大統領選でアイス・キューブがトランプを支持は本当か? 大炎上した騒動はフェイク画像まで出回る展開に

大統領選でアイス・キューブがトランプを支持は本当か?  大炎上した騒動はフェイク画像まで出回る展開に

トランプの息子、エリック・トランプが投稿したフェイク画像。元のツイートは削除済み。フェイク画像という検証は米BuzzFeedのクレイグ・シルバーマン氏のツイートを参照

 いよいよ佳境を迎えてきた米大統領選挙。トランプ、バイデン、両陣営がラストスパートをかけるなか、ある重鎮ラッパーの言動が大きな注目を浴びていることをご存知だろうか。

◆音楽ファンのみならず政界をも巻き込んだ炎上

 ことの発端はトランプ陣営の広報カトリーナ・ピアソンのツイッターへの投稿。伝説的ギャングスタ・ラップ・グループ、N.W.A.のメンバーであり、ソロ活動でも大きな成功を収めている史上最高のMCの一人、アイス・キューブがトランプと組んだとツイートしたのだ。

「トランプ政権のプラチナム・プランを発展させようと名乗りをあげ、ともに働くアイス・キューブをよろしく。リーダーは率いて、ヘイターは憎む。率いてくれてありがとう!」

 過去にはツイッター上でトランプ批判も投稿していたアイス・キューブが、大統領選のさなかに、まさかのバックアップ……? アメリカはもちろん、世界中の音楽ファンが衝撃を受けることになった。

 これまでもたびたび政治的な発言をし、炎上騒動などがありながらも社会的テーマの曲を発表し続けてきたアイス・キューブ。BLMのアンセムのひとつともなった「Fuck Tha Police」など、反権力的なイメージが強いだけに、「いったいなぜ?」と戸惑ったファンは少なくなかったはずだ。

 そんななか、今回の件についてアイス・キューブは下記のようなツイートをした。

「ファクト:俺はCWBA(A Contract With Black America)を発表した。どちらの党もコンタクトを取ってきた。民主党は選挙のあとにCWBAについて話すと言った。トランプ陣営は俺たちとCWBAについて話し、彼らのプランに修正を加えた」

 CWBAとは、アイス・キューブがアメリカ黒人の社会的、経済的地位向上を目指して発表したマニフェスト。前出のトランプ陣営が発表したプラチナム・プランにその一部が反映されたと説明したのだ。(参照:A CONTRACT WITH BLACK AMERICA)

◆過去にはトランプを「MF」と罵倒

 本人はあくまでフラットな姿勢で共和・民主両党と話し合うとしているが、「トランプとキューブが組んだ!」と受け取る人が多いのは不思議ではない。結果、賛否両論の声が飛び交い、キューブは自身のツイッター上で、それらへの反論を投稿することとなった。

「力を合わせた? 嘘の見出しを押しつけるのはやめろ」

「(過去に「俺がトランプみたいなマザーファッカーを支持することはない! 絶対に!!!」と投稿したことについて)俺は誰も支持しちゃいない」

 また、「ワシントン・ポスト」は「アイス・キューブはトランプを逮捕するようラップした。今度は大統領に政策についてアドバイスをしている」という記事を発表。これに対してもキューブは、「アメリカ黒人を助け、大きな貧富の差を埋める力を持っているなら、誰にだってアドバイスする」と引用RTをしている。

◆「トランプに会ったことは一度もない」

 ツイッター上での反論だけではキューブの真意を理解するのは困難だろう。そんな矢先に、「アイス・キューブがいったい何を考えていたのか説明しようとする」と本人の声を紹介したのは「ローリング・ストーン」だ。同インタビューではキューブの行動、そしてトランプ政権に対して極めて批判的な意見がぶつけられている。

(参照:Rolling Stone)

 “トランプ側の人間がなぜこうしたかはわかる。まずは見栄えがいいからだ。大統領はほかのどんな集団よりも早く大きな規模で疫病が国民を殺すことを許し、安全対策を軽視した。彼は黒人の失業率を下げたと自慢したが、これは彼の政策とはなんの関係もない。彼の政権は不平等を無視し、差別を悪化させた。

 レジェンドを歓迎して、トランプが10月に発表した『プラチナム・プラン』、人種改革の協議事項を引っ張ってもらわないわけがない。

 『プラチナム・プラン』はまさに我々が多くの候補者から目にしてきた曖昧な政策目標と行動項目だ”

 「キューブが利用されている」といった指摘のあと、記事では記者と本人との熱いやりとりが紹介されている。以下はその一部だ。

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”??まずは具体的に両党とどのようなやりとりがあったか教えてもらえますか?

アイス・キューブ(以下、キューブ):「バイデン陣営とZoom会議をした。議会の人間、直接バイデン選対で働いている人間と話した。実は彼らはCWBAの85%に賛成していると言ったよ。彼らは選挙に勝って、そのあと俺と話し合い、物事を前に進めたいと言った。つまりはテーブルにイスを用意してあるという状況さ。

 次にトランプ政権からコンタクトがあった。彼らは『CWBAを見た。我々にはプラチナム・プランがある。プラチナム・プランを強化したい』と言った。知ってのとおり、『マイノリティ』というのはややこしい言葉だから、より直接的に黒人に向けたかったんだ。だから、そうした。そうして、実際に彼らが席に着きたいということになった。

 俺たちはワシントンへ行った。俺はホワイトハウスには行っていないし、トランプにも会っていない。人生でトランプに会ったことは一度もない。ホテルで選対と会って話し、彼らがプランを持ってくると、CWBAからすくいだした部分が備わっていた」

??具体的にプラチナム・プランのどんな部分がCWBAに基づいていたんですか?

キューブ:「民主党、共和党、どちらのプランも軽かった。どちらのプランにも、アメリカ黒人のためにより改善されるべき文言があった。それを踏まえたうえで、トランプのプランは薄っぺらかった。彼らは『マイノリティ』『有色人種』『多様性』、そして『アーバン』といった、必ずしもカネが黒人家庭に行き届くとは限らない言葉を使っていたんだ。つまり、大きな古びた釜にカネを入れて、俺たちはその底からおこぼれを拾わなきゃいけないってことだ。

 これは共和党の候補者、民主党の候補者、誰かに限ったことじゃない。誰が大横領になろうと、特に黒人にフォーカスするべきだ。俺はどのマイノリティも愛しているが、我々は特に自分たちに物事を向けなきゃいけない。なぜなら、俺たちこそがこの国が今のような状態になっている原因だからだ。(BLMなどの)騒動や、黒人家庭と白人家庭の間にあるグランドキャニオンのような深さの貧富の差のことさ。誰が大統領になろうと、我々を人として見つめ直すべきだと信じている」

??そのフォーカスというのは、詳しく、具体的にはどのようなものですか? 少なくともバイデンの場合は、提案できる法案はないですよね。

キューブ:「まずは少なくとも、やるという合意から始まる。そして、その合意を公にすることだ。つまり、それはアイス・キューブへの約束でなく、世界に向けて話すということだ」”

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◆キューブは利用されているのか

 キューブの言葉を要約するなら、「言葉よりも行動」「約束させることで釘を打つ」といったところだろうか。本人は前出のツイート同様、「組んだわけではない」としているが、彼の動きに賛成している側・反対している側、どちらもそのように捉えていることは間違いないだろう。

 さらにインタビュアーはこうも質問している。

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??あなたが示した意義に戻りましょう。どちらの側とも平等に話して、アメリカ黒人の生活をよくしようというあなたの意思を、共和党と話したことでトランプ政権が利用するとは思いませんか?

キューブ:「だってこれは政治だからね。どちらの側も物事を揺さぶれるどんな小さな情報だって利用するさ。バイデンは彼に投票するどんな人の名前だって利用するか? 誰にわかるのさ? それが政治だ。俺はそのゲームには関心がない」

??これだけ反発を受けてもですか? 先週のカトリーナ・ピアソンのツイートのせいで、あなたに起きたことを考えても?

キューブ:「俺は彼女に会ってない。俺は彼女を知らないし、会ってもないし、働いてもいないし、なんの関係もない。だから、彼女が何をツイートしようと知ったことじゃない。俺にとって、それは政治だ。彼女はトランプ選対の一員だ。バイデンの選対もツイートするだろう。どちらも同じことをするさ。だから、『畜生、奴らは俺を利用している』とは見ていない。誰も俺のことは利用していない」”

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 ご覧のとおり、記者(そしておそらく世間の多く)とキューブの意見は平行線をたどっている。

 また、トランプ政権のコロナ対策のせいで、黒人の間でも多くの死者が出ていることについても鋭い意見が交わされた。

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??でも、誰か別な人間が指揮していれば、混乱は小さかったはずです。

キューブ:「よし、それはそうかもしれない。その仮説はいいだろう。だけど、結局は仮説だ。誰がそのとき権力についていようが」

??我々にはその人しかいないですからね。

キューブ:「どんな対応であれ、それに対応するしかない。そして、片方のデータはあっても、もう片方のはないだろ」

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 さて、読者の皆さんはこの問答を見て、どのように感じただろうか? 同インタビューでは、ほかにも多くの論戦が巻き起こっているので、ぜひ原文を読んでいただきたい。

◆トランプ側からフェイク画像が

 このように「利用されているわけじゃない」と強く主張するキューブだが、この騒動にはさらに新たな展開が。トランプ大統領の息子エリック・トランプが、「トランプ2020」と書かれた帽子を被ったキューブの衝撃的な写真をツイートしたのだ。

 しかし、実はこれは完全なるフェイク画像。アイス・キューブのファンからも即座に「合成では」という声が出たが、「ニューズウィーク」がファクトチェックまでする事態となった。キューブ自身も「勘弁してくれよ」といった内容のツイートを投稿した結果、エリックの画像はしれっと削除されている。(参照:Newsweek)

 混迷を極めているトランプ×キューブ、プラチナム・プラン×CWBA問題。はたして大統領選にはどのように影響するのか。そして、キューブの目指すアメリカ、トランプの約束は実現するのか。今後も大統領選と併せて注視して見てはどうだろう。

<取材・文・訳/林 泰人>

【林泰人】

ライター・編集者。日本人の父、ポーランド人の母を持つ。日本語、英語、ポーランド語のトライリンガルで西武ライオンズファン

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