長期収容で「うつ病」発症、嘔吐を繰り返し体重20kg減の被収容者を牛久入管が放置

長期収容で「うつ病」発症、嘔吐を繰り返し体重20kg減の被収容者を牛久入管が放置

ダヌカさんが収容されている牛久入管

◆うつ病で水も飲めない被収容者が治療を希望しているが、入館は拒否

 本当に、このままでは死んでしまう。

 70kgあった体重が50kgになるほどに、食べては吐くことを繰り返している外国人が放置されているのだ。

 法務省の出入国在留管理庁入管庁(以下、入管庁)の収容施設の一つ、「東日本入国管理センター」(茨城県牛久市。以下、牛久入管)には、300人強の外国人が収容されている。

 大ざっぱに言えば、その3分の2が難民認定申請をしたものの不許可になった人たち。残り3分の1が日本滞在中に何かしらのルール違反(不法就労や刑事事件など)を起こした人たちだ。

 だが、スリランカ出身のダヌカさんの場合は、そのどれでもない。スリランカ大使館も「間違いなく本人」と認めているのに、日本政府は「他人である」として、もう2年以上も収容を解いていないという極めて特異な事例である。

 そのダヌカさんがここ数か月で体調を崩し、食べては吐くことを繰り返している。長期収容の影響で「うつ病」と診断され、その服薬のために飲む水も吐いている。極めて重症だ。だが、本人は治療を希望し「せめて点滴を」と求めているのに、牛久入管はこれを拒否しているという。取り返しのつかないことになったらもう遅い。

◆日本政府は「P氏がダヌカ名義のパスポートで入国」と認識

 ダヌカさんは1998年、16歳で初来日。ブローカーの「未成年では日本のビザを取得できない」との説明を信じ、成人のP氏名義の偽造パスポートで入国した。その後10年間、土木現場などで働くが、2008年に不法滞在が発覚し強制送還された。

 このとき入管は、P氏名義のパスポートからダヌカさんをP氏と認識。ダヌカさんも面倒を避けるため、本名を明かさず帰国した。

 ダヌカさんは帰国後、貿易会社を設立。そして2010年11月4日、「貿易をしたい」との日本人Yとの商談のために再来日した。このときは本人名義の正式パスポートと90日間のビザを携えて入国した。

 ところが、Yの会社は詐欺目的の架空会社。Yは500万円の出資を強要するが、ダヌカさんが応じないと知ると、警察と入管にダヌカさんを売った。

 目的は「釈放されるにもカネが必要。私に預ければそれができる」と強請ることでカネを入手するためだ。ダヌカさんはそれを拒否した。そこで起きた問題は、日本政府が「P氏がダヌカ名義のパスポートで入国」と認識したことだ。

◆スリランカ大使館が「間違いなくダヌカ本人」と認めるも、日本政府は認めず

 その後ダヌカさんは、出入国管理法違反での刑事裁判を受け、横浜刑務所に2年間服役する。その服役中に事態が変わった。2012年、「自分はダヌカである」との訴えに、在日スリランカ大使館が「間違いなくダヌカ本人だ」との証明書を出したのだ。

 本来なら、これで日本政府も本人だと認め、ダヌカさんは帰国できるはずだった。だが2013年3月までP氏として服役したダヌカさんは、出所後、在留資格がないため、即時に東京出入国在留管理局(東京都港区。以下、東京入管)にやはりP氏として収容された。

 8か月後に仮放免(一時的に収容を解く措置。就労は禁止)され、2015年には日本人女性Aさんと出会い婚約する。

 仮放免は1〜2か月ごとに更新(延長)手続きを取らねばならない。2017年7月6日、ダヌカさんは東京入管で更新の不許可を告げられると、その場で収容されて数か月後に牛久入管へ移送された。そして今に至っている。

◆「一生ここで過ごすのか」という不安から、うつ病を発症

 問題は、スリランカ大使館がダヌカさんをダヌカだと認めていることだ。日本政府が強制送還しようにも、別人であるP氏名義のパスポートをスリランカ大使館が発行するはずもない。そのため、ダヌカさんは強制送還すらされず、生涯を牛久入管で過ごす可能性がある。

 ダヌカさんは何度も仮放免申請を出すが、3か月待っていつも不許可。「自分は一生ここで過ごすのか……」という不安から、ダヌカさんは9月下旬に「うつ病」を発症してしまう。同時に、食べては吐くという体調悪化に陥った。

 筆者は9月27日にダヌカさんに面会取材したが、体力をなくしたダヌカさんは車椅子で現れ、腕は枝のように細くなっていた。毎週ダヌカさんを面会する日本人婚約者のAさんも「あんなに穏やかだった人がいま、気分の上下が激しくなっている。不眠のため、目の下の隈が真っ黒です。仮放免しないと彼が壊れる」と強い不安を抱いている。

◆入管は以前の間違いを認めず、メンツのために収容している

 関係者はこう推測する。

「入管は、ダヌカはダヌカだと知っているはず。でもそれを認めれば、以前のP氏としての扱いが間違いだったことになる。メンツのために収容している」

 そして11月に入ってから、Aさんからの連絡内容は悲惨なことになっている。「せめて点滴を」と求めているダヌカさんの要請を、入管が拒んでいるというのだ。

 11月15日に面会したときには、ふくらはぎは枝のように細くなっていた。そして、70kgあった体重は11月末にはついに50kgにまで減った。極めて危険なレベルにいる。

 牛久入管では、今年5月から仮放免を求めての集団ハンストが行われているが、仮放免される一つの目安は10kg以上の体重減である。だがダヌカさんは20kgやせても仮放免される気配もない。

 この状況を変えるには世論を高めるしかない。そう考えた有志が11月末に市民団体「ダヌカさんを支援する会」を設立し、一日も早い解放を訴えている。

 役所は世間の目を気にする。「支援する会」では「関心をもってくれた人は、牛久入管に電話やFAXで仮放免を求めてほしい」と要請している。

<文・写真/樫田秀樹>

【樫田秀樹】

かしだひでき●Twitter ID:@kashidahideki。フリージャーナリスト。社会問題や環境問題、リニア中央新幹線などを精力的に取材している。『悪夢の超特急 リニア中央新幹線』(旬報社)で2015年度JCJ(日本ジャーナリスト会議)賞を受賞。

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