再燃する安倍前首相の「桜を見る会」買収疑惑。下関市長選や次期総選挙への影響も

再燃する安倍前首相の「桜を見る会」買収疑惑。下関市長選や次期総選挙への影響も

「桜を見る会」前夜祭補填問題再燃で昨年の12月24日に記者会見に臨んだ安倍前首相だが、秘書に責任を押しつけて評判はガタ落ち(写真は首相時代のもの)

◆再燃した「桜を見る会」疑惑について安倍前首相を直撃

 1月18日招集の通常国会で野党は、吉川貴盛・元農水大臣の収賄疑惑とともに「桜を見る会」前夜祭の補填問題を徹底追及しようとしている。菅政権は年内決着で幕引きをはかろうとしたが、略式起訴された公設第一秘書の“トカゲの尻尾切り”で逃げ切ろうとする安倍晋三・前首相(山口4区)の説明に野党は納得せず、「証人喚問しかない」として通常国会でのさらなる説明を求めているのだ。

 安倍前首相は昨年12月24日、自民党を取材する「平河クラブ」所属の記者24名限定の会見を開いて「検察が厳しい捜査をした結果、問題ないと判断した」と強調。翌25日の議院運営委員会では「会見を通して国民に説明した」と国会議員にアピールもした。

 しかし「桜を見る会」前夜祭に参加した地元支援者の会費を一部補填(約700万円)していた事実が確定したのだから、公職選挙法が禁止する有権者への利益供与(買収)であることは明らかだ。

 そこで、フリーの参加は不可だった記者会見場(衆院第一議員会館の第三会議室)の出口付近で安倍前首相を待ち構えて直撃、単刀直入に聞いてみたのだ。

「有権者への買収ではないですか。公選法違反は明らかではないですか。議員を辞めないのですか?」

 安倍前首相は無言のまま、守衛らに取り囲まれて前を通り過ぎる。その後を追いかけながらさらに聞いた。

「秘書への(責任)押しつけではないですか? 敵前逃亡するのですか。フリーは排除ですか?」

 安倍前首相はこちらを振り返ることもなく、立ち去った。

◆「桜を見る会」の参加者と支出額は年々増加。その中でも地元支援者を優遇!?

 筆者は野党が追及チームを立ち上げた頃から取材し、関連記事(「『桜を見る会』の招待状は安倍首相の『選挙協力へのお礼』に使われていた!?」「下関市長選の安倍派勝利から見る支出額・参加者増の謎。『桜を見る会』追及チームの下関視察で疑惑が浮上」など)を執筆してきた。

 安倍前首相に「有権者への買収ではないか」と声をかけたのは、「桜を見る会」と前夜祭が地元支援者への利益供与(事前買収や事後買収)であることは明白だと考えていたからだ。過去の記事でも紹介したが、「桜を見る会」の予算額(支出額)と参加者の推移は以下の通りである(2019年12月22日の記事から再掲)。

表1 「桜を見る会」と下関市長選

 支出額(万円)   参加者数

〇2014年 3005.3   約13700

〇2015年 3841.7   約14700

〇2016年 4639.1   約16000

◎2017年 4725.0   約16500

●2018年 5229.0   約17500

●2019年 5518.7   約18200

 第二次安倍政権(2012年12月〜2020年8月)の間に「桜を見る会」への支出額と参加者数は増加。本来は国家的な功労者が対象なのに、地元支援者は功労功績がなくても「桜を見る会」に招待されて安倍前首相と記念撮影、前日には会費5000円と安く設定された前夜祭に参加することもできた。

◆安倍前首相は「総選挙での圧勝」を理由に疑惑を否定

 選挙で汗をかく地元の有権者への利益供与(買収)に該当し、公職選挙法違反であることは明らかだ。翌12月25日の議院運営委員会で宮本徹衆院議員(共産党)が「どうみても利益供与だ」と追及したのはこのためだが、これに対して安倍前首相は、総選挙での「圧倒的な勝利」を理由に疑惑を否定したのだ。

「私は、何か利益を供与して当選しなければならない立場ではまったくない。自分の選挙のことはまったく考えないという状況にならなければ、自民党総裁にはなれない。私も今まで9回選挙を戦ってきたが、毎回地元の皆様が大変頑張っていただいた結果、常に圧倒的な勝利を与えていただいている。利益を供与して票を集めることはつゆも考えていない」

 本人がまったく考えていなくても、「桜を見る会」招待(利益供与)された地元支援者が選挙で汗をかいて票集めで恩返しする可能性は十分にある。そもそも公選法が有権者への利益供与を禁じているのは、候補者同士の論戦ではなく利益供与(買収)合戦になるのを防ぐためだ。圧勝で公選法違反容疑が晴れると考えること自体、法の主旨を理解していないとしか言いようがない。

◆地元支援者たちは、下関市長選での安倍派・林派の争いでも汗をかいていた

 しかも「山口4区」で約9割の有権者を占める下関市の市長選に目を向けると、安倍前首相のデタラメさをより実感できる。地元の支援者たちは、総選挙だけでなく、山口4区をさらに盤石にする「下関市長選」でも汗をかいていたのだ。

 このことについても先の関連記事で紹介したが、安倍前首相の地元支援者は、同じ自民党ながらライバル関係にある林芳正・元農水大臣の支援者と熾烈な選挙戦を繰り返していた。

江島潔市長(1995〜2009年)= 安倍派

中尾昭友市長(2009〜2017年)= 林派

前田晋太郎市長(2017年〜現在)= 安倍派

 安倍前首相にとって天下分け目の決戦となったのが、元秘書で安倍派市議でもあった前田晋太郎市長が誕生した2017年3月の下関市長選だ。

 神戸製鋼所など安倍系企業が美味しい事業を受注するなど、不人気だった安倍派江島市政が終わり、林派中尾市政が2期8年間続いた。しかし、2014年から2019年にかけて「桜を見る会」の参加者と予算が増加する中、8年ぶりに林派から安倍派が市長ポストを奪還したのだ。

 その結果、安倍前首相が圧勝してきた山口4区がより盤石になったのは言うまでもないが、先の「表1 桜を見る会と下関市長選」と重ね合わせると、安倍前首相の公選法違反容疑がより濃厚になる。

「◎印」の2017年の下関市長選に勝利するために「桜を見る会」で地元支援者に利益供与、「〇」印の2014年から2016年は市長選でフル稼働してもらうための供応(事前買収)で、「◎」印と「●」印の2017年から2019年は安倍派市長誕生への論功行賞的な供応(事後買収)かのように見えてくる。

◆3月の下関市長選、次期総選挙に注目が集まる

 安倍前首相は結局、こうした地元・下関の選挙事情を十分に把握していない「平河クラブ」所属記者に限った会見でお茶を濁し、「国民に向けて説明した」というアリバイ作りをはかろうとしたのではないか。

 しかし翌25日の議院運営委員会で、野党追及チームのメンバーとして2019年12月に下関現地視察をした宮本氏が本質を突く質問をして、年内決着を狙った“茶番劇”を打ち砕いたといえる。

 山口4区が次期総選挙での全国屈指の注目選挙区となる可能性も一気に高まった。費用補填の責任を秘書に押しつけながら「次期総選挙に出馬して信を問いたい」と議員辞職を否定した安倍前首相に対してネットが反応した。

 昨年12月27日付の『デイリースポーツ』は「安倍氏 秘書がやった『説明果たし、信を問う』選挙審判! ネット『世界が注目山口4区』」と銘打って、「日本中の熱い視線が山口4区に注がれています」といった投稿が相次いだことを紹介したのだ。

 ちなみに山口4区の野党統一候補になる可能性が高いのが、れいわ新選組予定候補の竹村克也氏。元プロレスラーで、現在は通所型福祉施設を経営している。地元での「桜を見る会」追及の急先鋒(先の本サイト関連記事にも登場)、「下関市長選(3月14日投開票)」に出馬表明をしたばかりの田辺よし子・前市議が、竹村氏の選対本部長を務める予定にもなっている。

「安倍私物化政治を下関から変える」と田辺氏が意気込む下関市長選と、秋までには実施される次期総選挙の山口4区が連動するのは確実だ。3月の下関市長選で田辺氏が安倍派前田市長を破った勢いを買った竹村氏が、秘書に責任をなすりつけて評判ガタ落ちの安倍前首相を追い込むという展開もありうるのではないか。

 1月18日から始まる通常国会では、「安倍前首相は十分に説明した」(菅首相)と幕引きを図る与党と、証人喚問を求める野党が対決するのは確実だ。こうした与野党の攻防はもちろん、一気に注目選挙区となった「山口4区」や、その前哨戦となりそうな「下関市長選」(3月14日投開票)から目が離せない。

<文・写真/横田一>

【横田一】

ジャーナリスト。8月7日に新刊『仮面 虚飾の女帝・小池百合子』(扶桑社)を刊行。他に、小泉純一郎元首相の「原発ゼロ」に関する発言をまとめた『黙って寝てはいられない』(小泉純一郎/談、吉原毅/編)の編集協力、『検証・小池都政』(緑風出版)など著書多数

関連記事(外部サイト)