「株高」を再選の武器にしたいトランプ大統領だからこそ起こり得る、新たな「コロナ暴落」の危険性

「株高」を再選の武器にしたいトランプ大統領だからこそ起こり得る、新たな「コロナ暴落」の危険性

photo via The White House on Flickr(Public Domain)

◆再選に向け露骨な株高政策を進めるトランプ

 新型コロナウイルスで世界一の感染者数・死亡者数を記録しているアメリカ。しかし、各国政府の財政出動や中央銀行の矢継ぎ早の金融緩和の影響もあり、NYダウは3月23日の底値から実に50%近い急騰が続いている。

 経済は最悪、コロナ終息もまだ先という状況にもかかわらず、いまや米国市場のNYダウ、S&P500、ナスダック指数などは史上最高値更新も視野に入った。実体経済をまるで無視したような株高は「明らかに異常」と考える人も多く、いつ崩壊してもおかしくないかもしれない。

 そんな中、「11月にトランプ大統領が再選されれば、それ自体が新たなコロナ大暴落の引き金になる可能性を秘めている」と語るのは、長年、外資系金融機関に勤務してきた経験を活かし、最近『金融のプロが教える コロナ暴落後の必勝投資術』という新著を上梓した金融アナリストの永野良佑氏だ。

「トランプ大統領の辞書に『謙虚』という文字はないようです。すべての経済的、政治的なお手柄は自分のおかげ、自分を否定したり批判するニュースや言動はすべて『フェイクニュース』というのが彼のスタイルです。コロナ感染拡大に関しても、とにかく経済再開、株高演出を優先して、自らの大統領再選につなげるという戦略をなりふりかまわず実行しています」

◆短期的なアメリカ・ファーストには限界も

 トランプ大統領は米二大政党のひとつ共和党で、もう一方の民主党は「敵」。民主党の知事がいる州に対しては「ロックダウンから人々を解放せよ」とツイッターで扇動。最近では、ミネソタ州ミネアポリスの白人警官による黒人男性ジョージ・フロイド氏暴行死事件に対する抗議デモが全米で広がる中、「雇用統計のいい結果を見て、彼も喜んでいるだろう」とツイート。多くの人々がその発言を批判している。なにがなんでも「株高」を実現して大統領再選を目指すトランプ大統領の言動は、「私たちが政治のリーダーだと考える像とは大きく異なっている」(永野氏)といえるだろう。

「新型コロナウイルス感染症の世界的な流行の兆しが見え始めたとき、かつての米国であれば、G7での議論を主導し、なんらかの国際協調を試みたことでしょう。しかし、トランプ大統領はアメリカ・ファースト(米国第一)ですから、自国の短期的な利益になると思えないことで他国のことを構うスタンスはなく、むしろ、自国の利益を害するおそれがあるときに激しく攻撃をするという行動をとりがちです」

 これまでの伝統的・良識的な政策とは異なる姿勢が一部の熱狂的な保守層に受けたからこそ、トランプ大統領が誕生した。

「トランプ大統領支持派とそうでない人たちは、見るニュース番組も違いますし、伝統的・良識的な政策とは異なることがトランプ大統領の素晴らしいところだと支持層は考えます。しかし、すべての共和党支持者がトランプ大統領を100%支持しているというわけではないでしょう」と永野氏は語る。

 実際、トランプ大統領が自らの再選のためだけに推し進めているように見える米国の経済再開によって、米国がコロナウイルス感染の第2波、第3波に見舞われる可能性は依然として高い。再び全米の大都市がロックダウンとなれば、急上昇した株価の再暴落も視野に入ってくる。

◆トランプ再選で対中貿易戦争激化なら株価大暴落も

「仮にコロナ感染症を乗り切り、強引に演出した株高でトランプ大統領が米国大統領に再選すれば、彼の存在自体が今度は世界経済や株価のバブルを脅かす存在になる可能性もあります」と永野氏。

「トランプ大統領は熱狂的な支持基盤に支えられていて、反対派を威嚇あるいは阻害することで、その支持基盤を結集・底固めするという戦略を取っています。したがって、トランプ大統領が再選された場合には、対中国で一層強硬になり、また、国際協調といったものはますます見られなくなるでしょう。もし11月にアメリカでトランプ大統領が選出されたら、世界経済、そして株式市場へのマイナス要因は測りしれません。当然、対日本でも厳しい対応をしてくることは明白です。たとえば、在日米軍に対する負担を増やせ、さもなければ、自分たちで再軍備をしろという、日本の憲法を無視した、さらに言えば、現在の日本の憲法がアメリカの占領下でつくられたことをまったく考慮しない主張をしてくる可能性は高いと見ています」

 永野氏の予測では、米国や中国がコロナ感染症第2波に襲われる中、トランプ大統領が再選されれば、NYダウの1万5000ドル割れ、日経平均株価1万2000円割れという「コロナ再暴落」もあるという。

◆バイデン大統領誕生ならスーパーバブルが起こる!?

「一方、民主党の大統領候補・バイデン氏が大統領に就任し、『民主党であること』よりも『トランプ氏でないこと』を政策の中心に据えれば、株式市場にもトランプという不安定要素がなくなります。その場合は、史上空前のカネ余りと低金利の恩恵を受け、コロナが終息する2022年〜23年にかけてNYダウ4万〜5万ドル、日経平均株価3万円〜4万円のスーパーバブルがきてもおかしくありません」

 確かに、バブルは、いつか崩壊する運命。そんなバブルを礼賛していいのか、という意見もあるだろうが…。「人間が欲で生きている以上、しょうがないと割り切るべきなのかもしれません。もしバブルが崩壊すれば高値から20〜50%程度下落し、回復するのに5年〜10年かかることになる事態もありえますが、バブルが来る以上、乗らない手はない」というのが永野氏の見解だ。

 人類はコロナという病、そしてトランプ大統領という「現象」を克服して、再び新たな世界を構築できるか? ポストコロナの世界を生き抜くために、その2つの課題が人類にのしかかっている。

<文/永野良佑>

ながの りょうすけ●金融アナリスト。1967(昭和42)年愛知県生まれ。1989(平成元)年3月、一橋大学経済学部卒業。外資系金融機関を中心に、ストラクチャード・ファイナンス、クレジット・トレーディング業務に主に従事。最新刊の『金融のプロが教える コロナ暴落後の必勝投資術』(扶桑社)では、3つのシナリオ別にコロナ暴落後の株式市場と、バブルに踊らず長期的に資産形成するための方法が詳細に解説している。

著書は他に『プロが絶対買わない金融商品』(扶桑社)、『セールスマンが教えてくれない金融商品の仕組み - 危ない商品はこう見分ける!』(中央経済社)など多数。

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