麻生財務相の会見に見る「アップデートされない昭和親父」の悲哀

麻生財務相の会見に見る「アップデートされない昭和親父」の悲哀

photo by Kiyoshi Ota/Bloomberg via Getty Images

◆麻生太郎財務相の「パワハラ」会見

 今月10日に行われた麻生太郎財務相の記者会見が「テレ東NEWS」でノーカット放送され、会見中の麻生氏の振る舞いに、視聴者から非難が殺到している。問題となった麻生氏と記者とのやり取りは下記だ。

 東京新聞の男性記者が「5日に閣議決定された経済対策について、支出の方法として基金の活用を大規模にすると言うことが報道されている」と質問し、基金の活用方法へ対する麻生氏の見解を求めた。麻生氏は質問に答えるのではなく、「なに新聞だっけ?」と記者へ逆質問し、記者が「東京です」と答えると、「今回の経済対策に、基金と言う単語が何ページのどこにあるか教えてごらん。基金という言葉は一切使われていないと思うけどな」と、さらに逆質問を続けた。

 記者が「ブリーフィングの中では基金のような形をとると...」と回答し始めると、麻生氏は「じゃあ基金じゃないね」とバッサリ切り捨てた。それでも食い下がろうとする記者へ「あなたの今の言い方、気を付けろよ。これテレビに映ってるんだから。基金って言ったろう」と言い、反論しようとした記者へ対し「基金という言葉は使われてないだろうが」と語気を強めた。

 発表された資料の中に「基金」の文字が使用されていないことを記者が認めると、麻生氏は「今回の対策の中に基金と言う言葉は使われていない。まずそれだけはっきりしようね」と発言し、「返事は」と記者へ同意を促したが、記者の返事が小さかったため「マイク入ってないけど大きな声で、これはあなたの質問が違うよな。基金って言葉は使われてないんだよね」と再度詰め寄った。

 これ以外にも、麻生氏が雑誌の取材で憲法改正へ向け、安倍首相の総裁4選(自民党総裁の任期は3年。連続する場合は3期まで)に言及したことへの見解をTBSの男性記者に聞かれ「憲法改正を、されるんでしょう?聞いてんだよ俺は」と逆ギレのように声を荒げた。

 このような麻生氏の振る舞いに対し視聴者からは、「記者へのパワハラ」や「パワハラ会見」、「麻生氏の態度は傲慢すぎる」といった批判の声が上がった。これまで数多くの失言による炎上を、彼や彼の支持者は「メディアの切り取りだ」という一言で消火してきたが、今回はノーカット映像のため、お得意の作戦は使えない。

 映像を見れば一目瞭然だが、麻生氏は大臣という力のある立場のもと、横柄な態度や反論時間を与えない逆質問で記者を攻撃している。傍若無人な為政者が記者を詰める構図は、パワハラそのものだ。そもそも、政治家とメディアの間に歴然とした上下関係が存在することに、私は強い怒りを感じている。特にメディアへ対してだ。しかしこの話は今回の趣旨から外れるため割愛する。

◆繰り返されてきた傲慢な言動

 麻生氏の今回の振る舞いを見て、「たまたま機嫌が悪かったのでは?」と思う人もいるかもしれないが、それは違う。麻生氏はこれまでの会見においても、傲慢で品性の欠片もない言動を繰り返してきた。

 例えば、2018年4月24日の閣議後の会見で、セクハラ疑惑が浮上した財務省の福田淳一事務次官について記者から「裁判の結果が出ないと処分できないんでしょうか?」と質問されると、「本人が裁判で争うとなれば、財務省として処分を判断するのは難しいでしょうね。俺に聞いたってダメだって言ってんだろ!」と発言し、記者がさらに「いったん官房付にして処分後に辞任を認めるという意見が出ていますが」と追求すると、「給料は誰が払うの? 野党は税金で払うべきだと言っているの? もう少し常識的なことを聞けば? 朝日新聞なら」と答えた。

 しかし、朝日新聞の記者から「さっき質問したのはNHKです」と指摘されると、「お前、NHK? 見かけない顔だな」と相手を見下す口ぶりで答えた。

 上記のように麻生氏は、公式の場で「お前」や「あんた」と相手へ敬意を欠いた呼び方をよくする。そして「 もう少し常識的なことを聞けば? 朝日新聞なら」とのように、新聞(特に朝日新聞)を毛嫌いする発言も繰り返してきた。

 2009年4月21日の会見で、朝日新聞の記者が麻生氏(当時は首相)へ対し、靖国神社への真榊奉納について質問したところ「理由を、朝日新聞に説明する必要を感じませんので、お答えはいたしかねます」と回答したり、2018年3月9日の会見では、財務省による決裁文書の書き換えの有無について朝日新聞の記者に厳しく追求されると、麻生氏は「捜査の答えが出ていない。捜査は終了したんですか?」と記者へ逆質問。「それは分かりません」と答えられると、「朝日新聞の取材能力のレベルが分かるな」と吐き捨て会見場を後にした。

 朝日新聞の他にも、2019年8月22日の会見では、記者から「京都アニメーションに対して、災害時の義援金と同じように税制優遇を与えてもいいのではないか」と質問され、麻生氏は「俺が言うと、『おまえ、漫画だから調子いいこと言ってんじゃねえぞ』なんて書きたがるのは西日本新聞だからなあ。だからちょっと危なくて、この種の話はうかつなことは言えんと思っていますけど(中略)ここだけが優遇?そうすると、どうしてこれだけ優遇するんだよって書くのが西日本新聞なんじゃないの」と回答した。

 しかし、質問者は西日本新聞の記者ではなく、日経新聞の記者だと指摘されると、「あっ、日経新聞か。ごめんなさい。西日本(新聞)にしては品がいい顔してるなと思ったの」と意味不明かつ全く釈明にもなっていない返答をした。

 麻生氏の新聞嫌いエピソードのきわめつけは、2018年3月29日の参院財政金融委員会での「(TTPが署名されたことについて)日本の新聞には1行も載っていなかった」「日本の新聞のレベルというのはこんなもんだなと」「みんな森友の方がTPP11より重大だと考えている」と発言したことだ。

 しかし実際には、朝日新聞や読売新聞、毎日新聞など、各社とも紙面でTPPについて報じており、事実無根のフェイクニュースを国会で撒き散らした麻生氏のレベルが、こんなもんだと証明される結果となってしまった。

◆麻生太郎の敵は麻生太郎自身

 麻生氏がこれほどまでに新聞社を嫌う理由は、数多くの失言や漢字の読み間違えを新聞に取り上げられ、政治活動の足を引っ張られたと感じているからなのかもしれない。「メディアは私の敵だ」と。

 しかし本当に、麻生氏の敵はメディアなのか?私は違うと考えている。麻生氏の過去の失言や振る舞いを振り返るに、麻生氏の本当の敵は、麻生氏自身だ。

 麻生氏やその支持者は、自身の言動による炎上をメディアによる切り取りや印象操作だと思っているかもしれないが、炎上の原因は、麻生氏の価値観がアップデートされていないからだ。Windows 10の時代に、未だにアップデートせずWindows 1.0のまま発言しているので、長い歴史の積み重ねの上にある現代の価値観とは相いれず、多くの人から受け入れられないため炎上する。

◆ジェンダーに対する戦前のような価値観

 特に、価値観の未更新が1番顕著なのはジェンダーへ対する考え方だ。

 初当選を果たした4年後の1983年2月9日、高知県議選の応援演説で麻生氏は「東京で美濃部革新都政が誕生したのは婦人が美濃部スマイルに投票したのであって、婦人に参政権を与えたのが最大の失敗だった」と発言している。

 麻生節でもリップサービスでもなく、明らかな性差別発言であり、麻生氏のジェンダーへ対する考え方が女性参政権のなかった戦前に近いものだと考えさせられる。 

 その後も、2014年12月7日の札幌での応援演説で「(社会保障費の増加について)高齢者が悪いというイメージをつくっている人が多いが、(女性が)子どもを産まないのが問題だ」と発言し批難を浴びた。「誤解を招いた」と釈明したが、2019年2月3日の福岡県での国政報告会で「(年を)取ったやつが悪いみたいなことを言っている変なのがいっぱいいるが、それは間違っている。子どもを産まなかった方が問題なんだ」と、5年前と同様の発言をし、再び批判を受けた。5年前に批判を浴び釈明したにもかかわらず、再び同じ発言をしている時点で、批判へ対する反省も価値観をアップデートしていこうとする気概も麻生氏からは一切感じられない。

 そんな麻生氏と対照的に、社会は着実に変化し「女性の仕事は家事・育児・出産」という考えは薄れ、男女平等が根付いてきている。

 また、ジェンダー平等だけでなく、パワハラを決して許さない社会も形成されつつあり、パワハラまがいの麻生氏の言動は多くの人に受け入れられないだろう。

 麻生氏は、未更新の価値観のまま発言すると、自身の言動によって不特定多数の人を傷つける可能性があることを知るべきだ。そして周りの人たちは、数十年前までは「ジョーク」として一部ホモソーシャルな社会ではウケていたかもしれない麻生氏の発言を、今では誰も笑わないどころかドン引きされる可能性があることを教えるべきだ。

 そしてもし今後、失言で非難を浴びることがあったら、今までのような形ばかりの釈明で終わらせるのではなく、なぜその発言が批判されるのかや、自身の価値観と社会の価値観のギャップを知り、それを埋める作業をしていただきたい。

<文/日下部智海>

【日下部智海】

明治大学法学部4年。フリージャーナリスト。特技:ヒモ。シリア難民やパレスチナ難民、トルコ人など世界中でヒモとして生活。社会問題から政治までヒモ目線でお届け。

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