「都構想」が否決されたのに、条例化で再び大阪市の財源を奪おうとする維新

「都構想」が否決されたのに、条例化で再び大阪市の財源を奪おうとする維新

11月1日の都構想住民投票で否決された直後の会見では、吉村洋文知事(維新副代表)は三度目の住民投票は目指さないと明言

◆再び大阪市の“財布”に手を突っ込もうとする維新

 11月1日の投開票で否決された大阪都構想(大阪市廃止と4特別区への移行)が、1週間もしないうちに形を変えて復活し始めた。

 維新副代表の吉村洋文知事は11月6日の会見で、広域行政一元化(二重行政解消)に関する条例案を来年2月議会に提案するという意向を表明。大阪市が府に成長戦略などの業務を一部委託すると同時に、財源も移すべきと訴えた。「仕事と財源は当然セットだ」とわざわざ強調したのはこのためだ。

 否決された住民投票直後の会見で、吉村知事は「三度目の住民投票は目指さない」と断言していたため、大阪府に比べて豊かな大阪市の財源は守られると思われていた。ところが、都構想否決の民意を骨抜きにして、再び大阪市の“財布”に手を突っ込む新たな“目玉政策”を維新は打ち出してきたのだ。

 これまでは「選挙結果がすべて」として、賛否が割れるカジノ誘致や二度目の都構想住民投票を強行してきた維新だが、今回は珍しく敗れた側の民意を尊重した。11月6日の会見で吉村知事は「府市の二重行政解消に対して大阪市民の約半数が賛成」「賛成派の意見を尊重することも重要」と強調、「都構想の対案となる広域行政一本化の条例案を2月議会に提案したい」と訴えたのだ。

◆住民投票否決で、次は「条例化」を新たな看板に

 すると、維新代表の松井一郎・大阪市長も同時期の条例案提出を表明し、吉村知事と足並みをそろえた。しかし大阪市民の中には「条例で二重行政解消ができるのなら、何十億円もかかる住民投票をやる必要はなかった」「都構想否決の結果を骨抜きにするもの」という呆れた声が広がっている。地元記者はこう話す。

「11月6日の記者会見で、吉村知事が質問に答える中で条例化について説明をしましたが、移譲する財源の額が示されない漠然とした内容でした。どの部局の仕事を府に移行するのかなど、具体的検討はまだ始まっていません」

“懲りない面々”とはこのことだ。最初に住民投票が否決された5年前も、維新は自公や共産党との話し合いで二重行政解消をする姿勢となったが、すぐに決裂したことを受けて方針変更。「話し合いでは二重行政解消は実現できない」と訴えて、二度目の住民投票を正当化した。

 今回も同じ狙いであるのは明らか。住民投票否決直後には「維新は都構想という目玉政策を失い、政党としての存在意義が問われる」といった報道が相次いだが、「条例化」という新たな看板を掲げることで党勢維持をはかろうという魂胆が見え見えなのだ。

「条例が成立すれば、維新の存在感を再び示すことができるし、頓挫しても三度目の住民投票を言い出す口実になる。どちらに転んでも、維新にとっては悪い話にはならないでしょう」(地元記者)

◆カジノ誘致や万博開催のためには、潤沢な大阪市の財源“カツアゲ”が必要!?

 しかし維新には都合がよくても、住民投票でせっかく表明された反対派の民意を切り捨てることにもなる。「大阪市廃止(特別区への移行)で府と市の職員の負担が増える。今は都構想よりもコロナ対策を優先すべき」というのも反対理由の一つであったためだ。

 住民投票直前のゲリラ街宣で都構想反対を呼び掛けていた山本太郎・れいわ新選組代表は、「(都構想は)大阪府による大阪市への2000億円のカツアゲ」と財源移譲の弊害を訴えていた。維新はどうしても大阪市の財源がほしいようなのだ。

 都構想は葬り去られても、二重行政解消の掛け声とともにゾンビのような“カツアゲ条例案”が再登場してきている。このままでは、コロナ第三波が襲い掛かる中、貴重な行政資源(人と金)が投じられてしまうことになる。

 維新が手を変え品を変え、大阪市の財源に手を突っ込もうとしているのはなぜか。大阪市政ウォッチャーは、カジノ誘致や大阪万博との関連性を次のように指摘する。

「コロナ禍で大阪進出を表明している米国カジノ業者『MGM』は約1万8000人をリストラするなど経営難に陥ってしまい、V字回復の見通しも立っていません。府市の誘致計画では、予定地の『夢洲』(大阪湾の人工島)への地下鉄建設費200億円をカジノ業者に肩代わりしてもらう前提となっていましたが、実現しない可能性は十分にある。

 大阪万博もコロナ不況で、民間からの寄付金が激減するのは確実。都構想と並ぶ維新の目玉政策であるカジノ誘致や万博開催には、潤沢な大阪市の財源を“カツアゲ”することが不可欠な状況になっているのです」

 維新の党利党略の色合いが強いようにみえる「広域行政一元化」の条例案に対して、地域住民はどう反応するのだろうか。今後も、民意を都合よく解釈しながら党勢回復を目指す維新のツートップから目が離せない。

<文・写真/横田一>

【横田一】

ジャーナリスト。8月7日に新刊『仮面 虚飾の女帝・小池百合子』(扶桑社)を刊行。他に、小泉純一郎元首相の「原発ゼロ」に関する発言をまとめた『黙って寝てはいられない』(小泉純一郎/談、吉原毅/編)の編集協力、『検証・小池都政』(緑風出版)など著書多数

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