「維新」対「毎日」のバトル勃発。維新の無理筋批判は大阪市の住民投票に影響するか

「維新」対「毎日」のバトル勃発。維新の無理筋批判は大阪市の住民投票に影響するか

『毎日新聞』の記事を「大誤報」と批判した維新の馬場伸幸幹事長

◆市財政局の突然の翻意

 大阪都構想(大阪市廃止)の住民投票(11月1日投開票)が賛否拮抗のまま最終盤を迎える中、臨時国会の審議に“飛び火”した。維新の馬場伸幸幹事長は10月29日の代表質問で、「市4分割 コスト218億円増」と銘打った10月26日付の『毎日新聞』を「大誤報」と批判、「『毎日新聞』にはメディアの真の役割を自覚し、適切な対応をとるよう強く申し上げておく」と訴えたのだ。

 これに対して『毎日新聞』は翌30日の朝刊で社長室広報担当は「当該記事は大阪市への適切な取材に基づいたものです。代表質問後に市が一転して説明を変えたもの」「(馬場氏の大誤報発言は)極めて遺憾」と反論。訂正や謝罪は一切なかった。

 最終盤で維新と『毎日新聞』のバトルが急に始まった形だが、一連の経過を見ると、維新の無理筋であることは一目瞭然だ。

 馬場氏が問題視したのは「大阪市を4つの自治体に分割した場合、標準的な行政サービスを実施するために毎年必要なコスト『基準財政需要額』の合計が、現在よりも約218億円増えることが市財政局の試算で明らかになった」という部分だった。

 代表質問の2日前(10月27日)の時点では、試算を出した市財政局は「(毎日新聞の記事は)取材内容をきちっと書いてある」と問題視していなかった。

 しかし2日後の29日になると、東山潔・財政局長は松井一郎市長から厳重注意を受けた後、一転して「捏造」と言い出した。「誤った考え方に基づき試算した数字を報道してもらったことで、報道各社や市民に誠に申し訳なく、深くおわび申し上げます」と会見で謝罪したのだ。

 維新代表でもある松井市長の圧力によって、財政局長が発言内容の変更をしたとしか見えないではないか。

◆松井市長が嘯く「取材に圧力的なもの」説

 しかし松井氏は10月29日のまちかど説明会を終えた後の囲み取材で、発言内容が当初と変わったことについて筆者が聞くと、こう答えた。

「今日、僕が(財政)局長から聞いたのは、『大阪市として根拠のない数字を出したことについては非常にまずかった。毎日新聞の記者の方からの熱心な取材で、圧力的なものを感じた』『(記者から)プレッシャーを感じて毎日新聞側の主旨に沿って出しました』と」

 これに対して記事を書いた『毎日新聞』の記者が、「圧力をかけるようなことは取材の中でできないわけで」と反論すると、松井市長は「でも誘導はしただろう」と切り返した。

 これに『毎日新聞』の記者は「(市を4分割することで)スケールメリットがどう失われるのかを知りたいので、『こんなことはできますか』『教えてください』と言ったら(試算が)出て来た。これは誘導になりますか」と再反論。

 また「こうやって質問させていただいていますが、これは圧力と感じることはないと思うのですが」とも突っ込むと、松井氏はこう答えた。

「俺はないよ。言い返すし、部下は分からない。気の弱い人もいるだろうし」

◆「大誤報」「捏造」と批判するのはあまりに無理筋

 こうした両者の質疑応答は10分以上続いたが、市財政局が『毎日新聞』の記者の圧力や誘導で捏造した試算を出したとは考えにくい。というのも、10月27日の時点では「捏造」「誤報」といった否定的な発言はまったくしていなかったからだ。松井市長が部下の財政局長に圧力をかけて、発言内容を変えさせた可能性のほうが高いとしか考えられない。

 しかも財務局への取材をしていたのは合計3社で、記者から圧力や誘導を受けたと財政局長が会見で話したのは『日経新聞』だった。しかし試算結果を受け取りながら『日経新聞』はなぜか報道せず、『毎日新聞』が『日経新聞』の取材攻勢の“濡れ衣”を着せられて、維新は「毎日の圧力による誤報」といった批判をしていた。この食い違いを『毎日新聞』の記者が指摘すると、松井氏は「君のところばかりだと思ってた。そこは僕の勘違いや」と認めた。

 今回、市財政局が出して『毎日新聞』が報じた試算は、市を4分割することによる「スケールデメリット(規模縮小に伴う負担増)」を見積もった参考値のようなものだった。住民投票で賛否を問う「大阪都構想(大阪市廃止と4特別区への移行)」においての負担増の金額を割り出したものではなかった。

 このことは記事の中でも説明してあり、「大誤報」「捏造」というレッテルを貼って『毎日新聞』を批判するのは、あまりに無理筋なのではないか。この批判が成り立つならば、コロナの影響も無視してポジティブな効果だけを喧伝している維新のデータこそがその批判を真っ向から受けることになるのではないか?

 投開票3日前に永田町に飛び火した“維新対毎日”のバトルが住民投票にどんな影響を与えるのか。11月1日の結果が注目される。

<文・写真/横田一>

【横田一】

ジャーナリスト。8月7日に新刊『仮面 虚飾の女帝・小池百合子』(扶桑社)を刊行。他に、小泉純一郎元首相の「原発ゼロ」に関する発言をまとめた『黙って寝てはいられない』(小泉純一郎/談、吉原毅/編)の編集協力、『検証・小池都政』(緑風出版)など著書多数

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