吉村洋文大阪府知事が衝撃的会見。わかったのは、COVID-19に効くクスリもなんとかにつけるクスリも今はないってこと

吉村洋文大阪府知事が衝撃的会見。わかったのは、COVID-19に効くクスリもなんとかにつけるクスリも今はないってこと

「ポビドンヨード」成分が含まれたうがい薬を紹介する吉村洋文大阪府知事(右)(時事通信社)

 筆者は「選挙ウォッチャー」という立場から、「政治家にしてはいけない」類の人間について、皆さんに訴え続けています。理由は、政治家にしてはいけないタイプの人間を政治家にすると、内実を伴わない愚かな政策を次々に出してくるので、有事の際に国民の命が危険に晒されることになるからです。

 8月4日、大阪府の吉村洋文知事が、実に衝撃的な記者会見を繰り広げました。なんと、新型コロナウイルスの重症化を防ぐのに「イソジン」が有効かもしれないと言い出したのです(後に自身のTwitterで「うがい薬でコロナ予防効果が見られるものではありません」「(発表は)感染拡大防止の挑戦の意図があった」と弁明)。この会見は「ミヤネ屋」などを通じて全国に放送され、全国の薬局から「イソジン」が消えました。呆れてものも言えません。

http://youtu.be/xpEPcfBiytc

◆ツッコミどころ満載の勇み足会見

 「強いリーダーシップを発揮し、新型コロナウイルスと闘う正義のヒーロー」みたいなスタンスでメディアに出演しまくっていた大阪維新の会の吉村洋文知事。新型コロナウイルスが問題になってからは特に人気で、Tシャツをはじめ、さまざまな吉村洋文グッズが大阪土産となりました。日本維新の会の候補者の選挙ポスターも、候補者と同じぐらいのサイズで吉村洋文知事の顔が採用されていたほど。しかし、大阪の皆さんがどれだけ気づいているかは知りませんが、ここだけの話、吉村洋文知事はその人気とはまったく正反対で、府知事としての能力に欠けた人物だとしか言いようがありません。8月4日の記者会見で吉村洋文知事は、テーブルの上にさまざまなタイプのうがい薬を並べ、ドヤ顔でこう語り出しました。

「嘘みたいな本当の話で、嘘みたいな真面目な話をこれからさせていただきたいと思います」

 まるで都市伝説でも語り出しそうなイントロですが、最終的に「信じるか信じないかは、あなた次第です」と言い出したら、頭をひっぱたいてやりましょう。えぇ、言い出さなくても頭をひっぱたいてやりたくなるような記者会見だったのですが……。

「ポピドンヨードを使ったうがい薬、あ、今、目の前にいくつか種類がありますが、皆さんもよく知っているこのうがい薬を使って、そして、うがいをすることによってですね、コロナの患者さん、このコロナがある意味、減っていく。コロナの陽性者が減っていく。まあ、薬事法上、効能を言うわけにはいきませんが、コロナに効くのではないかという研究が出ましたので、それをまず皆さんにご紹介するのと、それから府民の皆さんへの呼びかけをさせていただきたいと思います」

 かなり衝撃的なのですが、吉村洋文知事が記者会見で「イソジンが新型コロナウイルスに効く」と言い出しました。しかも、イソジンでうがいをすれば軽症の患者の重症化を防ぐことができるとまで言い出しています。吉村洋文知事は、今日の今日までメディアに出演しまくり、新型コロナウイルスと闘う知事として知られてきたわけですが、この解説が素人でもわかるぐらいに酷いものなので、とくとご覧ください。

「41名の方を対象として実施をしました。これは大阪府・市が研究に協力をいたしました。1日4回ですね、このうがい薬をやる。朝起きた時、夜寝る前、それから昼ごはん前、夜ごはん前と。1日4回ポビドンヨードによるうがいを実施いたします。そして、入所中ですね、この患者対象の方に毎日PCR検査を実施します。どのように推移したのかということを研究したわけであります。その結果ですね、このポビドンヨードを含むうがいによって宿泊療養者のウイルスについての頻度は低下するということが判明をいたしました。これがそのデータですけれども、1日目、ホテルに入所された方の1日目、このブルー、青い方がですね、ポビドンヨードを使わない普通のうがいをされた方、そしてオレンジの方がですね、ポビドンヨードを使ったうがい薬をした方の群に分けています。毎日先程申し上げた通り、うがいをしてもらって、PCR検査をしてもらったところですね、4日目においてはうがい薬をつかっていない群はまだ40%の陽性者の方がいるわけですけれども、うがい薬、ポビドンヨードを使ったうがい薬の群については9.5%にまで下がりました。つまり、10人中9人、陽性でなくなったという結果がこの研究によって明らかになってます」

 そもそも41人を「普通の水でのうがい」と「イソジンでのうがい」に分けちゃったら、それぞれ20人と21人になっちゃうわけで、データにしてはサンプル数があまりに少なすぎるというのがまず頭に浮かびます。さらに言えば、唾液を採取するタイプのPCR検査をしているのに、検査をする前にイソジンをしちゃうなんて、肝心な部分を思いっきり見失っているように思えてなりません。

◆吉村府知事の「コロナ認識」

「もともとこの唾液の中に非常に多くあるというのが、このコロナの特徴です。これも、コロナで僕も一生懸命、1にも2にも3にも唾液だとか、唾液が飛び交う環境を避けてください、申しておった通りですね、非常に唾液にこのウイルスが含まれる。その原因として、この舌にですね、ウイルスが付着して、そこから増殖すると、そういうふうにされています。で、唾液腺というのが舌の裏側にありますから、その唾液腺、舌の裏側にある、唾液が出て、その舌にあるウイルスとこうカラみ合ってですね、そしてそれがある意味、外に飛び散ることによって広がっていく。そこにある唾液のところのですね、このうがいをすることで、この唾液のPCRをした時にですね、圧倒的にこれが、陽性が減るという状況です」

 驚いたことに、半年以上もコロナと闘う知事をアピールしておきながら、吉村洋文知事の認識というのは、この程度だということです。なんと、ウイルスは舌についているものが増殖しているだけなので、イソジンでうがいをすれば、ウイルスをやっつけることができると思っているのです。きょうび、新型コロナウイルスに対してそんな認識になっているのは、吉村洋文さんしかいないのではないでしょうか。しかも、吉村洋文知事はこの説明の後に、こんなことも言っています。

「このポビドンヨードによるうがい薬をすることによってですね、このコロナに、ある意味、打ち勝てるんじゃないかというふうにすら思っています。ただ、これはまだ、今、研究段階ですので、これは確定的に言うことはできません。それから薬事法があるので、これがコロナに効くということは薬事法上言うことはできませんが、この研究結果が明らかになったということです」

 ということで、この吉村洋文知事の「イソジン最強説」により、大阪府では宿泊療養施設の患者全員にイソジンでうがいしてもらうことになりました。そうなると、本当は体内にウイルスがあるのに、イソジンの効果で口の中が殺菌されてしまい、唾液によるPCR検査をした時に、本当は体内にウイルスがあるから陽性なのに、口の中のウイルスが死滅していて陰性になる「ニュータイプの偽陰性」が起こる可能性すら出てきました。本当はもう少し長く宿泊療養施設に留まっていなければならない人間が野に放たれ、結果、大阪でさらに感染が広がる悪循環になりかねません。

 その上で吉村洋文知事は、これから8月20日までの間、この「イソジン最強説」を大阪府民の皆様にも実感してもらおうと、発熱など風邪に似たような症状のある方とその同居家族、接待を伴う飲食店の従業員の方、医療従事者や介護事業者の方には特にイソジンでうがいしてもらいたいと言い出しました。こんなもん、ますます唾液によるPCR検査を受けた時に正確な判定ができなくなってしまう可能性が高くなるだけで、「こんなところで陽性になっちまったら明日から働けない。せや、イソジンや!」になりかねません。

 この研究から分かることは、せいぜい「他人に感染させないために、イソジンでうがいをすることで、口の中のウイルスを減らしておくことは効果があるかもしれない」ということだけです。これはつまり、お姉さんとチョメチョメ的なことをするお店に行った時にイソジンをするのと同じレベルの話だと言えるかもしれません。それを今、ここで「重症化を防ぐ」とも取られるような言い方をしてしまうのは、だいぶ頭が悪いと思います(あとで言い訳のようなことをツイートしていましたが)。イソジンなどボビドンヨードは口腔内の常在細菌まで殺してしまうので、そういうバランスが崩れることでより感染しやすくなる危険性だってありますし、まかり間違って飲んでしまった場合にはリスクが大きいシロモノです。

◆ミヤネ屋は大々的に「宣伝」テロップ流しまくり

 なんてったって全国放送の「ミヤネ屋」が、「“コロナ”治療 効果が期待できる薬 発表へ 大阪 吉村知事&松井市長 会見」というテロップをつけて大々的に報じてしまったため、「あの吉村洋文知事が言うんだから、きっと効果があるのだろう」と、みんなが薬局でイソジンを買いに走ったのかもしれません。数時間も経たないうちに、どの薬局でも完売になってしまいました。

 メルカリではさっそく高額転売が始まり(規約違反につき即削除されますが)、「こんな時にデリヘルをやっている知り合いがいたらなぁ!」なんてボヤく人が出る始末。

 かつてはこの時間、みのもんた先生が「あの食材が体にいい」なんて言うと、夕方にはスーパーで話題の食材が売り切れていたものでしたが、とうとう令和の時代に、知事がイソジンを売り出す始末。日頃から新型コロナウイルスに罹らないように気を付けている我々一般の視聴者は、少しでも効果があると聞けば、それを試してみたくなるものですが、知事のトンデモ会見で薬局の棚が空になるって、こんなもん、世界の笑いものです。

 だいたいからして、新型コロナウイルスに困っているのは大阪だけではありません。日本のみならず、世界中で新型コロナウイルスに困っているのです。一刻も早く終息させたいのは大阪だけでなく、世界中の科学者や製薬メーカーの皆さんがさまざまなデータを解析しながら、あれが効くんじゃないか、これが効くんじゃないかとやり尽くしている中で、今さら「ジャジャーン!」とイソジンを出してきて「これが効くかもしれない」と言うのは、なんばグランド花月のステージの上だけで十分です。

 会見に同席していたこの実験を行った大阪はびきの医療センターの松山晃文次世代創薬創生センター長は、さすがに「効果は口腔(こうくう)内や喉の殺菌にとどまるとし、重症化の抑制や他人に感染させにくくする可能性については実証していない」と言っていましたが、あんなテロップつけて流していたら誤解する人が出てくるのは当たり前です。そもそも、「イソジンが効くかもしれない」とか言って、かなり高精度なPCR検査の精度わざわざ落とすような妙なことを考えつく暇があったら、病床が足りなくならないようにどうしたらいいのかを考えるべきだと思います。

◆もはや「大阪イソジンの会」との声も

 世の中には、現役の宇都宮市議と柏市議が「亜塩素酸ナトリウム水溶液にクエン酸を混ぜて飲むと体内の新型コロナウイルスが浄化できる」という動画を出して、それを信じた「NHKから国民を守る党」から立候補した人物が実際に試してしまい、深夜に病院送りになるなんてこともありましたし、(*参照)、なんとトランプ大統領まで同じようなことを言って、猛烈な批判を浴びました。

 今回の吉村洋文知事もそれに匹敵するトンデモぶりです。世の中では「大阪イシンの会」が「大阪イソジンの会」になったと揶揄されています。これで多くの方が、吉村洋文知事はただテレビに出まくってパフォーマンスをしているだけの首長であると気づいたらいいなと思うのですが、街のドラッグストアからイソジンが消えているところを見ると、まだまだ維新旋風は吹き荒れ続けるのではないかと心配しています。

 イソジンが売れれば少しぐらい経済が回るのかもしれませんが、もともとうがい薬は品薄状態だったそうで、今回の記者会見ですっかり手に入らなくなってしまい、大阪府民の皆さんが8月20日まで重点的にイソジンでうがいする計画は破綻してしまいました。つくづくマヌケです。この国にまともな政党は存在しないのでしょうか。

<文/選挙ウォッチャーちだい>

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