批判された立憲・福山哲郎議員の尾身茂副座長への質疑はどんなものだったのか? 全文起こして検証してみた

批判された立憲・福山哲郎議員の尾身茂副座長への質疑はどんなものだったのか? 全文起こして検証してみた

筆者のYouTubeチャンネルより

◆「#福山哲郎議員に抗議します」がTwitterトレンド1位に

 2020年5月12日夜、突如としてTwitterには #福山哲郎議員に抗議します のハッシュタグが溢れた。ことの発端は前日11日の国会。立憲民主党・福山哲郎幹議員が専門家委会議・尾身茂副座長に対して恫喝まがいの質問を行ったとして、そのパワハラ的な行為への抗議という意味合いのものであった。

 ちなみに、これは前回記事で紹介した #検察庁法改正案に抗議します のTwitterデモが爆発的に拡散された5月9〜10日のわずか2日後であり、ハッシュタグを変えながら検察庁法改正に抗議するツイートが継続している真っ最中の出来事であった。

 本記事では、問題となっている5月11日の参議院予算委員会における福山議員と尾身副座長の約3分間にわたる質疑を一字一句漏らさずにノーカットで文字に書き起こして検証する。さらに、答弁内容を信号機で直感的に視覚化していく。具体的には、信号機のように3色(青はOK、黄は注意、赤はダメ)で直感的に視覚化する。ただし、答弁中の野次・抗議に対する返答、恫喝的とも取れる福山議員の発言箇所は、「答弁」ではないため、色分けの対象から外すが、黒の太文字で記載する。(※なお、色表示は配信先では表示されないため、発言段落の後に( )で表記している。色で確認する場合は本体サイトでご確認ください)

 質問に対する尾身副座長の回答を集計した結果、下記の円グラフのようになった。

<色別集計・結果>

●尾身副座長:赤信号 87% 灰色 13%

*小数点以下を四捨五入しているため、合計は必ずしも100%にはならない

 赤信号が9割弱を占めており、青信号は0%。つまり、質問には一言も答えていない。また、不要な言葉や意味不明な言葉を意味する灰色が13%もあり、何を言っているのか理解しづらい場面が度々見受けられた。いったいどのような質疑だったのか詳しく見ていきたい。

 この記事で取り上げた約3分間の質疑は筆者のYoutubeチャンネル「赤黄青で国会ウォッチ」でノーカットで視聴できるので、あわせてご確認いただきたい。

◆批判された箇所の「前提」

 福山議員の質問の前提にあるのは、尾身副座長が5月4日の専門家会議の会見で述べた下記の発言だ。

「PCRをやっていなから、無症状あるいは軽症の人を見落として、実際は、10倍とおっしゃいましたかね? 仰る通りです。当初から、無症状や軽症者が多くて、そういう人を我々の今のシステムでは探知できないのは仰る通りです」(参照動画)

http://youtu.be/5ASBthOcKhY?t=4679

 この発言を前提に、尾身副座長本人に「尾身先生、無症状あるいは軽症の感染者は、結果として陽性者の10倍、つまりいま、日本全体で症状が出ている人も無症状軽症の人も含めて10万人程度いるという認識ですか? どうですか?」と、現在の感染者数についての尾身氏の見解を問いただしたのだ。

 これに対して、尾身氏は「10倍というのはそれについて仰る通りと言ったのでなく、もしそう聞こえたなら私の説明が下手だったのかもしれませんが、私の意図は、実は10倍か15倍か20倍というのは今の段階では誰でもわかりません。したがって私が申し上げたのは報告された感染者をすべてを補足しているはないというのおっしゃる通りという。これはこの感染症の特徴からしてまあそういうことだと申し上げました」と返答した。

 しかし、尾身氏の4日の会見での発言では、前掲の文字起こしを確認すればわかるように、わざわざ「10倍とおっしゃいましたか?」と確認した上でおっしゃる通りですと発言している。さらに福山議員は専門家会議の西浦博教授も10倍以上いるかもしれないと発言していることなどを挙げ、「(感染者数は)補足できない。10倍か20倍か30倍か。そして西浦先生は10倍いるかもしれないと言われたということは、感染者自身、陽性、判明はしてないけど完成者は10万人前後いることはある種の蓋然性があるということで、尾身先生、よろしいんでしょうか」と聞き返した。これにも、尾身氏は「西浦先生は統計学的に10倍以上いるかもしれないと推定できるといい、私も10倍か12倍か30倍かわからないけど今の数字よりは多いと思う。ただ、10倍かどうかはわからない」と応じた。

 このやりとりがあった後、福山議員は「西浦先生は統計学的に10倍以上いるかもしれないと推定できるといい、尾身先生も10倍か12倍か30倍かわからないけど今の数字よりは多いと思うとおっしゃった。総理はこの認識を共有されてますよね」と安倍総理に質問した。

 福山氏は徹頭徹尾、「無症状や軽症者が把握されずにいると感染拡大を防げないし、次なる対策も打てない」ということを指摘し、必ずしも「何人感染しているか」にこだわっているわけではないことはこれらのやり取りでも自明だ。少なくとも専門家会議の副座長である尾身氏をして、「いまよりも多いと思う」というように、どれくらい陽性かどうかわからない人が街中を出歩いて感染拡大させているか、院内感染の原因ともなっているのか。無症状者や軽症者の実態を補足するための制度作りをしないで次の対策が打てるのかと問いかけていたのだ。

 こうした「前置き」があって、SNSで拡散した「福山議員の“恫喝”場面のやりとりに繋がっていく。

◆「前半」の検証

 その質疑は以下の通り。

福山哲郎議員:「じゃあ、尾身先生、(感染者数が)10倍いる可能性を否定もできないし、肯定もできないんですよね?」

*ここで、答弁に向かう尾身氏に対して、安倍総理が後ろから「数字じゃないんだよ」と不規則発言

福山哲郎議員:「(安倍総理に対して)なに指導してんですか? なに、答弁に・・。」

*蓮舫議員を始めとする野党理事が金子委員長に抗議し、質疑が20秒ほど中断する

尾身副座長:「あのー、大切なポイントを、あのー、指摘していると思います。それで、実は、あの、これ、あまり、あのー、皆さんもまだ、にんし・・、あの、理解を得られてないかもしれませんけども、実は今日、東京都の、あ、ありましたね、東京都の実は陽性率の分母分子というのは、少し今まで不完全だったんですけど、今回初めてしっかりした分母が出てきて、分子である程度、あのー、まあ、正確なものであって、まあ、これで7%とかということで、で、実は私ども、えっとー、専門家委員会の5月4日に(赤信号)」

福山哲郎議員:「私が言ってることに聞いて・・、答えてください。」

尾身副座長:「いや、それは、わかりました。

それでですね、ぜひですね、あのー、これは皆さんに理解して、(赤信号)」

福山哲郎議員:「時間ないです。」

尾身副座長:「わかりました。

で、実は、そういう不完全な中でも、検体がどんどん検体数が上がっている中で、今陽性率が例えば東京では、例えば7%ということで、(赤信号)」

 いったん、ここまでの前半の質疑について、内容を検証したい。

 まず、福山議員の発言を見てみよう。福山議員は、尾身副座長が答弁を始める直前、「なに指導してんですか?」と声を荒げて抗議している。だが、これは答弁に向かう尾身副座長に後ろから指示を出す安倍晋三総理に対する抗議である。一方で、尾身副座長が答弁を始めた後も「答えてください」「時間ないです」等の急かすような口調で度々抗議していることもあわせて確認できる。これらの事実は冒頭に紹介したノーカット映像で確認できる。

 確かに、安倍総理の「後ろからの指示」に対しての抗議であればともかく、国会議員や大臣でもない尾身氏に対し、急かすような口調が無礼であるのは間違いなく、たとえ過去に自民党議員が参考人に無礼な野次を飛ばしたことがあったが、それほどまでではないにしても同様に批判されても不思議はないだろう。

 一方、尾身副座長がこの前半で述べている答弁内容について見てみよう。福山議員の質問にきちんと答えているであろうか? 繰り返すが、福山議員の質問は5月4日の専門家会議の会見における尾身氏の「PCRをやっていなから、無症状あるいは軽症の人を見落として、実際は、10倍とおっしゃいましたかね? 仰る通りです。当初から、無症状や軽症者が多くて、そういう人を我々の今のシステムでは探知できないのは仰る通りです」という発言を受けて、「(感染者数が)10倍いる可能性を否定もできないし、肯定もできないのか?」と問うているのだ。しかし、この質問に対し、尾身氏の回答は完全に論点をすり替えており、赤信号であると言わざるをえない。

【福山議員vs専門家会議尾身副座長質疑前半】

【質問】感染者数10倍の可能性

↓ すり替え

【回答】東京都の陽性率

 福山議員が尾身副座長に対する発言が抗議めいた口調になった理由は、「聞いている質問をはぐらかされたから」だと言える。

◆後半の検証

 引き続き、後半の質疑を文字起こしして確認していく。前半で福山議員の抗議を受けながら、尾身副座長は先ほどの東京都の陽性率の話に絡めて、答弁を続けていく。

尾身副座長:「で、ここに引っかかっている人は実は日本の場合には医療機関に行く人は 普段、普通のコミュニティの人よりも(赤信号)」

福山哲郎議員:「(感染者数)10倍はおっしゃる通りです。先生が言われたんだから」

尾身副座長:「いや、ちょっと待ってくださいね」

福山哲郎議員:「ちょっと短くしてください」

尾身副座長:「はい。はい。分かりました。それで、実はそこで医療機関にかかっている人の中をピックしたのが7%です。そして、一般のコミュニティのリスクは医療機関に行く人よりもリスクは低いのでないかと考えるのが普通です。そうすると、実際、仮に東京都が7%の陽性率だとしますと、地域のコミュニティの一般は7%を超えることは普通は無いだろうと考えるのは、今のところ常識です。以上であります(赤信号)」

福山哲郎議員:「全く答えて頂けませんでした。残念です。あの、私は当初のクラスター対応を批判しているわけではありません。検査を絞って重篤な患者さんを優先する医療機関の対応がまだ準備ができてなかった。理解してますが、これだけ感染経路不明な状況の中でそれから無症状や軽症の方が院内感染を広げているような状況があちこちあって、なおかつ岡江久美子さんのように検査してほしいけども自宅待機だと言われて容体が変化して亡くなっている方がたくさん出てくる。そして専門的ですけど、超過死亡は2月3月強烈に増えている。そういう状況の中で「今の(感染者数)15000だけではない」と尾身先生も西浦先生も言われている。そのことについて謙虚にしないと全体像が見えないんじゃないかと言ってるんです。」

 後半の質疑について、内容を検証したい。

 福山議員は後半も「ちょっと短くしてください」等の抗議をしている。さらに、尾身副座長が答弁を終えた後、「全く答えて頂けませんでした。残念です」という強い不満を示している。

 一方、尾身副座長の答弁内容に目を向けると、どうだろうか? 福山議員の質問内容は前半と同様だ。しかし、やはり前半と同様に論点をすり替えており、赤信号とした。

後半

【質問】感染者数10倍の可能性

↓ すり替え

【回答】東京都の陽性率が実際は7%を上回る可能性

 さらに、答弁内容の結論に目を向けると、尾身副座長がここまで長々と答弁してきたことの結論とその根拠は以下のようにまとめられる。

【結論】

東京都の医療機関受診者の陽性率 7% > 東京都の実際の陽性率

【根拠】

医療機関の受診者よりも一般コミュニティは陽性リスクが低いから

 ・・・当たり前すぎる。

 あまりにも、当たり前すぎないだろうか。無発症者や軽症者も入れて調査する場合、感染者数は上がるかもしれないが、分母が大きくなるのだから、一般コミュニティが全員感染でもしていない限り、陽性率が下がるのは当然ではないか。

 それに、福山議員は再三、5月4日の尾身氏自身の発言、「PCRをやっていなから、無症状あるいは軽症の人を見落として、実際は、10倍とおっしゃいましたかね? 仰る通りです。当初から、無症状や軽症者が多くて、そういう人を我々の今のシステムでは探知できないのは仰る通りです」という発言を受けて、「(感染者数が)10倍いる可能性を否定もできないし、肯定もできないのか?」と聞いているのである。感染者数の実数や陽性率を答えろなどとは言っていない。そしてこの問いには、尾身氏自身が4日の会見では「10倍とおっしゃいましたかね? おっしゃる通りです」と答えているわけだ。もしくは、この時のやり取りでは前ページでも書いたように「10倍か20倍か30倍かはわからないが、いまの数字よりは多いと思う」と答えている。この2つの回答を見れば「10倍いる可能性も否定できない」と解釈するのが普通だろう。陽性率の話にすり替えたりせずに、そう答えればいいだけの話である。

 それを、専門家として国会で3分弱の時間を使って、質問者からの再三の抗議を受けながら、それでも答弁し続けるような内容だろうか?

 尾身副座長自身もこの答弁内容を「今のところ常識です」と締めくくっているが、自分でも「常識」だと分かっている内容をなぜ長々と答弁したのか理解に苦しむ。(しかも、質問者が強い口調で抗議を続ける中で)

 筆者はかつて、福山議員の言動に疑問を持ち、福山議員に対して批判的な記事を書いたこともある。だが、今回の質疑においては福山議員は確かに強い口調を用いており、参考人である尾身氏へのそれは前出のように議員として容認できるものではないにしても、恫喝にも聞こえた抗議は安倍総理による参考人への答弁前の不当な指示に対してだし、急かすような口調も参考人の要領を得ない回答に対するものであったと総括できる。

◆日本テレビ「スッキリ」の悪意ある切り取り報道

 問題となっている質疑で福山議員に抗議する理由は特に見当たらなかった。だが、質疑の翌12日、親政権的なフェイクニュースを発信するアカウントが作為的に切りはりした福山発言&動画のツイートが拡散され、 #福山哲郎議員に抗議します というハッシュタグで抗議がなされるという不可解な動きがTwitterで起きたことは記事冒頭にも伝えた。加えて、テレビ報道でも不自然な動きがあった。特に日本テレビ系列の朝の情報番組「スッキリ」は5月13日の放送でフェイクニュースと表現して差し支えないほど悪意のある切り取り編集によって、福山議員を貶めた。

 放送内容の一部を以下に書き起こす。

*尾身副座長の説明中に福山議員が「私が言ってることに答えてください」「時間ないです」「ちょっと短くしてください」と抗議した場面、説明後に福山議員が「全く答えて頂けませんでした。残念です」と述べた場面などのVTRを放送後、場面はスタジオへ

MC・加藤浩次氏:「これね、尾身先生が言ってるのは、“現状、分からない”って言ってるんですよ。“この新型コロナに対して、今どれぐらいいるのか分からない”って言ってるのに、それが答えでしょって。それで、“ちゃんと答えてもらえなかったのが残念です”っていう、この言い方はねー、理解してんのかなー福山さんって、僕思っちゃんうんだけど。これ、宮崎さんいかがですか?」

コメンテーター・宮崎哲弥氏「あのー、私は福山さんが一体何を言いたかったのか、結局何を聞きたかったのかがよく分からないと思います。」

 もし、まだ本記事の冒頭で紹介した質疑の約3分間のノーカット映像を観ていない方がいたら、ぜひ実際の映像を観た上で、この「スッキリ」の番組内のコメントを読み、そのデタラメぶりを実感してほしい。

 コメントしている本人たちは編集されたVTRしか見ておらず実態を把握していない可能性があるとはいえ、加藤浩次氏と宮崎哲哉氏の認識は事実とあまりにもかけ離れており、視聴者のミスリードを誘う発言だと言わざるを得ない。

 加藤浩次氏の言葉をそのまま借りれば、彼らのほうが「理解してんのかな?」と本気で心配せざるを得ない。

<文・図版作成/犬飼淳>

【犬飼淳】

TwitterID/@jun21101016

いぬかいじゅん●サラリーマンとして勤務する傍ら、自身のnoteで政治に関するさまざまな論考を発表。党首討論での安倍首相の答弁を色付きでわかりやすく分析した「信号無視話法」などがSNSで話題に。noteのサークルでは読者からのフィードバックや分析のリクエストを受け付け、読者との交流を図っている。また、日英仏3ヶ国語のYouTubeチャンネル(日本語版/ 英語版/ 仏語版)で国会答弁の視覚化を全世界に発信している。

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