し、安倍首相が一連の不祥事打開を狙って「桜疑惑解散」(枝野幸男・立憲民主党代表)に打って出る可能性が取り沙汰され出したのだ。

 追い込まれた安倍政権へのさらなる一撃となるかも知れないと注目されているのが、「高知県知事選(11月7日告示・24日投開票)」だ。

 元総務省総括審議官で大阪府副知事も務めた浜田省司候補(自公推薦)と、野党統一候補の松本顕治氏(立民県連・国民県連・社民・共産推薦)の一騎打ちをする与野党激突の構図だ。

 共産党県委員の松本氏は夏の参院選高知徳島選挙区(改選数1)でも野党統一候補として善戦、高知では約11万票を獲得して自公推薦候補に約1万9千票差にまで迫っていた。

 その実績を買われて県知事選出馬を要請されたため、「県知事選でも再び接戦となるのは確実。十分に勝機はある」と松本陣営関係者は意気込んでいるのだ。

 一方、高知生まれのキャリア官僚元総務省総括審議官の浜田省司氏は7月まで大阪府副知事を務めてカジノとセットの大阪万博誘致に成功。第一声では中央とのパイプの太さをアピールしながら、所縁のある大阪万博を控えた関西の経済活力を引っ張ってくるとも訴えた。

◆与党陣営の出陣式に登場した「サプライズゲスト」

 与党陣営の浜田候補の出陣式にはサプライズゲストと呼びたくなる応援弁士が登場した。

「安倍”お友だち”と英語試験業者の蜜月」(「週刊文春」11月14日号・発売日は7日)と報じられたばかりの下村博文・元文科大臣(選対委員長)が駆け付けたのだ。

 野党統一候補の松本氏は「よく来れたと思いました」と驚き、立憲民主党の黒岩宇洋衆院議員も「安倍政権のおごりの現れだ。教育利権疑惑が報じられた下村氏が演説をしても票は減らないと高を括っているでしょう」と呆れた。「総理主催『桜を見る会』追及チーム」の初会合で「首相が公金で公的行事を私物化したのかについて事実を解明していく」と述べた黒岩氏は2日前の10日、高知市での野党合同街宣に駆け付け、地方に不利な英語民間試験を導入しようとした安倍政権を批判してもいたのだ。

 この時点で野党は下村氏に照準を絞っていた。延期発表直後の11月4日、立憲民主党の枝野幸男代表は「一番の原動力になったのは、下村元文部科学大臣ではないか」「下村大臣当時の導入経緯が一番本質的な問題ではないか」(いわき市での囲み取材)と語っていたからだ。

 しかし渦中の下村氏は自らが“減票マシーン”となる恐れを全く気にしていなかった。出陣式後に直撃、まず「民間試験導入は地方切捨て、格差拡大につながらないか」と切り出すと、「つながらないですね。つながらないようにします」と回答。続いて「(献金を受けている)教育業者のための利権事業という指摘もある」とも聞いたが、下村氏は「全くありえない。ためにする話ですね。根拠もない」と否定した。そこで「民間試験導入が高知県知事選の争点になったら不利になるのではないか」と質問を続けたが、下村氏は「全然不利じゃない。全く不利じゃない」と強調したのだ。

 ここでスタッフが「時間が来ました」と宣言、私との一対一の質疑応答は終了となったが、不思議なことに近くで待っていた番記者との囲み取材には下村氏は応じた。

◆疑惑については「ためにする議論」と一蹴

――(番記者)今回の知事選、党本部としてはどのように位置づけられて、どんな選挙戦をしていきたいとお考えでしょうか。

下村「一地方の知事選ではなくて、国政に直結する大切な知事選挙になってきていたと思います。また相手候補が共産党籍を持つ(野党)統一候補ですから次の衆議院選挙にも知事選挙の結果は影響すると考えて、高知県の問題だけれども今の国政や今後の選挙にもつながるという思いで党本部としても全力で対応していきたいと思います」

 一段落したところで囲み取材に加わった私は再度、「民間試験導入は争点になると思うか。『地方切捨て』という指摘もあるが」と聞いたが、「もう民間試験については萩生田大臣が延期をして見直すということだから、争点には全くならない」と回答し、「高知を含めて『(地方の受験者が)不利になる』とは考えないのか」と再質問すると、再びスタッフが終了宣言をした。

 しかし別の番記者が「待って下さい。代議士と教育業界の癒着を民間試験に絡めて報道している一部週刊誌がある」と言いながら見解を求めると、下村氏は一転して雄弁となり、癒着を否定した上で、導入必要論を約2分間にわたって丁寧に語り始めた。

「全くためにする議論だと思います。そういうようなことは全くありませんし、そもそも英語の民間試験というのはすでに4年前の段階で約3割、250を超える大学が導入していることなのですね。業者のための入学試験というのは全くためにする議論です」

「(民間試験導入の目的について)私が決めたわけではなくて、これまで自民党の党の中で議論をしたことを政府が決定した。そもそも文科省も中央教育審議会等、いろいろな議論を積み重ねの中で今回決まったことなのです。今まで大学試験が読む書くことが中心の入学試験だったのが、語学は読む書く話す聞くですから。6年間、少なくとも英語を勉強して話すことが出来ないのはいかがなものかということから4技能を充実させる英語教育にしていこうと決めた中で、民間の英語試験を活用できるのであれば、活用しようということは既に4年前の段階でも約3割の大学が活用しているわけですね」

◆野党統一候補松本氏は「地方在住者にとってリスク」

 高知を含めた地方に不利になるとの批判がある英語民間試験に対して野党は「中止」を求めているが、教育利権疑惑の中心人物の下村氏は改めて必要論を訴え、都市と地方の格差拡大の恐れも否定した。与野党の見解が食い違っている以上、高知県知事選の争点の一つになるのは確実だ。松本氏は、導入必要論者の下村氏に次のように反論した。

「高知県のような地方に暮らす人たちには、英語民間試験の導入がリスクになっている。県民の立場に立って考えたら、民間試験の導入には反対するべきだ。延期ではなくて中止をするべきだと考えています。今のセンター試験が一定の完成度をもってやられているので『急いで試験制度を変えないといけない』とか『民間試験を導入する』のは理屈としても通らないと思う。『都会優遇・地方冷遇』の安倍政治の弊害の一つです」

「大学入試の問題だけではなく、学校のあり方を問うているので(知事選の)論戦の中でも重要になってくる。争点の一つになる」

 福岡市出身で高知に移り住んだ松本氏は共産党県委員だが、選対本部長は無所属の広田一衆院議員(野党統一会派の国対委員長代理)、副本部長を立憲民主党県連代表の武内則男衆院議員が務める。共産系候補を他党が支える進化した野党共闘(選挙協力)が機能していたのだ。

◆山本太郎氏と松本候補の共通点

 もう一つの注目ポイントは、永田町の“台風の目”のような存在となった山本太郎・れいわ新選組代表。11月16日の朝日新聞にはこう報じられていた。「国民(民主党)幹部は『(松本氏は)良い戦いをする候補だ』と指摘。先の参院選でも注目に集めた、れいわ新選組の山本太郎代表に応援要請し、共闘の成果を示した考えだ」

 ちなみに松本氏は「高知の山本太郎」と呼んでも違和感がないほど両者の主張は酷似している。

「誰もが切り捨てられない社会を」と訴える山本氏に対して、松本氏は「誰一人取り残さない県政へ」を旗印に掲げる。安倍政権が成立させたTPPなど悪法廃止や消費税廃止を主要政策に山本氏が掲げれば、松本氏も高知の人口減少に歯止めがかからない要因としてTPPや消費増税をあげ、国の政治を変えないと訴えているのだ。

 告示日の7日、街宣を終えた松本氏に「山本氏に応援要請という朝日新聞の記事を読みました」と声をかけると、こんな答えが返って来た。

「周りの方が要請をしています。一緒にやっていけるところはやっていきたいと思っています」。

 全国ツアー中の山本氏が合間を縫って高知で応援演説をするか、現地まで足を運ぶ時間的余裕がなくてもネット上で支援表明をするだけでも、松本氏には大きな追い風になるのではないか。

「消費税5%減税を旗印にした野党結集・政権交代」を呼びかける山本氏は、安倍政権へのさらなる一撃になりうる高知県知事選を左右するキーマンの一人であるのは間違いない。天下分け目の決戦の様相を呈してきた高知県知事選の結果が注目される。

<取材・文・撮影/横田一>

【横田一】

ジャーナリスト。小泉純一郎元首相の「原発ゼロ」に関する発言をまとめた『黙って寝てはいられない』(小泉純一郎/談、吉原毅/編)に編集協力。その他『検証・小池都政』(緑風出版)など著書多数

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