「ダム最優先・堤防強化二の次」の治水政策で強行される、石木ダム建設

「ダム最優先・堤防強化二の次」の治水政策で強行される、石木ダム建設

堤防決壊で被害を受けた宮城県大郷町を視察する枝野代表

◆治水と利水の両面で、石木ダムは不要

 安倍政権(首相)は「建設業界第一・国民二の次」の土建政治に邁進しているのではないか? と実感したのは、昨年11月17日のこと。石木ダム予定地の長崎県川棚町で開催された全国集会で、ダム問題に取組む「水源開発問題連絡会(水源連)」の嶋津暉之共同代表の講演を聞いた時のことだ。

 嶋津氏は「石木ダムの治水効果が及ぶのは流域の1割以下にすぎず、利水も人口減で需要減少であることから『治水と利水の両面でダムは不要』」と断言。同時に、ダム建設効果が及ばない水害危険地区をピックアップして、堤防嵩上げなどの緊急対策を実施すべきと訴えた。

「大雨が降れば、石木ダムがあっても氾濫をする。流域住民の生命と財産を本当に守ることができる事業が求められている。石木ダムを作っている場合ではない」(嶋津氏)

 効果が極めて限定的なダム建設を優先し、9割以上の流域住民の生命財産を守る堤防強化などの緊急対策が二の次になっているというのだ。

 しかし安倍政権の閣僚の見方はまったく違う。9月の新内閣発足で地方創生大臣となった北村誠吾衆院議員(長崎4区)は、「みんなが困らないように生活するためには、誰かが犠牲(になり)、協力して役に立つという精神で世の中は成り立っている」と会見で発言。立ち退きに応じないダム反対派の地権者が「犠牲になるべき」と訴えていた。

「国民の生命財産を守る」が口癖の安倍首相だが、実際は「自民党応援団の建設業界の利益最優先・国民の安全は二の次」が実態といえるのだ。

◆堤防嵩上げ、堤防強化、浚渫などの緊急対策は後回し

 河川政策の専門家で日本初の流域治水条例をつくった嘉田由紀子・前滋賀県知事(現・参院議員)は2018年7月、西日本豪雨災害で死者51名の被害を出した岡山県真備町について「歴代自民党政権による人災」と指摘、次のように説明した。

「水没した真備地区は、浸水が予想された危険区域でした。真備地区では高梁川の支流の小田川などで堤防が決壊していますが、この地区の堤防補強が最優先課題だった。滋賀県知事になる頃から『矢板やコンクリートなどで周りを囲むアーマーレビー工法で鎧型堤防にして補強すべき』と国に提案してきましたが、歴代の自民党政権は『鎧型堤防は当てにならない。堤防補強よりもダム建設だ』と言ってきた。この河川政策が西日本豪雨災害でも大きな被害をもたらしました」

 しかし安倍政権はこの教訓を活かすことなく、同じ失敗を繰り返した。全国各地の緊急堤防強化を怠り、1年3か月後の2019年10月、台風19号襲来を迎えてしまった。7県71河川で135か所の堤防が決壊してしまったのだ。

 堤防決壊が頻発した台風19号被害も前年の西日本豪雨災害と同様、「ダム最優先・堤防強化二の次」を続けてきた安倍政権の産物と言える。

 それなのに安倍政権(首相)は、治水対策で大失敗をしたことへの自覚も反省もなく、石木ダム建設でも同じ過ちを繰り返そうとしている。嶋津氏が講演で指摘した「堤防嵩上げや堤防強化、浚渫などの緊急対策(河川整備)」を後回しにして、公益性の乏しいダム建設をゴリ押ししようとしているのだ。

◆地方の暮らしの声を聞かず、東京の方を向いて政治をやっている

 これに対して立憲民主党の枝野幸男代表は、台風19号の被災地を回りながら、地方分権型防災政策への転換を呼びかけている。昨年10月20日には堤防決壊で大きな被害を出した宮城県大郷町を視察。「矢板(鋼鉄版)を打ち込むなどの堤防強化をしてほしいと国交省や自民党などに要請したのに、実現しないうちに堤防が決壊してしまった」と話す田中学町長から聞き取りをした。

 そして視察最後の囲み取材で枝野氏は、次のように訴えた。

「地域の声、地元の皆様が長年にわたって、どこがどう弱い、どういう時に災害が起きるのかということについてはいろいろな蓄積があるので、それをしっかりと受け止めた形で復旧・補強をしていなかいとならない。そういった意味での本の分権化。予算は国が出していかないとできないが、知恵やアイデアは地域の声を受け止めていくことが重要」

 昨年11月21日の、高知県知事選の応援演説でも枝野氏はこう訴えていた。

「今年もこの秋、相次ぐ台風などの水害災害がありました。私も被災地何か所も回らせていただきました。水害の地域、ほとんど共通をして同じことを聞きました。大きな川に合流していく小さな支流のところで、ほとんどの水害が起きている。

 そして地元で話を伺うと、『もう10年前から20年前から、いや30年前から』と地域によってはそんな声を聞きます。地元では『ここが危ないのだ。ここさえ補強してくれれば相当安心できるのだ』とずっと言って来た。

 それなのになぜか(堤防強化などの河川整備が)残されてきた。何でこんなことが起きるのか。東京の方を向いて政治をやっているからです。地域の暮らしの声を聞いていないから、こんなことになるのです」

◆民意重視の河川政策は主要政策になり得る

「ダム最優先・堤防強化二の次」の河川政策と決別をする「民意重視の分権型河川政策」は、野党共闘(選挙協力)の主要政策の一つになりうる。

「コンクリートから人へ」を掲げた民主党政権から2012年12月に政権奪取をした第2次安倍政権は「ダム最優先・堤防強化二の次」の河川政策を踏襲、「人からコンクリートへ」の土建政治も復活させた。

 その象徴が、北村大臣発言で注目された石木ダム建設であり、国民の生命財産よりも自民党応援団の建設業界を重んじる“お友達優遇政治”の一つといえるのだ。1月20日招集予定の通常国会で、野党が旧態依然とした河川政策を徹底的に追及するのかが注目される。

取材・文/横田一

【横田一】

ジャーナリスト。小泉純一郎元首相の「原発ゼロ」に関する発言をまとめた『黙って寝てはいられない』(小泉純一郎/談、吉原毅/編)に編集協力。その他『検証・小池都政』(緑風出版)など著書多数

関連記事(外部サイト)